近年おいしさが見直されて、ブームが続いているバター。スイーツにも、人気の「バターサンド」をはじめ、赤城乳業の「かじるバターアイス」やローソンの「飲むバター&ミルク」など、バターそのものの味を楽しむ商品も多く登場しています。また、固形のバター状ブロックを最後に入れて食べる、バターを楽しむためのラーメン「じわとろ 海鮮バター味ラーメン」(エースコック)なんて商品も!
バターは実は栄養豊富!?
バターは乳脂肪分や約80%と脂質が多く、なんとなく太りそう……というイメージも強いのですが、実はカロリーもオリーブオイルや胡麻油など他の油脂よりも低いとされています。そして、肌や粘膜を健やかに保つビタミンAが豊富。また、カルシウムの吸収を促進するビタミンDや、老化を防ぐビタミンEも含んでいます。
やはり魅力は香りとコク
でもバターの魅力といえば、なんといっても他のオイルに勝る、香りとコク! そしてバターを多く使う料理といえば、フレンチ。フランスは、バターの消費量世界第1位の国でもあります。
今回はそんなバターをたっぷり使って、フランスを感じられるレシピを紹介しましょう。フランスへの留学経験を経て、ル・コルドンブルーで学んできた経験を活かし、仏料理教室を主宰している西丸かおりさんに、基本的なバターの選び方とレシピを教えていただきました。
今回使うバターは「発酵バター」と「カルピスバター」
バターにはさまざまな種類がありますが、大きくは「発酵しているか・していないか」と、「塩が入っているか・入っていないか」の2つで区分できます。スーパーなどで手に入る通常のバターは「発酵していないバター」で、有塩のものと無塩のものがあります。発酵させたバターには「発酵バター」という名称がついていて、原料となるクリームを発酵させてからバターにしています。
バターの種類
・無塩バター
……製造工程で塩分を添加せず、「有塩バター」に比べて塩分をほとんど含まないバター。生乳だけを原材料としており、お菓子作りやパン作り、料理に多用されます。
・有塩バター
……製造工程で塩分を添加した加塩バター。保存性を高められるほか、料理に塩味をつけることができます。メーカーによって異なりますが、おおよそ1.5%の塩分を含みます。
・発酵バター
……ヨーロッパで主流のバター。乳酸菌発酵によってバター本来の甘みに、ヨーグルトのようなさわやかな酸味と独特な香りが加わって、昨今日本でも注目されています。
「発酵バターには発酵させた酸味があり、バターをそのまま食べるときにも向いている味です。爽やかな味なので、コクがありながらもあっさりしています。フィナンシェやマドレーヌなどの焼き菓子に使うのもおいしく、とても香り豊かに焼き上がります」(仏料理教室「西丸料理教室」主宰・西丸かおりさん、以下同)
また、今回のレシピではカルピスバターも使用。
「これはカルピスを作る工程でできる乳脂肪分を使ったもので、バターの王様とも言われています。見た目が真っ白で、ミルキーな味です。値は張りますが、今回のようなバターを引き立てたい料理にはぜひ使いたいおいしさです。
バターといえば、有名な『エシレ』を筆頭にフランスのものがメジャー。一方で、国産のものは発酵していないものが多く、クセがなくて、どなたにも食べやすいんですよ」
海外の珍しいバターでおすすめは?
西丸さんにおすすめのバターを教えていただきました。海外食材を取り扱うスーパーで手に入るそうです。
「まずは、フランスの超一流チーズ熟成士が作る、『DOLPHE LE MEUNIER(ロドルフムニエ)』のバターです。無塩タイプは、コクと濃厚なミルクの香りを楽しめます。もうひとつはマダガスカル産のワイルドペッパーを練り込んだもので、このままステーキや魚にのせるのがおすすめ。左の『PUR NATUR』はベルギー南部の発酵バターです。大量生産ではなく、伝統的な昔ながらの方法をたった2人の職人だけが継承して作っているという特別なものです。
ヨーロッパのバターは発酵していることが一般的なので風味がよく、作り手によっても味が違います。バターを変えるだけで料理の味もぐっと変わりますから、いろいろ試してみると楽しいですよ」
では早速、バターをたっぷり使ったレシピを教えていただきましょう。焼き菓子「黒胡麻のカトルカール」、バターを冷やし固めた「レーズンと発酵バターのアミューズ」、ソースにバターをたっぷり使った「サーモンのアマンディーヌ」の3種です。
たっぷりのバターはやっぱり焼き菓子で!「黒胡麻のカトルカール」
カトルカールとは、フランス語で“1/4 が4つ”、という意味。小麦粉・バター・砂糖・卵の4つの材料を1/4ずつ入れて作ります。焼き上がりにはバターの香りがいっぱいに感じられ、一晩置いておくと、しっとりとしたバターの旨みを味わえるケーキです。
「4つの材料だけで焼くカルトカールは、いわばおばあちゃんの味のような、フランスでは伝統的な焼き菓子です。今回はそこに黒胡麻をたっぷり入れ、練り胡麻で作ったクリームを添えました。セミドライのいちじくやプルーンなどを入れてアレンジするのもおすすめです」
【材料(7×18×深さ5cmのパウンド型1台分)】
・黒胡麻……25g(うち5gは擦る)
・バター……100g
・グラニュー糖(卵黄用)……70g
・卵(卵黄と卵白に分ける)……2個
・薄力粉……100g
・グラニュー糖(卵白用)……30g
《黒胡麻のクリーム》
生クリーム100mlにグラニュー糖10gを入れて泡だて、黒練り胡麻20gを加えてよく混ぜる。
【作り方】
下準備
1.型にオーブンシートを敷き、冷蔵庫で冷やしておく。
2.オーブンを200度に予熱する。
3.卵黄と卵白に分け、卵白は冷蔵庫で冷やしておく。
1.黒胡麻を擦る。
「黒胡麻は、25gのうち5gだけ取り分けて擦っておきます。全部をそのまま入れてしまうよりも味わい深くなるんですよ」
2.室温に戻したバターとグラニュー糖をハンドミキサーでよく練る。
「いちばん大切なのは、バターが室温に戻っていることです。触ってみて少し冷たかったり硬かったりすると、ケーキも硬く焼き上がりますし、しっかり膨らまないこともあります。このくらいの季節なら前の晩に出しておいてもいいくらい、柔らかく戻しておきましょう」
3.卵黄を3回くらいに分けて入れて攪拌する。
「グラニュー糖のザラザラ感がなくなって白っぽくふんわりしてきたら、卵黄を入れてよく混ぜます。よく混ぜるというのも大切なのですが、材料に空気を含ませる意味もあるので、空気を意識してみてください」
4.ふるった薄力粉を3回くらいに分けて入れ、ヘラで切るように混ぜる。
「薄力粉は必ず入れる直前にふるってください。ダマを潰すだけでなく、こちらも空気を含ませるためでもあるので、あらかじめふるっておくのではなく、入れる直前にふるうのが大切です。混ぜるときもヘラを縦に使って切るように混ぜていきます。ふんわりと仕上げていきましょう」
5.別のボウルに卵白とグラニュー糖を入れ、ツノが立つくらいにミキサーで攪拌する。
「最初からグラニュー糖を入れてしまうと混ざりにくいので、少し卵白だけで混ぜてコシを切り、泡が出てきたらグラニュー糖を入れます。ある程度固くなったら、最後はハンドミキサーではなく泡立て器を持って手で混ぜます。キメが整い、きれいなメレンゲになりますよ」
6.メレンゲを生地に3回くらいに分けて混ぜ入れ、胡麻を加えてパウンド型に入れる。
「練らないようにさっくりと混ぜたら、型に入れていきます。生地は中心を凹ませるように入れていくと、生焼けになるのを防ぐことができ、しっかり膨らんで高さも出ますよ」
7.200度のオーブンで20分焼き、160度に落として20分焼く。
「天板の上に直接型を置いてしまってもいいのですが、そうすると底が焼けにくいので、網を一枚挟むのがおすすめです。また、200度で焼きはじめて10分たったら、一度ケーキに濡れた包丁を入れると、膨らみ方がきれいですよ」
こんなふうに縦に包丁を入れていきます。
8.焼き上がったら横を少し押して形を整える。
「生地が膨張して横に膨らむので、熱いうちにちょっと押してあげて、形を整えて冷まします。このまま粗熱を取り、ラップに包んで一晩置いておくと、焼きたてよりもしっとりしておいしくなりますよ」
2品目は、ワインと一緒に楽しみたい「レーズンと発酵バターのアミューズ」です。