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ボタンつけから“ダーニング”まで。おさらいしたい
衣服の“お直し”テクニック

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ボタンが取れてしまったり、ボトムスのすそがほどけてしまったり……いつか直そうとクローゼットにしまったままの衣類があるのではないでしょうか? そんな衣類に手を入れて直してみると、さらに愛着がわくものです。今回は、ボタンつけをはじめ衣服のお直しの基本から、ほんのひとさじのアレンジを加える手法まで、仕立てのプロであるカナザワマイさんに教えていただきました。

用意しておくべき基本の道具は?

直そうと思ったときいつでも手を動かせるように基本の道具を用意しておきましょう。

「お直しに必要な道具はとてもシンプルです。手ぬい針、まち針、糸、はさみがあれば、たいていの衣服は直せます。いつでも取り出して使えるように、お気に入りの箱にまとめてみてはいかがでしょうか」(仕立て屋「m+」カナザワマイさん、以下同)

・手ぬい針
「家にあるものでかまいません。しいておすすめすれば、刺繍針は糸を入れる穴が大きいので糸が入りやすく使いやすいです」

・まち針
「布がずれないようにとめる針です。ステンレス製のサビに強いものがおすすめです」

・糸
「ボタンつけ用の糸もありますが少し太い印象です。一般的なミシン糸があれば大丈夫。基本的によく着る衣服の色、例えば白、黒、紺、茶などのベーシックカラーを用意しておくといいでしょう」

・はさみ
「裁縫用のものは糸を切るため先端が細く鋭いのが特徴です。刃先がしっかりとかみ合い、切れ味の良いものが使いやすいです」

お直しに必要な糸の長さとは?

短く切って足らないと困るからと、つい長く切りすぎてしまうと、糸が絡む原因になります。では、どのくらいの長さが適切なのでしょうか?

「通常は、目立たせたくない場合は1本どり、しっかりととめたいボタンどめなどの場合は2本どりにします。1本どりでも2本どりでも、だいたい指先から肘くらいまでがちょうど良い長さです。これ以上に長くしてしまうと絡みやすくなりますのでこの長さを目安に用意しましょう」

穴ボタンの基本的なつけ方

我流で直しがちなボタンつけにも、つけ方にセオリーがありました。今回は、シャツによくついている4つ穴と2つ穴のボタンを基本に解説いただきました。

「取れたボタンを元どおりにする場合は、ボタンと同系色の糸を選びますが、あえてボタンと違う色を選んでもワンポイントになりかわいらしく仕上がりますよ」

■ 4つボタンの場合

1.穴と同じくらいの位置に印をつける。

「すでに穴が開いている場合は、同じ場所に針を通しましょう。摩擦で消せるペンで書けば、アイロンの熱で色が消えるのでおすすめです。1から順に糸を通します」

2.印の中央に針刺す。

「糸はしっかりと止められるように2本どりにしましょう」

3.玉結びの手前に針を糸と糸のあいだにくぐらせる。

「こうする事でより抜けにくくなります」

4.3を引き上げて玉結びを固定する。

5.ボタン穴に糸を対角線上に通し、ボタンつけ位置の印を表布からすくう。

「このとき、ボタンは対角線上に、布は辺上に針を刺すのがポイントです。ボタンつけ位置からすくい出た場所が、次に入れるボタン穴のちょうど真下になります」

6.ボタン穴のの対角線上の穴に糸を通す。

「交差したい場合はこのように糸をボタン穴に通します」

7.指1本が入るくらいのゆとりをもたせ布とボタンの間に糸足の土台を作る。表布のボタンつけ位置からすくい出す。

「布にぴったりとつけてしまうとボタンが外しにくくなります。布の厚さ分だけ浮かすのがポイントです」

8.5〜7を2回ほど繰り返す。

「だいたい3回くらいですが、布や糸の太さに応じて調整して下さい」

9.布とボタンのあいだの糸足に糸を5回巻きつける。

10.布とボタンの間に糸足ができた様子。

「このときできた糸足がボタンホールの布の厚みをきれいに収めてくれるので、着たときに布が引っ張られることなくきれいに着こなせます」

11.糸足に針を刺す。

12.玉結びを糸足の根本に作り、再度糸足に針を1回刺してきわで糸を切る。

「糸がしっかりとほどけてこないようになります」

【表布から見たところ】

【裏布から見たところ】

「表布をこの通し方にしたい場合は、裏布がわが交差に糸が通ります」

■ 2つボタンの場合

1.穴と同じくらいの位置に印をつける。

「すでに穴が開いている場合は、同じ場所に針を通しましょう。1から順に糸を通します」

2.4つボタンの2〜4とおなじように玉結びを固定する。

3.ボタン穴に糸を通し、ボタンつけ位置の印を表布からすくう。

4.ボタンと布の間に指一本が入るくらいのゆとりを作り、3を2回ほど繰り返す。4つボタンの9〜12の工程同様に進め、最後に玉結びをして糸を切り終える。

【表布から見たところ】

【裏布から見たところ】

スカートやズボンのすそがほつれたら……
「流しまつり縫い」の方法

スカートやズボンのすそがほどけてしまったときに便利な「流しまつり縫い」の仕方を教えていただきました。

「ミシンで縫われたすそは一箇所糸が切れてしまうと、そこからするするとほどけていってしまいます。気づいたタイミングで直せば、直しの範囲が少なくてすみます。今回は分かりやすいように布とは違う色の糸を使いましたが、基本はなるべく布に近い色の糸を選びます。できるだけ細い糸を選ぶと仕上がり時に目立ちにくいです」

1.ほつれた糸を布と布との間に入れ込む。

「とくに玉結びなどしなくとも入れておくだけで大丈夫です」

2.ほつれている端と端にまち針をつける。

3.糸は1本どりで、まち針より3cmほど外側から、布と布の間に玉結びが隠れるようにぬいしろの裏から針をだす。

4.約5mm先の表布を裏から少しだけ布をすくう。

「すくう分量は極めて少なくするのがポイントです。幅が狭ければ狭いほど表から見たときに目立ちません」

5.ぬいしろの裏から針を入れ表に出す。

6.4〜5を繰り返す。

「間隔はもう少し広めでも構いませんが、同じ幅に揃えるときれいです」

7.まち針の向こう3cmくらいまで縫う。

8.縫い終わったら、玉結びを裏布とぬいしろの間で作り、最後に布の間に収めて糸を切り完成。

【表布から見たところ】

【裏布から見たところ】

衣服に穴が空いたときの穴の閉じ方

ほんの少し開いてしまった小さな穴。そのまま着るにはちょっと抵抗があります。当て布を使わずに穴をふさぐ方法を教えていただきました。

「よくあるのが背中のタグを切ろうとして一緒に布まで切ってしまうケースです。簡単にお直しできるのでぜひ覚えておいてほしいです。今回は分かりやすいように衣服と糸との色を変えましたが、本来であれば衣服と似た色にしてください。またできるだけ細い糸を選ぶことで目立ちにくく仕上がります」

1.穴の空いた部分の大きさを確認してみる。

2.穴周りをとても細かな間隔で並縫いをする。

3.裏布に切れ端が入ってくるように気をつけながら糸をきゅっと巾着のように引っ張る。

4.布の切れ端を束ねるように縫いまとめ最後の玉結びをして完成。

【表布から見たところ】

ワンポイントアレンジで、唯一無二のアイテムに!
ダーニングの基本と応用

すり減ってしまった靴下のかかとなどを補修しさらにワンポイントを入れてみるなど、お直しにとどまらないアレンジ方法を解説していただきました。

「補修をしたうえに自分好みのアレンジができるのがダーニングの魅力です。基本的な考え方を理解すれば、あとは自由に配色やデザインを楽しめます」

1.硬く丸みのあるものを用意する。

「布のあいてしまった穴の下に入れ、布を縫うときの土台として使います。半円球のものがおすすめです。私はペーパーウエイトを愛用していますが、電球で代用も可能です」

2.穴の空いたところの裏布側から球体をあてる。

「縫いやすいようにしっかりと上下左右に広げます。点線で囲んだあたりが補修する範囲です」

3.糸は2本どりで裏布から針を刺し、玉結びの手前で2本の糸のあいだに針をくぐらせて引く。

「こうすることで糸が抜けにくくなります。今回は同系色の色糸でまとめましたが、目立った色を選んでもかわいいです」

4.裏布に玉結びを固定する。

5.表編みの列をすくうように糸を通す。

「今回の靴下は糸が太く表あみがしっかりと見えていたので、すくうようにしましたが、糸の細いものは一直線に糸を通せばOKです。たて方向の糸を拾いながら平行に糸を通していきます」

6.約3mm〜5mmの間隔で平行に糸を通していく。

7.全体的に穴がふさがったら玉結びをして糸を切る。

「今回はデザイン上、よこ糸のみを通しましたが、穴の大きさがある場合など、たて糸も通したほうがいいときもあります。下地の役割をする糸ですが、同系色にまとめなくとも、お好みの色でかまいません」

8.お好みの色に色を変えて、を2本どりで縦方向に横に通した糸を拾いながらチェーンステッチで縫っていく。

「チェーンステッチとは、名前のとおりくさりのような模様になる縫い方です。丸みがありかわいらしく、太さもでるので面を作りたい場合などにも使われる、基本的な縫い方です。今回の靴下はメリヤス編みなので、メリヤス編みと同じ模様になるチェーンステッチは相性が良いのでこちらの縫い方にしました」

9.(チェーンステッチの方法)表布より布をすくい出た針に糸を絡める。

10.(チェーンステッチの方法)針を引き出すと輪っかとなり、チェーンがつながっているようなステッチとなる。

「チェーンステッチは糸が4本になるので太さがあり丈夫になります」

11.補修部分全体にチェーンステッチを施し、玉結びをして糸を切る。

「この段階で補修としては十分になります」

12.起毛のある糸でさらにチェーンステッチをする。

「ここからはアレンジです。お好みの糸を使って自由に刺繍していきましょう。アレンジを加えることで、少し残っているほつれ糸を抑えながら、強度をます効果もあります。かかとにあたって履き心地に支障がないようになじませながらバランスをみて縫うのがポイントです」

13.全体のバランスをみながら分量を決め、最後に玉結びをして残り糸を裏布に通して糸を切り完成。

「1色だけではなく多色を入れても個性的に仕上がります」

あると便利なお直し用の道具

あまり知られていないけれどあると便利なプロならではの道具がこちらです。

「ほつれ補修針(上)とベラ針(下)です。これらは、布から糸が飛び出してしまったときに裏側に糸を引き抜く道具です。繊維の細い衣服には、ほつれ補修針。繊維の太い衣服には、ベラ針を使います。糸が飛び出てしまった場合は、けっして糸を切らないでくださいね。穴が開いてしまう原因となるので注意が必要です」

ほつれ補修針の使い方

「ほつれ補修針の先端はざらざらとしています。衣服の糸が出ている根本にほつれ補修針を差し込んで、そのまま糸を絡めながら表布から裏に針を通すだけで、一緒にほつれた糸が裏に引き抜かれます。コットンなどの繊維の細やかな衣服に適しています」

ベラ針の使い方

「ベラ針の先端には極めて小さなフックが付いています。裏布から針を刺し、表に出ているほつれ糸をフックにかけたら裏に引き下げます。これによりほつれが目立ちにくくなります。ニットなどの糸の太い衣服のお直しに使います。」

穴が空いてしまったからと着ることをあきらめていた衣類も手をかけることでまた新しく生まれ変わります。普段は裁縫に慣れていない方でも簡単にできる基本知識を教えていただきました。補修しながらさらにワンポイントをカラフルな色で入れていく手法を知ればお直しも楽しくなりそうです。

ぜひ気のおもむくまま手仕事時間を楽しんでみてください。

Profile

仕立て屋 / カナザワマイ

子どもの出産を機に自宅でできる仕事に切り替え、幼少期から好きだった手仕事を活かし仕立て屋「m+(エムプラス)」をスタート。ウェブ上でオーダー受付を行うスタイルが定評となり、注目を集める。
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取材・文=癸生川美絵(Neem Tree) 撮影=矢部ひとみ