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東京23区から初のJリーグチームを!「東京23FC」が秘めた底力の源は?

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1993年にJリーグが開幕してから30年。昨年行われたFIFAワールドカップ(カタール)の熱狂も記憶に新しく、目下開催中のFIFA女子ワールドカップでも熱戦が期待されるところ。その活躍に触発され、日本におけるサッカーの裾野は広がり続けています。現在、日本国内の老若男女すべて合わせたクラブチームは、2万5000チーム以上存在しているとか。

数あるクラブチームの中でも「東京23区から初のJリーグ昇格」を目指すチームが、東京江戸川区を拠点に活動する東京23フットボールクラブ(以下、東京23FC)。この、あるようでなかった東京23区に所在するクラブチームに迫ります。

設立当時から変わらない
「東京23区からJリーグ、そして世界へ」

ホームグラウンドで戦いに向かう東京23FCの選手たち。

これまでにも“東京”と名のつくサッカーチームは複数ありましたが、いずれも23区外が拠点のチームだったため、実は現在のJリーグには東京23区を拠点としたチームはありませんでした。「23区内にクラブチームがないなら、僕たちが作ろう」と設立されたのが、今回紹介する東京23FCです。2010年から現在の体制で始動。2013年には関東1部リーグへと昇格し、現在はJリーグへつながるアマチュアリーグの最高峰JFLへの昇格をかけ、江戸川区を拠点に日々戦いを続けています。

平日7~9時は、江戸川区の葛西臨海公園近くにある競技場での練習が開催されています。

「Jリーグが開幕してからサッカー全体のレベルも大きく上がってきました。現在の関東リーグでは、Jリーガーを目指せる環境で、切磋琢磨していますし、元Jリーガーが所属するチームも増えています。東京23FCとしても、変化に対応しながら勝ち上がることが大切だと考えています。近い将来Jリーグで23区を代表できるようなチームとなって、そして世界でも活躍できる選手を育成していきたいですね。江戸川区をはじめ、23区内に住むみなさんに『東京23FCを応援したい』と誇りを持っていただけるよう頑張っているところです」

こう話すのは、東京23FCの取締役COOを務める石井温さん。東京23FCは、今年10月に佐賀県で行われる「第59回全国社会人サッカー選手権」の切符を手にしたところ。関東リーグで優勝すること、もしくはこの大会で3位以内に入れば、JFL昇格につながる地域チャンピオンズリーグへの出場ができます。まさに勝負の年となる今年は、チーム一丸となってある思いを強めているのだとか。

東京23FCでキャプテンを務めるFW(フォワード)の清水光選手が、チームで大切にしている思いについても語ってくれました。

「僕たちはサッカーを通じて『観る者の心を打つフットボール』を掲げ、最後まで諦めずに走り続けることを大切にしています。この思いは、トップチームに所属する31名の選手だけでなく、セカンドチーム、U-18、U-15、さらにはサッカースクールに通う子どもたちまでが同じ思いでサッカーに向き合っています」

練習中の様子。この日は筋トレを重視したメニューが実施されていました。

サポーターの応援が力に!
約7000人収容のスタジアムで熱気を感じる

ともに勝利を喜ぶサポーターたち。親子連れから地域のサッカーファンまで、幅広いファン層も特徴的です。

選手のテクニカルなプレイに魅了され、サポーター同士の繋がりもアツいのが東京23FC。なんとクラブを応援してくれている人たちが率先して試合のライブ配信やインタビューなどを実施しているのです。東京23FCのYouTubeチャンネルを見てみると“東京23勝手に実況隊”のメンバーがその名の通り、勝手に実況し、選手にインタビューした映像まで配信されています。もちろんリーグやチーム、関係各所に許可は得ていますが、ここまでサポーターと深い関係になれているのはどうしてなのでしょうか?

「いろいろなご縁が重なって“東京23勝手に実況隊”のみなさんに配信いただいているのですが、クラブの中の人ではないので、基本的にはフラットに自由に楽しくファン目線から配信してもらっています。サポーターのみなさんからも愛されていて、現地にいけない時でも配信を見て楽しめていると好評なんですよ」(石井さん)

東京23FCのホームグラウンドはスピアーズえどりくフィールド(通称:えどりく)で、収容人数は約7000人! コロナ禍で無観客試合が続いたそうですが、入場制限や声出し応援が解禁された時は、選手も大きな力を得られたと言います。

試合後には、選手とサポーターが直接触れ合える場面も。選手もサポーターのリアルな声や表情を見れるうれしい瞬間なのだとか。

「試合中につらい状況になると、選手たちもモチベーションが下がってしまうタイミングがあるんです。けれどサポーターのみなさんが90分間声を出して鼓舞し続けてくれている姿や、『頑張れー!』の声援で踏ん張れることがあるんですよね。目には見えませんけど、選手も背中を押されるというか……こんなに誰かに応援される経験って限られた人間しかできないと思うので、しっかり答えていきたいですね。特にコロナ禍で無観客が続いていたのも経験しているので、解禁された時のサポーターさんたちの熱気、そして選手の気合いはすごいものがありましたね」(清水選手)

東京23FCの注目選手にインタビュー!

左からFW清水光選手、GK大石文弥選手、DF宮田和哉選手。年齢は違いますが、3人とも2021年に入団した仲良しな同期とのこと。

サポーターをここまでアツくさせるのはチームの魅力、選手の魅力があってこそ。しかし、アマチュアリーグである地域リーグに所属する選手は、試合だけで生計を立てるのは難しく約9割の選手がサッカー選手とは別の仕事をしているそうです。東京23FCに所属する選手も、毎朝7~9時の合同練習が終わると、会社員として働いたり経営者として組織を率いたり、選手以外の活動も行っています。

今回は、取材に答えていただいた清水選手のほか、2021年に入団したGK(ゴールキーパー)の大石文弥選手、そして大学卒業後に東京23FCに所属したDF(ディフェンス)の宮田和哉選手に、選手以外にどんな活動を行っているのかを聞きました。

GK・大石文弥選手

「東京23FCに入団する前は、もう引退するつもりだったんですが、共通の知り合いを通じて誘っていただき『もう一度サッカーするならこのチームだ』と加入を決めました。選手以外の活動として、ゴールキーパーのサッカースクールを経営しています。日本では、ゴールキーパーを育成する場所も機会も少ないので、環境を整える必要があるんですよね。朝の合同練習が終わったあとは、別メニューでトレーニングを行い、午後からスクールへ。現在は2つのスクールを掛け持ちしていて、40人の生徒を指導しています」(大石文弥選手)

FW・清水光選手

「東京23FCは3チーム目。実は何度かお誘いいただいていたチームだったんですけど、2021年に大石選手が加入されるのをTwitterで知って(笑)、ぜひ一緒に! と加入しました。僕は、昨年から東京23FCのスタッフとしても活動しています。街に出てポスターを貼らせてもらったり、スポンサーさんとサッカーを通じてできることがないかお話ししたり、僕にできることはなんでもやらせてもらっています。クラブの経営や営業にも関わる部分なので、日々勉強しながら取り組んでいます」(清水選手)

DF・宮田和哉選手

「僕は、大学を卒業するタイミングで入団しました。卒業後もサッカーを続けたい思いが強くあり、色々と探している中でお声がけいただきました。選手以外の活動としては、スクールのコーチとして働いています。学生時代に素晴らしいコーチに指導してもらったので、『僕もこんなコーチになれれば』と思い、現在は子どもたちにサッカーの楽しさを教えています。誰かに教えるためには、何より自分がサッカーを理解しなければいけない。指導する側になって初めて気が付くことも多く、日々勉強ですね」(宮田和哉選手)

今回お話を伺った3名は2021年入団の同期。コロナ禍さなかの入団ということもあり、サッカーへの思い、チームを盛り上げたい気持ちはとても強く伝わってきました。アツい気持ちを持った3人に、あらためて東京23FCの魅力を聞いてみました。

球際にこだわって、果敢に攻め続けるGKの大石選手。どんな時も声を出して、チームを鼓舞する姿に勇気をもらえます。

「東京23FCのホームゲームは地域リーグに所属しているチームの中でも、サポーターさんにたくさん支えられているチームだと思います。サッカーを通じて、ファンと選手、そしてファン同士の繋がりが濃くなり、イベントも大盛り上がり。ぜひ一度スタジアムに足を運んでいただければうれしいですね。試合では、球際でビビらずに攻めていく姿に注目して欲しいです!」(大石選手)

キャプテンとしてチームを牽引する清水選手。試合中はもちろん、試合前の“気合い入れ”も必見!

「ホームゲームでは、サッカーを知らない人でも楽しめるようなイベントを企画しています。キッチンカーの出店や夏はお祭りなど、サッカー以外の魅力もたっぷり。もちろん試合でも僕たちのモットーである『観る者の心を打つフットボール』を最大限にお見せしますよ! 僕もがんがん点を取ってチームに貢献していきたいと思いますので、がむしゃらな選手の姿を見てみなさんも元気になってください」(清水選手)

試合中、ゲームメイカーとして大活躍する宮田選手。スタジアムで観戦すると、その熱気も体感できます。

「選手とサポーターのみなさんが一緒になって喜んだり、悔しがったりできるのがサッカー、そしてスポーツの魅力だと思っています。ぜひスタジアムで生の熱狂を感じていただきたいですね。僕は攻撃の起点となるパスやゲームメイクが得意なので、『お! 宮田がボール持ったぞ!』と楽しみにしていただければうれしいです」(宮田選手)

資金面で応援する“サポーター”の存在も。大和リビングは、東京23FCのオフィシャルパートナー(ゴールドスポンサー)。選手たちのハーフパンツ裏にロゴが掲載されています。

まずはJFLへ昇格し、Jリーグへ。

最後に、東京23FCがJリーグ昇格に向けての取り組みや目標を伺いました。

「11月末にJFL昇格の試合が行われます。JFLに昇格した後、Jリーグに入るのは最低条件で、そこから世界を目指したいと考えています。10段階でいうとまだまだ1。世界を目指すためには、まずは拠点としている江戸川区のみなさんに知っていただくことです。僕たちが活動していく中で、東京23区のみなさんも誇りを持って応援してくださるよう、しっかり足場を固めていきたいですね」(石井さん)

勝っても負けてもサポーターには感謝の気持ちを伝えている選手たち。強い絆を感じられる瞬間です。

次回の東京23FCがえどりくで実施するホームゲームは、2023年8月5日 (土) 18:00〜。同月には、2023年8月27日 (日) 18:00〜も、ホームゲームとして開催されます。「サッカーを生で観戦してみたい」「23区からJリーグを目指すチームを応援したい」と思ったら、ぜひ東京23FCのホームゲームの観戦を。

イベント情報は、公式SNSでも発信されていますので、気になるイベントから参加してみるのもおすすめ。ぜひ夏に負けないアツい試合を堪能してみてください。

Profile

東京23フットボールクラブ

東京都江戸川区を拠点に活動するクラブチーム。2010年より現体制。スピアーズえどりくフィールドを本拠地としている。世界に視線を向ける一方、お膝元の江戸川区民との交流を大切に活動を続けている。

HP https://tokyo23fc.jp/
Instagram https://www.instagram.com/23footballclub/
Twitter https://twitter.com/tokyo23official

取材・文=つるたちかこ 撮影=真名子