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困難な時代をどう生きていく?工藤勇一先生が教える“自律”のヒント
第4回「学びは一生もの。」

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「みんな一緒」に経済成長できる時代は終わり、多様な文化を認めながら自身で考えて答えを導く、いわば「自律」の力が求められる時代。自分はいったい何がしたいのか、どう生きていくのか? 子どもも大人も、当事者意識を持つことが求められるようになったのです。

学校にはびこる“当たり前”を撤廃し、自律型教育を進める横浜創英中学・高等学校校長の工藤勇一先生。著書『きみを強くする50のことば』(かんき出版)には、子どもも大人も知っておきたい自律のヒントがたくさん詰まっています。これからの時代に必ず役立つ、工藤先生のことばをお届けします。

学びは一生もの。

大人になってから「どうしてもっと学校で勉強しなかったんだろう」と後悔している人を見かけます。例えば、学生時代は歴史が苦手だったのに、たまたま見たドラマで戦国武将の生き様に感動したり、旅行先の世界遺産に圧倒されたり……そこから学ぶ大人もたくさんいますよね。

基本的に、学校の勉強は「宿題をやりなさい」「テストをやりなさい」と与えられる学びが中心です。あらかじめ決められた時間割と教科書で進行していきます。私は誰かに指示されるとやる気を失う子どもだったのですが、みなさんも同じように「今やろうと思ったのに!」と思った経験があるのではないでしょうか? 勉強は与えられるだけでは身につきません。自ら興味のあることを深めることで、学びは広がっていくからです。

2014年から6年間校長を務めた東京都千代田区立麹町中学校では「宿題や定期テストをやめる」、いわば学校の当たり前を変えてみたのです。これを聞いて「宿題やテストがないなら勉強しなくていいや」と思った人もいるかもしれません。しかし「勉強をしなくていい」のではなく、24時間という限られた時間の中で、今の自分に必要な学びは何か? 自分で考えられる力(自律)を身につけてもらうために行なったものでした。塾の勉強が楽しいなら塾の宿題をしたらいいし、スポーツを極めたいなら練習の時間に当てたらいい、もっと知りたい教科があれば自習すればいいのです。

これは大人になっても同じこと。学校を卒業したら勉強も卒業、ではありません。仕事に関わることや趣味のことなど、学びに年齢制限はないからです。いつでも誰でもなんでも、一生学び続けていきましょう。

『きみを強くする50のことば』(かんき出版)
「どうしたら、すてきな大人になれるだろう?」___やさしい絵と、心に響く50の言葉が並ぶ本書は、絵本のようでいて、大人でもハッとするような人生のヒントが満載。「自分をきたえるヒント」「人とつながるヒント」「学ぶときのヒント」「挑戦するためのヒント」「楽しく生きるヒント」の5つの切り口から紹介されている。

Profile

横浜創英中学・高等学校校長 / 工藤勇一

1960年山形県生まれ。山形県と東京都の公立中学校の教員を務め、東京都や目黒区、新宿区の教育委員会へ。2014年から千代田区立麹町中学校の校長になり、宿題なし・テストなしなど「学校の当たり前」を見直し、子どもたちの「自律」を育んでいくことに注力。これらの取り組みはさまざまなメディアでも紹介されている。2020年4月より横浜創英中学・高等学校校長に就任し、さらなる教育改革に取り組んでいる。
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取材・文=つるたちかこ 撮影=泉山美代子