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自分に似合う色から発声まで!?“外見の印象”をデザインする
「イメコン」の活かし方

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「イメージコンサルティング」、通称“イメコン”とは、相談者の目的に応じて“外見の印象”をデザインする仕事。イメコンは知らなくても、使用される「骨格診断(骨格から似合うファッションを導く)」や「パーソナルカラー診断(肌色などから似合う色みを導く)」などの診断ツールを知っている人は多いでしょう。最近では、手軽に診断できるウェブサイトも多く、自分のパーソナルカラーや骨格タイプを把握している人も増えています。その一方で、診断結果の捉え方を誤解して、おしゃれの幅を狭めるケースも増えているとか。

では本来のイメコンとはどういうものなのか? コンサルティングによって得られた結果をどのように取り入れていくべきなのか? イメージコンサルタントの二神弓子さんに伺いました。

イメコンは診断だけじゃない!
その本質は“印象のトータルプロデュース”

まずは、イメコンに詳しくない人に向けて、イメコンとは何かをあらためて解説していただきました。

「イメージコンサルタントに相談にくる人は、自分の印象を変えたい動機を持っています。その目的に対し、どんな印象を作れば効果的かを提案し、トータルプロデュースするのがイメージコンサルティングです」(イメージコンサルタント・二神弓子さん、以下同)

「骨格診断」や「パーソナルカラー診断」は、イメコンとどのように関わっているのでしょうか?

「相談者の目的をヒアリングし、どのような印象を作り上げていくか方向性が決まったら、骨格診断とパーソナルカラー診断を活用して、その人に似合う色み、洋服の素材・デザインなどをチェックします。つまり、この2つの診断が、具体的な提案をする際の基準になるわけです。
とはいえ、似合う洋服をアドバイスするだけがイメコンではありません。クライアントの目的に対して、強みは活かし、弱みはカバーし、立ち居振る舞いや身のこなしに関する助言も含めてサポートしていきます」

まずは、骨格診断とパーソナルカラー診断についてチェックしてみましょう。

骨格診断

持って生まれた肌質やラインの特徴から、相談者を最もきれいに見せる洋服のデザインと素材を導き出す理論。診断結果は、ストレート、ウェーブ、ナチュラルの3タイプに分かれます。太っている、痩せている、年齢、身長などは関係ありません。

左から
骨格ストレート……厚みを感じさせるグラマラスなメリハリボディ
骨格ウェーブ……華奢で厚みがなく 柔らかな曲線のボディ
骨格ナチュラル……全体的に四角形のようなフレーム感のあるスタイリッシュボディ

パーソナルカラー診断

生まれ持った肌や目、髪などの色から、その人をもっとも美しく見せるパーソナルカラーを導き出す理論。診断結果は、Spring(スプリング)、Summer(サマー)、Autumn(オータム)、Winter(ウィンター)の4種類に分かれ、それぞれに異なる色調・明度・彩度のパレットがあります。また、各パレットの基調の違いから、スプリングとオータムは「イエローベース(イエベ)」、サマーとウィンターは「ブルーベース(ブルべ)」と2つに分類されます。

スプリング(イエベ春)……明るくくすみのない色調。高明度、高彩度の色が多い
サマー(ブルべ夏)……少しくすみのあるソフトな色調。高明度、低彩度の色が多い
オータム(イエベ秋)……深みのある落ち着いた色調。低明度、低彩度の色が多い
ウィンター(ブルべ冬)……シャープではっきりした色調。低明度、高彩度の色が多い

「すべての人が、骨格3タイプ、パーソナルカラー4タイプの計12タイプに分類されます。そこに、個人の身長や体格、顔の造形、年齢などの要素が掛け合わさるため、コンサルティングのアプローチは非常に多様になります」

印象の重要性を世間に知らしめた
ジョン・F・ケネディの逆転劇

イメコンの概念はアメリカ発祥といわれています。1960年にテレビで初めて行われた大統領候補者の討論会は、“印象の重要性”を多くの人が認識する出来事でした。

「当初、ジョン・F・ケネディは劣勢でした。ところがテレビに映った途端にリチャード・ニクソンに逆転勝利したのです。当時のテレビは白黒でしたが、色のコントラストは伝わります。ケネディは骨格診断ではストレートタイプとされ、コントラストの強い配色を得意とする人物であったと考えられます。テレビ討論会において、コントラストの効いたスーツとシャツで登場したのは非常に効果的でした」

1960年、シカゴで開催された最初の討論会にて。

では、イメコンが日本で注目された背景は?

「約7年前、メジャーなファッション誌が骨格診断の連載を開始しました。これは大きなムーブメントの一つだったと思います。その後、イメコンの注目度は徐々に上がっていきました。
さらに、現代の若い人たちが持つ『タイパ(タイムパフォーマンス)』や『ミニマル』を重視する合理的でスマートな価値観が、イメコンの『合理的に似合うものを着る』という考え方とマッチしたことも、その普及に関係していると考えています。
2024年には、イメージコンサルタント・鈴鹿久美子さん監修のもと、政治家専門のイメージコンサルタントが主人公の漫画『票読みのヴィクトリア』が『モーニング』(講談社)で始まりました。ぜひ読んでみてください」

実際のコンサルティングの流れ

では、コンサルティングはどのように行われているのでしょうか?

「例えば、女性に多い動機の一つが『婚活で男性を射止めたい』というもの。こうした目標の場合、クライアントがどのような男性をターゲットに設定するかで作るべき印象が変わります。ターゲットが決まったらクライアントに何が必要かを分析し、『こういう男性を希望するならエステより料理教室がいいですね』『こういう男性なら料理教室よりマナー教室に行くといいですね』と提案します。外見も重要なので、『髪色は黒くしましょうか』『こういう服を着ましょうか』と、ヘアメイクや服装についても具体的に提案します。一緒に店に出かけて洋服を選んだり、美容院にお連れすることもありますね」

仕事上の悩みを抱えてやってくるクライアントも数多くいます。

「ある男性経営者の方から、『社員の前でスピーチをする機会があるのに、自分の印象が頼りない。もっと貫禄を出したい』と相談されたことがありました。彼に何が必要か考えたとき、服装の改善はもちろんですが、根本原因は“声質の軽さ”にあると感じました。そこで、ボイストレーニングをおすすめし、声質を重くしてもらいました。このようなアドバイスもイメージコンサルタントの役割になります」

また、仕事における女性特有の不利をイメコンで解決しようとする人もいるようです。

「ある30代女性から、『女性であること、幼い外見であることがキャリアアップに支障をきたしている。もっと年上に見せたい』と、深刻な相談を受けたことがあります。また、他の女性からは、『男性社員が女性の上司に抱く抵抗感を和らげる印象を作りたい』と相談されました。このような相談を受けたら、まず印象作りの方向性をすり合わせることから始めます。目指すべき印象について、クライアントが勘違いしていることもあるからです。そして、彼女たちに必要なものを分析していきます」

イメコンの診断結果を最大限に活用するポイント

イメコンが普及するにつれて、誤った知識も広まっているようです。ここからは、ウェブサイトやサロンでパーソナルカラーや骨格タイプの診断を受けたことがある人に向けて、診断結果を活用する際の注意点を紹介します。

・診断結果を鵜呑みにせず、自分の感性も信じてあげて!

「まず気をつけたいのは、診断結果に忠実になりすぎること。例えば、パーソナルカラー診断で『こういう系統のピンクが似合いますよ』と言われたとします。すると、ピンクにばかり目が行くようになり、デザインが似合っていないにも関わらず色だけで洋服を買ってしまい、結果、イメージダウンするということがよく起こります。普段なら洋服を総合的に見て買っていますよね? 自分の感性も信じてあげてほしいと思います。洋服選びに慣れるまで、診断結果はざっくり把握し、程よく取り入れるくらいがいいでしょう

・イメコンで似合うと診断されたスタイルが好きではなかったら?

「実は、本当に似合うスタイルが嫌いなケースはよくあります。とくに、骨格診断で似合うと診断された服装を苦手とする人は高確率でいますね。その場合、似合う・似合わないに関係なく好きな服を楽しむ人と、似合う服を着て自分のイメージアップにつなげる人と2つに分かれるようです。私の場合、何か目的があって人と会うときは、似合うものを着て少しでも目的を達成するよう割り切っています。好きなものはプライベートで楽しんでいますね」

・巷にはびこるイメコンの誤った情報にも注意を!

インターネット上には、イメコンに関する誤った情報が広まっているといいます。二神さんに、いくつか教えていただきました。

「お伝えしたいのは、骨格診断の結果を自分で活用するのは難しいという事実。『骨格ウェーブならラブリーな服が似合うんでしょ!?』と安易に捉える人もいますが、そこまで単純ではありません。骨格診断では、自分に似合う『素材の柔らかさ』と『シルエットの大きさ』を教えてもらえるはずなので、まずはこの2つを意識して洋服を選んでみるといいでしょう」

その他、骨格診断で勘違いされている情報はありますか?

『骨格ストレートはハイネックが似合わない。首が広く開いていないとダメ』というのも誤解です。広く開いたものも似合いますが、クルーネックやハイネックも似合います。縦のラインは詰まっていても開いていてもすべて似合うのです。逆に苦手とするのは、オフショルダーのように肩まで開くデザインです。クルーネックやハイネックなど首の詰まった洋服は、むしろ骨格ウェーブの人が苦手としています」

パーソナルカラー診断で誤解されている情報はありますか?

『ブルべは色白、イエベは色白ではない』という情報は完全に誤りです。色白のイエベも、色黒のブルべも存在します。つまり、色白かどうかはパーソナルカラーには関係ないということです。私たちは黄色人種なので、黄色いことを若干コンプレックスに感じる傾向にあるようです。そのため『私は黄色いから……』と、謙虚な自称イエベさんが多くなっています。しかし、黄色人種であることとパーソナルカラーは異なるため、思い込みでイエベと決めつけないほうがいいでしょう。実際、日本人はブルべのほうが多いのですよ!」

自分に合うコンサルタントやサロンを見つけるコツ

最後に、なりたい自分を叶えるために、自分に合うイメージコンサルタントを見つけるコツを教えていただきました。

「おしゃれにもいろいろなスタイルがあり、素敵だと思う感性にも違いがあります。美意識は一つではないので、自分がなりたい系統のファッションセンスを持つコンサルタントを選んでください。ファストファッションを素敵に着こなし、ハイブランドも熟知し、その両方をコンサルティングできる人というのは、ほぼいないと思います。そのため、自分が『この人素敵!』と思うコンサルタントのところに相談に行きましょう。また、世代も自分と近い人を選んだほうが感性は合うと思いますよ」

コンサルタントのセンスはどこでわかりますか?

「コンサルタントは普段、PRの一環で自分のファッションをSNSに投稿しています。そのため、SNSを見れば自分の好みと合うかわかります。最近は、診断のみを提供しているサロンが多いようですが、トータルプロデュースを提供しているコンサルタントもいます。サロンのメニューに書かれているので、ウェブサイトで確認するといいでしょう。
診断結果は一生ものです。ぜひプロに診断してもらってください。ただし、その結果に盲信せず、自分の感性も大切にしてください。イメコンの結果は年月をかけて自分のものにしてほしいと思います」

Profile

イメージコンサルタント / 二神弓子

株式会社アイシービー代表取締役社長。パーソナルカラー実務検定協会代表理事。骨格診断アナリスト協会代表理事。イメージコンサルタントとしてビジネスパーソンの印象改革を手がけるとともに、アパレルや化粧品会社の商品開発や販促の監修、社員研修やコンサルティング事業、スクール経営も行う。著書に『骨格診断×パーソナルカラー本当に似合う服に出会える魔法のルール』(西東社)など。
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取材・文=中牟田洋子(Playce)