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あなたの適正量は何着?ワードローブを無駄なく活かす
クローゼット収納術

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暖かな日差しが降り注ぎ、服選びが楽しい季節がやってきました。しかし、クローゼットが整理整頓されていないと、自分がどんな洋服を持っているのか、全体を把握できず、ワードローブを活かしきれなくなってしまいます。

そこで今回は、整理収納アドバイザーの鈴木くみこさんに、おしゃれを楽しむためのクローゼット収納術を教えていただきました。鈴木さんは、整理収納のサポートを行うかたわら、テレビ出演や講演会登壇なども行なっており、そのときの衣装はご自身で選ばれているそうです。

大切なのは「自分の洋服を大切に管理すること」

クローゼット収納のコツをうかがうと、「クローゼット収納に特別なテクニックは必要ない」と話す鈴木さん。それよりも大切なのは、“自分の持ち物を把握し、大切にする習慣”だと言います。

「持ち物を把握し、大切にする習慣が身についていなければ、せっかく整理しても日々の生活のなかで服が乱れ、結局は元の木阿弥になってしまいます。その習慣を前提に、着るだけでなく、“洗う・しまう”までをセットで考えた、出し入れしやすいクローゼットを作りましょう」(整理収納アドバイザー・鈴木久美子さん、以下同)

「みなさんは、ストッキングを収納するときに結んでしまっていませんか? 実はこれ、ストッキングの劣化をまねくしまい方なんです。なぜならゴムがのびてしまうから。
お客様のご自宅で、こういった雑に扱われたストッキングをよく見かけます。そしてそういった方のクローゼットは大抵、乱雑に収納されたアイテムであふれ、使いたいときに必要なものが見つからない“ブラックボックス状態”に陥っています」

下段はストッキングや靴下を傷めるしまい方。上段が傷めないしまい方。

鈴木さんによると、ストッキングを傷めないためには、“結ぶ”のではなく、写真の左上のように“畳む”のが正解なのだそう。

「『ストッキングまで畳まなければならないの?』と驚かれるかもしれませんが、実は結ぶのも畳むのも、手間はそれほど変わりません。慣れてしまえば、無意識にできるようになります。
こういった小さな習慣が整理整頓されたクローゼットを作り、それが日々のコーディネートを生み、ひいてはその人自身を形作るのだと思います」

無駄なく活かすための
ワードローブの適正量は?

鈴木さんは、クローゼット収納に悩む人に共通するのが、「スペース以上の量を収納しようとしていること」だと言います。

「ハンガーを1〜2cmほどの間隔でぎゅっと詰めてかけたり、連結ハンガーを使ったりして、適正量以上の服をしまおうとしている人が多いんです。多すぎると、一時的にはしまえても、洋服の確認がしにくく、戻すのも大変。結局、ワードローブを活かせなくなってしまいます」

それでは、管理しやすい状態を維持できる洋服の適正量はどれくらいなのでしょうか。

「適正量は、仕事や趣味、管理能力によって異なるので一概には言えませんが、おおよその目安は、ハンガーバーの長さを3で割った数。1mのハンガーバーであれば、100 ÷ 3 =で約33着。この量なら、“見やすく・取りやすく・戻しやすい”状態をキープできるので、洋服が埋もれたり乱れたりすることがありません」

収納のプロはどうしまう?
クローゼットを公開!

せっかくなので、鈴木さんのご自宅のクローゼットを見せていただきました。

「私はクローゼット、ベッド下収納、リビングにあるサイドボードの一部を使い、バッグなどの小物も含めた全ワードローブを収納しています。クローゼットはさほど大きくなく、メインとなる1mのハンガーバーが1本、左側に40cmのハンガーバーが2本、計180cmのハンガーバーを備えたものです。それを主人と90cmずつに分けて共有しています」

鈴木さんによると、クローゼットを誰かと共有する場合、お互いが気持ちよく管理できるようにするには「平等に分ける」のがコツなのだそう。

「クローゼットに関しては、男性よりも女性のスペースを広くとっている家庭が多いでしょう。しかしそれだと、たとえば男性の持ち物が増えてきてそれを指摘した場合、『でもスペースはあなたの方が優遇されているよね』と言われ、指摘を受け入れてもらいにくくなってしまいます。しかし、スペースを平等にしていれば、そういったことを避けられます」

鈴木さんは、持っている洋服の9割をクローゼットに収納し、残りをベッド下に、バッグやアクセサリーはリビングに収納しているそうです。

「ハンカチなどの小物から厚手のコートまで。多種多様なものを大きな空間にひと目で分かる状態で収納するには、カテゴリー分けが大切。そのときにあると便利なアイテムとともに、クローゼットをご紹介します」

1.よく使う1軍だけが並ぶ「ハンガーバー」

「計180cmのハンガーバーを主人と等分しているので、私の持ち分は90cm。そこに普段よく着る約30着をジャケット、ワンピース、ボトムスのように、カテゴリーに分けてかけています」

【便利アイテム】統一したハンガー
「ハンガーには、木製・プラスチック製・アルミ製・金属にシリコンコーティングされたものなど、さまざまな種類があります。背広や冠婚葬祭用のスーツなど立体的な衣服には木製、洗って干したまま収納する場合はプラスチックやアルミ製など、用途に応じて選んで問題ありません。
ただし、ハンガーの種類はカテゴリーごとに統一させること。そうするとハンガーバーで無駄なスペースが発生せず、効率よく収納できます」

2.出番の少ない2軍の服を畳んでしまう「引き出し収納」

「引き出し収納のメリットは、省スペースで多くの衣類を収納できる点です。より使いやすくするためのポイントは、上から衣類を見渡せるよう立てて収納すること。これで必要なものをすぐに確認できます」

【便利アイテム】不織布の仕切ケース
「高さを調整できる不織布の仕切りケースは、100円ショップなどで手軽に購入でき、サイズ展開も豊富。収納するアイテムに合わせケースを選び、シンデレラフィットを目指しましょう」

・1段目……靴下、ストッキング、ハンカチ

「引き出しの中を不織布で仕切り、右から順に靴下、タイツ・ストッキング、ハンカチ類とカテゴリーごとに分けます。ハンカチは、折り目が見えるように立てて収納すると、見た目が美しくなり、モノを大切にする気持ちも育ちます」

・2段目……2軍のトップス

「大きめの不織布の仕切りケースで引き出しを前後に仕切り、手前にシーズン中のトップス、奥にオフシーズンのトップスを収納。これなら、ケースを入れ替えるだけで衣替えができます。薄い色から濃い色へとグラデーションをつけながら、立てて並べることで、見やすさにも配慮しています」

・3段目……2軍のボトムス

「3段目には、使用頻度の低い2軍のボトムスを畳んで収納。こちらもトップスと同様に、手前にシーズン中のもの、奥にオフシーズンのものや撮影のときに履く色味のあるボトムスを収納しています」

3.2軍の小物類を保管「手付きボックス」

「ハンガーバーの上段には、取って付きのボックスを3個並べています。中身は右から、使用頻度の低い2軍のバッグ、主人の季節もの衣類、冠婚葬祭用のバッグなど。大きめの取って付きボックスを使うことで、中身を出し入れしやすくしています」

【便利アイテム】取って付きボックス
「高所の収納は、軽量かつ上段から取り出しやすい取っ手付きタイプがおすすめです。バッグなどをぽんと入れられるように、適度に大きいものを選ぶとストレスなく管理できます」

4.よく使う1軍バッグ「リビング収納」

「家族と過ごす時間が多いお母さんなど、自分の部屋を持っていない方も多いのではないでしょうか。クローゼットにすべてのアイテムを収納するのもよいですが、財布やスマートフォンなど、よく使うものが入ったバッグは、長く過ごすリビングに収納すると、クローゼットに取りに戻る手間が省けて便利。私は、着替えのあとにコーディネートを考えることが多いアクセサリー類もリビングに収納しています」

デッドスペースを活用!
自分で作る収納スペース

クローゼットは、つくりに大きな違いはないもののサイズは様々。家族で共有している場合、クローゼット内に洋服が収まりきらないこともあるでしょう。そんなときに便利なデッドスペースを活用した収納アイデアも教えていただきました。

1.クローゼットの奥の壁に出番の少ない服をかける

「セレモニー用のセットアップや冠婚葬祭用のワンピースなど、出番が少ない服の保管には、クローゼットの奥の壁面収納がおすすめです。
一般的なクローゼットは、ハンガーバーの奥にこぶし1個分ほどのスペースが余っているので、フックを付ければ収納スペースとして使えます。ここなら出番の少ない洋服もハンガーにかけたままきれいな状態で保管できます」

2.トラベルケースでダウンを保管

「引き出し収納と壁の隙間や、引き出し収納の上など、クローゼット内に生じるデッドスペースには、トラベルケースを使った収納がおすすめ。ダウンなどのかさばる衣類も、空気を抜いて入れれば意外とコンパクトに収まります。ちなみに衣類の保管には、通気性のよいメッシュタイプのケースが適しています」

4.壁のデッドスペースを洋服の一時保管場所に

「各部屋の扉の横や玄関脇など、壁のちょっとしたスペースにフックを取り付け、一時保管場所を作るのもおすすめです。フックを目につく場所に付けることに抵抗がある方もいますが、1〜2個を空間に余裕を持たせて設置すれば見た目が悪くなることはありません。自分の普段の動線上に配置すると、より便利に活用できます」

5.跳ね上げベッドでベッド下を有効活用

「私は、オフシーズンの洋服の一部をベッド下に収納しています。ベッド下収納に対し、使いにくくホコリがたまりやすいというイメージを持つ方が多いのですが、跳ね上げ式ベッドであればその心配はいりません。片手で簡単に開けられ、収納全体を見渡せるところも便利。私は、替えの布団やソファーカバーなどもここに入れています。ベッドを買い替えなければならないので大掛かりにはなりますが、部屋が狭く、収納スペースが限られている方には、ぴったりの収納方法です」

「自分が洋服を何着持っているのか把握していない人が多い」と話す鈴木さん。数を意識しなければ、モノは増える一方で、管理もどんどん難しくなってしまいます。

「ちなみに私は、数年前に買わないときめたものがあります。それは『ボリュームニット』です。見た目がかわいいのでつい購入するのですが、しまうときにスペースを取る、毛玉ができやすい、洗濯がしにくいといったデメリットがあり、いつのまにか出番が減ってしまい、タンスの肥やしになっていたからです。
このように、自分のライフスタイルに合わないものは、たとえ見た目が気に入っても購入しないと決断する勇気も大切です」

まずは、自分の収納スペースの適正量を見極めること。洋服を適正量にしぼって、見やすく取り出しやすい形で収納すれば、お気に入りのワードローブを無駄なくいかせるはず。整理整頓されたクローゼットで、春のおしゃれを楽しみましょう。

Profile

整理収納アドバイザー / 鈴木久美子

これまで1000件以上の整理収納サポートや片付けを行う、経験豊富な片付けの専門家。個人宅の訪問サポートだけではなく、オンラインでのアドバイスも行う。整理収納アドバイザー1級・住宅収納スペシャリスト・クリンネスト1級、整理収納アドバイザー2級認定講師資格を持ち、アドバイザー育成にも携わる。『ズームイン!!サタデー』『ZIP』『ラヴィット!』『Nスタ』『ノンストップ』といったテレビの情報番組など、メディア出演も多数。
HP

取材・文=加賀美明子(Neem Tree) 撮影=鈴木謙介