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“巻かない”ロール白菜、ミルク煮、ミルフィーユ鍋お肉との組み合わせで旨み増!
決定版「白菜」レシピ

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冬の寒さで甘みが増し、おいしさをぎゅっと蓄えた白菜(はくさい)は、鍋や煮込み料理に欠かせない冬の定番野菜。含まれるうまみ成分「グルタミン酸」が溶け出した滋味深いスープは、私たちの心と体を温め癒してくれます。

今回は、東京の青山・表参道で、野菜のうまみを活かしたおばんざいで人気の「畑のおばんざい 海月(くらげ)」を営みながら、野菜料理の教室も運営する毛利奈津美さんに、白菜をよりおいしく味わうコツや保存のポイント、そして冬に食べたい白菜レシピの決定版を教えていただきました。

切り方を変えて、
食感の変化を楽しもう

普段からさまざまな野菜料理を研究し、シニア野菜ソムリエの資格も取得している毛利さんによると、白菜は全体の90%以上が水分でできているそうです。

「私は白菜から出る水分を活かした鍋やスープ、煮込み料理が大好き。白菜から出たスープには、お茶や水を飲んだときとはひと味違う、冬の乾燥した体にじんわりと染み渡る特別な浸透力がある気がします」(料理家・毛利奈津美さん、以下同)

さらに毛利さんは、部位によって異なる歯ごたえが楽しめる点も魅力だといいます。

「茎のシャキシャキした食感は生で食べてもおいしいですし、煮込んでくたくたになった葉のとろとろとした食感もクセになります。それでいて味が淡白なので、さまざまな料理に使いやすい食材です。
さらに、切り方によって食感が変わるのもおもしろいところ。いつも同じ切り方だと料理が単調になってしまいますが、切り方を変えればそれだけで目新しさも生まれますよ。のちほどご紹介するミルク煮では、白菜を繊維に沿って切っています」

調味料の使用や加水を抑えた
シンプル調理がベスト

白菜は個体差が大きい野菜。同じ料理を作る場合も、使う白菜によって分量が変わることがありますが、気にする必要はないそうです。

白菜にはグルタミン酸といううまみ成分が含まれているので、量に増減があっても料理の味がまとまりやすく、失敗しにくいのでご安心ください。

さらにグルタミン酸は、鶏肉や豚肉などに含まれるイノシン酸と組み合わせるとその相乗効果により、うまみが単独で食べるよりも飛躍的に増します。加える水分は最低限に抑え、白菜から出る水分を活かして調理すると、驚くほどおいしく仕上がりますよ。白菜料理は加える調味料や水分を控えめにしたシンプル調理がおすすめです」

おいしく食べ切るには
“成長を止める”!?

毛利さんによると、白菜は収穫後も成長を続けるんだそう。そのため、おいしく食べ切るには保存方法にちょっとしたコツがあるとのこと。

「白菜の中心の黄色い柔らかい部分は、収穫後も成長し続けます。そして外側の葉は、そんな中心の葉に栄養を届けようとします。その結果、外側の葉からは時間とともにうまみや栄養が抜けていってしまいます

それを防ぐには、芯の底にある成長点(丸い部分)を包丁で刺して壊し、成長を止める必要があります。また、コンパクトに保存するために4分の1などにカットしたときは、中心の柔らかい部分から使うようにするといいですね」

包丁を入れている部分が白菜の成長点。白菜のサイズにもよりますが、2〜3回「十字」に切れ込みを入れるとよいそうです。

「白菜は切り方にも注意が必要です。葉の部分が交互に重なり合っているため、包丁で縦に切り込みを入れた場合、重なっている部分が切れて葉がぼろぼろと落ちてしまうからです。そうならないためには、包丁で切るのは芯までに留め、葉の部分は手で裂きながらやさしく割るといいですよ。そうすれば重なり合った葉の部分もきれいに分けられます」

白菜は葉がやわらかいので、芯の部分さえ切ってしまえばあとは手で分けられます。

うまみの相乗効果を活かす!
白菜の鉄板レシピ3選

白菜の基本的な扱い方を学んだところで、毛利さんのおすすめレシピを3つ紹介しましょう。3つとも、用意するのは家庭でよく使う食材だけ。とても簡単に作れて、白菜と肉のうまみの相乗効果を存分に楽しめるレシピです。

「鶏肉と白菜のヘルシーミルク煮」
巻かないロール白菜」
「白菜と豚肉のミルフィーユ鍋」

里芋でとろみをプラス!
「鶏肉と白菜のヘルシーミルク煮」

「くたくたになった白菜を使ったとろみのあるミルク煮は、冬の定番メニュー。市販の鶏ガラスープやコンソメ、顆粒だしなどで味付けをする方も多いでしょう。しかしそれだと、白菜のうまみが調味料のうまみに負け、白菜そのもののおいしさを感じられなくなってしまいます。だしは鶏肉から出るうまみだけで十分
また、スープにとろみをつけたいときの定番は小麦粉ですが、少し手間がかかるので、今回は里芋を使います。里芋なら簡単にとろみがつけられ、里芋の栄養も摂取できますよ

【材料(4人分)】

・白菜……1/4個(400~500g)
・里芋……2個(200~300g)
・牛乳……300ml
・鶏肉……1枚
  [鶏肉下味用]
  ・塩……小さじ1/2弱
  ・こしょう……少々
・塩……小さじ1/4
・こしょう……少々
・油……大さじ1

【作り方】

1.里芋をよく洗い蒸し器で20分、もしくは電子レンジで4~5分ほど蒸す。
「里芋は土がついているので、扱いにくいと思っている方も多いかもしれません。ですが、最終的に皮はむいてしまうので、土を完全に取り除こうとする必要はありません。ボウルの中でゴロゴロと皮をこすり合わせて水洗いすれば十分です」

2.里芋がやわらかくなったのを確認し、やけどに気をつけながら皮をむく。

「里芋はつぶして使うので、この段階で中まで完全に火を通してください。やわらかくなった里芋の皮は、キッチンペーパーで挟み両脇を引っ張るだけでつるんとむけます」

3. 里芋をつぶし、牛乳とよく混ぜ合わせる。

「里芋をしっかりつぶしてから牛乳と混ぜ合わせましょう。ここで牛乳と里芋をしっかり混ぜ合わせることで、スープにまんべんなくとろみをつけることができます」

4.白菜を芯と葉に分け、芯は繊維に沿って1cm幅に、葉も同様に縦にざく切りにする。鶏肉は余分な脂や皮を取りのぞき、ひと口大に切り、下味用の塩とこしょうをふる。

「白菜は繊維に沿って切ると、煮込んだあとにも歯ごたえがしっかりと残ります。長めに切ると麺のように箸でつまめるので、いつもの煮込み料理に変化が生まれ楽しいですよ。鶏肉は余分な脂身を取りのぞくと、風味や食感がよくなります」

5.フライパンを温め油を引き、鶏肉をしっかり焼く。両面に焼き目が付いたらいったんお皿などに取り出す。空いたフライパンに白菜の芯を入れ、周りが透明に変わりくたっとするまで炒める。

「火の通りに時間がかかる芯は、しっかり炒めておきます。反対に葉は、色よく仕上げたいので長く煮込まないことが大事。なのでここでは火を通しません。油は、ごま油やオリーブオイルなど好みのものでOK。バターを使ってもいいですね」

6.芯に火が通ったら、葉と先ほどいったん取り出した鶏肉、2の牛乳を入れる。塩とこしょうで味付けし、中火で10分ほど煮込む。煮込み終わったら、塩こしょうで味を整える。

「煮込むときは、鍋にフタをしましょう。煮込むことで白菜から水分が出て味が変わるので、味見は煮込み終わってから。もし塩気が足りないと思ったら、塩とこしょうで調えましょう。ローズマリーやタイムなどのハーブを入れて風味付けするのもおすすめです」

肉だねと白菜を交互に重ねるだけ!
巻かないロール白菜」

「きのこで肉だねを作るので、きのこのうまみ成分によりおいしさと食感がアップ。きのこは好きな種類のものを選んでOKです。煮干しから出たやさしい味わいのだしも、白菜のうまみによく合います。また、煮干しも300mlの水に対して3~4本と、少量で済むのも魅力。お鍋の代わりにフライパンを使っても作れますよ」

【材料(4人分)】

・白菜……1/4個(400~500g)
・玉ねぎ……1/8個
・しょうが……1かけ
・きのこ……50g
・煮干し……3~4本
・鶏ひき肉……400g
  [鶏ひき肉下味用]
  ・醤油……大さじ1
  ・酒……大さじ2 
・水……300ml
・塩……小さじ1/4
・醤油……大さじ1

【作り方】

1.白菜の外側の部分は葉と芯に分け、葉は大きいまま残しておく。残った芯と内側部分は、肉だねをのせられるよう大きめに切る。玉ねぎとしょうがはみじん切りに、きのこは1cmほどの粗みじん切りにする。煮干しの頭と内臓をとり、分量の水に漬けておく。

「左のバットにのせているのが、外側部分の葉です。鍋に入れる際、最後にフタのようにかぶせるので、他の葉とは分けておきましょう」

2.鶏ひき肉に、下味用の醬油と酒を入れ、粘りが出るまでしっかりと混ぜる。
「肉に下味用の調味料をしっかり混ぜ込むのは、このあとに加える玉ねぎやしょうが、きのこから水分が出たときに、肉だねの味がぼやけないようにするためです」

3.2に玉ねぎとしょうがを加えて混ぜる。ある程度混ざったら、最後にきのこを加えて混ぜる。

「食材を2段階に分けて入れるのは、そのほうがムラなく混ざりやすいからです。また小さく切ったものから入れたほうが混ぜやすいので、今回はみじん切りにした玉ねぎとしょうがを先に入れています」

4.ここから5段重ねていく。まずは白菜の内側部分を鍋に敷き(1段目)、そこに肉だねの半量を小分けにしてのせる(2段目)。肉だねに白菜をのせ(3段目)、その上に残りの肉だねを先ほどと同じように小分けにして重ねる(4段目)。分けておいた白菜の外側部分の葉を、肉だねにフタをするようにかぶせ、手でぎゅっと押さえる(5段目)。

「下から『白菜→肉だね→白菜→肉だね→白菜』となればOKです。重ねた白菜と肉の重みで、食材がぎゅっとまとまるので、きっちりと重ねなくても大丈夫。各段に挟む肉だねは、食べる人数にあわせて1つにまとめたり、2~4つに分けたりしてください」

5.1の煮干しだし(煮干しごと)と塩、醤油を入れ、中火で約20分煮込む。

「このレシピなら、通常のロール白菜のように事前に白菜を茹でる必要がないので、白菜のおいしさと栄養が茹で湯に流れ出ずに済みます。食卓に鍋ごと並べて、家族みんなで切り分けながら食べるのもいいでしょう。水の量を半分に減らし、代わりにトマト缶を入れるなど、アレンジするのもおすすめです」

たっぷり入ったしょうがとねぎが決め手!
「白菜と豚肉のミルフィーユ鍋」

「だしを使わず、白菜と豚肉のうまみだけで作るミルフィーユ鍋です。最後に散らしたしょうがとねぎがアクセントになり、いくらでも食べられてしまうはず。白菜の芯の根元を切らないまま葉の間に豚肉を挟んでいくので、重ねる手間が省け簡単にミルフィーユ鍋をつくれます」

【材料(4人分)】

・白菜……1/4個(400~500g)
・豚ばら肉 薄切り……150g
  [豚ばら肉下味用]
  ・醤油……大さじ1
  ・酒 ……大さじ1
・ねぎ ……15cm
・しょうが……1かけ
・にんにく……1かけ
・水……300ml
・オイスターソース……大さじ1
・醤油……大さじ1
・酒……大さじ2
・こしょう……少々 

【作り方】

1. 豚ばら肉に下味用の醤油と酒をふりかけてもみ込む。ねぎとしょうが、にんにくはみじん切りにする。白菜は芯をつけたまま縦半分に切り、葉と葉の間に豚ばら肉を挟む。

「白菜の芯をつけたままにしておくと、白菜がばらけないのでラクにお肉を挟めます。しっかり下味が付いたお肉を挟むことで、お肉のうま味も白菜に浸み込みますよ」

2.1を使う鍋に収まるくらいの幅で切る。

「芯でつながっているので、葉のほうから切ると最後までばらばらにならず切り分けやすいです。最後に芯の部分をカットします」

3.オイスターソースに醤油、酒を加え混ぜ合わせておく。鍋に白菜を隙間なく敷き詰め、上からみじん切りにしたねぎ、しょうが、にんにくを全体に散らす。分量の水を加えたあと、混ぜ合わせた調味料とこしょうを入れ、15分ほど煮込む。

「白菜は火が通るとかさが減るため、小さめの鍋を用意しぎゅっと隙間なく敷き詰めるのがおすすめ。ピリッと効いたしょうがとねぎは、体を温める力があるので寒い冬にぴったりです。また、分量より多く入れても味の邪魔にはならないので、薬味好きの方はたっぷり入れても構いません」

「白菜のうまみと水分を活かすことを意識すると、自然と調理がシンプルになる」と話す毛利さん。3品とも、白菜から出るうまみがお肉のうまみと相まって、汁まで飲み干したくなるおいしさです。乾燥しやすい冬にぴったりな、体にすーっと染み渡る白菜料理。冬の定番に加えてみてはいかがでしょうか。

Profile

料理研究家・ソムリエ / 毛利奈津美

東京・青山で、季節の野菜のおいしさを引き出したおばんざいとこだわりのお酒が楽しめる『畑のおばんざい 海月』を営みながら、野菜のうまみを引き出す調理法「+1vegeメソッド」を用いた旬の野菜が主役の家庭料理を伝える料理教室も運営。野菜の調理法を研究するなかで、2012年「シニア野菜ソムリエ」の資格を取得。
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取材・文=加賀美明子(Neem Tree) 撮影=鈴木謙介