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平和主義な肉食獣。令和時代の
「パンダ」の愛で方

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日本だけじゃない!
世界に広がるパンダ人気

昨年中国へと渡ったシャンシャンですが、シャンシャンを追いかけて中国・雅安碧峰峡基地まで行く日本人がたくさんいるそうです。二木さんもその一人。私たちをそこまでさせるシャンシャンの魅力は、どこにあるのでしょうか?

「シャンシャンは、ユウユウ以来29年ぶりに日本で生まれ育ったパンダ。シャンシャンがここまで人気になった理由としては、リーリーとシンシンの自然交配で授かったということや、SNSの存在も大きかったと思います。

シャンシャンが生まれた2017年の流行語は『インスタ映え』で、SNSも全盛期。ファンはもちろん、上野動物園も積極的に情報を発信していたんです。当時は、ライブ配信もしていましたから。たくさんの人たちが自分の子供を見るような感覚で、シャンシャンの誕生から成長を一緒に見守ってきた背景もあるのかもしれません。だからこそ、中国でどんな暮らしをしているのか、気になって会いに行く。楽しく過ごしている姿を見て安心したい気持ちもあるかもしれませんね」

中国でのシャンシャン。撮影=二木繁美

もはやアイドルのような存在になっているシャンシャン。熱心なファンが多いのは、日本だけなのでしょうか?

「日本人とアメリカ人には、パンダ好きが多いらしいですね。アメリカでは1936年に赤ちゃんパンダのスーリンが公開されて、パンダブームが起きており、今でもパンダは人気です。最近では本家である中国や、韓国でもパンダブームが起きています。外国人観光客が、パンダを目当てに日本の動物園を訪れるケースも増えているんですよ。

ちなみに韓国では2020年に初の自然繁殖でフーバオというパンダが生まれたのですが、今年中国に渡ったんですよね。現地では、お別れ前に会いたいと観覧が6時間待ちになるほどに。ちょうどコロナ禍に生まれたこともあって、韓国のみなさんに癒しを届けた存在だったのでしょうね」

午前中が狙い目!?
パンダを愛でるコツ

今や全世界で愛されているパンダ。これから初めて見に行く人はどんな準備をしていったら良いのでしょうか? 二木さんにパンダに会いに行く際のコツを伺いました。

「昼間は寝ていることも多いので、できればご飯を食べている時間帯に会いにいってほしいですね。上野動物園であれば、開園してすぐの午前中はご飯を食べていることが多いので、早めの時間に行くのがおすすめです。

ふたごの子パンダの観覧列は大行列で、平日でも1時間以上の待ちになっていることもあるので、時間に余裕を持っていくのが良いでしょう。親パンダは比較的スムーズに会えるので、とにかくパンダを見てみたいという方は、まずは親パンダに会ってみてはいかがでしょう」

食事中のシンシン(上野動物園)。撮影=二木繁美

ぜひ自分の目で、その愛らしさを確かめてみてください。

パンダを通して
環境保護にも目を向けて

最後に、二木さんがパンダを愛でるなかで感じたこと、これからパンダのために取り組んでいきたいことを伺いました。

「私自身、仕事で疲れきっていた時にパンダと出会い、そのかわいさにたくさん癒してもらいました。パンダは人間たちが保護をしてきたことで少しずつ個体数が増え、絶滅危惧種ではなくなったものの、まだまだ地球環境問題の影響を大きく受けている動物です。私もパンダに会いにいくうちに『パンダが暮らしやすい環境を実現したい』と考えるようになりました。よりよい地球環境を意識すれば、パンダも人間も快適に過ごせる地球になるはず。ちょっとでも地球にいいこと、パンダにいいことをしていきたいですね」

まるでぬいぐるみ!? 愛らしい座り方のタンタン(神戸市立王子動物園)。撮影=二木繁美

「動物園で売上の一部がパンダの保護に使われる『パンダドネーション』のグッズを買ったり、寄付をしたりすることで、パンダを保護する。それは、地球環境を守ることにもつながると思うんです。『地球のために』って言われると、そんな大それた活動はできないよ、と腰が引けてしまいますが、動物園で見たパンダたちが過ごしやすくなるために良いことをしようと思えば、私たちの生き方もちょっと変わってくるかもしれませんね」

Profile

パンダライター / 二木繁美(にき・しげみ)

パンダがいない愛媛県出身で日本パンダ保護協会会員。パンダ好きのフリーライター&イラストレーター。アドベンチャーワールドのパンダ「明浜」と「優浜」の名付け親。グラフィックデザイナーからKADOKAWAの地域メディア編集長を経て、現在に至る。一眼レフを使用し、多いときには1度に1700枚ほどのパンダの写真を撮影。マニアックな写真と観点からパンダの魅力を紹介する著書『このパンダ、だぁ~れだ?』(講談社ビーシー)が発売中。
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取材・文=つるたちかこ