SDGsに適う暮らしは誰もが「いいね!」と思う。それを行動に起こすこと
元木:阪口さんとお話していると、その“行動力”にも驚かされます。いい意味で少年のままというか(笑)、本当に「やる」か「やらない」かの判断がスピーディですよね。
阪口:ありがとうございます(笑)。地方自治体からも「うちの〇〇を使って欲しい」って声がかかるので視察ツアーに参加すると、ほとんどの参加者が「いいですね」で終わるんです。僕の場合は、そこで計算して採算が合えば「今、買うわ」って取引しちゃいます。
「みんなでみらいを」の中にある「椿と黒文字のスキンケアオイル」という商品も、石川県能登半島に椿があるけど何もしてないって言うから地元の人に摘んでもらって、椿オイルを抽出してもらうことにその場で決めたんです。でも能登半島にある椿だけじゃ商品化するまでにはちょっと足りなかったので、伊豆諸島の神津島の町長さんに「椿ある?」って聞いたら「ある」と。じゃあそっちも買うよ! と。半年で商品化することができました。
元木:すごい(笑)。米ぬかの後は、椿オイルですね。日本の素晴らしいものを自然のまま商品化していくなんて、本当に素晴らしい。でも、一緒に働いている社員さんは驚かれないですか?
阪口:もう慣れてますね(笑)。それに、うちの社員はもちろん、一緒に取り組んでいる商社や百貨店、取引先もひとつのチームという感覚なんです。だって、百貨店だって僕の商品を扱うことで給料をもらえているわけですから。もちろん「みんなでみらいを」の商品だけを取り扱っているわけじゃないけど、一緒に盛り上げていこうよと思っています。
元木:チームで取り組むなんて最高ですね。これから阪口さんがやってみたいことはどんなことでしょうか?
阪口:衣・食・住に関わっていきたいです。ずっと化粧品をやりたいわけじゃないんです(笑)。化粧品のような生活消費財は、市場にも浸透しやすい、ニーズが高いということで始めていましたが、違う業界でもどんどんやっていきたいと思っています。「住」の話だと、今、自分で家を建てているんですよ!
元木:え、家をですか!?
阪口:“タイニーハウス”って、DIYで作れるレベルの家です。国産木材を使って、土地さえあれば、材料費はたったの100万円で作れちゃいます。造りもしっかりしているし、自分でDIYするから愛着も出てきます。数年経って「あぁ〜ちょっとここが傷んでるなぁ」となれば自分で補修もできる。これをひとつのパッケージにして販売しようと考えています。
元木:なんと100万円! 最近では都内にいなくても仕事ができる時代に急に変化したので、この“タイニーハウス”は流行りそうですね! 友達とのシェア別荘にしても楽しそう。
阪口:いいですね。あと「衣」でいうと、パイナップルで作った靴を売り始めました。
元木:パイナップルには見えない!
阪口:でしょ? おしゃれなんですよ。サステナブルなファッションとして注目をいただき、おかげさまで発売以来たくさんの注文をいただいています。けれど、大量生産はしたくてもできないので、数量限定になってしまうんです。
元木:数量限定であれば、さらに価値がついて話題の商品になりそうですね。
阪口:そうですね。「食」についてもさまざまな企業さんと展開を進めていますが、サステナブルな企画って、誰が聞いても「いいね!」とか「やってみたい!」ってポジティブな共感を得られるんです。環境にも生物にも経済にもうれしい、まさに“三方良し”な世界に変えるためには、「すごいなー」「いいなー」で終わらせないことですね。僕でもやれているんだから、他の人もやればいいだけのことなんです。
Profile
フロムファーイースト 代表取締役 / 阪口 竜也
2003年、有限会社エクステンド(現フロムファーイースト株式会社)設立。2010年、エクステンション事業を売却し、作れば作るほど使えば使うほど体と環境が健康になる事業「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』では、大賞を受賞した。
みんなでみらいを https://www.minnademiraio.net/
ブックセラピスト / 元木 忍
学研ホールディングス、楽天ブックス、カルチュア・コンビニエンス・クラブに在籍し、常に本と向き合ってきたが、2011年3月11日の東日本大震災を契機に「ココロとカラダを整えることが今の自分がやりたいことだ」と一念発起。退社してLIBRERIA(リブレリア)代表となり、企業コンサルティングやブックセラピストとしてのほか、食やマインドに関するアドバイスなども届けている。本の選書は主に、ココロに訊く本や知の基盤になる本がモットー。
文=つるたちかこ 撮影=我妻慶一