2021年の秋から、電気料金が継続的に値上がりしています。今、手元に来ている明細は、エアコン使用前のもの。梅雨が明けて本格的な夏日を迎えている中、さらに請求金額が上がることは必至です。とはいえ、熱中症対策やペットのためにも涼しい環境の確保は欠かせません。そこで、無理なく今日から行える消費電力抑制テクを、住生活ジャーナリストの藤原千秋さんに教えていただきました。
まずすべきこと。節電マインドを育むために
家計簿には使用電力量もメモする!
具体的な節約術に入る前に、光熱費の変動に対する感度を上げておくことが大切だという藤原さん。
「電気代やガス代などの光熱費は、契約している会社や地域によって、請求月の間隔にばらつきがあります。ちなみにわが家の場合は、電気とガスを東京ガスの契約で一括にまとめているのですが、使用月から請求月の間には3ヵ月のズレがあります。つまり、真夏を迎えた今の時期に支払う電気代は、エアコンを全く使用しなかった春のもの。8月の猛暑日に使った電気代の請求がくるのは、11月くらい。忘れた頃に請求書が来るので、電気代の節約意識にスイッチが入りにくいのが盲点になります。
そこで、今後のためにおすすめしたいのが、ガスや電気の明細が届いたら、使用期間と使用量(kWh)と金額を家計簿にメモすること。これをしておくと、どの月にどれくらいの使用量だったのか、また、単価の変動にも意識が向くようになります。家計簿にメモしなくても、ガスや電気の使用量に関する明細をファイルにまとめて、前年比を比較するのもいいでしょう」(住生活ジャーナリスト・藤原千秋さん、以下同)
必要ないものはカット!
なんとなく使っている待機電力をチェック
電力の効率的な利用による省エネに関する取り組みを発信している「エネマネ」の調査によると、燃料費調整単価は、2021年3月から急激に上昇していることがわかっています。
「わが家は5人家族なのですが、この1年で使用電力量は少し下がっているにもかかわらず、請求金額は年間で3万円以上、増えています。この電気代、今後も高止まりする可能性が高いと言われているので、節電対策は真剣に取り組んでいきたいところです」
必要ないものや優先度の低いものは?
待機電力の減らし方
資源エネルギー庁が公開している資料によると、待機電力量の高いTOP10は上記の通り。
「ガス温水器って意外ですよね。キッチンや浴室など、使用場所が多い上にコンセントから抜けるものではないので、ここは仕方がないところ。見直せるのは、テレビやレコーダー、温水洗浄便座あたりでしょうか。電子レンジやオーブンレンジも節電エコタップに繋げて、こまめにスイッチをオフにすれば、待機電力が節電できます」
ゲーム感覚で取り組みたい!
電気代節約術10
ここからは、藤原さんおすすめの具体的な電気代節約テクを10個、紹介していきましょう。
1.契約アンペアの見直し
契約アンペアは電気代の基本料金を左右します。まずはここをチェックしてみましょう。
「契約アンペア(略称A)とは、同時に使える電力の上限です。10〜60Aの中で7段階に分かれていますが、アンペア数が倍になると基本料金も倍になります。ひとり暮らしや夫婦世帯ならば30〜40Aが平均ですが、低めに設定し、電子レンジとドライヤーは一緒に使わないなどの工夫をすれば、電気代の節約が可能です。なんとなく契約している方は、本当にそのアンペアが必要なのかどうか、一度、チェックしてみましょう」
2.エアコンの同時使用台数を決める
この時期、欠かせない存在のエアコン。少しでも電気代の節約になる使い方になる心がけとは?
「真夏の間は、ペットがいる家庭では留守にする時間帯でもエアコンをつけっぱなしにする必要があると思います。そこは必要経費ですよね。とはいえ、いくつか節電ポイントはあります。その一つが、同時に付ける台数を決めること。お子さんが2人いるからといって、それぞれの部屋でひとり1台のエアコンを付けるのではなく、日中はリビングに集う、寝るときはどこか1台のエアコンを付けて、サーキュレーターで冷風を広範囲に循環させる、という方法もあります。真夏の間は、寝る部屋を1カ所にまとめられる家庭もありそうですね。電気代を節約するという目的を主にするならば、生活スタイルを多少変えることも検討してみるといいでしょう」
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3.エアコン+サーキュレーターのセットで使う
エアコンの設定温度は電気代に大きく影響します。
「エアコンの温度を1度上げると約10%の節電になると言われています。温度を上げて強風にするだけでも、涼しさは上がりますし、サーキュレーターを併用すれば、冷気を部屋中に効果的に広げることができます。エアコンの設定温度をいつもより2度上げて強風設定にする。そして、サーキュレーターを併用するのはいかがでしょうか」
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4.テレビの主電源を切る
最近はほとんどテレビを見ていないにもかかわらず、なんとなく主電源をつけっぱなしにしている方は少なくないはず。
「テレビ離れをしているのであれば、主電源は消しましょう。もし、朝や夜など、一定のテレビを見る習慣があるのであれば、電源タップをかませて、そのスイッチを切ることで待機電力が発生しないようにするのもポイントです。HDDレコーダーで週間録画をしている場合でも、レコーダーのみの電源を入れておけばOK!」
5.温水洗浄便座をオフにする
テレビと同様、温水洗浄便座もなんとなくつけっぱなしにしている家電のひとつ。
「エアコン使用で電気代の上がる季節にコストカットするという意味では、ここはオフにしたいところ。便座がひんやりするのは嫌ならば、貼り付けるタイプのシートを取り入れてもいいですね。どうしても温水洗浄をしないと気が済まないという家族がいる場合は、使うときのみ電源を入れてもらうというのも手です。生活する上で優先順位の低い家電といえるので、節約のためにオフするというのは一つの選択肢ではないでしょうか」
6.朝の5時〜8時は換気タイムに
部屋の換気は、快適な住環境を保つために大切なこと。
「夏場は起きてすぐにエアコンを付けている方もいるかもしれませんが、比較的涼しい早朝から数時間は、しっかりと換気をする時間と決めてしまうといいでしょう。ちょっと大胆な方法にはなりますが、自宅にいる中でどうしても暑さが気になる場合は、着ている服の上から霧吹きで水をかけるといいですよ。お風呂掃除をしているときに、まちがってシャワーの水をかぶってしまったことがあるのですが、夏だしすぐ乾くと思って、そのまましばらく過ごしていたら、寒いくらいに涼しさを感じました(笑)。その体験をヒントにしたテクニックです。ペットにも水の霧吹きなどで体を少し濡らしてあげながら、体感温度を下げて朝の数時間を過ごしてみませんか」
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7.洗濯乾燥機の使用を減らす
家事の時短アイテムとして洗濯乾燥機を使用している方は、エアコン使用分の節電対策として、洗濯物を干すようにしてもいいかもしれませんね、という藤原さん。
「洗濯乾燥機は時短に貢献してくれる便利家電ですが、電気代がかかる存在でもあります。夏は数時間で洗濯物が乾くので、ここは節電ポイントにしたいところです。干す作業をカットして乾燥機に頼ってきた方ならば、最初はバスタオルだけでも干してみると、乾燥機の負担をグンと減らせます。厚手のバスタオルは特に乾きにくいので、これだけでも節電効果は大きいはず。また、例えば7分あれば4人家族分くらいの洗濯物は干せるので、好きな曲2 曲分とか、音声メディアを聞きながらなどの工夫をしながら、節電のために乾燥機の使用を減らしてみることをおすすめします」
8.日中はカーテンを閉める
暑い時期だからこそ意識したいのが、カーテンによる断熱。
「日中はカーテンを開けて明るくしておくのが常識だと考えてしまいがちですが、夏場は日の光が差し込むほどに部屋の温度が上がってしまうので、断熱のためには日中もカーテンを閉めておくことをおすすめします。自宅でお仕事をする方でも、遮光カーテンでない限りは暗電気をつけなくても十分に過ごせると思います。もともと日中は不在にする方ならば、明るさを気にする必要はありませんね」
9.つけっぱなし電源を総点検する
ムダな待機電力は思わぬところにあるもの。
「充電が満たされているのに電源につなぎっぱなしのパソコン、スマホ、タブレット。ほとんど使っていないスマートスピーカー。ほかにも、なんとなく電源につなぎっぱなしのものは意外とあります。一度、自宅の中のコンセントを総点検してみましょう。節電タップを取り入れることで、ほんのひと手間でスイッチをオフできるものが見つかるはずです。電気使用量のかさむ夏場の節電のために、しばらくは使用を控えられる家電もありそうです。電気代が上がっている今、優先順位の低いものを思いきってやめるという選択肢も検討してみましょう」
10.オフシーズンはエアコンのブレーカーを切る
エアコン専用のブレーカーを切れば、待機電力カットに。「エアコンは夏と冬しか使わないもの。使用季節以外はコンセントを外しておくようにすると待機電力がカットできますが、もう一つ、心がけたいのがエアコン専用のブレーカーをオフにすること。使わない電源は元から切ることを習慣にすると、節電につながります」
この季節の電気代節約といえば、やはり、エアコンの消費電力が一番のポイント。冷却ジェルマットで首や手首を冷やしたり、こまめに水風呂に入ったり、冷却インナーを着たり、スイカなどの体を冷やす食べ物を摂ったりすることも節電効果につながります。なんとなく付けっぱなしにしていた待機電力の見直しとともに、暑さ対策の工夫ができるといいですね。
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Profile
住生活ジャーナリスト / 藤原千秋
住宅メーカーで勤務の後、2001年から、オールアバウト「住まいを考える」サイトガイドに就任、住宅関係専業のライターとして活動。プライベートでは三児の母。自身も子どもも花粉症やアレルギーに悩まされ、花粉対策の試行錯誤を続けてきた経験あり。ラジオや新聞、雑誌などで活躍するほか、『忙しい人の人生が整う 家事の習慣』(西東社)の共同監修、『人生をピカピカに 夢をかなえる掃除の習慣』(朝日新聞出版)の監修を務める。
取材・文=今井美由紀(Neem Tree)