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「書く」作業から楽しみたい、記憶に残る気持ちの伝え方。おさらいしたい手紙のマナー

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デジタルでのコミュニケーションがメジャーとなった現代では、手紙を書く機会がとても少なくなりました。文部科学省の発表によると、中学生の全国学力試験で出題された「正しい手紙の書き方」の正答率が6割を切ったとか。手紙に触れる機会が少ないゆえにマナーが分からず、ますます手紙から遠のいてしまう、という人もいるでしょう。

でも、手紙でこそ伝わる思いがあります。ウェブサイト、「手紙の書き方」ホームページの運営会社であり「MIDORI」のステーショナリーデザインを手がけるメーカー、デザインフィルの広報・中村雅美さんに、手紙の書き方や楽しみ方を教えていただきました。

 

丁寧に書くことがマナーの第一歩

手紙を書くときのマナーには諸説あり、正解はひとつではありません。

「手紙をお送りすることは、それだけで『あなたのことを考えて時間をかけて書きました』という気持ちが伝わるものです。何かちょっとした間違いがあっても、好意的に受け止めてくれるでしょう。とはいえ、ビジネスの相手や目上の方へ送る場合、または謝罪のための手紙などのときは、ある程度の常識をもって書くことが求められますから、今一度マナーを見直しておくといいでしょう。字が上手でなくても、丁寧に書いたものかどうかは見ればすぐわかりますから、丁寧に心を込めて書くことがマナーの基本といえます」(デザインフィル 広報・中村雅美さん、以下同)

 

手紙の構成は4ブロックに分かれている

手紙の基本的な構成は、前文・主文・末文・後付の4ブロックに分かれています。それぞれのブロックでの注意点をおさらいしましょう。

・前文……拝啓や急啓などの“頭語”ではじめ、時候の挨拶文を書く
「時候の挨拶は、インターネットでもさまざま検索することができますが、あまりあらたまって考えすぎず、季節の美しさが感じられる文章にしましょう。注意したいところは、地域が違うと季節の挨拶に使う言葉も変わってくる点です。離れた場所に住む方に送るときは、その方が住む地域との季節や気候の違いに目を向けて、ふさわしいかどうかを考えてみてください」

・主文……「さて」「ところで」などに続いて、今回の用件を書く
「用件はなるべく簡潔にまとめ、何を伝えたい手紙だったのかがわかるように書きます。ご馳走していただいたことや贈り物のお礼であれば、『いただいた○○がとてもおいしくて驚きました』『家族全員で楽しんでいます』など、ありがとうという言葉以外に一言添えることを忘れないようにしましょう」

・末文……相手の発展や今後の厚情を願う文章を書き、“結語”で結ぶ
「結語は、“敬具”が一般的ですが、差し出し人が女性のときに限って“かしこ”を使うことができます。どの頭語にも使える万能なものですが、女性らしさを強調してしまう印象なので、ビジネスシーンでは避けた方が無難です。頭語と結語は決まった組み合わせがあるので、よく使われるものを覚えておくといいでしょう」

《よく使われる頭語と結語の組み合わせ》
拝啓→敬具
謹啓→謹言
前略→早々
急啓→早々(急用の手紙で使用)

・後付……手紙を書いた年月日と自分の名前、受け取る方の名前を書く
「お祝いに関するお手紙には、年月日でなく○月吉日とするのもいいでしょう。自分の名前はいちばん下に書き、相手の名前は上に、自分の名前よりも少し大きな字で書くことで、敬意の表現につながります」

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これだけは知っておきたい手紙のマナー10

ここではぜひ覚えておきたい手紙の書き方のマナーをおさらいします。間違えると失礼にあたる場合もありますから、注意しましょう。

1. 縦書きで書く
「正式なものは横書きでなく、縦書きで書くのがマナーです。また、手紙を縦書きにした場合は、封筒も縦書きで住所や宛名を記し、裏面の自分の住所や名前も縦書きにします」

2. 省略せずに書く
「手紙の後付や封筒に会社名や部署名、名前を書く場合、株式会社を(株)とするなど省略してはいけません。また、漢字は略字を使わず、正式な漢字で書きましょう」

3. 手書きで書く
「英字では手紙の文章をパソコンで打ち、署名だけを手書きで書く文化がありますが、手書きの方が送り手の気持ちが伝わるので、手書きをおすすめします」

4. インクは黒かブルーブラックで書く
「親しい方に送るのであれば、便せんの罫線とインクの色を合わせるなどの楽しみもありますが、正式な手紙は黒かブルーブラックのインクで書きます。温度変化で文字が消える仕組みの筆記具は使わずに、ボールペンや万年筆などを使いましょう」

5. レターセットは白いものを選ぶ
「お悔やみやお詫び、ビジネスシーンなどの正式な手紙には、白くて柄のない便せんと封筒を選ぶと失礼がありません。封じ目には“〆”と書き、糊で封をします。お祝いごとのときには“寿”“賀”などの字にしましょう」

6. 添え紙は基本的には不要
「手紙が一枚で終わってしまった場合、『もっと書きたかった』という気持ちを込める意味や、封筒に入れたとき透けて手紙が見えてしまうことを避けるため、便せんを二枚にして送るのが一般的でしたが、現在ではあまり使われていません。透けてしまいそうな場合にのみ、添え紙をしてみてください」

7. お詫びの手紙はいちばんに謝罪を伝える
「お詫びの気持ちを手紙にするときは頭語を“急啓”とし、そのあとは時候の挨拶を書かずに、“取り急ぎお詫び申し上げます”と先に謝罪を伝えましょう」

8. お見舞いの手紙に時候の挨拶は書かない
「深刻なご病状や災害などのときに送るお見舞いのお手紙には、季節の言葉が邪魔になる場合がありますから、その際は“急啓 このたびの被害を心よりお見舞い申し上げます”と、すぐ本題に入ります」

9. お悔やみの手紙は一枚にまとめる
「お悔やみは二重にないようにという意味をこめて、一枚の便せんにまとめて送ります。このとき、レターセットはもちろん、切手の柄が派手ではないか気を配るといいでしょう」

10. お礼状は2〜3日中に投函する
「お礼をするときはなるべくその日中に、遅くても2〜3日後には投函し、早めに感謝の気持ちを伝えるのが礼儀です。お礼状は葉書でも構いませんが、葉書はご家族や会社の方々の目にも触れることを忘れないでください」

 

つい忘れてしまいがちな、また意外と知らなかった手紙のマナー。知るべきことを押さえたところで、次のページでは送る側は楽しく、受け取る側はうれしくなるような、手紙グッズをご紹介します。