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30万人の足を診察して辿り着いた!足裏研究家・鈴木きよみさんが
「生きることは、歩くこと」と語る理由

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「いくつになっても自分の足で元気に歩きたい」と、誰もが思っているはず。ところが、それを実現するために日頃から対策をしている人はほとんどいないのではないでしょうか? そもそも、対策といっても具体的に何をすればいいのかわからないという人も多いでしょう。そこで今回は、いつまでも歩き続けられる体作りのコツに加え、健康寿命を延ばし認知機能の向上にも役立つメソッドをお届けします。

お話をうかがったのは、自由が丘のサロンで30万人以上の「足」に触れてきたという足裏研究家の鈴木きよみさん。聞き手は、書店で鈴木さんの著書『歩ける寿命を100歳までのばすなら足裏が9割』(ワン・パブリッシング)に出会って、思わず読み耽ってしまったというブックセラピストの元木忍さんです。

『歩ける寿命を100歳までのばすなら足裏が9割』(ワン・パブリッシング)
30万人以上の足裏を診てきた著書のエピソードを元に、なぜ健康のためには「足裏」をケアする必要があるのかを明らかにする一冊。「足裏ゴロゴロ」や「かかとスリスリ」といった、高齢者でも簡単に取り組める足裏健康法も紹介されています。また、88歳の現役医師・帯津良一先生との対談も収録。著者が「こんな足裏見たことない!」と驚いた元気な足裏を持つ帯津先生。その元気の秘訣も必読です。

健康のためにはじめた
反射療法からゾーンセラピーへ

元木忍さん(以下、元木):書店で『歩ける寿命を100歳までのばすなら足裏が9割』を見つけて、ぜひ鈴木先生のお話しをうかがいたいと思いやって参りました。たくさんの健康本がありますが、足の裏を意識している人ってまだまだ少ないように感じます。鈴木先生はどうして「足の裏」に注目されたのでしょうか?

鈴木きよみさん(以下、鈴木):私自身、非常に体が弱くて。体育の授業は見学ばかりしている子どもでした。若い頃から毎日のように薬を服用していたので、ニキビがたくさんできて肌は荒れていたし、お通じもなくて……。「薬がなくても生きていける元気な体がほしい」と考えるなかで見つけたのが、「反射療法」でした。反射療法とは、足の裏や手、顔などにある反射区(ツボ)を刺激し、自然治癒力を高める療法のことです。

鈴木きよみさん。東京・自由が丘にあるサロン「アンピール」の代表であり、「鈴木きよみクリニカルサロン」のメインセラピスト。料理に使う“めん棒”を活用したセルフケア、「めん棒ダイエット®️」の考案者でもある。

元木:そうだったんですね! 今の先生の姿からはまったく想像ができません。

鈴木:今が人生のなかで一番元気ですから(笑)。当時は、このままでは妊娠・出産もできないのでは?と考えていましたが、足の裏を押すだけでいいなら……と自分の身体で人体実験をするつもりで始め、2人の子どもを授かることができました。

1991年に自由が丘でサロンを開業したのですが、サロンにいらっしゃるお客様がどんなに痩せてきれいになっても、お店に来なくなると元に戻ってしまう。なぜなら、体質が変わっていないからなんです。そこで世界各地に足を運び、各地域のセラピーやリフレクソロジーを学ぶことにしました。

それらの学びを通じ、「体質改善こそが美容の根源だ」と実感。そこで海外で学んだ東洋と西洋のふたつの足裏刺激法を日本人向けに再構築し、「きよみ式ゾーンセラピー」という独自の施術法を開発しました。

聞き手を務めるブックセラピストの元木忍さん。

元木:ご自身の経験と、サロンでの経験が「ゾーンセラピー」へとつながっていったんですね。

鈴木:今年出版した『歩ける寿命を100歳までのばすなら足裏が9割』は、私の集大成のような一冊。若い方から高齢の方まですべての方が健康で元気に過ごせるよう、ゾーンセラピーのお話はもちろん私の体験談、そして簡単にできるセルフケア法をご紹介しています。元木さんに見つけていただけて本当にうれしいです。

元木:こちらこそです。改めて「ゾーンセラピー」についても教えていただけますか?

鈴木:簡単に説明すると、鍼灸やツボ押しは経穴(けいけつ)と呼ばれる「点」を刺激しますが、ゾーンセラピーは「面」で刺激します。

足裏のゾーンマップ(足裏にある、様々な臓器や神経とリンクするゾーンを視覚化したもの)を見て「正確な位置を押さなければ意味がない」と感じる方も多いかもしれませんが、ちょっとくらいずれても大丈夫ですよ。気になるところを刺激してみてください。

「肝臓」を表すゾーンは右足だけ、「心臓」は左足だけといったように、足の左右でゾーンが異なる場合も。左右の足が揃ってひとつの体になるということを意識することが大切です。

元木:実は私、お家でゴロゴロしているときに無意識に足の裏をマッサージしているということがよくあるのですが、これは体が欲していたのかもしれませんね。

鈴木:旅行から帰ってきた夜に、無意識に足の裏を揉んでいる方って結構いらっしゃると思うのですが、これも元木さんと同じ。体が求めているんです。足の裏には全身のゾーンが集まっているので、なんとなく揉んでいるだけでも血流が良くなり、元気になっていきます。

ふくらはぎが第二の心臓と呼ばれたり、多くの病気は血流に由来するなんて言われたりしますよね。私たちの体にとって血流はとても大切なもの。だから足裏を揉んで血流を良くすると体が変わる。私たちの体を支えてくれている「足の裏」は本当に大切な場所なんです。刺激すれば、どんどん元気になっていきますよ。

足の裏だけでなく、すねや甲にもゾーンはあるとのこと。

元木:ただ刺激するだけでもいいんですね。「肩こり」や「むくみ」など改善したい症状がある人はどうしたら良いでしょうか?

鈴木:対象となるゾーンを刺激しましょう。もし「胃の調子が悪いな」と思ったら胃のゾーンを、「目が疲れたな」と思ったら目のゾーンを刺激してあげると体がラクになるのを実感できるはずです。

不調別のゾーンセラピーは、2021年に発売した『すべての不調は足裏を見ればわかる!』(ワン・パブリッシング)でより詳しくご紹介しているので、ぜひご覧ください。

たとえば、肩こり・首こりなら写真の黄色いゾーンを指で刺激するだけでOK。刺激するときは「左足」からはじめ、痛気持ちいいくらいの強さを目指しましょう。(『すべての不調は足裏を見ればわかる!』より抜粋)

1日30秒でもOK!
めん棒をつかった簡単セルフケア

元木:ここからは手軽にできる足の裏のセルフケアをおうかがいしたいのですが、「足裏刺激法」ではお菓子作りなどに使う『めん棒』を活用するんですよね?

鈴木:そうです。準備するのは『めん棒』だけ。100円ショップなどでも購入できます。またお家にゴルフボールがある方は、それでもOKです。

やり方は、とっても簡単で椅子に座り土踏まずあたりでめん棒をゴロゴロと転がすだけ。立ち上がって体重をかけると刺激がより強く伝わるので、足腰に自信がある方は立って刺激するのがおすすめです。ただし、転ばないように気をつけてくださいね

めん棒を使えば、足の裏にある内臓の反射区を面で一気に刺激できます。歩くときに必要となる足底筋膜のバランスを整える効果も。

元木:これはいつ、どのくらいの頻度でやるのが良いのでしょうか?

鈴木:体が温まって血行が良くなっているお風呂上がりか、寝る前がおすすめです。私たちの体は、睡眠中に毒素や疲労物質の排出を促すようにできているので、寝る前にしっかり足裏の老廃物を流してあげると、翌朝スッキリするはず。

「足裏ゴロゴロ」をやる時間は、1回30秒以上、長くても30分以内に終わらせてください。マッサージはたくさんやればいいというわけではありません。長くやりすぎると反応が強く出て、だるさが残ってしまう場合もありますから。「痛気持ちいい」くらいの刺激で、30分以内がおすすめです。

鈴木先生に「足裏ゴロゴロ」のやり方を教わる元木さん。最初は「気持ちいい〜」と言っていましたが、めん棒が指の付け根の位置にくると「イタタタ……」と、眉間にシワ。鈴木先生曰く「目と耳のゾーンですね」とのこと。

元木:刺激の強さを調整するにあたり、目安はありますか?

鈴木:老廃物を外に流し出すことだけを考えるのであれば、少し痛いくらいがいいのですが、自分で行うと躊躇してしまう人がほとんど。「アイタタタ……」と感じるくらいの強さから始めて、「痛気持ちいい〜」と体が緩むような感覚を目指して、強さを調整してみましょう。

あまりにも痛いと感じる場合や疲労感が抜けない、不快感が出てくる場合は、一度専門医の受診をおすすめします。なにか他の病が隠れているかもしれませんから。

心と体の元気は「足裏」に出る?

元木:『歩ける寿命を100歳までのばすなら足裏が9割』についても詳しくお話をうかがいたいのですが、最初のページがクイズになっているのはとても面白いと思いました。足の裏って人によってそんなに違うものでしょうか?

元木さんが面白いと感じた足裏クイズ。答えは実際に書籍をチェックしてみてくださいね。

鈴木:びっくりするほど違いますよ。色やハリ、指の形や大きさ、角質の有無やしわ、触感など、一人ひとり顔が違うように、足の裏も同じ人はいません。ゾーンセラピーの講師としても活動しているのですが、オンライン授業で生徒たちの顔を見て足の裏の様子を当てることもできるほどです。

元木:すごいですね! また帯津良一先生との対談が面白かったです。そのなかで「生きることは歩くこと」と書かれてあり、今まで「生きることは食べることだ」と思っていた私は衝撃を受けました。その話も詳しく聞かせていただけますか?

鈴木:食べることももちろん大切な要素ですよね。私も最近ようやく誰かのためではない自分のための料理をするようになって、食べることが大好きになりました。

「生きることは歩くこと」と帯津先生が話していましたが、私も同じように考えています。生きているというのは、“心と体が前に進んでいる状態”。つまり“歩いている”ということなんですよね。

鈴木先生は、ちょっと時間ができると新幹線に乗って日帰りで旅行にも行かれるとか。幼少期に体が弱かったとは思えないバイタリティです。これも日々の足裏セルフケアの賜物と言えそうです。

元木:本の中では帯津先生の足の裏も掲載されていますが、80代後半とは思えないほどハリのある足ですね。

鈴木:そうなんです。「歩くのが好き」とおっしゃっていましたが、驚くほど元気でハリがあってピンク色のイキイキとした足でした。また病気で歩けなくなった方でも、ハリのあるきれいな足の裏の方もいらっしゃるんです。寝たきりだとしても、前を向いているその気持ちが足の裏にも表れてくるんだろうな〜といろんな人の足をみて感じているところです。

元木:「心が元気だと、足の裏も元気!」ってことですね。本のなかでは、鈴木先生が入院されていたときの足の裏についても書かれていました。

鈴木:1か月近くベッドの上にいて、自力では歩くことができなかった時期がありました。どうして足の裏の写真を撮ったか覚えていないのですが、しわっしわで、青紫色のような足になっていて、形も今とは全然違っていました。

入院中に生死をさまよっていたころの鈴木先生の足(左)と、退院後元気になったときの足(右)。

元木:よく「顔」が変わるとは聞きますが、足の裏まで変わるんですね。

鈴木:これまでの経験を振り返ると、胃が痛い人は土踏まずが黄色くなっていましたし、生理痛や更年期に悩んでいる人はかかとが赤紫色になっていたり、ひび割れが起こっていました。

また以前、認知症患者さんが入所されている施設へボランティア訪問した際、みなさんの足の指がちぐはぐな方向を向いていました。足の指の位置に脳のゾーンがあるので、反応が指に出るんだろうな、と。本当に不思議なのですが、病気のサインは足の裏に出ることが多いんですよ。

朝起きて鏡で顔を見るように、
足の裏も眺めてほしい

元木:足の裏ってなんでもわかるんですね。

鈴木:そうですね。足を見て足を刺激する姿が日常の風景になってほしいです。みなさんが朝起きて洗面台で顔を見るように、足の裏も見てほしい。足の裏を見て「今日は何をしようかな?」と考える時間がある、そんな日常が当たり前になったらうれしいです。

鈴木先生からめん棒をプレゼントされ、「今日からやります!」と笑顔の元木さん。「どんな効果が出るのか楽しみ」とワクワクしながらインタビューを終えられました。

元木:私も鈴木先生の本を読むまで、足への関心はほとんどありませんでした。でもこの本で紹介されていたように「足の指の間をしっかり拭く」ことを意識的にやるようにしたら、自然と足に意識が向くようになってきたんです。

今まで恥ずかしくて履けなかった5本指靴下も、履いてみたら地に足がついたような感覚というか、とにかく気持ちがよくて。小さなことでも、足に意識を向けられたら健康寿命も延ばせるかもって思いました。

鈴木:そう言っていただけるとうれしいです。小学生の頃は、体育の授業があって、運動会があって、部活があって、体を動かす習慣がありましたが、大人になるにつれて歩く時間って減っていってしまう。つまり、足裏への刺激が少なくなってしまいます。

「ウォーキングしよう!」「 運動しよう!」と気負わずとも、めん棒だけでできますから(笑)。どんどん足に刺激を与えてみてくださいね。

Profile

足裏研究家 / 鈴木きよみ

東京・自由が丘を拠点に30万人以上の足を診てきた経験豊富なセラピスト。足を診て全身の不調を探る診断法「足相診断」と、足学に基づき不調を整える「ゾーンセラピー」を確立。インスタグラムやTikTokでも「足」にまつわる情報を発信している。
鈴木きよみオフィシャルサイト

ブックセラピスト / 元木 忍

学研ホールディングスからキャリアをスタート、常に出版流通の分野から本と向き合ってきたが、東日本大震災を契機に一念発起、退社。LIBRERIA(リブレリア)代表となり、企業コンサルティングやブックセラピストとしてのほか、食やマインドに関するアドバイスなども届けている。 

※「めん棒ゾーンセラピー」「きよみ式ゾーンセラピー」は鈴木きよみさん(有限会社オフィスキヨミ)の登録商標です。

取材・文=つるたちかこ 撮影=鈴木謙介