モダンカリグラフィーの道具と上達のコツ
まず、島野さんが普段使っている道具を見せていただきました。
まずは、島野さんももっともよく使うという定番のペン先とペン軸。ペン先はポインテッドペンですが、ペン軸は本体からペン先をセットする位置が少し離れている「オブリークホルダー」と、通常のものの2種類があります。
こうしたカリグラフィー専用の道具がある一方で、島野さんによると「筆圧が調整できれば、どんなペンでも使えますよ」とのこと。
そうした手軽に導入できるペンとして、今回はぺんてる「筆タッチサインペン」、ぺんてる「アートブラッシュ」、サクラクレパス「ペンタッチゴールド」、トンボ鉛筆「ABT」を紹介していただきました。
「オブリークホルダーも安く手に入るので、もちろんそれでもいいんですが、やはり道具に慣れるまでにもそれなりの時間がかかります。なので、もう少し手軽に始められるブラッシュペンはおすすめ。わたしが監修したテキストをぺんてるのHPから無料ダウンロードできますよ!」(島野さん)
とはいえ、「できれば、一度は講座などで知識や技術を教わるようにしてもらいたい」と島野さんは言います。
「独学だと、自分の方法が正しいかどうか見極められず、上達するスピードがスローに。オンライン動画でも、手元だけ映しているものだと、姿勢やペンの向きを確認できないから、何かが間違っていてもそのまま練習を続けてしまう。いったん正しい方法を確認できると、ある程度自己流でも練習を重ねるほどどんどん伸びていきますから」とのこと。島野さんのその言葉は、現在でも、書道の先生に師事しているだけあって、含蓄がありますね。
「楽しい、もっとうまくなりたい、もっと学びたい、という意欲があればその気持ちはすごいエネルギーになります。好きな気持プラスアルファで正しい方法を教えてもらう。あとは努力次第ですね」(島野さん)
デジタル全盛の時代だからこそ「手書き」の価値を高めたい
モダンカリグラフィーの第一人者でありながら、個人のウェディングアイテムも手掛け続けている島野さん。作品作りで大切にしていることは? との問いには「空気を壊さないこと」。
「ウェディングプランナーをしていたときから気になっていたのが、インビテーションカードや会場のプレート、デコレーションがトレンドを意識した洋風でとても素敵なのに、席札がかっちりした漢字だったり、筆文字だったりすると、その部分だけすごくアンバランスだったこと。どこか統一感に欠けるなぁという思いがありました。招待状から式当日まで、統一された素敵な世界観をモダンカリグラフィーで作れたら、と思うんです」(島野さん)
最近では、その考えが広まりつつあり、頼まれることも増えているそう。「式が決まったらモダンカリグラフィーを習いはじめるという花嫁さんも増えているんですよ」と島野さん。いわゆる「花嫁DIY」の一環なんだそうです。
ブランドロゴであれば、そのブランドのコンセプトや世界観を、パッケージであれば製品の持つイメージを、ウェディングであれば主役となる新郎新婦の人柄などを考えながら、文字をデザイン。
「ささっと書いているように見えますけど、カリグラファーってそこに至るまでかなりの時間を費やしているんですよ」と島野さんは話します。
「手書き文字のカリグラフィーは、とても価値のあるものだと思います。デジタル全盛の時代にあって、ひとりひとりが時間をかけて生み出した手書き文字自体の価値が上がれば、こんなに嬉しいことはないと思っています」(島野さん)
まずは手軽にはじめられる市販のグッズを手に入れて、早速チャレンジしてみて!
Profile
カリグラファー / 島野真希
1983年、香川県生まれ。書道家・カリグラファー。独立後しばらくは書道の仕事が多かったそうだが、いまではその割合が逆転しているとか。現在ではモダンカリグラフィーの第一人者として活躍し、ブランドロゴやパッケージをデザインするほか、ワークショップやスターターキットの監修なども手がける。
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