いよいよ2019年。仕事に励んだ自分へのごほうびとして、今年を乗り切るためのカンフル剤として、ちょっと贅沢な腕時計を選んでみませんか? 仕事でもプレイベートでも、ポジティブになれそうなハイクラスなウォッチブランドのタイムピースを、予算20万円以上100万円未満(税抜)で、腕時計専門誌「WATCHNAVI」の編集長である関口 優さんにセレクトしていただきました。
“メンズの小ぶりサイズ”じゃない
女性のためにデザインされたレディースモデル
高級腕時計といえば、今まで“男性の嗜好品”というイメージが強く、メンズモデルをレディースサイズに縮小しただけのものや、定番とは名ばかりで、長らくモデルチェンジされていない旬の過ぎたデザインのものが少なくありませんでした。この流れを変えたのが、宝飾系ブランドやハイファッション系ブランドです。時代のトレンドや新しい提案を取り入れた、女性の感性に届くモデルが増えたことで、高級腕時計を持つ女性が増えつつあるといいます。
「世界の名だたる腕時計ブランドが、レディースウォッチ専用のムーブメントを製造したり、装飾性やエレガントを追求したモデルをリリースするなど、着飾るオケージョンとしての時計を数多く作ってきています」(関口さん)。ビジネスでも使える汎用性の高いモデルから、今人気のマスキュリンモデル、ハレの日用ウォッチなどなど、関口さんがおすすめする7本とは?
カブリも少ないワンランク上のビギナーズタンク
カルティエ「タンク フランセーズ ウォッチ SM」
35万9100円
女性にもっとも人気のあるブランドが、宝飾系メゾンであるカルティエ。中でも、戦車の轍(わだち)からインスピレーションされた縦長ケースの「タンク」コレクションは、多彩なシリーズ、バリエーションを展開する、カルティエの定番中の定番です。特に、ムーブメントにクォーツを使った「タンク ソロ」は、プレーンで汎用性も高いため、1本でビジネスとプライベートを兼用できるモデルとして高い人気を誇っています。
「コスパのよさでは圧倒的にタンクソロですが、私は“タンクフランセーズ”をおすすめします。より細部の作り込みがよく、“ごほうび”としてモチベーションアップという面からも、もうちょっとガンバってこちらを選んでいただきたいですね」(関口さん)
シンプルなソロに対し、フランセーズはフェミニンなバリエーションが豊富で、より自分の感性に合った1本を選ぶことができるはず。「ソロよりも人とのカブリが少ない」ことも、関口さんがフランセーズを推す理由です。
バリエーション豊富で臆さずペアウォッチも
カルティエ「タンク アメリカン ウォッチ SM」
46万4400円
美しいカーブを描く縦長のケースがエレガントな「タンク アメリカン」シリーズも、カルティエメゾンが誇るロングセラー。2017年には待望の新作も追加されました。「タンクアメリカンには、最近はゴールド素材しかラインナップされていませんでしたが、新たにステンレススチール素材も選べるようになり、グッと買いやすくなりました」(関口さん)
また、メンズモデルがあることも、関口さんが「タンク アメリカン」をおすすめする理由。「同じ設計のままサイズだけを変更したのではなく、女性と男性それぞれの腕に自然にフィットするように個別の設計が施されています。私を含め、ペアウォッチに抵抗のある方は多いと思いますが、ペアでつけてみたくなる稀有なタイムピースといえます」(関口さん)。パートナーとプレゼント交換をしてみるのもいいかもしれませんね。
ストラップ“ドゥブルトゥール”はエルメスのアイコン
エルメスは高いクオリティと品格を備える雲上のメゾン。世界中の女性を魅了するバッグなどの革小物は、1度は持ってみたい憧れの逸品です。ここでおすすめする腕時計は、長方形に正方形を重ねたデザインが印象的な「ケープコット」。世界的な避暑地の名前からネーミングされているように、優雅な旅を連想させるラグジュアリーなモデルです。
革小物ほど敷居が高くないこともポイント。「エントリーなプライスゾーンですが、アイコニックな二重巻きレザーストラップ“ドゥブルトゥール”が付属しています。レザーの質感は特別で、肌なじみのよさを実感できます」(関口さん)。ケースはプレーンなタイプから宝飾を散りばめたゴージャスなものまでさまざま。ストラップのカラーバリエーションも豊かで、落ち着いた色であれば、ビジネスにも活かせます。
自分で交換できるストラップで腕時計に個性を
ルイ・ヴィトン「タンブール PM ブラウン」
32万9400円
「タンブール」はルイ・ヴィトンが2002年発表したウォッチコレクションで、フランス語で“鼓”を意味します。時代を意識したデザインを取り入れながら進化を続け、現在では腕時計の名作に数えられています。最大の特徴は、ダイアルにかけてすぼまったケースサイドのフォルム。真横から見ると実際に見るよりもかなりスリムに映り、スマートにつけることができます。「専用の道具を使うことなく、簡単にストラップの付け替えができるので、自由にパーソナライズを楽しむことができます。カーフモノグラム・キャンバス、アリゲーター、ラバーといった素材や、デザインも豊富に揃っています」(関口さん)
メゾンではカスタムオーダーもできますから、自分だけのごほうびにはぴったりです。
ちょっと大きめでもフェミニンにオン
IWC「ポートフィノ・オートマティック 37」
61万5600円
“男性の時計を借りて付けたよう”、そんな絶妙なサイズ感をもつシャネル「ボーイフレンド」の世界的なヒットをきっかけに、マスキュリンな腕時計の人気が急上昇。宝飾系ではない一流時計ブランドからも、メンズライクなスタイルにコーディネートできる、直径37、38mmサイズのコレクションが増えています。
スイスの名門IWCの定番「ポートフィノ」シリーズからリリースされた本作は、ケース直径37cm。クラシカルなデザインとともに、存在感も際立つ魅力的なタイムピース。「日本でレディースというと30mm前後の小さい時計を連想しますが、海外では40mm未満はレディースと認識されることが多いです。標準的な“ポートフィノ”は45mmありますからね。実際に愛用している女性を見かけますが、サイズ的違和感を覚えません。小さい時計より、時間を見る時の視認性にも優れています」(関口さん)。
ダイヤモンドをあしらったインデックスや、ストラップにはイタリアのシューズメゾン「サントーニ」製レッドのアリゲーター・ストラップを採用。イタリアンレザー独特の美しい発色が、ハレの日には華やかな印象を演出します。
歴史的傑作をリデザインした“タダものじゃない”1本
ブライトリング「ナビタイマー1 オートマチック38」
79万9200円
ブライトリングは、クロノグラフをメインにラインナップする、男性的なイメージの強い時計ブランドです。職場でもブライトリングを愛用される男性は多いですよね。中でも、1950年代にルーツをもつ「ナビタイマー」は、腕時計で時速や飛行距離を測ることのできる回転計算尺を搭載したブランドの伝統を踏まえた代表作です。
この名作をベースに、女性にもぴったりフィットするケース直径38mmにダウンサイジングしたのが本作。「回転計算尺を省略し、デザインエッセンスを抽出して仕上げたシンプルな3針ウォッチです。ケースにパール装飾を施したり、文字盤にゴールドを用いるなど、ブライトリングの新しい世界観も表現されています」(関口さん)
今までシンプルな腕時計を愛用してきた方にはクラシカルでラグジュアリーなデザインも新鮮です。「この人、タダ者じゃないと思わせる1本」(関口さん)。そんなまわりの反応を楽しんでみるのもいいかもしれません。
時計の中でもダイヤモンドが踊るハレの日ウォッチ
ショパール「ハッピーダイヤモンド アイコンウォッチ」
105万8400円
ここまでは比較的、ビジネスシーンで使えるタイムピースを紹介しましたが、7本目はダイヤモンドが踊るように回転しながらキラキラと輝きを放つ、ショパールのアイコン的なジュエリー「ハッピーダイヤモンド」を腕時計に用いたコレクションです。外側と内側のフレームの間にセットされた5粒の「ムービングダイヤモンド」が、宙を舞うように揺れ動きます。「ハレの日に、ドレッシーな装いで決めるのであれば、このような宝飾ウォッチは1本もっていたいですね」(関口さん)。ダイヤモンドをセットされた特徴のタイムレスなハッピーダイヤモンドジュエリー。オーラも期待できます」(関口さん)
ショパールは世界的な一流宝飾ブランドであると同時に、近年は金の採掘における“フェアマインド”を宣言、真の意味でのラグジュアリーを追求した姿勢にも、共感を生んでいます。
Profile
WATCH NAVI 編集長 / 関口 優
1984年生まれ。芸能雑誌やモノ情報誌「GetNavi」の編集を経て、2016年より時計専門誌「WATCHNAVI」編集長に就任。バーゼルやジュネーヴなど世界的な時計見本市に必ず足を運び、自ら取材。自身で試すことをモットーとしており、腕時計は現在20本超を所有。
『WATCHNAVI 2019 WINTER』
850円(学研プラス)
巻頭特集は恒例の、読者200人と全国の有名正規店のプロたちが選出した“最強”の100本をランキング形式で紹介する「腕時計最強ランキング2018」。ほかに「チュードル」からブランド名をあらためた「チューダー」のすべてをまとめた特集も。別冊付録として、12大ブランドの時計の撮り下ろし写真を掲載した卓上カレンダーが付く。
WATCH NAVI Salon https://watchnavi.getnavi.jp/
取材・文=安藤政弘