体をふんわり包み込んで、ほっこりと温めてくれるこたつ。最近ではエアコンや床暖房などの便利さに押されがちな存在ですが、あの独特の温もりが好き…という人も少なくないでしょう。
そこで知りたいのは、都市部のマンション生活において、こたつをインテリアにうまく取り入れるコツです。和テイストに偏りすぎず、今のリビングへ自然になじむこたつの選び方、配置の仕方などについて、インテリアトータルプロデューサーのMAKOさんにうかがいました。
CONTENTS
こたつを取り入れる
メリット&デメリットを再確認
最近の都市生活や住宅事情を考えると、残念ながら“少数派”になってしまっているこたつユーザー。しかし、こたつには他の暖房器具にはない独特の魅力があります。
「こたつには、毛布やブランケットのような“まとう”ことで得られる独自のリラックス効果があると思います。同時に、一緒に入っている人との距離感がグッと近づく感覚もありますよね。家族みんなでこたつに入ることで、コミュニケーションが深まるという効果は少なからずあるような気がします」(インテリアトータルプロデューサー・MAKOさん、以下同)
電気代が高騰し続けるなか、エアコンなどにくらべて消費電力が少ないという強みもあります。
「エアコンや床暖房は空間全体を広く温めますが、こたつは自分の近くだけをしっかり温める家電。単身の方や夫婦2人暮らしなど、コンパクトな家で暮らしている方でしたら、暖房はむしろこたつだけで十分というケースもあるかもしれません。フローリングでしたら、マットの下に市販の断熱シートなどを敷くことでさらに暖房効率を上げることもできます」
一方で、導入にあたってはいくつかの懸念事項も。
「いちばんのネックは掃除の面倒さ。敷き布団にはホコリや髪の毛が溜まりやすく、掃除するにはいちいちテーブルを移動して布団をめくって…といった手間がかかりますし、ロボット掃除機も使えません。また、食べこぼしなどでふとん部分を汚す可能性もありますね。
小さなお子さんがいる家庭だと、こたつが遊び場になり、こたつの中におもちゃを隠してしまったり、長時間もぐり込んで低温やけどを負ってしまったりといったリスクもゼロではありません」
こたつを使うなら、まずは自分たちの日頃の生活習慣がひとつの判断材料になりそう。
「そうですね。ただ、汚れたらすぐに洗えるカバーを1枚かける、洗濯機で洗えるタイプのカバーを選ぶ、使わないときには必ずスイッチを切るなど、ちょっとした心がけひとつで、使いやすくすることは十分にできると思います」
“こたつ=家電”ではなく
家具やファブリックとして考える
こたつをスタイリッシュに使いこなすには、最初のチョイスが肝心とMAKOさんはいいます。
「こたつに限らず家電全般にいえることですが、“こたつ=家電”という意識で買い物をしてしまい、形や素材を二の次に考えてしまう人が案外多いんです。家電もインテリアの一部ですから、まずはお部屋全体を見て、どんな色や形の天板が似合うか、どのくらいのサイズなら余裕を持って置けるか、といったことを先に考えておきたいところ」
こたつ本体以上に、うっかりしやすいのがこたつカバー選びです。
「最近のこたつカバーにはおしゃれな柄物もたくさん出ていますが、柄の好みだけで選んでしまうのは危険。こたつの布の分量は、お部屋全体からするとカーテンやラグに匹敵するレベルなので、ここで柄物を選ぶとかなり印象が強くなります。柄を選ぶときは、他のファブリックとけんかしないように、色の調和や統一感まで考えるようにしましょう」
一方、無地のカバーだからといって安全とも限らないようです。
「仮に欲しいサイズの手頃なものが見つかって、そのカラバリが3色あるとしましょう。このとき自分の好みだけでなんとなく色を選んでしまうと、いざお部屋に入れたらイマイチ合わなかったということが本当によくあるんです。
ソファのカバーリングだったらいろんな商品を見て色や素材を検討するのに、こたつカバーの場合は使う季節が限定されるからなのか、“このくらいでいいや”という意識になりがち。こたつをおしゃれに導入したいなら、空間全体を引きで見る視点が大切になってくると思います」
意外な盲点としては、こたつカバーの“厚み”にも注意したいところ。
「こたつの大きさは、カバーの厚みでもだいぶ変わります。厚すぎると想像以上に圧迫感が生じ、部屋が狭く感じられてしまいます。かといって薄い布団にしてしまうと今度は熱が逃げてしまう。こういったバランスを考えることも大事です」
いざ、こたつにカバーをセットしたときに、どのくらいの“広がり”があるのか。カバーを選ぶときには、これを見積もっておくことも大切なポイントといえそうです。
インテリアのプロ直伝!
こたつコーディネートの6つのコツ
それでは、こたつをおしゃれに導入する具体的なコツを、昨今のトレンドと絡めながらみていきましょう。
1.スタイリッシュさ重視派なら、すっきりした長方形
「昔のこたつって、天板がすごく分厚かったり、角を落としてアールをつけているものが多かったんです。今は同じ長方形でも角を残したすっきりとした形になっていたり、北欧家具のように脚を細くしていたり、リビングテーブルとして一年中使えるような、“こたつっぽくない”こたつが人気。
天板の色や木目の風合いで印象がガラリと変わりますから、今のリビングにある他の家具と同じような色や風合いのものを選ぶようにしましょう。そうすれば自然となじみます」
長方形のメリットは、部屋の広さに関わらず取り入れやすいこと。
「部屋のすみに寄せたとしても四辺を無駄なく使えるので、置けるスペースが限られている場合でも長方形が使いやすいと思いますね。また、こたつカバーのバリエーションも比較的多く揃っているので、自分のお部屋に合うものを見つけやすいというメリットもあります」
2.おしゃれでやさしい印象を与えたいなら円形
「ここ10年くらいのトレンドになっているのが、円形のこたつ。間口が広くどこにでも座れて、見た目のおしゃれさや雰囲気のやわらかさなど、長方形にはない魅力があります」
薄い天板や細めの脚といったディテールのトレンドは、長方形とほぼ同じ。ただし、円形にはちょっとした留意点も。
「置く場所にある程度の広さの余裕がないと、360度どこでも座れるというメリットが生かせず、部屋全体のバランスを見ても窮屈になってしまいます。
また、円形こたつのカバーは長方形のものに比べると選択肢が少ないのも注意したいところ。専用のこたつカバーが毎年数種類リリースされているブランドもあるので、そういったものを見つけてセットで購入するのも一手だと思います」
3.存在感を控えめにしたい&部屋が狭いなら楕円形
「楕円形のこたつは、角がないぶん存在感が控えめに感じられるのでわりと人気があります。単身の方でいつもひとりで使用する、あるいは6畳くらいの空間にちょっと置きたいという場合も、小さめの楕円形なら圧迫感がなくて取り入れやすいんです」
ちなみにひとり用のごく小さなサイズの円形こたつや、イスとセットで使える“デスク型こたつ”のような商品もありますが…。
「もちろん、それもひとつの選択肢。ただ個人的には、天板があまり小さいとこたつ布団もコンパクトになるので、こたつ本来の魅力である布団を“まとう”ようなリラックス感が半減してしまう気がしますね」
4.こたつ布団は柄より素材感で選ぶ
「昔のこたつ布団はそれこそ“綿、一択!”のような感じでしたが、最近はそんなこともありません。特に“とろふわ”と形容されるような、肌触りのいい起毛素材はよく見かけますね。無地でもキルトとかコーデュロイのような凹凸感のあるものを選ぶと、見た目の暖かさもプラスされて雰囲気よく見えると思います」
5.こたつ布団でお部屋にアクセントをつける
「私のお客様で、毎年こたつカバーを変えて模様替えを楽しんでいらっしゃる方がいます。普段はカーテンやソファをナチュラルな色で統一しておいて、冬になったらこたつカバーで暖色や温かみのある柄をプラスする、といった楽しみ方も素敵だと思います」
6.ソファとこたつを合わせるなら距離に余裕を持つ
冬になったら、ソファテーブルをそのままこたつにチェンジするのもよくあるケース。失敗しないコツとは?
「ソファとテーブルの間の距離に余裕を持って置くことですね。こたつの天板やラグのサイズは、こたつカバーを掛けたときの広がりを考えて選ばないとスペースが窮屈になってしまうことも」
「また細かいところでは、ソファのひじ掛けや脚などにウッドが使われている場合、こたつの天板もそれと同じような色調で合わせておくとより統一感が出ておしゃれだと思います」
こたつインテリアで
冬を暖かく楽しむ
「普段、首都圏のお宅でコーディネートをさせていただいている私の実感として、都市部の20〜30代で賃貸にお住まいの方のこたつの利用率は、意外と低いのかなと感じています。
ただ、都心部の賃貸マンションなど暖房の選択肢が限られる住まいにおいて、消費電力が少ないこたつは魅力的な家電。今のインテリアを大きく変えずに取り入れられる、“こたつっぽくない”雰囲気のこたつは、有力な選択肢のひとつになるのではないかと思います」
普段の家具選びと同じような感覚で楽しめるのが、モダンなこたつ探しの魅力のひとつ。この冬を暖かく過ごすためにも、ぜひ視野に入れてみてはいかがでしょうか。
Profile
インテリアトータルプロデューサー / MAKO
Laugh style代表。モデルハウスやサロン、オフィス、ホテル、個人宅のインテリアコーディネート・スタイリングをベースに、近年では法人企業とコラボレーションして商品や店舗のプロデュースを行う。日テレ『ヒルナンデス』、TBS『Nスタ』、フジテレビ『めざましテレビ』他、ラジオ・雑誌・WEB等数多くのメディアに出演。また、大手住宅メーカーでのセミナーや、日本経済新聞など活字メディアへの寄稿など、幅広く活動中。
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取材・文=小堀真子