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工夫次第で年中快適に!冬は暗くて夏はまぶしくて暑い…
西向きの部屋の西日対策インテリア

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部屋を選ぶ際に、窓の方角や日当たりを重視する人は多いでしょう。明るい南向きの部屋は人気ですが、西向きの部屋にも美しい夕日が見られるというメリットがあります。しかし西向きの部屋は、午前中に日が入りにくかったり、夕方になると西日がまぶしくなったりするのも事実。

今回は、インテリアコーディネーターの朝比奈菜々子さんに、西向きの部屋で快適に過ごすためのインテリア選びのコツを教えていただきました。

西向きの部屋の特徴は?

最初に、西向きの部屋にはどのような特徴があるのかを確認しましょう。

「大きな特徴は、午後から夕方にかけて日光が入るということですね。そのため、冬は一番気温の上がる時間帯に日が入るので、ほかの方角の部屋よりも暖かく過ごすことができます」(インテリアコーディネーター・朝比奈菜々子さん、以下同)

反対に大きなデメリットは二つ。一つは、朝日が入りにくいことです。

「朝になっても部屋が暗いとすっきりと目覚められないですよね。日照時間が短い冬の時期は、特に気になると思います。さらに、ほかの建物が隣接していると、窓が建物の影に覆われてしまい、朝だけでなく一日中光が入りにくい場合があります。
反対に駐車場や公園、幅の広い道路などに隣接し、視界が開けている場合や、高層階で遮るものがない場合は、西向きの部屋でも建物に影ができず、光も入りやすくなるでしょう」

ちなみに、朝の時間帯に光が入らないことは、仕事の都合などで夜型の生活をしている人にとっては、早い時間帯に目が覚めずに済むというメリットになります。

そして二つめのデメリットは、夏になると西からの強い日差しにより熱がこもりやすいことです。

「特に築年数が経っている建物は、サッシや断熱材が劣化していることがあり、その場合、夏は湿度が高くなります。また、西側の窓のひさしの出が少ないと光を遮断できず、部屋の温度も上がるでしょう。自然とエアコンを使用する頻度が増え、電気代がかさんでしまいます

西向きの部屋の特徴がわかったところで、次からは冬と夏それぞれのデメリットを補うお部屋作りのコツをご紹介します。

日照時間の短い季節も明るく!
冬を快適に過ごすお部屋作りのコツ6つ

まずは冬です。午後に光が入りはするものの、日照時間が短く部屋が暗い時間が長くなる季節。この時季を明るく過ごすには、どのような工夫をするとよいのでしょうか。

1壁の色を明るくする

「まず大切なのは、部屋の中で面積が大きい部分の光の反射率を上げ、部屋に光が回るようにすること。壁の色が暗ければ、ライトベージュやライトグレー、ホワイト系など明るいトーンのクロスを貼ったり、DIYが可能な物件なら好きな色にペイントしたりするとよいでしょう」

2家具の色を明るくする

「壁の色を変えるのが難しければ、机やダイニングテーブル、ソファなどの大きな家具を明るいトーンの色にすると部屋も明るくなります。明るい色のラグを敷くのもよおすすめです」

3.大きい鏡を置く

「実際の光量が増えるわけではありませんが、大きな鏡を置くと光が鏡に当たって乱反射し、部屋全体が明るく感じられるように。窓に向けて置くと反射しすぎてまぶしくなるので、直接光が当たらない場所に置きましょう」

4.アートを飾る

「大きくて明るいトーンのアートを使って光の反射率を上げる方法もあります。アートを壁に掛けたり、床に置いたりしてみるとよいでしょう」

5.光量が増すカーテンを付ける

「光を拡散させる効果のあるカーテンを取り付けると、日の当たる時間帯は部屋全体が明るくなります。おすすめは、川島織物セルコンさんの採光拡散機能のあるレースのカーテン。織物の設計が工夫されており、太陽光のまぶしさを抑えるだけでなく、光を拡散させることもできるので、通常のレースのカーテンよりも室内の明るさの偏りを減らせます」

川島織物セルコン「FT7616
8700円/m(2900円/㎡)(税別)
ソフトな風合いが楽しめる、ボイル生地を使用したレースカーテン。とろみとふんわりとした素材感が特徴で、柔らかな空間を演出してくれます。

6.間接照明を置く

「朝から明るいシーリングライトを点けるのに抵抗があるという方は、インテリアに合うような主張の少ない間接照明を使い、空間そのものを間接光で明るく照らしましょう。プラグに挿すだけのものを選べば施工もいらず、気軽に導入できますよ」

そして朝比奈さんのイチオシがこちらです。

KANADEMONO「Smart Minimal Bar Light
4万700円(税込)

「シンプルなデザインで空間への馴染みがよく、部屋のすみに置いて壁を2面照らしたり、大理石の台座を外して横向きに寝かせ、アッパーライトとして照らしたり、さまざまな使い方ができるんです」

台座を外して横向きに置いたところ。

光は色によって感じ方が変わるため、時間帯によって照明の色を変えるのもおすすめとのこと。

「自然光に近い光を浴びることで、体と心のリズムが整います。朝は青白い明かりを高い位置から当てると、目覚めやすく集中して作業ができるようになりますし、夕方以降は低い位置に夕日のような電球色の灯りを置くと、副交感神経が優位になり、メラトニンという睡眠ホルモンが分泌されて入眠しやすくなりますよ」

また、間接照明は複数個置いても構わないとのこと。置き型照明を使い、壁面のグリーンやアートを照らしたり、家具の後ろに置いたりして、空間のドラマチックな変化を楽しんでみましょう。

過度な暑さを和らげ心地よく!
夏を快適に過ごすお部屋作りのコツ3

夏は冬よりも日照時間が増えて部屋が明るくなるものの、日中最も気温が高い時間に西日が入り、室内の温度が過度に上がってしまいます。そこで、インテリアによって暑さを和らげる方法も教えていただきました。

1.カーテンにこだわる

「遮熱効果のあるカーテンはたくさん出ていますが、カーテンの裏にフィルムが貼られているような『遮熱+遮光効果』のあるカーテンは、光が遮られ過ぎてしまいますし、意匠性もさほど高くありません。そこでおすすめしたいのが、光を通しながらも遮熱でき、かつ風合いのあるカーテンです」

マナトレーディング「遮熱・UVカットカーテン<アクアリオ>
5200円/m(3570円/㎡)(税別)
遮熱・UVカット効果を持つ繊維を工夫して織った、質感にもこだわったカーテン。表面に光沢を与える強めのチンツ加工と、ソフトクラッシュ加工を組み合わせることで生まれた濡れたような艶が魅力です。

「使われているのは、遮熱効果がありながら生地を透ける光の表情も楽しめるファブリック。遮熱率25%以上を基準としているので、省エネ・節電効果が期待できます。マナトレーディングさんの遮熱・UVカットシリーズは、アクアリオ以外にも生地そのものの風合いを生かした意匠性の高いカーテンが豊富に揃っています」

2.遮熱シートを窓に貼る

遮熱カーテンのほかには、同じく光を通し熱は通しにくい「遮熱シート」が効果的とのこと。朝比奈さんおすすめの遮熱シートはこちらです。

3Mジャパン「3M ウインドウフィルム 遮熱フィルムNANO80S
1万9500円/㎡(税別)から※設計施工価格

「見た目は透明度の高いシートですが、ナノレベルの薄い膜が200層以上も積層されていて、金属膜を使わずに暑さの原因となる近赤外線を遮断してくれます。さらに、紫外線も99%カット。不快な熱がカットされ、室内が非常に快適になりますよ」

ただし窓ガラスの種類によっては、遮熱シートを貼るとガラス面内で温度差が発生し、ガラスが割れてしまう可能性も。

「必ず、業者さんに熱割れ計算を依頼して、問題なく使えるか確認してくださいね」

3.ブラインドをつける

「遮熱だけでなく、日よけも一緒に叶えたいならブラインドを。ブラインドにはスラット(羽根)の向きが縦のものと横のものがありますが、おすすめは横型タイプ。これならスラットの向きを西日が直接目に入らない向きに調整できます

ブラインドは、一般的にスラットに昇降コード(紐)を通す穴が開いていますが、最近は光漏れを防ぐために穴を開けていない商品も登場しているそう。さらに、これまで無機質な印象の強かったアルミブラインドも、最近は質感や色の種類が豊富になっています。

マットな塗装が施されているものなどを選ぶとインテリアとの馴染みがよくなります。昇降コードの質感や色、パーツの素材も部屋に合わせて選んでみてください」

湿気対策には
調湿効果のあるクロスを使う

西向きで隣の建物と近い部屋の場合、日当たりだけでなく、通風や換気の面でも問題が出てきます。じめじめした季節は特に湿気が溜まりやすいため、湿気対策も必要です。

「湿気対策におすすめなのが、珪藻土やLIXILさんの『エコカラット』のクロスです。壁に貼ることで空気中の湿気を吸収してくれますよ」

さらに調湿効果だけでなく、消臭や防カビ効果があるものを選べば、貼るだけでさらに快適な空間をつくれるそう。賃貸住宅の場合は、取り付けが可能かどうか、物件や商品を確認してから活用しましょう。

植物好きは要注意!
植物が育つ環境か確認しよう

植物を部屋に置きたいという人も多いと思いますが、西向きの部屋で植物を育てることはできるのでしょうか?

「西日の強い部屋で植物を育てることは、あまりおすすめしないですね。サボテンなど水枯れしにくい植物もありますが、基本的には、植物は午前中に光を当てたほうがいいからです。
西日が強く午後も光が当たり続ける環境は、根腐れや菌の繁殖による病気の原因になるので、植物にとってよい環境とは言えません」

どうしてもグリーンを置きたい場合は、割り切ってフェイクグリーンにするのがおすすめだそう。

実際に住んでみたら、西日が盲点だったとあとから気づく人も多いでしょう。ぜひこれらの工夫で光や熱の問題を解決し、住み心地のよいお部屋づくりを楽しんでみてはいかがでしょうか。

Profile

インテリアコーディネーター / 朝比奈菜々子

二級建築士、インテリアコーディネーター。ファブリックメーカー開発室、建築設計事務所勤務、照明メーカーでプランナーを経験後、インテリアコーディネーターとして戸建、マンション案件等を担当。イタリア家具ブランド店長を経て、コーディネーターとして独立。理想の過ごし方を叶えるプランニングと心地よい空間を提案している。
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取材・文=清水由香利(Playce)