毎年冬、気温が低く乾燥する季節になると、風邪はもちろんのこと、インフルエンザなどの感染症が猛威を振るいます。とくにインフルエンザは、いったんかかってしまうと仕事への影響は甚大。肝心なときに体調を崩さないために、日頃からのケアを怠らないことが大切です。
でも、当たり前のことでも意外と知らなかったり見落としていたり、習慣になっていない人も多いのではないでしょうか? 今回は、よこはま土田メディカルクリニック院長の土田隆先生に、基本的なインフルエンザ対策法について教えていただきました。
1.手洗い・うがい……毎日の生活習慣をいかに怠らないかが重要
インフルエンザに対して万全の態勢を取ろうとワクチンを打ったのに、症状は軽いとはいえ、罹患してしまう人も。ワクチンも打っていなければ、なおさら無防備です。日常のなかで、どのような対策を取るのが一番効果的なのでしょうか?
「インフルエンザウイルスはこの時季、どこに行っても存在します。インフルエンザにかからないためには、“自分の体内にウイルスを持ち込まない”ように注意をはらって、予防することが基本です」(土田先生)
“予防”といえば思い浮かぶのは風邪予防。風邪予防といえば、子どものころから「手洗い、うがい」が定番です。実際のところ、インフルエンザ予防には効果があるのでしょうか?
「インフルエンザは、かかっている人のせきやくしゃみ、つばなどの飛沫を吸い込む“飛沫感染”がもっとも多いんです。また、場合によってはドアノブやつり革などにウイルスが付着していて、あとから触れた人の手について、目や鼻、口などから侵入する“接触感染”もあります。ウイルスの増殖はスピードが早いので、外から帰ったらまずは手を洗って、すぐにうがいをしてください」(土田先生)
・手洗い
手洗いの大事なポイントは、石鹸を泡立ててウイルスをしっかり浮かせ、きれいに洗い流すこと。泡タイプの石鹸は、すみずみまで泡を行き渡らせるように洗いましょう。
「手洗いでは、インフルエンザだけでなくほかのウイルスもきれいに洗い流さなくてはいけません。ほかの感染症にかかった人は抵抗力が弱まって、インフルエンザにもかかりやすく、ダブル感染でとてもつらい目に遭いますよ」(土田先生)
手洗いのあと、アルコール剤の消毒液で仕上げるのも有効です。ただし、手洗いだけでも同様ですが、手が乾燥するので保湿ケアを忘れずに。乾燥したままだと、皮膚のバリア機能を損なってしまいます。
・うがい
一方のうがいは、のどの内側の表面についたウイルスをできるだけ取り除けるように、ゴロゴロとのどを動かして。
「うがい薬を使わずに、水だけでも効果は十分です。家に帰ったときだけでなく、外出先でもこまめなうがいをおすすめします」(土田先生)
2.マスク……重要? それとも効果なし?
医師がすすめるマスクの効果的な利用法
インフルエンザや風邪が流行するシーズンになると、マスクをつけている人が増えます。世間では、予防手段の代表格と思われているマスクですが、実際のところは……?
「ウイルスの飛沫感染を予防する一番の手立ては、マスクをすることです。いまはさまざまな機能を備えたマスクがたくさん発売されていますが、インフルエンザウイルスについては、ガーゼではなく不織布のマスクであれば、どれもバリアとなってウイルスの侵入を防いでくれます」(土田先生)
予防に欠かせないマスクですが、ときどき口や鼻が丸見えのつけ方をしている人を見かけます。
「息苦しくてはずしてしまったのでしょう。一番もったいない使い方ですね。とくにインフルエンザ対策のマスク選びで大切なのは、機能よりつけ心地なのです。顔の構造はそれぞれ違うので、少量パックを買って感触を試しながら、自分の顔に合うマスクを探してみてください」(土田先生)
そこで、マスクを選ぶ際のチェック項目を教えてもらいました。
◯ 自分の鼻と口がきちんと覆われるサイズを選ぶ
◯ 息を吸うとき、苦しくならない
◯ 湿気がこもり過ぎない
◯ 乾燥し過ぎない快適なこと
◯ コンスタントに長くつけていられる
これらのチェック項目をクリアしたマスクが見つかったら、それを今後の愛用品としてください。もちろん色付き、柄付き、香り付きなど気分をアップしてくれるものはお好みでどうぞ。装着するときには、マスクの上から鼻のわきを抑え、密着させるようにします。あとは、使ったマスクにはウイルスが付着しているかもしれないので、すぐに処分すること。
「もうひとつ大事なのは、インフルエンザや風邪にかかっている人も周りにウイルスを振りまかないよう、マスクをするのがマナーです。予防と同じようにつけ心地のよいマスクを見つけてしっかりブロックしてください」(土田先生)
3.食べ物・飲み物……予防ケアが可能。
毎日手軽に続けるのに、何がおすすめ?
食生活でも、心がけるべきことはあるでしょうか?
・良質なタンパク質
「ウイルスなどの異物を体内から除去するために働く抗体は、たんぱく質からできています。インフルエンザをはじめ、ウイルスの感染が気になる季節は、いつも以上に肉や魚、卵などで良質のたんぱく質をしっかりとるようにしてください」(土田先生)
・ヨーグルト
近年は、身近な食べ物や飲み物にインフルエンザの予防効果があると話題になっています。中でもヨーグルトや乳酸飲料に入っている乳酸菌が効果的とか。
「抗体の中でも、『免疫グロブリンA』という名前のIgA抗体は、体内にウイルスや細菌が侵入したときに働く重要な役目を担っています。とくに口の中に分泌量が多く、インフルエンザウイルスが侵入すると、吸着して毒素を中和し、体を守ってくれるのです。IgA抗体は腸で作られるので、インフルエンザ予防には乳酸菌入りのヨーグルトや乳酸飲料をとって、腸の健康を心がけるといいですね」(土田先生)
・緑茶・紅茶
緑茶と紅茶もインフルエンザ予防にいいと、話題が高まっています。
「緑茶に含まれるカテキンは、抗菌・殺菌作用や抗ウイルス作用があることが知られています。緑茶をよく飲むのもいいですが、私はお茶でのうがいをおすすめしています。また、紅茶はポリフェノールを豊富に含んでいて、最近ではインフルエンザ予防に効果があるといわれています」(土田先生)
今回教えていただいたのは、普段の暮らしで手軽にできる予防法ばかり。ただ、ちょっと手を抜いてしまうと意味がなくなったり、効果が薄れてしまうことも。きちんとポイントをおさえて日常の習慣にし、寒い季節もすこやかに過ごしましょう。
最後に、編集部が選んだ風邪・インフルエンザ対策アイテムをご紹介します。