にんにくの食欲をそそる香り、旨みたっぷりの味わい。でも独特の香りが強いため、思う存分食べると「臭っていないかな?」と口臭が気になってしまう悩ましい食材でもあります。ところが昨今、にんにくの市場規模は右肩上がりを続けています。全国小売店のPOSデータによると、ここ10年は前年比102〜110%成長だったのが、2020年は1月から10月だけで前年比約4割増と急伸したそう。思えば家で過ごす時間が増え、仕事も在宅でこなすようになったことで、“臭い”を気にせずにんにく料理を堪能できるようになったことも、その理由のひとつでしょう。
そもそも、夏の減退しがちな食欲を刺激してくれる、頼もしいにんにく。この機会に日常の食卓に積極的に取り入れたいものです。
そこで今回は、ブルーボトルコーヒーやRIZAPのレシピ監修も行っている料理家の副島モウさんに、4品のにんにく料理を考えていただきました。どの料理も野菜がたっぷりで、しっかりとした味ながらもヘルシー。定番にしたいレシピばかりです。
【前編】
1. バゲットをコトコト煮込んだスペインのスープ「ソパデアホ」
2. にんにくが効いた冷たい常備菜「いんげんのにんにくサラダ」
【後編】
3. ふんわりパンケーキのようなオムレツ「にんにくとズッキーニのフリッタータ」
4. 大葉の爽やかさとにんにくの香りが食欲をそそる「ごまにんにくそうめん」
ニオイが気になるときは使い分けをすべし
さて、にんにく料理と聞いて真っ先に気になるのは、やはりそのニオイ。調理しているときや食べているときには“食欲をそそる香り”ですが、食べたあとの口臭が気になるものです。
「今はマスクをする生活が続いているので、気にせず食べやすいとおっしゃる方もいますが、逆にマスク内に呼気がこもるので嫌という方もいらっしゃいます。にんにくは生で食べるとニオイが強くなるので、気になる方は加熱するレシピがおすすめです。また、国産にんにくの他に、スペイン産や中国産のものもよく見かけますよね。スペイン産のものはムラサキにんにくという種類が多く、中を割ったときに赤くて風味が強いのが特徴です。どちらもおいしいのですが、国産の方が香りは穏やかなので、用途によって使い分けるというのもいいでしょう」(料理家・副島モウさん、以下同)
チューブタイプも時には便利
にんにくはひとつに何片も入っているので、丸ごと買っても使いきれない、ということもあるでしょう。手軽なのは、チューブタイプのにんにくです。
「風味は3割ほど落ちますが、薬味に使うなどちょっとだけ使いたいときは便利です。ただし、チューブタイプのにんにくにはPh調整剤が入っていて酸味があるので、生食用にすると酸味が気になることもあります。また、とても焦げやすいので、いわゆる“オリーブオイルににんにくを入れて加熱して香りを出す”というような工程には不向きです。炒め物の最後に、ちょっと香りづけとして入れるような使い方が合うと思いますよ」
にんにくの保存は、吊るすより“素焼きポット”か“冷蔵保存”
余ったにんにくの保存に困ったときは、皮を剥いてみじん切りにし、オリーブオイルに漬けて瓶で冷蔵保存しておきましょう。
「にんにくに含まれる鉄分が調理器具などに触れることで緑色に変色してしまうのですが、味や香りは変わりません。1か月くらいはこれで持ちますし、香りのついたオリーブオイルもパスタや炒め物に利用できます。常温で保存する場合は、素焼きポットに入れておくのがいいでしょう。吊るして保存している方もいますが、あれは乾燥しているヨーロッパの保存法。湿度の高い日本では、あまり向いているとは言えません。特に熱のこもりやすいキッチンに吊るしたままにしておくと、カビが生えてしまう可能性もあるので、ポットや冷蔵庫保存がおすすめです」
にんにくの皮は“潰してから剥く”こと
続いて、調理を始める際にまず行いたい、にんにくの皮剥きについて。にんにくは皮がごく薄く、実としっかりくっついているので、なかなか剥がしづらいこともあります。副島さん流の剥き方は、皮つきのままにんにくを包丁で潰してしまうこと。みじん切りや千切りにするときにも、この方法が便利だといいます。
「皮に取り掛かる前に、まずはにんにくの根の部分を切り落とします」
「にんにくを包丁の腹でぐっと押し、実を潰します」
「この状態にすれば皮が自然に剥けるので、とても扱いやすいですよ。にんにくがすでに縦に割れているので、割れ目と垂直に包丁を入れていけば、簡単に粗みじん切りになります。また、にんにくの芽は、大きくなっていて気になるようなら雑味になるので取り除きます。購入したばかりであればそこまで気にならないと思うので、そのまま使いましょう」
それではいよいよ、にんにくを使ったレシピを紹介していきましょう。この前編では、料理ビギナーでも簡単に作れる「スープ」と「常備菜」の作り方を教えていただきます。