フィンランドのテキスタイルブランド「マリメッコ」は、2021年で創業から70周年を迎えました。また、同じくフィンランドのガラスメーカー「イッタラ」は、140周年。しかし、そんなメモリアルトピックスを取り上げるまでもなく、北欧のインテリアはいまや私たちにとって身近な存在となっています。
近年では、IKEAやFlying tigerといった北欧発の量販店もすっかり定着。たくさんの北欧家具や雑貨が手軽に手に入るようになったからこそ、どのようなアイテムを選び、どのようにしてインテリアに取り入れたらいいのかわからない、なんてことも多いのでは?
そこで、インテリアスタイリストの岩佐知布由さんに、ひと手間で手軽にできる“北欧スタイル”の部屋作りのコツを教えていただきました。
マリメッコの歴史と重なる“北欧スタイル”のムーブメント
北欧のインテリアデザインが世界的に広がったのは、1950〜1960年代。“スカンジナビア”のデンマーク、スウェーデン、ノルウェー、そしてフィンランドのデザイナーによって生み出された家具、食器、ファブリックなどの日用品が、アメリカを先駆けにブームとなったことがきっかけと言われています。マリメッコの創業も1951年。ちょうど同じ時代です。それから半世紀以上を経て、今ではすっかり定番のスタイルになりました。
では、そもそも“北欧スタイル”のインテリアとはどのような部屋のことを指すのでしょうか? 岩佐さんにその答えから聞いてみました。
“北欧スタイル”の基本は、家で過ごす時間を心地よくすること
「“北欧らしさ”って、究極的には『家で過ごす時間を心地よく、快適にする』ということではないでしょうか」と岩佐さん。「だから、こうすれば“北欧らしくなる”という、明確な答えはないと思います」とご自身の考えを語りながらも、“北欧スタイル”を理解するためのヒントとなる3つのキーワードを挙げてくれました。
1. 人やモノへの愛情から生まれる「心の豊かさ・心地よさ」
「私は心地よさや心の豊かさというのは、人を思う優しい気持ちから生まれるものだと考えています。例えば、外国人の友人を家に招いたときに、その国のものを部屋のインテリアにさりげなく飾ってみるといった“おもてなしの心”のようなもの。また、代々受け継いできた古い家具をずっと使い続けるような“モノを大切にして、長く使う”ということも、心の豊かさの一つかもしれないですね」(岩佐知布由さん、以下同)
“モノを大切にして、長く使う”という思想はデザインにも表れています。北欧デザインの特徴である「シンプルで機能性が高いデザイン」は、飽きずに長く使うための必然であると言えるでしょう。
2.「自然へのリスペクト」を感じられるデザイン
北極圏に近いスカンジナビア半島の北部では、夏は一日中太陽が降り注ぐ時期がある一方で、日照時間が短い冬が長く続きます。厳しい自然に囲まれた環境で生活しているからこそ「自然への愛情やリスペクトがある」と岩佐さんは言います。
「北欧のデザインは、木材やウールなど、その土地に根づいたものが使われていて、自然とつながっている。北欧の家具や日用雑貨は、素材や色使い、柄の中に自然への愛情が込められていますよね。『これは湖畔の森林をイメージして作られた柄かな』と想像したり、『春の花が咲き誇ったイメージで作られたテキスタイルを部屋に取り入れたら暗い冬の時期も明るくなるかな』と考えたりするのは楽しいです。自然とともに暮らしているからこそ、そこからインスピレーションを受けたデザインが多いんでしょうね」
「また、冬の間は、太陽の光がとても貴重だということもインテリアに大きく影響しています。明るい色の壁で、太陽の光が反射によって部屋中に広がるように工夫をしていたり、窓が大きく取られていたり。照明も、光にこだわった素敵なデザインのものが多いですよ。光を上手に使ったインテリアも北欧デザインの特徴です」
3. 「自分らしさ」を表現できる多様性
「 “北欧デザイン”は、色使いだけでもポップものからグレイッシュなものまで多彩です。だから、ナチュラルな雰囲気のインテリアもあれば、例えばカール・ハンセンの家具のようにモダンな雰囲気のインテリアにもなる。一言では表せない奥深さを感じます。柄のパターンもたくさんありますよね。特にファブリックは、いろいろなモチーフがあってかわいい。すごく個性的で多様なんです」
「個性的で多様なデザインの中から、自分の“好き”や“心地よさ”を見つけて、空間に取り入れていく。それが“北欧スタイル”のインテリアだと思います。人が言う“心地よさ”じゃない。ポップな雰囲気が落ち着くっていう人もいれば、スモーキーでグレイッシュな雰囲気が落ち着くっていう人もいる。それぞれの部屋に自分らしさが表れるもの、北欧スタイルの面白さですね」
では、実際にどうすれば自分らしい“北欧スタイル”を見つけることができるのか、次のページではより実践的な方法を教えていただきます。