2050年をターゲットとしたカーボンニュートラル時代に向け、「脱炭素」や「自然エネルギー」に注目が注がれています。太陽光発電を装備した住宅や企業単位での脱プラスチックへの取り組みなど、わたしたちの暮らしを取り巻く環境も急速に変化しており、もはや無関心ではいられません。
自動車の分野では、電気自動車や水素自動車といった二酸化炭素の排出量が少ないクルマにも注目が集まっていますが、なんと今から30年も前、1991年から太陽の力だけで走れる“ソーラーカー”のプロジェクトを推進してきた大学があるのをご存知でしょうか? 学部数日本一を誇る東海大学のチームは、国内外のソーラーカーの大会で多くの優勝経験があり、実績も折り紙付き。
そこで、エコを考えるきっかけのひとつとして、今回は世界から注目される東海大学ソーラーカーチームにコンタクト。ソーラーカー、そして彼らが挑む過酷なレースについて取材しました。
【関連記事】大学生が世界最高峰の大会に挑む! 東海大学ソーラーカーチームの強さの秘密
1.最高時速は100km以上! ソーラーカーは意外と速かった
“ソーラーカー”と聞いてイメージするのは、車体上部に大きなソーラーパネルを積んだ“四角いクルマ”かもしれません。ところが、東海大学で目撃した最新のソーラーカーは、曲面が美しい流線形。“近未来のクルマ”のようなスタイリッシュさを感じさせます。
ソーラーカーの開発において重要なのは空気抵抗を抑えて走行するための「空力」と、太陽光を効率よく集めパワーに変える「電力」。このふたつがバランスよく融合することで実現したのは、なんと最高時速100km! 走り出しに「ブゥ〜ン」というわずかなモーター音が聞こえますが、走行中はとっても静か。当たり前ですが、排気ガスも出ていないので、風が走り抜けていくような印象です。
2.車体はたったの140kg! 軽さの秘密はカーボンとソーラーパネルにあった
ソーラーカーのサイズは全長約5m、幅1.2mで、重量は140kg程度。軽トラックでも700kg前後はあるので、その軽さは一般車両と比べると5分の1以下です。
軽さを実現した最大の秘密は、車体を形作る最先端のカーボン素材にありました。繊維メーカー、東レの全面協力により、東レ・カーボンマジック株式会社の新世代炭素繊維「M40X」を採用したことで、軽さと強さを兼ね備えた車体を実現できたのだとか。
また取り付けられている太陽電池も、住宅用で使われているような分厚いガラスを用いた一般的なパネルとは異なり、薄いシート状の樹脂でモジュール化したものを採用。1枚あたり7g程度のパネルが、258枚取り付けられています。
3.まるで自転車!? 細くて軽いタイヤで、路面との摩擦を低減していた
クルマに装備するタイヤらしからぬ軽さと細さ、路面をしっかり捉える弾力性を兼ね備えています。とくにこの細さと軽さが、転がりやすさの秘密。タイヤに無駄なストレスをかけずスムーズに回転させることが、燃費向上につながっているのです。
続いて、このマシンが投入されるレースについて、世界最高峰のレース「ブリヂストン・ワールドソーラーチャレンジ」を例に見ていきましょう。「チャレンジ」と名付けられている通り、レース中はまさに挑戦の連続です。
4.世界最高峰のレース「ブリヂストン・ワールドソーラーチャレンジ」は5日間で3000km超を走破!
車体やタイヤに注ぎ込まれたテクノロジーと燃費性能と技術は日進月歩。でもこのマシンを動かすドライビングテクニックやチーム力こそが、本番では試されます。
その世界最高峰とされる大会が、オーストラリアで1987年から開催されている「ブリヂストン・ワールドソーラーチャレンジ」(以下、BWSC。開設当初の名称は「ワールド・ソーラー・チャレンジ」)。北部ダーウィンから南部アデレードまで、総移動距離は3020km! 5日間をかけたチャレンジが繰り広げられます。
この大会は、「チャレンジャー部門」「クルーザー部門」「アドベンチャー部門」に分かれており、毎回50団体ほどが参加。東海大学が参加するのは速度を競うチャレンジャー部門で、2009年と2011年には2連覇の偉業を達成しています。
この3000km超のコース、途中に住宅も歩行者もなく、天候や動物たちまでもが“敵”となる舞台。その過酷さを物語る、残る3つの真実とは?