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困難な時代をどう生きていく?工藤勇一先生が教える“自律”のヒント
第1回「全員がハッピーになる答えを見つける。」

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「みんな一緒」に経済成長できる時代は終わり、多様な文化を認めながら自身で考えて答えを導く、いわば「自律」の力が求められる時代。自分はいったい何がしたいのか、どう生きていくのか? 子どもも大人も、当事者意識を持つことが求められるようになったのです。

学校にはびこる“当たり前”を撤廃し、自律型教育を進める横浜創英中学・高等学校校長の工藤勇一先生。著書『きみを強くする50のことば』(かんき出版)には、子どもも大人も知っておきたい自律のヒントがたくさん詰まっています。これからの時代に必ず役立つ、工藤先生のことばをお届けします。

全員がハッピーになる答えを見つける。

日本では昔から、「全員で同じことをやる文化」を大切にし過ぎてきたため、何かあると「多数決」で解決しようとしてきました。ところが、なんでも多数決では、全員がハッピーになれる答えは見つかりません。

文化祭の出し物を例にあげてみましょう。教室を使ってお化け屋敷と喫茶店と巨大迷路のどれをやる? これは感性の問題なので、多数決でもかまいません。しかし全員参加の発表ステージで、合唱とダンスと演劇のどれをやるのか? となると、そこに利害関係が生まれてしまうため多数決で決められるものではないのです。

合唱であれば「音痴だからやりたくない」という人、ダンスなら「運動が苦手」という人、演劇なら「人前に出たくない」という人、それぞれに苦手な人が出てきます。こういった場合、そもそも文化祭は何のためにやるのか、という目的に立ち返る必要があります。

一部の人たちが青春ドラマを演じるための文化祭でいいのでしょうか?

誰ひとり取り残さず、全員が楽しめる文化祭にすることはできないのでしょうか?

そもそも文化祭にクラス全員参加のステージが必要なのでしょうか?

そこから考える必要があります。

この思考は訓練することで磨かれます。賛成と反対、AとBなど二項対立が起こりそうなときは「そもそも何が目的?」と自分自身に説き客観的に物事を捉えてみてください。

自分で考えて、判断して、決定して、行動する「自律」が身につき、周りの人との違いを認め、自分も含めてすべての人を「尊重」できるようになると、全員がハッピーになれる答えは見つかるでしょう。

『きみを強くする50のことば』(かんき出版)
「どうしたら、すてきな大人になれるだろう?」___やさしい絵と、心に響く50の言葉が並ぶ本書は、絵本のようでいて、大人でもハッとするような人生のヒントが満載。「自分をきたえるヒント」「人とつながるヒント」「学ぶときのヒント」「挑戦するためのヒント」「楽しく生きるヒント」の5つの切り口から紹介されている。

Profile

横浜創英中学・高等学校校長 / 工藤勇一

1960年山形県生まれ。山形県と東京都の公立中学校の教員を務め、東京都や目黒区、新宿区の教育委員会へ。2014年から千代田区立麹町中学校の校長になり、宿題なし・テストなしなど「学校の当たり前」を見直し、子どもたちの「自律」を育んでいくことに注力。これらの取り組みはさまざまなメディアでも紹介されている。2020年4月より横浜創英中学・高等学校校長に就任し、さらなる教育改革に取り組んでいる。
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取材・文=つるたちかこ 撮影=泉山美代子