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カフェインはとりすぎるとどうなる?デカフェの専門家に聞く
「カフェイン・マネジメント」を取り入れた暮らし

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カフェインの覚醒効果に頼るうちに、過剰に摂取してしまうケースが増えています。メリットも多いカフェインですが、とりすぎるとめまいや心拍数の増加など、身体にも悪影響が。そこでカフェインと上手に付き合う考え方、“カフェイン・マネジメント”が注目されつつあります。

カフェインレスコーヒー「ヤバいデカフェ」を販売する株式会社QAHWA(カフア)R&Dディレクターで、カフェインやデカフェに詳しい広田聡さんに、カフェイン・マネジメントについて教えていただきました。

何に多く含まれる? その作用は?
カフェインの基礎知識

「カフェインはコーヒーのほか、紅茶や煎茶、ほうじ茶、玄米茶、ウーロン茶などさまざまな飲料に含まれています」(株式会社QAHWA R&Dディレクター・広田聡さん、以下同)

カフェインを含む一般的なものと、含有量の目安

・コーヒー……60mg/100mL(浸出液の場合)
・紅茶……30mg/100mL
・玉露……160mg/100mL
・煎茶……20mg/100mL
・ほうじ茶……20mg/100mL
・玄米茶……10mg/100mL
・ウーロン茶……20mg/100mL
・紅茶……30mg/100mL
・エナジードリンク……32~300mg/100mL(製品によって異なります)
・ミルクチョコレート……25〜36mg/100g
・高カカオチョコレート……68〜120mg/100g

出典=農林水産省「カフェインが含まれるもの」厚生労働省「高カカオをうたったチョコレート」

カフェインは、アデノシン受容体と結合することで作用するとされる。(図の出典=農林水産省サイト)

私たちにとって敵、それとも味方……? カフェインにはどのような作用があるのでしょうか?

「カフェインはいわゆる『有機化合物』と呼ばれるもので、なかでも『アルカロイド』というグループに属すのですが、アルカロイドは人間に対して興奮などの精神的刺激をもたらす作用があります。コーヒーを飲むことで頭が冴えると感じる人も多いと思いますが、これはアルカロイドの一種であるカフェインの作用と考えられます。
また、諸説ありますが、カフェインには脂肪燃焼を促進する作用があると言われることも」

また、風邪薬や痛み止めなど、薬品にも添加されていることがあります。

「薬にも含まれていることから、人間の体に薬理作用をもたらすものとイメージする人も多いのではないでしょうか。植物や動物が身を守るために作り出す物質としても知られていますが、薬理作用もあれば毒性にもなり得るのです」

毒にも薬にもなるというカフェイン。チョコレートやコーラなど身近にある菓子や飲料にもある程度含まれており、「カフェインに毒性がある」と聞くといささか驚かされます。

「僕はコーヒーのコンサルティングを担当し、研究開発を行っています。仕事柄、常日頃からカフェインと向き合う時間も長いのですが、そのなかで感じるのは、たとえカフェインに毒性があったとしても、適量範囲の摂取であれば人体に過度な影響を及ぼさない、と言うこと。だからこそコーヒーも、僕たちにとって親しみやすい飲み物になり得ていますよね。必要なことは、怖がり過ぎずに楽しみながら摂取する方法を知ることではないでしょうか」

広田さんが考える“適量範囲内のカフェイン摂取”で得られるメリットとはどのようなものでしょうか?

「カフェインには覚醒作用があり、集中力を高める効果を期待できたり、コーヒーの香りによるリラックス効果も期待できると思います。仕事をもうひと頑張りしたい時の気分転換として、疲れたときの息抜きとして、自分の生活を支えてくれる存在としてカフェインを適度に取り入れていくいいのではないでしょうか。カフェインは付き合い方次第、と感じます」

カフェインのメリット

・覚醒させる
・集中力を高める
・リラックス
・気分転換や息抜き
・痛みの軽減

カフェインの過剰摂取で起こること

上記のように、適量範囲の摂取であれば有益なことも多いカフェイン。では逆に、過剰に摂取するとどうなるのでしょうか?

「エナジードリンクの流行を機に、カフェインを大量摂取して体調を崩す人もいる、というニュースを、近年耳にするようになりました。受験期間や仕事の繁忙期などに、覚醒効果を求めてカフェイン飲料をついつい飲み過ぎてしまった、などということが背景にあるようです。
カフェインの過剰摂取についても諸説あり、通説を示すことは難しい部分もあります。ですが、農林水産省webサイトなどでも注意喚起が行われていますので、そういった情報も参考にした上で、カフェインとの上手な付き合い方を見つけて欲しいと思います」

その農林水産省のホームページには、カフェインを過剰に摂取したことによるデメリットについて、「中枢神経系が過剰に刺激されると、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠が起こります。消化器管の刺激により下痢や吐き気、嘔吐することもあります。長期的な作用としては、人によってはカフェインの摂取によって高血圧リスクが高くなる可能性があること、妊婦が高濃度のカフェインを摂取した場合に、胎児の発育を阻害(低体重)する可能性が報告されています」とあります。

「効果を期待するあまり、多量に飲みたくなることはあるかもしれません。でも、どんな成分が入っていて、どれくらい飲むと体調が悪くなるのかは、事前に知っておくことは大切ではないでしょうか」

事前に知り、適量を摂取する「カフェイン・マネジメント」。日常的な取り入れ方をみていきましょう。

今日からはじめたい
「カフェイン・マネジメント」の取り入れ方

カフェインの摂取量などを調整することで体への負荷を減らしながらカフェインと上手に付き合う「カフェイン・マネジメント」。ポイントを教えていただきました。

1.飲むタイミングと摂取量をコントロールする

「カフェインは1回摂取してから、4〜8時間ほど経過すると、体内の残留量が半分になると言われています。その人の体質にもよりますが、通常、そのように考えられています。ですから、朝8時に摂取したカフェインは夕方の16時頃には最初に摂取した量の半分になっている、というわけです。この半減期の考え方を基本にして、1日の摂取量をコントロールするとよいと思います。

例えば、午前中にカフェイン飲料を飲み過ぎたな、という場合は、午後から摂取しないようにする。逆に日中まったくコーヒーが飲めなかった日は、夕ご飯の後のリラックスタイムにコーヒーを飲む、などとするもよいと思います」

2.自分の体質を理解して飲む

「夜にコーヒーを飲むとカフェインの半減期を迎えないまま就寝することになりますが、日本人は古くからお茶を摂取する文化が根付いている影響もあってか、カフェイン耐性が強いと言われることがあります。もちろん全員に当てはまるわけではないので、絶対的な説とは言えません。カフェインに敏感な方は少なからずいらっしゃるので、半減期の考えを参考に、上手に付き合っていただきたいと思います。ただ、夜寝る前にコーヒーを飲んでも眠れる人がいるのもまた事実。人によって飲み方は変わるものなので、自分の体質をよく理解しておくのも大切ですね」

3.好みのコーヒーの淹れ方に合わせてコントロールする

「どんな種類のコーヒーを飲んでいるかでもカフェイン摂取量は変わってしまいます。例えば、濃いコーヒーを淹れればそれだけ豆の量を使うことになるので当然のことながらカフェイン量は増えます。でもさっぱり飲みたいから薄いコーヒーの方がいい、という場合はカフェインの含有量は少なくなります。要するに自分の好みによってもカフェインの摂取量にはかなり違いがあることを把握しておくと良いですね。一般的には1日3杯までという考え方もありますが、ケースバイケースです」

カフェインレスのコーヒー、
「デカフェ」という選択肢

健康ブームに後押しされるように、近年はデカフェ人気が高まっています。デカフェとは「decaffeinated(decaf=ディーキャフ)」の略で、カフェインを取り除いた、またはカフェイン含有量を大幅に減少させたコーヒーのことを指します。「ノンカフェインコーヒー」「カフェインレスコーヒー」とも呼ばれます。

「かつてはコーヒー業界でも、デカフェのコーヒーはあまり注目されていませんでした。ところが近年は、コーヒー本来の味や香りを楽しめるデカフェ商品が増えていることもあり、取り入れる方が増えています。弊社でも『ヤバいデカフェ』という商品を開発していた時期があり、コーヒーとして違和感なく飲めるおいしさを追求していました。妊娠中の女性や、カフェインに敏感な方など、カフェインの摂取をできるだけ控えたい方にも、デカフェは魅力的な選択肢のひとつになると思います」

カフェインを摂取し過ぎたな、と感じる日に、カフェインマネジメントの一部としてデカフェを取り入れるのもおすすめだそう。

「日中にちょっとコーヒーを飲み過ぎたけれど、夜もコーヒーが飲みたい、と感じる人もいるでしょう。ノンカフェインのルイボスティーや麦茶に置き換えてもらうのももちろんOKですが、『やっぱりコーヒーが飲みたい』というときにデカフェは重宝しますね」

昨今、デカフェ市場は急成長しているといいます。

「種類が増え、気軽においしいものを購入できる時代になってきました。たくさんの選択肢の中からお気に入りを見つけたら、カフェイン・マネジメントの考え方も取り入れながら、飲み物との良い関係を築いていって欲しいですね」

編集部おすすめの
デカフェコーヒー 5選

最後に、アットリビング編集部がセレクトしたデカフェコーヒーを紹介します。

・「デカフェ」のイメージを変える豊かな風味

THE COFFEESHOP
「Mexico/Decaf(メキシコ/デカフェ)」

99.9%カフェインレスのデカフェコーヒー。メキシコ・チアパス州の79の農園によって収穫されたコーヒーを、化学的な薬品を一切使わないDescamex社の「マウンテンウォータープロセス製法」によって、デカフェ処理を行っています。香りがよく、ミルクチョコレートのような甘さと爽やかな後味が人気。誰もが楽しめるバランスの取れた味わいです。

・コーヒー愛好家からも高評価のロングセラー

ブラウンシュガーファースト
「オーガニックコーヒー Good Night -DECAFE-」シングルドリップ5包入り

メキシコ産有機コーヒー豆を使用した99.9%カフェインレスのオーガニックデカフェコーヒー。横浜で1928年創業のコーヒーの老舗、キャラバンコーヒーと開発を行い、その卓越した焙煎技術によってカフェインレスとは思えない豊かなコクと贅沢な香りが実現されています。

・老舗の焙煎所が実現した、味と香りに妥協のないデカフェコーヒー

奈良藤枝珈琲焙煎所
「おやすみ前のカフェインレス DECAF FOR THE NIGHT」

奈良大和郡郡山市で50年、喫茶店やカフェ、ホテルの好みに合わせた500種類を越えるコーヒーを提案してきた奈良藤珈琲枝焙煎所のデカフェコーヒー。歴史の中で培った選択眼で厳選されたメキシコ産の有機コーヒー豆を使用し、薬剤を使わない製法でカフェインを0.1%以下に抑えました。カフェインの覚醒・利尿作用を軽減しつつ、良い香りと深いコクを楽しめます。

・さらりとした軽快な味わいながら、豊かな味わいを感じられる

ピープルツリー
「フェアトレードコーヒー・コーヒーバッグ・カフェインレスペルー」

ペルー・アマゾン側流域の高地で育ったフェアトレードの生豆を使用したカフェインレスコーヒー。小規模農家が有機栽培で育てた生豆をカナダに送り、水を使った特許製法「スイスウォーター製法」で化学薬品を使わずに99.7%カフェインを除去しています。1杯ずつ抽出できるバッグには土に還る植物繊維で作られた生分解性の不織布を使用し、地球環境への配慮も。まろやかなコクと豊かな香り、さらりと軽快な味わいは豊かな香味で、本格派のカフェインレスコーヒーです。

・強すぎず、やさしすぎない絶妙なカフェインバランス

アサヒ飲料
「ワンダ SLOW TIME COFFEE ペットボトル 525ml」

カフェインを同社比で55%カットした“微カフェイン”のブラックコーヒー。カフェイン量を減らしながら、コクのある苦味が感じられるシティロースト焙煎を採用することによって、ほろ苦く深いコクがある味わいに仕上げています。商品名である「SLOW TIME COFFEE」には「ゆっくりとした時間の感覚、自分のペースで飲めるコーヒー」という思いが込められているそう。

Profile

株式会社QAHWA コーヒーコンサルティング / 広田聡

株式会社QAHWA / Director of R&D。大学で有機化学を専攻。卒業後国内の食品企業&製薬企業で商品開発やR&Dに約10年間従事し、多くの製品を世に送り出す。10年前に出会ったスペシャルティコーヒーに魅了され、2019年より第15代ワールドバリスタチャンピオンの井崎英典が代表を務める株式会社QAHWAにて現職。コーヒーにおける科学的な側面から提案、研究・開発をサポート。

取材・文=江原香奈(Neem Tree)