4. 山形県
− “果物王国”山形はワインもおいしい −
岩手もドイツ系品種の栽培に成功していますが、東北のワイン生産の中心は、洋ナシやさくらんぼで有名な山形県ではないでしょうか。老舗のタケダワイナリーは大正時代からブドウ栽培を始めていて、東北ワインの歴史と歩みをともにしています。同じく山形の高畠ワイナリーは1990年創業とタケダワイナリーに比較すると歴史は浅いですが、2009年から10年間醸造責任者を勤めた川邉久之氏の活躍は、山形ワインの可能性を引き出すことに成功しました。
川邉氏は、カリフォルニアのナパ・ヴァレーで15年にわたりワイン醸造に携わっていたことから、日本人醸造家としては豊富な経験と知識を日本ワインにもたらした方です。以前、ナパ・ヴァレーの恵まれた気象条件と日本のそれとは大きな開きがあるという話を伺ったことがありました。ですがその際に印象的だったのは、世界のワイン産地のなかにも厳しい条件下で優れたワインを産み出す産地もある、という言葉でした。高畠ワイナリーでは、さくらんぼを原料としたフルーツワインやガス注入の廉価なスパークリングワインなど、幅広い層に受け入れられるワインも造りながら、深夜に収穫するナイトハーベストを導入するなど、本格的なヨーロッパワインの消費者層にも受け入れられるワインづくりも模索されていたように私の目には映りました。写真のゾディアックは、土壌造りから始めたという意欲作で、日本では成功例の少ないピノ・ノワールを見事な完成度で仕上げた1本です。
現在の日本の市場は、世界の銘醸ワインの消費者層と日本ワインの消費者層があまり重なっていないところが課題だと思うのですが、海外のワインをよく知る川邉氏のようなワイン・パーソンが今後増えていけば、いつか日本ワインはより多くの日本人に親しまれ、世界にも広がっていくように思えます。高畠ワイナリーのピノ・ノワールは、そんな想像をさせてくれる日本ワインでした。
高畠ワイナリー「ピノ・ノワール・ゾディアック 2017」
オープン価格