4. オレゴン州ウィラメット・ヴァレー
− 一人の情熱がオレゴンを銘醸地に −
映画『スタンド・バイ・ミー』の舞台はオレゴン、架空の町キャッスル・ロックはウィラメット・ヴァレーの南ブラウンズビルで撮影されました。作品で描かれている1950年代は、オレゴンのワイン生産は微々たるもので、おそらくワイナリーそのものは数軒ほど、ヴィティス・ヴィニフェラを栽培している農家は2軒しかなかったということです。海岸山脈と東側に位置するカスケード山脈に囲まれたウィラメット・ヴァレーは、カリフォルニアに比べずっと涼しく雲の多い産地で、ブドウ栽培には不向きだと考えられていました。
そんなオレゴンが銘醸地としての歴史を始めるのは、1960年代のこと。ピノ・ノワールを手掛けたいという夢を抱いたデイヴィット・レットは「冷涼な気候で、日当たりのよい丘陵地」というブルゴーニュに似た環境をウィラメット・ヴァレー、ダンディー・ヒルズの南向き斜面に見出しました。1966年に始まったデイヴィット・レットの挑戦では、1979年に仏ゴ・エ・ミヨ誌の主催するブラインド・テイスティング・コンテスト「ワインオリンピック」でジ・アイリー・ヴィンヤーズのサウスブロック・リザーブ・ピノノワール1975が入賞することで、早くもオレゴンのピノ・ノワールの存在が知れ渡ることになりました。ウィラメット・ヴァレーにピノ・ノワールが植えられてからわずか13年で、ブルゴーニュと肩を並べるワインを造り上げてしまったのです。現在では800近くまでワイナリーは増え、栽培面積の60%にピノ・ノワールが植えられています。
オレゴンのピノ・ノワールもぜひお試しいただきたいのですが、今回ご紹介するのはオレゴンの代表的白ワインのピノ・グリです。オレゴンでは当初、カリフォルニアで主流であったクローンが多く植えられていましたが、晩熟で生育期間が長いという特徴が適さず、ピノ・ノワールの亜種であるピノ・グリが主役の座を射止めました。芳醇なアルザスなどのピノ・グリに比べ、香りとボディのある辛口に仕上げられるオレゴンの白ワインは、日本でももっと親しまれていいワインだと考えています。
The Eyrie Vineyards(ジ・アイリー・ヴィンヤーズ)
「Pinot Gris2018(ピノ・グリ2018)」
4000円
輸入元=ヴィレッジ・セラーズ