季節の変わり目は、気温や湿度の変化により、肌や体のバランスが崩れやすい時期でもあります。髪の毛も、これまではしっとりしていると思っていたのに、パサつきを感じたり、かゆみやフケが気になったり、夕方になるとぺったりとボリュームダウンしてしまったりする、ということはありませんか? 実はその原因のほとんどが、頭皮ケアの仕方によるものなのです。
「頭皮の皮脂コントロールが大事」と最近よく耳にしますが、頭皮のケアさえしっかりできていれば、体は自然と正しい皮脂量を分泌してくれるものです。今回は、美しい髪と頭皮を保つために必要なヘアケアの仕方について、美容師である美髪アドバイザーの寺村優太さんにうかがいました。
1.まずはシャンプーの選び方を考える
髪や頭皮を美しく保つ上で最初に考えなくてはならないことが、シャンプーの選び方です。普段使っているシャンプーは、どのようなものでしょうか? 「ノンシリコン」「オーガニック」「パラベンフリー」「天然由来」など、魅力的な謳い文句が並んでいると、どのシャンプーを選んだらよいものか、迷うこともあるでしょう。
「“フリー”や“ノン”という言葉を使われると、それ自体が悪いものであるかのように感じますが、そうではないのです。たとえばパラベンというのは保存料で、保存料が入っていなければ冷蔵庫で保存しないと劣化してしまいますよね。でもパラベンフリーのシャンプーに、冷蔵庫保存とは書いていません。つまり、パラベン以外の保存料が入っているということ。原料にも目を向けて選んでいただけると安心です」(美髪アドバイザー・寺村優太さん、以下同)
2.頭皮の悩みは、多くが洗いすぎが原因!
シャンプーの洗浄力は、台所洗剤と同等であると寺村さんは話します。「一般的にドラッグストアなどで購入できるシャンプーは、実はとても洗浄力が強いものが多いのです。油ものを炒めたフライパンをシャンプーで洗ってみると、その洗浄力に驚くことでしょう。でも、みなさんの頭皮は、フライパンのように油分でギトギトしていませんよね。でも多くの方がその洗浄力の強いシャンプーを使って、指の腹でゴシゴシと頭皮をマッサージしながら洗っていますから、今ある頭皮の悩みは、ほとんどが洗いすぎによるものだと思っていいでしょう」
3.頭皮を必要以上に刺激しない
美容院では頭皮を指で刺激しながらしっかりと洗うことが多いため、その方法がよいシャンプーの仕方であるという認識が広まっている、と寺村さんは話します。頭皮マッサージをしながらのシャンプーは、リラックスやリフレッシュを目的にしていますから、日々の洗浄とは別に考えたいもの。
「まんべんなくこすらないと汚れが落ちてないと思っている方が多いのですが、こすらなくてもシャンプーの泡がついただけで、頭皮や髪の汚れは浮いてきます。ただし、髪の量が多い方や、髪の内側部分などは、シャワーの水圧だけでは汚れやシャンプーが落ちないことがあるため、指の腹を使ってやさしくこすりましょう」
4.肌と頭皮は同じクオリティーのケアをする
普段購入しているシャンプーの価格と、肌に使っているクレンジングや洗顔料の価格を比べてみましよう。1リットル近く入っている大きなボトルのシャンプーは、洗顔料と同じくらいの価格設定でしょうか?
「一般的に売られているシャンプーは、安いと200〜300円で、1リットル1000円もすると高いという印象があるかと思いますが、洗顔料と比較すると大変安価です。本来であれば、肌に使うものと同程度の価格設定をしているシャンプーを選んだほうが、頭皮に過度な負担がなく、適切な洗浄力で洗うことができるのです」
5.今あるシャンプーを使って、洗い方だけ変える
まずは、今使っているシャンプーで、洗い方だけを変えてみましょう。洗い方を変えるだけでも髪のトラブルがぐっと減ります。
「頭皮には汗や皮脂など、汚れがたくさん付着していると思われがちですが、そんなことはないんです。汗はお湯で落ちますし、皮脂や汚れも、実は2〜3日洗わなくても問題ない程度。そこを洗浄力の強いシャンプーでゴシゴシ洗ってしまうと乾燥の原因にもなりますし、パサパサするからと言ってトリートメントをつけすぎると、今度は頭皮の内側から出てくる、必要な皮脂の分泌を邪魔することになります」
ということで、寺村さんに、健やかな髪をつくるシャンプー法を教えていただきました。
1.【ブラッシング】切れ毛をつくらないようにやさしく
シャンプー前には、丁寧にブラッシングをしましょう。髪の毛が切れないよう、毛先から順番にほぐしていきます。コームなどの目が細かく硬いものよりも、髪の毛が引っかかっても痛くない、目の粗い柔らかなブラシを選びましょう。
「シャンプー前のブラッシングは、よくホコリやゴミを落とすと言われがちですが、ブラシで取れるような大きなゴミがついていることはほとんどありません。絡まったままの髪の毛を濡らすと、余計に絡まってしまい切れ毛になるので、それを防止するためです」
2.【お湯洗い】時間をかけてゆっくり流す
体温と同じくらいの温度(36〜37℃)のぬるいお湯で、頭皮を洗い流します。頭皮をゴシゴシこするのではなく、頭皮全体をお湯で湿らせるようにまんべんなく流してあげましょう。
「お湯が冷たすぎるとシャンプーの泡立ちがよくないのですが、温度が高すぎると、カラーリングしている方はカラーが早く落ちてしまいますし、髪や頭皮のパサつきの原因になります。また、コラーゲンを作り出す頭皮の真皮は薄く、顔の皮膚と変わりませんから、そっと撫でるようにやさしくすすぎます」
3.【予洗い】すぐに洗い流す
シャンプーをごく少なめに取り(ロングヘアであれば10円玉1コ程度)、髪を撫でるようにつけて揉み込みます。このときは泡立てることなく、髪全体にシャンプーがつけばよいでしょう。
「ギュッギュッと髪を握るようにシャンプーをつけたら、すぐに洗い流します。予洗いでは、スタイリング剤や、前夜につけたトリートメントなどを落とします。また、本洗いしたときにシャンプーがしっかり泡立つようにするためなので、スタイリング剤をつけた部分にシャンプーがつけばいいでしょう」
4.【本洗い】たっぷりの泡で頭皮を包むように洗う
ポンプ式のシャンプーであれば、1プッシュの半量程度を髪につけて握るように揉み洗いし、しっかりと泡立ってきたら、髪を大きく動かしながらその泡だけで頭皮を洗います。
「手で洗うのではなく、泡で洗うことを意識しましょう。シャンプーの泡がついたところは、すぐに界面活性剤が働き、皮脂を浮かせて洗浄がはじまります。ですからシャンプーが長い時間頭皮に触れていると、必要な皮脂まで取れていってしまうので、泡で頭皮を包むように洗ったらすぐに流します。シャンプーの量は髪の長さや量によりますが、足りないと感じれば足せばいいので、最初は少量からつけはじめてみてください」
5.【洗い流す】5分くらいかけてしっかりと流す
髪の量や長さにもよりますが、シャンプーが残らないよう5分程度かけてじっくりと洗い流します。流すときにも頭皮はこすらず、シャワーの水圧が当たる程度にしておきましょう。「耳の後ろやおでこの生え際のあたりは、顔に水がかかりたくないという理由で洗い残してしまう方が多く、にきびや肌荒れの原因になることがあります。こすらなくてもシャンプーは落ちますから、髪をかき分けながらよく流しましょう」
6.【トリートメント】頭皮にはつけず髪にだけつける
トリートメントは髪の中間あたりから毛先にかけて揉み込み、頭皮には当たらないようにします。
「シャンプーしたあとの頭皮は、内側から必要分の皮脂を分泌しようとしています。これはいい皮脂で、髪のツヤや頭皮を守る役割をしてくれています。ここにトリートメントがついてしまうと、べたつきの原因になったり、頭皮が皮脂を分泌しにくくなってしまったりするのです。一度ついてしまったトリートメントはその部分をコーティングしてしまうので、シャンプーしないとシャワーで流しても落ちません。髪だけにさっとつけて流すようにしましょう」
7.【タオルドライ】髪を傷めないようポンポンとたたきながら拭く
5と同じ要領でトリートメントをよく洗い流したら、毛先からポンポンとたたくようにタオルで拭きます。次に頭皮の水分をやさしく拭き、もう一度毛先を拭く、というように何度か繰り返して水滴が出ないくらいしっかりと拭き取ります。
「ドライヤーで乾かすときに、きちんと乾かし切れている方はそう多くありません。ドライヤーが重くて腕が疲れてしまったり、面倒になってしまったりすることもあって、だいたい8割くらいしか乾いていないところで、みなさんやめてしまうんですね。ですからなるべくタオルでしっかり拭き取っておいて、ドライヤーを使う時間を短くします」
8.【ドライヤー】内側までしっかり乾かす
ドライヤーをかける前に一度ブラシで絡まりを取り、ドライヤーを振って動かしながら乾かしていきます。このままスタイリングをするときは、前髪や分け目などクセをつけたくないところから乾かしはじめましょう。
「髪の毛に手ぐしを入れて、毛を動かしながら乾かします。面倒だからと自然乾燥にすると、どんどんクセがついていってしまうので、髪の毛のはねる方向などを考えながら乾かしていきましょう。また、内側や襟足のところが乾ききっていない方が多いので、掻き分けながら中までしっかり乾かします」
健康な髪をキープするためのルールと、正しい洗髪のしかたを教えていただいたところで、次は美髪になるために確認しておきたい、ヘアケアに関する疑問に答えていただきます。