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困難な時代をどう生きていく?工藤勇一先生が教える“自律”のヒント
第5回「意見のちがいは当たり前。」

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「みんな一緒」に経済成長できる時代は終わり、多様な文化を認めながら自身で考えて答えを導く、いわば「自律」の力が求められる時代。自分はいったい何がしたいのか、どう生きていくのか? 子どもも大人も、当事者意識を持つことが求められるようになったのです。

学校にはびこる“当たり前”を撤廃し、自律型教育を進める横浜創英中学・高等学校校長の工藤勇一先生。著書『きみを強くする50のことば』(かんき出版)には、子どもも大人も知っておきたい自律のヒントがたくさん詰まっています。これからの時代に必ず役立つ、工藤先生のことばをお届けします。

意見のちがいは当たり前。

「赤信号みんなで渡れば怖くない」なんて言葉がありましたが、たとえ悪いことだったとしても、“みんな”が良しとすれば流されてしまう……そんな同調圧力を感じることがあるでしょう。

そもそもこの世には、「同じ人間」なんていません。意見の違いは必ず出てきます。それなのに「みんな同じ」に安心してしまう。これは、対立することを恐れているからではないでしょうか? まずは、意見のちがいが起こることは当たり前なのだと受け入れましょう。

一人ひとり、意見が違うという前提で物事を考えられるようになると、多様性を尊重することができます。また意見の対立が起こったとしても「本来の目的はなんだったかな?」と、最上位の目的について議論できるようになります。

何事もやってみないとわからないことだらけです。新しいことをすれば、必ずハレーションは起こります。それを予測して、最上位の目的に向かって、オープンな状態で取り組むこと。YES or NOの対立構造でケンカしてしまうのではなく、どうしたらこの場にいる全員で目的を達成できるか? と、その都度軌道修正しながら前進していくことが大切です。 「みんな違って当たり前」「同じ人間なんていない」そう思うだけで、人との関わり方も変わります。多様性を認められるようになれば、自分の意見に誇りを持つこと、そして相手の意見を尊重することもできるようになるはずです。

『きみを強くする50のことば』(かんき出版)
「どうしたら、すてきな大人になれるだろう?」___やさしい絵と、心に響く50の言葉が並ぶ本書は、絵本のようでいて、大人でもハッとするような人生のヒントが満載。「自分をきたえるヒント」「人とつながるヒント」「学ぶときのヒント」「挑戦するためのヒント」「楽しく生きるヒント」の5つの切り口から紹介されている。

Profile

横浜創英中学・高等学校校長 / 工藤勇一

1960年山形県生まれ。山形県と東京都の公立中学校の教員を務め、東京都や目黒区、新宿区の教育委員会へ。2014年から千代田区立麹町中学校の校長になり、宿題なし・テストなしなど「学校の当たり前」を見直し、子どもたちの「自律」を育んでいくことに注力。これらの取り組みはさまざまなメディアでも紹介されている。2020年4月より横浜創英中学・高等学校校長に就任し、さらなる教育改革に取り組んでいる。
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取材・文=つるたちかこ 撮影=泉山美代子