保存食として昔から食べられてきた干し芋。栄養価が高く、自然な甘みが楽しめることから、最近では手軽に食べられるおやつとしてコンビニなどでも種類豊富に売られるように。災害への意識が高まる昨今は、非常食としても注目されています。
自宅で作る干し芋の基本レシピと簡単アレンジレシピを、サステナブル料理研究家のサカイ優佳子さんに教えていただきました。この前編では干し芋に最適なさつまいもの選び方と、干し芋の基本的な作り方、そして保存方法を解説します。
CONTENTS
“ねっとり食感”が干し芋のトレンド
「べにはるか」や「安納芋」など、品種改良によりさつまいもの種類がここ数年で増加。これにともなって、干し芋もさまざまな食感のものが出回るようになりました。
「さつまいもはもともと、『鳴門金時』などホクホクとした食感の品種が好まれていたように思います。ですが最近は、濃厚な甘さがあり、ねっとりとした食感のさつまいもを好む人が多くなりましたね。干し芋も同様で、ねっとり食感のものを中心に、店頭に多く並んでいるようです」(サステナブル料理研究家・サカイ優佳子さん、以下同)
ねっとり食感のさつまいもにはどのような種類があるのでしょうか? 代表的な品種を紹介します。
・べにはるか
皮の色が鮮やかな赤紫色で、形が整っている品種です。糖度が高いのが特徴。干し芋でもよく使われています。
・安納芋
クリーミーな甘さを感じる品種。天ぷらなどの料理から焼酎の原料まで、幅広く使われています。
・シルクスイート
名前の通り、絹のような舌触りが特徴。繊維が少なく水分量が多いので、焼き芋にするとしっとりとします。
これらのさつまいもを使うことで、人気の甘くてねっとりした干し芋が作れます。品種選び以外にも、甘い干し芋作るためのコツはあるのでしょうか?
「さつまいもは、加熱することで甘みが増すと言われています。これは、でんぷんが酵素の働きによって麦芽糖という糖分に変わるから。酵素が働くのは70℃台なので、この温度帯が長く続くよう調理することが甘さを引き出すポイントです。このポイントを守れば自宅でも簡単に、甘くておいしい干し芋が作れますよ」
また、収穫したばかりのさつまいもの場合は、土が付いたまま2週間程追熟させた方が甘くなるそう。
自宅で簡単に作れる
干し芋レシピ
では、サカイさんに自宅でできる干し芋の作り方を教えていただきましょう。
【材料(1~2人分)】
・さつまいも(べにはるか)……2本
「材料はさつまいものみです。太めのものだとその分加熱時間も増えるので、なるべく細めのものを選ぶといいでしょう。また、数本一緒に作る時は加熱時間がばらつかないよう、同じくらいの大きさのさつまいもを選んでください」
【作り方】
1.鍋に水を入れ、底に網を敷いておく。水は高さ2~3cm程度が目安。
2.さつまいもを洗い、1の鍋に入れて蓋をする。
3.水が沸騰したら弱火にし、じっくり1時間半程度蒸す。※蒸し時間はさつまいもの大きさにより前後する。
「弱火でじっくり蒸すことで、熱温度を70度程度に保つことができ、先ほどお伝えしたように甘みが増した干し芋に仕上がります」ときどき鍋の中を確認し、水がなくなってきたら追加するようにしましょう。
4.さつまいもに竹串を刺してスーッと通ったら、鍋を火からおろす。
5.熱いうちにナイフを使ってさつまいもの皮をむく。
「熱い状態のさつまいもだと皮がスルスルとむけます。軍手やミトンをつけてやけどしないように注意してくださいね」
6.さつまいもが冷めたら、食べやすい大きさにカットする。
「さつまいもは熱いうちに切ろうとすると形が崩れやすくなるので、冷めてからカットしましょう。横半分にカットしてから、縦に切っていくとちょうどいいサイズになります。厚さは7~8mm程度にしておきましょう」
7.バットなどに並べ、2~3日程度干す。
「昔ながらの方法だと大きな竹製のざるに並べて干しますが、家庭にあるバットに網を敷いて並べておけば十分です。ほかには、100均などで売られている干物用のネットも便利です」
「干す時は湿気がひどい場所でなければ、屋外屋内どちらに干しても大丈夫です。幹線道路沿いに住んでいる方や花粉が飛んでいるような時期であれば屋内の方が安心ですね。注意したいのは、湿気が多い日だとカビが発生する危険性があること。できるだけ乾燥している日に干し始めるといいでしょう。湿気が多い日は扇風機を当てるのもおすすめです。ただし、乾き過ぎてしまうとカチカチに固くなってしまうので気をつけてください」
水分が程よく残っている状態だとねっとり感が出せるので、2~3日を目安に干すとよいそうです。干し過ぎ、乾かし過ぎに気をつけて、おいしい干し芋を作ってみましょう。
干し芋の保存方法は?
すぐに食べきれない分の干し芋は、どのように保存したらいいでしょうか? サカイさんに長持ちする保存方法をうかがいました。
「余った干し芋はビニール袋に入れて冷蔵保存しましょう。冷蔵で1週間程度持ちます。大量に作った時は、冷凍用の保存袋に入れて冷凍保存すれば1カ月は保存できます。食べる時は、そのままフライパンなどで焼けばすぐ食べられますよ」
市販の干し芋も同様です。開封後のものをそのまま置いておくとどんどん乾燥して固くなってしまうので、開封したら冷蔵または冷凍保存しておきましょう。
後編では、サカイさんに干し芋を使ったオリジナルのアレンジレシピを教えていただきます。干し芋のまま食べてもおいしいですが、アレンジすることで新たな干し芋のおいしさに出会えますよ。
Profile
サステナブル料理研究家 / サカイ優佳子
世界各国を旅し、ホームステイ先で各地の家庭料理を学んだ体験をベースに、食の研究と発信を行っている。また、東日本大震災をきっかけに食品ロス削減、省エネ、もしもの時の備え、調理時間の時短にもなる乾物を普及するべく、活用法の研究をスタート。乾物をヨーグルトで戻す「乾物ヨーグルト」を開発。現在のライフスタイルに合わせた乾物料理レシピを著書やメディアなどで発表している。
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取材・文=清水由香利(Playce) 撮影=鈴木謙介