年々、夏の暑さは増すばかり。熱中症を回避するためにも、日中はもちろん寝るときにも、エアコンをつけている人は多いのではないでしょうか。でも、一日中冷房運転状態が続くと、気になるのはやはりその電気代。設定温度を上げたりこまめに消したり、節電には気を遣っていても、実際のところ効果があるのでしょうか?
節約アドバイザーの和田由貴さんに、効果的なエアコンの使い方と、エアコンに関する“思い込み”の正誤を教えていただきました。
夏の冷房、やっぱり電気代がかさむ?
今年も高温多湿の日が続き、東京では平熱を超える気温になる日も。冷房なしでは、命の危険を感じることさえあります。つけっぱなしにしなくてはならないエアコンの電気代は気になりますが、節約アドバイザーの和田由貴さんが最初に伝えておきたいと力を込めるのは、「無理な我慢をしないでほしい」ということ。
「節約や節電を心がけることは、お財布にも環境にもやさしい取り組みですが、それよりも大切なのは、エアコンをつけるのを我慢しないことです。特に夏場は体調にも大きく関わることですから、節約のしすぎには十分注意しましょう。そもそもエアコンは、室温と設定温度に差がある方が電気代は高くなるので、冷房よりも冬につける暖房運転の方が電気代は高いのです。また、冷房はつけても7〜9月くらいの2か月ほど。暖房は11〜3月ごろまでと、長い間つけなくてはなりません。なぜか夏の方がすごくお金がかかると思われていることが多いのですが、そんなことはないんですよ」(節約アドバイザー・和田由貴さん、以下同)
例)
冷房:夏の室温30℃ − 冷房の設定温度27℃ = 差は3℃
暖房:冬の室温10℃ − 暖房の設定温度25℃ = 差は15℃
節約アドバイザーがおすすめする
効果的なエアコンの使い方10
エアコンは、使い方によって体感温度が大きく変わります。室温が適温になっても、体感温度が下がらないと設定温度を下げたくなりますよね。
「冷房は、設定温度を1℃上げるだけで消費電力量が10%節約できるといわれていますから、できるだけ設定温度はぎりぎり高いところに設定したいもの。同じ28℃設定でも湿度が低いと涼しく感じ、湿度が高くなると体感温度は上がってしまうので暑いと感じます。扇風機を併用したり、窓から入ってくる輻射熱対策をしたりして、設定温度が高くても過ごしやすいと感じるようにすることが、電気代の節約になります」
1. 輻射熱で室内が暑くならないよう窓の外によしずなどを使う
部屋が暑くなる大きな原因のひとつは、窓に当たる太陽光の輻射熱。夏場、窓を触ってみるとわかりますが、かなりの熱さになりますよね。窓から直接室内に入ってくる太陽光も問題ですが、輻射熱が部屋を暑くする原因にもなり、いくら冷房を強くしても部屋の中が冷えていかない……ということになってしまうのです。
「カーテンをひいて窓の内側に対策をする方は多いのですが、それよりも窓の外側に対策するのがより効果的です。ひさしやよしず、グリーンカーテンなどでもいいですし、窓に貼るタイプのフィルムでもいいので、窓に日が当たらない対策をしてみましょう」
2. 室外機に日陰を作る
室内には気を配れますが、室外機にはなかなか目が向かないもの。でも実は、室外機の環境によっても冷房の効き目に差が出るのです。
「室内機と室外機はパイプで繋がっていて、その中を“冷媒”と呼ばれるガスが循環しています。この冷媒が室内の熱を運び、室外機にある熱交換器で熱を排出する、というのがエアコンの仕組みなのですが、直射日光が当たっていると十分に冷却することができず余計な電力を使ってしまいます。とはいえ室外機を独断で動かしたり全体を覆ってしまったりすると、故障してしまうこともあるので、今室外機が日陰にないという方は、室外機用の日除けパネルなども売られていますので取り入れてみましょう。木の板を室外機の上に一枚乗せておくだけでも、日光の当たり方は違います。少しでも室外機が熱くならないように対策してみてください」
3. 風量や風向きは自動設定にする
外から帰ってきて部屋が暑いとつい風量を強くしていたり、風量を弱くした方が何となく節電になりそうと思って微風などに設定しているという場合は、ぜひ「自動設定」にしてみてください。
「エアコンは、素早く設定温度まで部屋を冷やすように運転を始めます。風量を弱くしていると部屋が冷えるまでの時間が長くかかり、逆に余計な電力を消費してしまうことがあるのです。風量を“自動”に設定にしておけば、最初は強風で部屋を一気に冷やし、部屋が涼しくなれば自動的に風量を控えてくれるので、効率の良い運転になるのです。風向きも、どこに風を届ければ部屋全体が効率よく冷えるのかを考えて、エアコンが自動的に調整しているので、風向きも自動に設定しておくのがおすすめです」
4. 扇風機やサーキュレーターで室内の温度ムラをなくす
冷房をつけるとどうも足元だけ寒い……という経験はありませんか? これは、冷たい空気が重たいので下に流れてしまうからです。
「エアコンは部屋の上の方についていますから、足元が冷えていても部屋の上部が温かいと、どんどん冷やそうとして活発に動いてしまいます。部屋の中に温度ムラができないよう、扇風機やサーキュレーターで風を回してみましょう。風が流れることで体感温度も下がり、設定温度の下げすぎも防げます。
ちなみに風向きを“自動”に設定しておくと、冷房をつけたとき羽根が上向きになり、暖房は羽根が下向きになります。これは冷房の風はなるべく部屋の遠くまで届くようにし、暖房の風はなるべく下を温められるようにと考えられているからです。冷房の風が落ちてくるエアコンの向かいが冷気溜まりになりますから、そこに扇風機を置くといいでしょう」
5. 室外機のお手入れをする
室外機を覗いてみると、裏側や側面に薄い羽根のような金属板があります。これが熱の交換を行うフィンで、ここに埃や汚れが溜まっていると、消費電力量が上がってしまう可能性があるのです。
「フィンの間に風が通ることで熱を排出しているのですが、フィンの隙間が汚れで詰まっていると十分に冷却ができず、動作効率が落ちて余計な電力がかかります。室外機のフィンの掃除はシーズンごとにはしておきましょう。ただし、フィンは薄いアルミ製なので、余分な力を加えると変形してしまうことがあります。掃除をする際は柔らかいブラシなどを使い、できるだけ力を入れないように注意して扱いましょう」
6. 寝室も窓開けやカーテンで対策する
普段いる部屋は対策をしっかり施していても、日中はいない寝室のカーテンは開けっぱなし……ということはありませんか?
「日中こもった熱が夕方になっても放出できず、いざ寝るときになっても部屋が涼しくならない、ということがあります。寝室のカーテンを閉じたり窓を開けたりして、部屋の中が暑くならないよう対策することが大切です。もちろんよしずなどを使って輻射熱対策もしておきましょう。日中そうしておくだけで、夜寝るときに冷房を使いすぎることなく、部屋を冷やすことができるのです」
7. エアコンの掃除は清掃のプロに頼む
シーズンが始まる時期に、フィルターの掃除や見えるところの埃や汚れの手入れなどは、自分で行う必要があります。それ以外にも、2〜3年に一度はプロに頼んで掃除してもらいましょう。
「エアコン内部を掃除できるスプレーが売られていますが、汚れがひどい場合は奥に汚れを押し込んでしまうことがあるのでおすすめしません。これがカビの原因になったり、汚れによってドレンホースが詰まったりして、室内機から水漏れをする可能性もあります。内部の掃除は必ずプロに頼みましょう。メンテナンスを怠らずに使えば、エアコン自体の寿命も変わってきますよ」
8. 送風運転で汚れをつきにくくする
内部や羽根、フィルターに汚れがついていると、エアコンの消費電力が上がってしまうので、なるべく汚れないように使うのも大切です。
「カビや汚れの原因のひとつは、冷房を使ったあとエアコン内部に湿気が溜まってしまうからなんですね。そこからカビが繁殖するので、冷房を消す前に送風運転を5分ほどしてから消すといいでしょう。送風運転は常温の風を出す運転なので、湿気を取ることができます。上位機種には自動でこの動作をしてくれるものもあります」
9. 室外機の周りに打ち水をする
室外機がうまく内部の空気を冷やせるように、室外機の周囲には打ち水をしましょう。
「日中は水をまいてもすぐにお湯になってしまうので、朝か夕方の暑すぎない時間帯に水をまいて、室外機周辺が少しでも涼しくなるようにしましょう。室外機は外に置くものですから、雨が振っても壊れないよう防水設計はされています。ただし、強い水圧で内部を洗ったり、下から水をかけたり、通常の雨では考えられないような水のかかり方をすると、故障してしまうことがありますから注意しましょう」
10. こまめにつけたり消したりしない
「エアコンをこまめに消すことが節電につながる」と思っているなら、ぜひ今日からあらためましょう。はじめにも書きましたが、エアコンは室内温度と設定温度の差があればあるほど、消費電力がかかるものです。
「28℃設定にしておいて『あー、涼しくなった』とエアコンを切るとしましょう。窓は閉まっていますから、部屋の温度はふたたびぐんぐん上がって行きますよね。体感温度が上がり、ちょっと暑いなと思ってもう我慢できない、というときにまた冷房を入れるとなると、そこからまた冷房ががんばらなくてはならないので、電力を費やしてしまうのです。それよりはずっとつけておき、設定温度から少し上がった時点で、また設定温度に戻るよう自動的に冷房運転が始まる方が節電になります」
巷では、エアコンの使い方に関するさまざまな“ノウハウ”がささやかれています。次のページでは、こうした半ば“常識”になっている節約術の真相を聞きました。