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切り方によって食感自在!定番きんぴらから常備菜まで
「れんこん」の日常使いレシピ

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蓮根(れんこん)は年間を通して食べられますが、旬は冬。寒さが深まると、より甘くもっちりとした味わいを楽しめます。また、昔から「咳やのどの痛みにはれんこん汁が効く」と言い伝えられるように、れんこんにはビタミンCがたっぷり含まれているため、風邪の予防やアンチエイジングにも効果があるとされるなど、おいしさだけでなく栄養面でも注目されてきました。

野菜ソムリエであり、中国山東省認定二級厨師の資格を持つ料理家の伊藤朗子さんに、れんこんの健康効果や保存方法などの基礎知識を教えていただきます。また大のれんこん好きという伊藤さんならではの、毎日の暮らしで手軽に作れるレシピ3種を紹介していただきました。

幅広さはトップクラス!
“食感”がれんこんの魅力

れんこんの魅力は、なんといってもその“食感の変化”だと伊藤さん。

「すりおろしてから加熱するともっちり、繊維に沿った切り方で焼いたり炒めたりさっと加熱するとシャキシャキ、長く煮ればホクホク……と調理方法によってさまざまに変化します。また、食物繊維がしっかりしているので、多少加熱時間が長めになってもシャキシャキ感が損なわれることはありません。その幅広い変化から、私もれんこんレシピを考えるのが大好きです。主宰する月に一度のレストランイベントでも、すりおろしたれんこんのもっちり感をつなぎとして活用した『れんこんとえびのシュウマイ』がとくに人気ですね」(料理家・伊藤朗子さん、以下同)

加熱してもビタミンCが壊れにくい!
れんこんに含まれる栄養価

喉の痛みを抑える効果や風邪予防など、冬の体調管理にぴったりのれんこんですが、どのような栄養が含まれているのでしょう?

「れんこんの代表的な栄養は、カリウム、ビタミンB1 、ビタミンC、食物繊維。なかでもビタミンCは一般的に熱に弱いとされていますが、れんこんに含まれるビタミンCはでんぷん質に守られているため、壊れにくい特徴があります。また、アクの成分であるタンニンには消炎作用があるほか、抗酸化作用もあるためアンチエイジングにも効果があるとも。薬膳でも同様に、胃腸や胃壁を守り、肺や喉を潤すと言われています」

れんこんはなぜ
おせち料理に入っている?

正月のおせち料理では、縁起物としても使われています。

「れんこんの穴は、まっすぐ伸び、向こう側が見えることから、『先が見通せる』として、昔から縁起の良い食材として扱われてきました。私は山口県の出身ですが、特産である岩国れんこんを小さいころから食べてきました。岩国れんこんは他の野菜に比べて高級品のため、日常使いというよりはやはりお正月などのハレの日に食べることが多かったですね。肉厚で粘りがあり、モチモチしていてとてもおいしいれんこんです。お祝いのときは穴を強調できるよう輪切りに、丸みを活かして花れんこんに細工します」

鮮度は泥付きのものが一番!
れんこんを長くおいしく食べるには

「現在は、カットされて販売されていることが多いので、スーパーで泥付きのものを見かけることはなかなかありませんが、泥付きの方が長持ちします。また今回使用するれんこんは築地で購入してきたもので泥付きではないですが、水を張った発砲スチロールに入って売られていました。れんこんは、水底の泥の中で育つので、水分が欠かせません。そのため、保存するときも水分を逃さないことを一番に考えると良いでしょう。切り口が空気に触れると黒くなるので、節付きの場合は節で切り、キッチンペーパーや新聞紙などにくるんで、ポリ袋に入れて保存しましょう。使いかけで切り口が大きく見えている場合には、ラップでぴっちりと空気から守ってあげることが大切です。れんこんは鮮度が大切なので、2〜3日の間に調理してください」

下処理の方法についても教えていただきました。

「れんこんの穴の中に泥が付いている場合には、ボールに水を張り、竹串でかきだすと良いでしょう。切り口が空気に触れると黒くなるので、お祝いの料理で白さを活かしたい場合にはお酢につけてください。ただ普段の調理には必要ないでしょう。切った後もれんこんには粘りやざらつきが残っていることがあるので、私は口当たりのことを考えて、一度水洗いしています」

ここからは、日常使いできるれんこんのレシピを教えていただきましょう。解説いただくのはれんこんの定番レシピ「れんこんのきんぴら」と、「豚ヒレ肉とれんこんの黒酢炒め」「れんこんの中華ピクルス」の3種です。

シャキシャキ感がアップ!「れんこんのきんぴら」

「繊維に沿った縦切りにすることで、シャキッと感に歯ごたえをプラスした、食べ応えのあるきんぴらです。小口切りの唐辛子は、炒めている途中で加えるので後からピリッとくるほどよい辛さです」

【材料(2〜3人分)】

・れんこん……200g
・みりん……大さじ1
・醤油……大さじ1
・赤唐辛子の小口切り……1/2本分
・ごま油……大さじ1/2
・すり白ごま……小さじ1/2

【作り方】

1.れんこんは繊維に沿って長さ4〜5cmの細切りにし、水にさらして水気をきる。

2.フライパンにごま油を熱し、れんこんの水気をきって加え、赤唐辛子を加える。

「水を切ったれんこんをボールから直接フライパンに入れてしまうと、どうしても残った水分も一緒に入ってしまい、その後の調味に影響してきます。手でつかんで水を切りながら入れると良いでしょう。唐辛子は小口切りにすることで、全体に辛さが回るようにしています。辛いのが好きな人は、冷たい油から唐辛子を入れると良いでしょう。ただし、唐辛子は焦げやすいので注意が必要です」

3.れんこんに透明感が出て火が通ったら、みりん、醤油で調味する。

「れんこんに火が通ってくると、回りが透明感ある白さになってきます。そのタイミングで調味料を入れましょう。みりんで甘さを絡めてから、醤油の順を守ると味が絡み、おいしく仕上がります」

3.照りが出てきたら器に盛り、白ごまをふる。

「水分がなくなってくると、ごま油とみりんの照りが出てきます。艶っぽくなったらできあがりの合図です。お好みですりごまを散らしてください」

乱切りにしてモッチリ感を楽しむ「豚ヒレ肉とれんこんの黒酢炒め」

「分厚く乱切りにすることで、モッチリ感を楽しめるレシピです。表面積が大きくなるので味の含みもよくなります。れんこんは繊維がしっかりしているので、多少長く炒めてもシャキシャキ感が失われることはありません。お肉も大きく食べ応えがしっかりありつつも、黒酢の酸味がさっぱりとなるクセになるおいしさです」

【材料 2〜3人分】

・れんこん……200g
・にんじん……1/3本
・豚ヒレ肉……150g
・塩、コショウ……各少々
・片栗粉……適量
・酒……大さじ2
・砂糖……大さじ2/3
・醤油……大さじ1
・黒酢……大さじ1
・サラダ油……大さじ1+小さじ1

【作り方】

1.れんこんは乱切り、にんじんは薄いいちょう切りにする。

「れんこんを縦に1/4に切ってから、回しながら切ると乱切りにしやすいです」

2.豚肉は1.5cmの厚さに切り、塩、コショウをふって片栗粉を薄くまぶす。

「豚肉はこま切れではなく、固まり肉を買い、厚めに切るとメイン感がでます。肉に片栗粉をまぶすことで表面にコーティングをし、ふっくらと焼き上げます。今回使用したのは脂身の少ないヒレ肉ですが、繊維に直角で切っているので、ホロっとしたやわらかさを味わえ

ます」

3.フライパンに油を熱し、豚肉を焼き、全体をこんがり焼いていったん取り出す。

「肉にはしっかり火を通しましょう。中まで火が通っていないと、取り置いておく間に中から肉汁が出て、パサつきの原因となってしまいます」

4.同じフライパンに油を熱し、れんこん、にんじんを炒め、油が回ったら酒を振り、蓋をして3〜4分蒸らして火を通す。

「蓋に付き始めた水滴の粒が大きくなったら、火が通って来ているサインです。蓋がガラスだと水滴が確認しやすくおすすめです」

5.豚肉を戻し入れ、砂糖、醤油、黒酢で調味し、炒め合わせる。

「黒酢のコクが、砂糖と醤油のおいしさを引き立てます。また薬膳では、酸味が消化を助けるという考え方があります。繊維質が多く、消化しにくいれんこんにぴったりの組み合わせです」

酢の力でよりシャッキリ!「れんこんの中華ピクルス」

「ピクルス液というと、野菜を漬けるためにたっぷり作る必要があると思われがちですが、ポリ袋で密閉して全体に馴染ませるので、そこまで調味液を作る必要はありません。一番多く使うお酢でも、大さじ5杯です。冷蔵庫で4〜5日ほど保存できるので、れんこんが多く手に入った時の作りおきレシピとして持っておくと良いですね」

【材料(作りやすい分量)】

・れんこん……250g(5mm厚さのいちょう切り)
・酒、水……各大さじ1

〈A〉
・酢……大さじ5
・水……大さじ3
・砂糖……大さじ1と1/2
・塩……小さじ2/3
・花椒(粒)……大さじ1/2
・赤唐辛子……1/2本

【作り方】

1.れんこんは5mm厚のいちょう切りにする。

「繊維を断ち切るように繊維に対して直角に切ることで、火の通りを良くします。また、柔らかくなりすぎないように少し厚めに切ります」

2.フライパンにれんこん、酒、水を入れて火にかけ、煮立った音がしてきたら蓋をして弱火で3分、蓋をとって混ぜ、再び蓋をして2分ほど蒸す。火が通ったら、蓋を取り、混ぜながら水気をとばす。

「先ほどの黒酢炒めと同じように、蓋をして蒸し焼きにします。蒸し焼きにすることで全体に満遍なく火を通し、また一度にたくさんの量をつくることができます」

3.小鍋にAを合わせてひと煮立ちさせ、火からおろし、花椒、赤唐辛子を入れる。

「花椒が中華風のポイントです。しびれるような辛さとさわやかな香りが特徴です。れんこんは淡白なので、唐辛子や花椒などの香辛料、そしてさまざまな具材ともマッチしやすのがれんこんの魅力でもあります」

4.3の粗熱が取れたら2を加え、ときどき混ぜながら冷ます。ポリ袋に入れ、空気を抜いて袋の口を閉じ、30分ほどおいて味を馴染ませる。

「味は、冷めていく間に馴染んでいくので、粗熱が取れたら、ピクルス液に混ぜ合わせましょう」

さまざまな食材との相性が良く、料理に合わせて変幻自在なれんこん。魅力といえばやっぱり、切り方によって変わる特徴的な“歯ごたえ”でしょう。縦切り、輪切り、厚めに乱切り……などさまざまな切り方に挑戦して、おいしさの重要なキーワードとなる食感を楽しみながら、れんこんの新たな魅力を見つけてみてください。

Profile

料理家 / 伊藤朗子

食事の専門雑誌で編集を行う傍ら、食に興味をもち、中国山東省の伝統料理を学ぶ。「やさしい味の飽きない料理」をモットーに、レシピ提供、レストランイベントを行う。野菜ソムリエ、中国山東省認定二級厨師、料理教室「I’s kitchen(アイズ キッチン)」主宰。

取材・文=加賀美明子(Neem Tree) 撮影=真名子