今やごはんを炊くだけにとどまらず、さまざまに使いこなされている炊飯器。ごはんを炊くときに、おかずも仕込んでおけば、それだけで理想の一食が作れてしまうのです。日本食文化史・和ごはん研究家の麻生怜菜さんに、「こんなごはんが出てきたらうれしい!」と思える充実の和定食を、一度の炊飯で作っていただきました。
炊飯器で同時調理するときのポイント
炊飯器の同時調理は、普通炊き機能があれば、どんな炊飯器でも可能です。好みのレシピに合わせて作るときは、この2点に気をつけましょう。
・食材は内釜いっぱいに入れず、隙間を開けて蒸気の通り道を確保すること。
・お米の上に、根菜など重い食材を入れすぎないこと。(お米がうまく炊けなくなります)
また、炊飯器の取り扱い説明書も確認してから行ってください。
同時調理用に考えられた炊飯器も!
炊飯器によっては、内釜の中にセットできる同時調理用のトレイなどが付属しているものもあります。付属品がある場合はそちらを使い、ない場合は、おかずをシリコンカップやオーブンペーパーで分別して炊きましょう。
同時調理用の付属品があれば、おかず4品+汁物まで!
同時調理用に考えられた炊飯器なら、一度の炊飯で、炊き込みご飯に4品のおかずと汁物が作れてしまいます。たった一度のポチッで定食ができたら、ストレスなく料理できそうですよね。
今回は、一般的な炊飯器でもできるレシピを紹介しましょう。
普通の炊飯器でもごはん+2品できる!
「タコの炊き込みご飯とサバ味噌定食」
炊き込みご飯を作りながら、サバの味噌煮となすのおひたしができあがるレシピです。手間のかかる魚料理も、炊飯しながら作れれば、食卓にのぼる回数も増えそうですよね。これから旬を迎えるなすも、柔らかでジューシーに仕上がっています。
「ポイントは、炊き込みご飯の上にのせた昆布。ごはんのおだしにするのであれば、通常は下に敷くか水に浸すのですが、おかずとごはんの間に置くことで、昆布の香りがおかずにうつり、上品に仕上がります。また、炊飯器調理は焼いたり煮たりという水分を飛ばす方法ではなく、蒸して仕上げるので、水分が多くなりがち。いつもよりも少し味つけを濃いめにするよう調味料を入れると、おいしくできますよ」
■ タコ飯
タコとごぼうのうま味いっぱいの、炊き込みごはん。調味料を入れて炊くと、おこげができやすく、香ばしく仕上がります。「同時調理でおすすめしたいレシピは、炊き込みご飯。他の食材と一緒に調理するので、白米だと香りがうつってしまう場合もあります。炊き込みご飯なら気にならず、それだけで一品になる満足感もあるので、おすすめです」
【材料(2人分)】
・米……2合
・油揚げ……1枚
・生姜……10g
・タコ(茹でたもの)……150g
・ごぼう……50g
・酒・うすくちしょうゆ・みりん……各大さじ2
・水……150ml
・昆布……1枚
【作り方】
下準備
・お米はといで、30分ほど水に浸す。
・油揚げは短冊切りに、生姜は千切りにする。
1. タコは一口大に切る。
「それぞれ足を切り分けてから、乱切りにしていきます」
2. ごぼうは千切りにして、3cmほどの長さに切る。
「どんな切り方でもいいのですが、ささがきにするのが手間な場合は、千切りにしてから長さを切り揃えるといいですよ」
3. 内釜に米と調味料、水を入れて、生姜をのせる。
4. ごぼう、タコ、油揚げをのせる。
5. 昆布をのせる。
「ここまでで炊き込みご飯の工程は終わりです。この上におかずをのせて炊飯しましょう」
■ サバの味噌煮
手間がかかると思われているサバの味噌煮も、炊飯器に一緒に入れるだけでふんわりとおいしく仕上がります。合わせたのは、やさしい甘さのあるこっくりとした味噌だれです。つけあわせに長ねぎを添えてどうぞ。「サバの味噌煮とは言っていますが、実際は煮るのではなく蒸している感じに近いので、魚がふっくらと柔らかくなります。普段お魚を食べ慣れていない方にも、身がふわふわなので食べやすいと思いますよ」
【材料(2人分)】
・サバ……半身
・味噌……大さじ2
・砂糖、みりん……各大さじ1
・⻑ねぎ……100g
【作り方】
下準備
・サバは骨をピンセットで抜き、2等分する。
・長ねぎはひと口大に切る。
・砂糖、みりんは合わせてとく。
1. オーブンペーパーにサバをのせ、ペーパーでキャンディ包みにする。
「端から水分が漏れないよう、左右をしっかりとねじります」
2. 中央を開き、砂糖とみりんを入れる。
「ペーパーをひらいて器のような形にしておきます」
3. みそをサバに塗るように、のせて包みを閉じる。
「包みを戻したら、さきほどセットしたタコ飯の上にこのままのせて炊きます。長ねぎは空いた隙間に入れておきましょう」
■ なすのお浸し
くたくたに柔らかくなったなすに、塩麹やおだしが染みる、ホッとする味わいのお浸しです。これから旬を迎え、手に入りやすくなるので、たっぷり作って冷蔵しておいてもおいしいですよね。「こういう小鉢があったら嬉しい、という一品です。なすだけでなく、葉物を取り合わせてもおいしいですし、唐辛子などでピリ辛な味にするなど、味変のアレンジも楽しいですよ」
【材料】
・なす……1本
・ごま油……大さじ2
・だし汁……大さじ2
・塩麹……大さじ1
・ポン酢……お好み
・小ねぎ(小口切り)
・鰹節……お好み
【作り方】
1. なすは縦半分に切って、鹿の子に切り込みを入れ、乱切りにする。
「切り込みを入れておくと、なすが中までしっかり柔らかくなります」
2. オーブンペーパーでなすをキャンディ包みし、中央を開く。
「サバと同じ要領でペーパーを器状にして、調味料を入れましょう」
3. ごま油、だし汁、塩麹を順番に入れる。
「ごま油ははじめに入れて、なす全体に絡まるように一度ざっと混ぜます。そのあとで調味料を入れていきましょう」
4. 包みを閉じる。
「できあがったら、このまま炊飯器に入れていきます。ポン酢、ねぎ、かつおぶしはできあがりにかけましょう」
同時調理メニューの炊き方
炊飯器の内釜にタコ飯の材料をすべて入れたら、上からキャンディ包みにしたサバ味噌となすのお浸しを入れます。
隙間に付け合わせの長ネギを入れれば完成! これで普通炊飯をしましょう。
炊き上がりはこのようになりました。ペーパーが破けないようおかずを取り出し、それぞれ盛り付けたら完成です。
シンプルでヘルシーな和定食は、栄養満点で体も心も健康になりそう。火を使うのが億劫になる暑い日にも役立つ炊飯器の同時調理、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
Profile
日本食文化史・和ごはん研究家 / 麻生怜菜
全国を転々とした幼少時代を過ごし、旅行好きの両親の影響もあり47都道府県すべての地域食材、郷土料理を食べて成長する。結婚後、夫の実家がお寺であったことをきっかけに、お寺の行事食に関わり、伝統的な和食(特に精進料理)に興味を持つ。精進料理の考え方や調理法、食材などに感銘を受け、伝統的な調理法や食材を、現代のトレンドと融合した食文化の発信する場として、2011年より「あそれい精進料理教室」主宰。生徒数はのべ2600人。今まで考案したレシピ数は5000を超える。食品のランキングや比較も得意とする。レシピ本に『寺嫁ごはん』(幻冬舎)、『おからパウダーでスッキリ腸活レシピ』(主婦の友社)などがある。
HP
Instagram
Management
取材・文=吉川愛歩 撮影=安藤佐也加 編集協力=Neem Tree