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備蓄を無駄にしない!「防災」を日常にする
ローリングストックの考え方と最新非常食

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活断層が入り組み、地震大国といわれる日本。未曾有の大災害となった東日本大震災からは3月11日で12年が経ち、亡くなった方の13回忌にあたります。また、地震だけでなくさまざまな自然災害が頻発しており、あらためて備えをチェックすべきでしょう。

今回は災害時の「食」に焦点を当て、日頃からできる備えを、整理収納アドバイザーであり防災士の丸マイさんに、教えていただきました。

在宅避難を支える備え
「ローリングストック」とは?

ローリングストックとはどのような防災方法なのでしょうか? おさらいしておきましょう。

「ローリングは『回転』することであり、ストックは『備蓄』すること。つまり、普段から食べている加工食品や食材を少し多めに購入し、日常で備蓄品を使い、使った分だけ買い足す、この行動を循環させて常に一定量の食材を家に置いておく備蓄方法のことです。

在宅避難を基本に考え、日頃から備えることにより、いざというときに慌てずに行動できます。もし避難が必要な場合も、備蓄があればパニックにならずに、避難所に移動するタイミングを冷静に判断することができます。備蓄がない人ほどパニックになり、すぐに避難所に行かなくてはと慌ててしまうケースがよくあります」(整理収納アドバイザーであり防災士・丸マイさん、以下同)

丸さん自身も、ローリングストックの重要性を経験したといいます。

「3・11の当時、住んでいた家の隣がスーパーで、ミニマリストを目指していたこともあり『スーパーが我が家の冷蔵庫』がわりと捉えていました。被災地からは遠く離れたところに住んでいましたが、大きな揺れを感じ、気持ちの面でもすぐには行動に移せなかったんです。ところが、いざスーパーに行ったときにはほとんどの食料が売り切れていました。『きちんと持つものは持たないと大変なことになる』ことに気づきました。
この経験をもとに、防災について学び始め、現在は整理収納アドバイザーとして片付けの仕事で伺ったご家庭でも、『片付けで空いたスペースにはぜひ備蓄品を入れてください』とお願いしています」

非常食と日常食のバランスを大切に!
備蓄する食品の選び方

では実際には、どれくらいの量を備えておくのがいいのでしょうか?

「『何をどれくらいストックしておけばいいのか』とよく聞かれるのですが、家庭によって千差万別です。というのも、家族の人数や、アレルギーの有無、ペットがいるかなど、各ご家庭によって条件はまちまちです。ライフスタイルの変化にともなって必要となるものも変化していきます。『必要なものリスト』や一般的に売られている防災セットは万人向けのものであり、その人にあった備蓄品とは限りません。『これが正解』というのはなかなか難しいですが、私がもっとも大切にしていることは『その状況になった場合をしっかりとイメージすること』です。

震災などの災害が発生し、ライフラインが寸断した状況で支援物資が届くまで、4〜7日は要するといわれています。そうしたなか、自分の家庭には何が必要かをしっかりとイメージすることにより、各家庭や個々人にあった本当に必要なものが見えてきます。

備える量は、基本的には3日分とされています。しかし、水の配給があっても、それを取りに行くのが困難な高層階にお住まいの方は、7日分を用意するといいでしょう。同様に、小さなお子さんがいたり、高齢の方の場合も、重いものの運搬が難しいので7日分を用意しましょう」

まず、なにから始めればいいでしょうか?

「防災グッズを揃えようとするとなかなかハードルも高く、行動に移せない方も多いと思います。まずは、普段使っている食品からローリングストックしておきたいものなどをリストアップしてみてください。例えば、冷蔵庫の中にあるもので災害のときにどのような食べ方ができるかを考えてみることはとても役に立ちます。日持ちする食品で火を使わない調理法を考えてみるだけでも防災になります。お金もかからないし、ハードルもグッと下がります。
身の回りにあるものをチェックし、いつも使う食品を常に一定量を保持できるようにルール付けをしましょう。例えば、今まで1つ買っていた長期保存のきく食品を2つ買うようにする、など。完璧でなくてもいいんです。お金がかかるから、場所がないから、と後回しにすることで後悔はしてほしくないと思います」

【備蓄食としてあると良いもの】

・水……最低3日分
「大人1人あたり1日3L。合計9Lが目安です。携帯用に500mlのサイズも用意しておくと良いです」

・主食……最低3日分
「白米だけでなく、お粥もあると安心です。発災時はショックが大きく、食べ物が喉を通らなくなる方は少なくありません。そんなとき、身体にやさしく消化にいいおかゆがあると安心です」

・味のあるもの……最低3日分
「主食のおともに、缶詰やレトルトなど味に変化をもたせるものを数種類用意しておくことで飽きずに食事をすることができます」

・甘いもの……最低3日分
「糖分は疲れているときに食べると気持ちを落ち着かせる効果があります。精神的なケアに甘味を取り入れましょう」

【備蓄食としてNGのもの】

・過度に味の濃い食品
「味の濃い食品は水を欲してしまうため、控えましょう。災害時には心身ともに疲れていることを前提に考え、普段の食事よりやさしい味付けが好ましいです」

・つゆの多いカップ麺など
「つゆの多いカップ麺などは、下水機能が寸断された場合、流せないおそれがあります」

編集部おすすめ!
ローリングストックしたい商品

丸さんから教えていただいたストックしておいたほうが良い食品をもとに、編集部がセレクトしてみました。

空腹をしのげる食品

「高カロリー・甘味・旨味のあるものはお腹を満たしてくれます。量が少なくても満腹感を得やすいためぜひ好きな食品をストックしてください」

日々の食卓にも取り入れやすいレトルトカレー

NISHIKIYA KITCHEN「野菜ゴロゴロカレー
380円(税込)

大きめの野菜がゴロッとたっぷり入った、食べ応え満点のカレー。7大アレルゲン不使用(※)で、野菜がメインで動物性の脂が固まることがないため、非常時に常温で食べることになっても、おいしく食べられます。

※NISHIKIYA KITCHENの工場では、卵・乳・小麦・えび・かに・落花生を含む製品を作っています。(特定原材料対象)

「レトルト食品の専門メーカーならではのおいしさを兼ね揃えた食品です。非常時だけではなく、日頃の食卓にもおすすめ。NISHIKIYA KITCHENシリーズでは、ローリングストックにもってこいの商品が揃っています。定期便もあるので、買い忘れをなくすこともできます」

健康を維持できる食品

「炭水化物・肉・魚・野菜の缶詰やレトルト食品は健康的な体を保つために必要です。食事の基本となる炭水化物、力を与えてくれるタンパク質、ビタミンを補う野菜をバランスよくとりましょう」

・一度にまとめて揃えられて手間いらずの防災食セット

石井食品「非常食Aセット
1316円(税込)

何から揃えれば良いか迷っている人におすすめ。セットにまとまっているので、数日分の非常食の用意が簡単にできます。約4年の長期保存が可能なところもメリット。

「製造過程で食品添加物を使用していないので、安心して食べられます。火や水を使わず調理不要なのも、非常時には助かりますね。この他にも、石井食品ではさまざまな非常食セットを展開していますのでチェックしてみてください」

・アウトドアメーカーが作った機能的なごはん

モンベル「五目リゾッタ
421円(税込)

機能的なアウトドアアイテムは防災時にも役立つものが多くあります。こちらのリゾッタシリーズはフリーズドライのため調理時間が極めて短く、水を使わない乾いたままの状態でもサクサクとおいしく食べられます。

「フリーズドライのため軽く、携帯用としても利用できるので防災リュックにも入れておけるのがいいですね。コーンやベーコントマトクリームなど多くの味が揃っているのでいろいろな味を楽しめます」

・長期保管で経済的なアルファ米でできたおかゆ

尾西食品「アルファ米 42g 白がゆ
280円(税込)※4月より302円(税込)

非常食の定番ともいえる、アルファ米を使ったおかゆ。湯量を調整することでやわらかなご飯としてもいただくことができます。同シリーズには、五目ごはんからナシゴレンなどさまざまな味がラインナップしています。

「非常時になると疲れもあいまっていつもより優しい食事をとりたくなります。日ごろおかゆを食べないという方も、ぜひ準備しましょう。味に変化を持たせたいときはふりかけを何種類か備えておくと良いですね」

体調の変化に対応できる食品

「災害時には免疫力も低下するためサプリなど手軽に栄養を摂れるものがあると大変助かります。また、薬も必要なものは揃えてください。毎日飲む薬がある方は予め多めにもらっておくのが良いでしょう」

手軽に栄養を補える非常時用サプリメント

セイエンタプライズ
サバイバルフーズ マルチビタミン&ミネラル」4000円(税別)

サバイバルフーズ ビタミンC」3000円(税別)

賞味期限は5年間と長期保管が可能な栄養機能食品。災害時は特に炭水化物の摂取に偏りがちになるため必要な栄養を補うことが大切です。とくに強い負荷がかかる災害時には「サバイバルフーズビタミンC」を併用することがおすすめです。

「サプリを備蓄することをおすすめしています。簡単に栄養を補えることは災害時にとても重要です。一般的なサプリの賞味期限が2年くらいのところ、こちらは長期保管ができるため、コストカットと更新の手間がかからない安心感があります」

気持ちが落ち着く食品

「お菓子・果物缶・スイーツ缶などの甘味ものは疲れたときにとくに食べたくなりますよね。少し食べるだけでも、気持ちが落ち着くこともありますのでお好みのスイーツを備蓄しておきましょう」

本格的な味が魅力の防災用スイーツ

ガトー・ド・ボワイヤージュ「防災スイーツ(バニラガレット)
648円(税込)

エネルギー摂取はもちろんのこと味や5年間の保存期間にもこだわった防災用のスイーツ。バニラ、チョコのほか、食物アレルギーを考慮し特定原材料等28品目不使用のメープル味とアレルゲンフリーチョコ味も用意しています。

「洋菓子屋さんの作った防災食。非常時には気持ちの面でもケアが必要です。エネルギーを取ることはもちろん大切ですが、甘味のある食品も準備しておくことで心にゆとりを持つことができます。お子さんのいるご家庭にもぜひ用意しておくことをおすすめします」

取り出しやすさが肝心!
ストックは普段から使っている場所へ

せっかく用意した食品がいざ必要となったタイミングで賞味期限が切れていたり、見当たらなかったりといったリスクを防ぐポイントを教えていただきました。

・普段から使っているところを保管場所にする
「備蓄食品は、パントリーなど、普段から目につきやすいところに保管しましょう。そして、在庫はどれくらいか、一目で見渡せる引き出しなどが理想的。常に確認ができ、忘れることのない仕組み作りが大切です」

・水は各部屋に分散して保管する
「一箇所に保管することは避けましょう。せっかく準備していたとしても、もしその部屋の扉が開かなくなるような状況になった場合、使えなくなってしまうからです」

・開封していないものを用意する
「食器は、開封していないものをまとめて防災用として準備してください。食品は台所保管が良いのですが、長期保管のできる食品以外の備品に関しては、『防災備品』としてまとめて保管しましょう」

いざというときのために
今できることは?

冒頭で、いざというときのためにイメージを持つことが大切と教えていただきました。ここでは、イメージを具体的に持つための行動を紹介していただきましょう。

「イメージといってもなかなかリアルに考えるのは難しいですよね。百聞は一見にしかず、で『サバイバルデー』を設けてみたり、『地域の防災訓練』に参加してぜひ体験してみましょう。

休日を利用してサバイバルデーとして、半日から1日、ブレーカーを落として家の中で過ごしてみるのはとても良い経験になります。そうすることで、何が本当に必要かが見えてきます。サバイバルデーには備蓄品の食材や缶詰を実際に食べてみるのもおすすめです。発災後の繊細な精神状態のときに、食べたことのない味を食べるのは、けっこうつらいもの。楽しくサバイバルの練習を行うことで、その味を楽しい思い出と結びつけることができます。備蓄品に慣れるという訓練も、必要なことなのです。

一人暮らしの場合は、災害時に自分一人で行動しなくてはならないことが、大きなリスクとなります。日頃から近所の人と挨拶するなどして、顔見知りになっておくことも大切です。

そして、国土交通省が運営する『ハザードマップポータルサイト』をぜひ確認してみてください。お住まいの地域を検索することで、そのエリアの災害リスクを知ることができます。印刷をして防災グッズに入れておくことをおすすめします」

普段から使っているお気に入りの食品をいつもより少し多めに買い足しておくことで立派なローリングストックとなります。そして、本当に必要なものが何かと、イメージを膨らませることが大切。いざというとき、自分の家が避難場所になるよう、日常的に備えていきましょう。

Profile

防災士・整理収納アドバイザー / 丸 マイ

防災士、整理収納アドバイザー1級、整理収納アドバイザー2級認定講師、クリンネスト(お掃除) 1級。片づけが苦手な方やもっと片づけのスキルをアップしたい方に向けて、整理収納アドバイザー2級認定講座、片づけサービスを行う。日々忙しい方々の休日が、家事や買い物など平日の準備で終わらないために、効率の良い家事の動線と動作を考えた『片づけ』を提案している。夫、大学生、中学生のお子さんの4人家族。
HP

取材・文=癸生川美絵(Neem Tree) 撮影=矢部ひとみ