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花粉、ダニ……不快な症状の原因は?「秋のアレルギー」の
見分け方と対策

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毎年秋になると出てくる、鼻水やくしゃみ、目の痒みといった困った症状。これは何かのアレルギー? それとも、季節の変わり目で風邪を引いた……?

秋の行楽など外出や人と会う機会も増える時期。不快な症状には早急に対処したいものですが、一方で原因をしっかり見極めておくことも大切です。現代人に増えているといわれる“秋の花粉症”など、この時期に起こりやすいアレルギー症状について、その見分け方や対策とは? 東京・四谷にあるふたばクリニックの耳鼻咽喉科医師、橋口一弘院長に解説していただきました。

都会に住んでいても侮れない、
秋の花粉症とは?

ちょっと外出から帰ってきたら、急に鼻水が止まらなくなった。そんなときまず疑われるのは花粉症です。「鼻アレルギー診療ガイドライン -通年性鼻炎と花粉症- 2020年版(改訂第9版)」によると、日本人の花粉症の有病率は2019年時点で42.5%。うち38.8%はスギ花粉症ですが、スギ以外の花粉症に悩む人も25.1%いるのだとか。そのなかに、「秋の花粉症」に悩んでいる人が少なからずいるようです。

「秋の花粉症の原因として代表的なのはブタクサ、次いでヨモギで、いずれもキク科の植物です。正しい数値はまだわからないのですが、当院で毎年診察している実績から考えると、今や日本人の5〜10%弱の人が秋の花粉症に悩まされている可能性があります」(ふたばクリニック・橋口一弘院長、以下同)

秋の花粉症のアレルゲンとなる、ブタクサ(左)とヨモギ(右)。ほかにカナムグラ(右)も挙げられる。

ブタクサもヨモギも、いわば雑草にカテゴライズされる植物。郊外だけでなく都市の道端や河原などでも見かけます。

「とくにブタクサは、ちょっと管理を怠っている空き地や、草刈りをしていない道端など、どこにでも生えてくる植物。都市に住んでいるからといって、秋の花粉症が発症しないというわけではありません」

花粉症は春と秋で症状は変わる?

いくつかのポイントがあるようです。

「基本的に春も秋も症状は同じですが、春のスギ花粉と比較すると、秋の花粉症は目の症状に少し違いがあります。通常、スギ花粉は山の方から最長200kmくらいの長い距離を飛んで、私たちの上空から降ってきます。雨が降らない限りは常に空中を舞っているため、特に目のかゆみを引き起こしやすいんです。一方のブタクサやヨモギは、その辺の道端や河原など低いところに生えている植物。花粉も強い風に吹かれない限りは空中に舞い上がりにくいので、スギ花粉に比べると目の症状は出にくいようです。特にブタクサはスギ花粉より少しサイズが小さく、形もイガイガしているという特徴があります。このため気管支に入りやすく、咳や喘息などの症状が起こりやすいともいわれています」

春の花粉症になる人は、秋の花粉症にもなりやすいのでしょうか?

「一概にそうともいえないのが難しいところ。どのアレルゲンに感作されるか、どこにどんな症状が出るかは本当に個人差があるので、まずはどんな時に、どんな症状が出ているかを自分で把握することが第一歩になります」

アレルギーか、ただの風邪か?
秋の花粉症の見極め方

不快な症状の原因を自分で大まかに把握するには、いくつかのポイントがあります。まず、起きている症状がアレルギーに由来するのか、それとも風邪なのかを見極めるヒントについて。

「鼻水の質を見てみることです。アレルギー反応として出てくる鼻水は無色透明でさらっとしていて、アレルゲンにさらされている限り止めどなく流れてきます。ですから、長く空中で舞っている春のスギやヒノキの花粉は長期間にわたって症状が出やすいですし、秋のブタクサなら自然の多いところへ行ったり、草むらに近づいたりしたときだけ急に症状が出るんです。一方で風邪の場合は、最初のうちは無色透明のさらっとした鼻水が出てきますが、2~3日でどろっとした粘りが出てきて、ずっと流れているということはありません。これがアレルギー反応と風邪の鼻水の違いです」

アレルギーが疑われるとき、次に気になるのはアレルゲンが何かということ。特に夏から秋は気候が大きく変化していくため、花粉以外にも注意すべきアレルゲンがあるようです。

「見極めのポイントは家の中と外、どこでアレルギー反応が出ているか。実は秋の花粉って、飛散距離もせいぜい数十メートルと短いんです。つまり草むら等へ近づいたり、家の周りが雑草だらけだったりしない限りは、家の中に持ち込むリスクもそれほど高くない。たとえば河原を歩いたとか、山へキャンプに出かけたときだけ鼻水が出る…といった場合なら、秋の花粉に反応している可能性が考えられるでしょう」

……となると、気になるのは家の「中」で症状が出ている場合です。

「雑草に触れた覚えがないとか、外出していないのに症状が出る場合ですね。この時期よくあるのは、衣替えの作業中になぜか鼻水やくしゃみが止まらなくなるケース。実は段ボールや衣装ケースを開けたときに舞うホコリの中には、ダニや衣服につく衣蛾(いが)などの死骸、そのフンなどが含まれています」

こういった死骸や人間の皮膚やフケ、カビ、ペットの毛などをまとめて、ハウスダストと呼びます。

「掃除や衣装ケースの片付けをしていてアレルギー反応が出た場合は、ハウスダストアレルギーが疑われます。特に秋は、夏の間に大繁殖したダニなどの死骸が増える時期で症状が出やすい。昼間の外出時は平気でも、家に帰るとくしゃみが出る…といった場合もハウスダストの可能性が考えられます」

毎日の掃除や市販薬の選び方など、
自分でできるアレルギー対策

秋の花粉とハウスダスト。どちらも厄介ではありますが、身体的に起こっているアレルギー反応は実は同じもの。つまり基本的な対策は同じでいいということです。

「基本はアレルゲンに近寄らない、身体に触れさせないこと。最も有効な対策のひとつはマスクでしょう。花粉症なら出かけるとき、ハウスダストなら掃除のときはマスクをすることである程度の効果を発揮します。もうひとつ有効なのは掃除ですね。ただこまめに掃除機をかければいいというわけではなく、床に落ちている花粉やゴミを確実に除去することです。水拭きで部屋の四隅に溜まったホコリを拭き取ってから掃除機をかけるとか、掃除機の排気フィルターもこまめに清掃すること。空気清浄機も床に落ちている花粉には効果がないので、やはり水拭きが効果的だと思います」

もうひとつ気になるのは、市販薬の選び方。病院で検査をしたり、受診したりする時間がない場合は、薬局でどんな薬を買うべき…?

「アレルギーの症状緩和には、飲んでも眠くなりにくい第二世代の抗ヒスタミン薬がいいでしょう。薬局で聞けば教えてくれます。症状が出てきたかも…?と思ったタイミングで服用してください」

一方、気をつけなければならないのが第一世代の抗ヒスタミン薬だそう。

「第二世代の抗ヒスタミン薬はアレルギー症状のみに対応していますが、第一世代の抗ヒスタミン薬はアレルギーでも風邪でも関係なく、鼻水などの症状を緩和します。ただ、症状は改善しても結局自分は風邪だったのか、アレルギーだったのかわからないまま、また翌年も同じような症状に悩む…といった悪循環が起こりやすいんです」

これから冬にかけて気をつけたい
寒暖差アレルギーと秋のスギ花粉

近年は夏の酷暑の影響で10月上旬ごろまで気温が高く、それから気温がグッと下がって瞬く間に冬を迎える…といったケースが増えています。これから迎える11月以降、気をつけたい症状について教えていただきました。

「ちょうど11月ごろに飛散するスギ花粉があります。10月までは平気だったのに、11月になったら鼻がむずむずする…といったスギ花粉症の方は、これに反応している可能性がありますね。ちなみに秋のスギ花粉が多いと、翌春のスギ花粉も多くなるといわれているんですよ」

もうひとつ最近よく聞かれるようになったのが「寒暖差アレルギー」という言葉。気温が急に下がると、鼻水が止まらなくなったりするというものです。

「鼻の粘膜に過敏性があると、冷気や乾燥という刺激を受けてくしゃみなどの反応を起こします。よく冷蔵庫を開けて急に冷気を吸い込むと、鼻や喉がムズムズすることがありますよね? 基本的なメカニズムはあれと同じ。花粉症のようにアレルゲンが身体に侵入して起こるアレルギー反応とは違います。症状が強い場合は『気道過敏性亢進』ともいわれ、喘息などのリスクがあるので注意は必要です」

気になる症状があれば、放置せずに病院へ

アレルギーは、その原因さえなくなってしまえば症状も治まるもの。だからといって、気になる症状はできるだけ放置しないことが大切だとか。

「発症した当初は大したことがないように思える症状でも、一度何かのアレルゲンに感作されると、以後他の物質にも反応しやすくなるという傾向はあります」

原因を特定したり、症状が重くて気になる場合は、迷わず病院で受診を。

「病院であれば内服薬・点鼻薬と自分により合った薬を選ぶこともできますし、症状の程度に関係なく検査で原因を突き止めていくことも可能です。最近は気候の変化で季節の変わり目に体調を崩す方も多く、よくわからない症状にお悩みの患者さんもよくいらっしゃいます。気になる症状は自分だけで判断せず、やはり病院で相談してみることが大切です」

Profile

耳鼻咽喉科 医師 / 橋口一弘

ふたばクリニック院長。1982年、慶應義塾大学医学部を卒業。日本耳鼻咽喉科学会 専門医、日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会 評議員など。大学病院、一般病院、北里研究所病院の耳鼻咽喉科を経て、東京・四谷のふたばクリニック院長に。花粉症調査研究施設の設計・開発にも関わり、スギ花粉症治療に関する研究を続けている。
ふたばクリニック HP

取材・文=小堀真子