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家でワインを楽しむための基礎講座ワインの入り口 第4回
—今さら聞けない、
「白ワイン」の基礎知識—

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自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開け、注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、超のつく基本はなかなか、他人には聞きにくいもの。この連載では、その超基本を、ソムリエを招いて手取り足取り教えていただきます。さすがに基本は押さえている、という人にも、プロが伝授する知識には新たな発見があるでしょう。教えてくれるソムリエは、渋谷にワインレストランを構える宮地英典さんです。

第3回からは、ワインの種類や製法、産地などをそれぞれ取り上げ、解説していただいています。前回はスパークリングワインをテーマにしましたが、今回は「白ワイン」。

【関連記事】シャンパンからゼクトまで網羅。製法やブドウ品種も様々な「スパークリングワイン」の基礎知識

 

第4回 白ワインの代表品種と選び方

週末の献立はなんですか? 美味しい白ワインを1本冷やしておくだけで、献立を考えるのもなんだか楽しくなるような気がしますよね。

白ワイン、とひと口に言っても、辛口から甘口まで、爽やかなタイプから芳醇なものまでさまざまな味わいがあり、食事を通して気軽に楽しめるという点も、白ワインの魅力のひとつかと思います。

今回は、品種ごとにいくつか白ワインをご紹介しますので、好みのタイプに出会う一助になりましたらうれしく思います。

 

「シャルドネ」

世界中で栽培される、もっとも有名な白ブドウ

シャルドネは、世界でもっとも知られた白ワイン用の品種です。産地はフランス・ブルゴーニュが有名ですが、米・カリフォルニアでももっとも多く栽培されている白ブドウで、ブドウ栽培地の辺境を除けば世界中で、もちろん日本でも生育されています。ワインラベルには、フランスのシャブリ、ブルゴーニュ、マコネ(最近では「Bourgogne Chardonnay」表記もありますが)以外では、おおむね「Chardonnay」と品種表記がされています。

シャルドネの特徴をひと言で伝えるのは難しいのですが、「リースリング」や「ゲヴュルツトラミネール」などの品種に比べ、独自の強い芳香をもたないことから、醸造家にとって思うような白ワインになりやすい品種とも言えます。つまりシャルドネは、強い個性を持たないことが個性になっているのです。

スパークリングワインに適していることは、さまざまな産地で証明されていますし、フレッシュで爽やかなシャルドネもあれば、重厚で芳醇なシャルドネ、一部では甘口も造られています。ただ、個人的な見解では、多くの人がシャルドネに期待しているのは“辛口”であること。価格が上がれば上がるほど、オーク樽で熟成させたリッチなタイプになるのは、世界共通の傾向かと思いますが、温暖な産地では果実味豊かに、冷涼な産地ではより爽やかさのある白ワインになります。シャルドネのニュートラルな性格と合わせて、さまざまな産地の風土を反映することも、世界中に広まった要因のひとつかもしれません。

ワイン選びに迷ったら、さまざまなワイン産地のシャルドネを楽しんでみるのも、ひとつのワインの入り口かもしれません。ワインショップの棚にシャルドネが並んでいないことは、まずありえません。それだけ身近で、多くの方に広く愛される品種がシャルドネです。

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「Chablis Terroir de Fye2018 / Patrick Piuze(シャブリ テロワール・ド・フィエ2018 / パトリック・ピウズ)」
希望小売価格=4200円 

【Info】
・生産国=フランス
・ブドウ品種=シャルドネ
・輸入元=ヴァンクロス

 

「ソーヴィニヨン・ブラン」

草原やグレープフルーツのような爽やかな香り

フレッシュで爽やかな白ワインを求めているなら、ソーヴィニヨン・ブランを手に取ってください。シャルドネに次ぐ有名国際品種ですが、フランス・ロワールのサンセールや、プイィ・フュメなどの産地を除いて、樽熟成させることは珍しく、また比較的若いうちに楽しむワインが多く造られています。

フランスでは(下写真の「トゥーレーヌ」を含め)ロワール川流域が主要栽培地域ですが、ニュージーランドでも成功を収めています。日本で、というより世界中でと言っていいでしょう、いくつかの豊かな果実味のニュージーランド産ソーヴィニヨン・ブランが親しみやすく、ちょっとしたブームになった時期もありました。ニュージーランドが新しいワイン産地として世界的に認知されるきっかけにもなった白ワイン品種が、ソーヴィニヨン・ブランと言っても過言ではありません。機会があれば、品質も安定したワインも多いので一度試してみてください。

フランスや北イタリアでは、青々とした爽やかな白ワインに、カリフォルニアやオーストラリアなどの温暖な地域では、ボリュームのあるグレープフルーツやパッションフルーツのような味わいの白ワインになります。ワインを選ぶ際に、その産地が温暖な地域なのか、涼しいイメージなのか思い浮かべてみると、ワイン選びの精度が高まるかもしれません。

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「Touraine Chenonceaux2016 / Courtault Tardieux(トゥーレーヌシュノンソー2016 / クルトー・タルデュー)
希望小売価格=3300円

【Info】
・生産国=フランス
・ブドウ品種=ソーヴィニヨン・ブラン
・輸入元=ヴァンクロス

 

「リースリング」

その“響き”は白ワインのなかでも格別に香り高い

繊細で香り高く、シャープな辛口から蜂蜜のような甘口まで、さまざまな表情を見せてくれるのが、リースリングというブドウ品種です。特徴としては、すがすがしくさえ感じられる香りと、鮮烈な酸味が挙げられます。そのため、辛口に仕上げれば、フレッシュでのびやかでシャープな印象の白ワインに、甘口に仕上げれば、酸が下支えする品のある白ワインになります。

ドイツを中心に、フランスではアルザス、オーストリアなどのヨーロッパの産地に加え、オーストラリアなどでも栽培されています。

リースリングという品種には、白ワインの魅力がこれでもかと詰まっています。時に可憐な白い花の香り、時に芳香豊かなバラ、奥ゆかしい桃のような繊細な果実感。ワインに好奇心を持って楽しめる方は、初心者でもリースリングに挑戦してはいかがでしょうか? リースリングという品種ひとつとっても、ワインは幅広く、奥深いものだと思います。きっとさまざまなリースリングを楽しめるようになった頃には、ワインの魅力にどっぷりとはまっているのではないでしょうか。

もしもあなたがリースリングから造られた白ワインが好きになったとしたら、「リースリングが好き」というフレーズはあなたのことを知ってもらえる使いやすい言葉かもしれません。嫌みなく聞こえ、ちょっとセンスのある台詞のように感じるのは私だけでしょうか?

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「Estate Rauenthal Resling2018 / Georg Breuer(エステート ラウエンタール リースリング2018 / ゲオルグ・ブロイヤー)」
希望小売価格=4000円

【Info】
・生産国=ドイツ
・ブドウ品種=リースリング
・輸入元=ヘレンベルガー・ホーフ

 

「ピノ・グリ」

ピンク色のブドウから造られる白ワイン

“グリ”とはグレーの意味で、黒ブドウ「ピノ・ノワール」の変異種として、ピノ・グリがあります。実際にはピンク色、バラ色、藤色のように表現される色の果皮をもつブドウです。ピノ・グリは糖度が上がりやすく、早飲みの爽やかなタイプもありますが、アルコール度数が高め(13.5〜14%程度)の辛口が、個人的にはおすすめ。よく“食事を通して楽しめる白ワイン”と話題になることがありますが、ピノ・グリの完熟した辛口はうってつけではないでしょうか。

フランス・アルザスやドイツ、イタリアといったヨーロッパ産地に加え、アメリカのオレゴンで、白ワインの代表的な品種になっています。アルザスでは、甘口ワインとしても素晴らしいワインを産み出しています。イタリアでは「ピノ・グリジオ」と呼ばれ、北東部フリウリの爽やかなスタイルのイメージがあるため、アルザス以外の産地ではピノ・グリ、ピノ・グリジオの表記に迷う生産者もいます。

樽のニュアンスではなく、果実そのもののボリュームがピノ・グリの特徴であり、魚介だけではなく、鶏肉を使った料理など、フードフレンドリーなところが魅力的な白ワインです。

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「Pinot Grigio2017 / Nals Margreid(ピノ・グリジオ2017 / ナルス・マルグライド)
希望小売価格=3000円

【Info】
・生産国=イタリア
・ブドウ品種=ピノ・グリジオ
・輸入元=ミレニアムマーケティング

 

白ワインの選び方

「ワイン選びって難しい」そう思っている方は多いでしょう。普段、お客さまと接していても、よくそういったお声を伺います。ワインはお酒の中でも、味わいの幅がとくに広いものです。それだけに、自分を含め、ワインに普段から親しんでいる人でも、ワインショップの棚から、その日の気分にあったベストな一本を選ぶのは、難しいことだと思っています。同じ銘柄でさえ、何本もテイスティングしていれば一本一本に差があるのです。

ですが、私自身がワインを難しいものだと思っていると、なかなかワインに親しむ方も増えないのではと、心配になります。そこで、ご提案です。シンプルに「X軸を産地、Y軸をブドウ品種」と分類して、選んでみてはいかがでしょうか? 産地・生産国は、例えば温かい、もしくは寒い国地域であるとか、内陸にあるだとか、海に近いであるとか。

ちなみに、ワインのラベルに品種の表記がされるようになったのは、ここ半世紀ほどのことです。それ以前は基本、エチケットには原産地の表記しかされていませんでした。その土地ごとに適したブドウ品種が植えられていて、ブルゴーニュであるとか、キャンティであるとかそれぞれの産地の味わいがありました。そしてそれは、今も大きくは変わっていません。

今回は、代表的な品種だけを挙げました。どれも世界中で栽培されているため、できあがる白ワインにはその土地特有の味わいを内包していてひと口には言えませんが、やはり品種自体の個性はあるものです。そのなかで、お好みのX軸とY軸を見つけられれば、ワインがより身近なものになるかもしれません。機会があれば、はじめにお伝えしたように週末の献立から、ワインを1本選んでみてはいかがでしょうか?

ヨーロッパに比べ、日本やアメリカは一日のなかで食事に割く時間が短いと言われています。ワインの魅力とは、シンプルにいえばワインのある暮らしの豊かさです。一杯のグラスに新鮮な感動を見つけたり、ひと皿の料理を素直においしいと喜んだり、そのささやかな感動をおしゃべりしながら伝え合ったり。ゆっくりとした食事の時間にワインがある。そんな週末はいかがでしょうか?

Profile

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ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/

 

撮影=中田 悟