5. 新潟県
− 海と砂のテロワールと訪問客を楽しませるワイン産地 −
新潟のワイン生産の歴史は古く、現在日本の赤ワイン用品種の中心を担うマスカット・ベリーAも上越市で産まれました。マスカット・ベリーAをはじめブラック・クイーン、レッド・ミルレンニュームなど数々の優良品種を産み出し、“日本ワインの父”ともいわれる川上善兵衛の創設した岩の原葡萄園は、サントリーの傘下として現在にまで残っています。
けれども今、日本ワインの未来を考えた際に注目すべきは、新潟市街地の角田浜、越前浜にある5軒の生産者たちが形成する「新潟ワインコースト」ではないでしょうか。1992年にカーブドッチを創業した掛川史人氏は新潟産ブドウとヨーロッパ品種でのワインづくりにこだわり、2005年に砂質土壌に適した品種としてスペイン、ポルトガル品種のアルバリーニョの可能性を見出して、この地域のオリジナリティを模索し続けています。
また掛川氏の主催するワイナリー経営塾の卒業生たちがフェルミエ、ドッメーヌ・ショオ、カンティーナ・ジオセット、ルサンクワイナリーと立て続けにワイナリーを開業し、新潟ワインの新しい一面を表現しています。そして特筆したいのは、レストランやオーベルジュを併設してゲストを楽しませるという、日本では初めてのコンセプトを打ち出したのも、掛川氏だということ。現在では、迎賓館赤坂離宮の正門前にカフェをオープンするなど、多角的に日本ワインを盛り上げています。新潟もまた、日本ワインの新しい潮流を産み出す新しい産地として、変化を続けているのです。
カーブドッチ「うみがめ(ソーヴィニヨン・ブラン)2019」
3520円(税込)
※ワインの価格はすべて希望小売価格です。
Profile
ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)
カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/
撮影=真名子