あちこちで桜が咲き始め、写真撮影を趣味にする人にはうれしい季節がやってきました。ただし満開の期間は短く、シャッターチャンスは限られます。失敗せずに、桜を上手に撮るにはどうすればいいのでしょうか。そこで、プロカメラマンの永山昌克さんに、桜撮影の7つのテクニックを教えていただきました。自慢の一眼レフを持っている人はもちろんですが、これらのポイントをスマホでの撮影でも、ぜひ参考にしてみてください。
1.「光線」
撮影場所に着いてまず意識したいのは、その場の光の状態です。桜の木に対して、太陽がどの方向からあたっているかをチェックし、そのうえで狙いに応じた最適なカメラポジションを選択しましょう。
最初の写真は順光、つまり桜に対して光が正面からあたっている状態です。「順光」は、もっとも基本的な光で、被写体の色や形を正確に再現しやすいもの。鮮やかでくっきりとした桜写真が撮りたいなら、順光がおすすめです。特に青空を背景にすると、桜色がいっそう引き立ちます。
![↑順光で撮影。24mm相当 ISO200 F5.6 1/320秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_001.jpg)
ただ順光は、陰影がほとんどないため、平坦な印象になりやすいというデメリットもあります。メリハリを与え、桜をより立体的に表現したい場合は、真正面ではなく、斜めや横から光が差す状態を狙うのがいいでしょう。次のカットは、横から光があたった状態をクローズアップで捉えたもの。
![↑サイド光で撮影。120mm相当 ISO200 F2.8 1/60秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_002.jpg)
さらに印象を強くしたいときは、「逆光」を選択しましょう。逆光では花びらが透き通るように輝き、力強い桜写真になります。順光やサイド光とは違って青空は表現しにくいのですが、その代わり下の写真のように逆光+黒バッグ、または逆光+白バックを選ぶと、桜の美しさを際立たせることが可能なのです。
![↑逆光で撮影。120mm相当 ISO200 F2.8 1/80秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_003.jpg)
![↑逆光で撮影。24mm相当 ISO200 F11 1/250秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_004.jpg)
2.「天候」
晴れの日は、桜の撮影日和。晴天では高コントラストな写りが得られ、花の色を鮮明に表現できます。前述の順光/サイド光/逆光による表現も、晴天のときにこそ違いが明確に出ます。
![↑晴天。120mm相当 ISO200 F2.8 1/640秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_005.jpg)
とはいえ、撮影日が曇天や雨天だったとしても悲観することはありませんよ。曇天や雨天は、ソフトでしっとりとした雰囲気の桜が撮れるチャンスでもあるんです。たとえ同じ桜でも、天候次第でまったく違った表情が見られることは桜写真の面白さといっていいでしょう。
撮影時の注意点は、晴天時とは違って、空をできるだけ画面に入れないようにすること。曇天や雨天の空は写真上では真っ白に写り、あまり見栄えがよくないから。ズームアップしたり、撮影ポジションに工夫したりして、白い空が極力入らないフレーミングを選択しましょう。
![↑曇天。100mm相当 ISO200 F8 1/160秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_006.jpg)
![↑雨天。50mm相当 ISO400 F8 1/250秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_007.jpg)
3.「ボケ」
桜写真に深みを与えるワザのひとつとして、「ボケ」を取り入れるのも面白いもの。人間の眼では、近景から遠景までのすべての範囲にピントが合ったように見えるのですが、写真の場合は1ヶ所のみにピントを合わせて前後をぼかして表現できます。つまり、桜の背景部分をぼかすことで、花のみを浮かび上がらせ、その存在感を強調できるのです。
そのためには、ひとつの花にグッと迫ってクローズアップで捉えること。花に近寄れば近寄るほど、背景のボケの度合いは大きくなります。
![↑後ろボケ。48mm相当 ISO200 F4 1/500秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_008.jpg)
上の写真のように、被写体の背景に生じたボケは「後ろボケ」と呼ばれます。一方で、シーンによっては被写体の手前に生じた「前ボケ」が効果的なことも。下の写真は、目の前にあった桜の花ごしのカメラを構えることで、その花を前ボケとして写し込んだものです。
![↑前ボケ。100mm相当 ISO200 F2.8 1/640秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_009.jpg)
こうした前ボケは、画面に奥行きを与えたり、ソフトな雰囲気を作り出したりする働きがあります。注意点は、接近すれば自動的に生じる後ろボケとは異なり、前ボケを作るには、ボケとして利用する被写体を意識的に写し込む必要があること。さまざまな角度から被写体を眺め、バランスのいい前ボケが入るカメラアングルを探してみましょう。
4.「副題」
桜そのものをストレートに撮ることは必要ですが、それだけでは単なる記録写真になりがち。より面白い桜写真を目指すなら、桜だけでなく、そこに+αする別の要素を盛り込んでみましょう。つまり、主題である桜をより際立たせるために、“副題”となる被写体を取り入れるのです。
副題として生かせるのは、例えば鳥や昆虫、ほかの植物、乗り物、建物、看板、歩行者など。桜以外の要素は邪魔だと考えがちですが、あえてそうした脇役を写したほうが、主役が引き立つだけでなく、写真にオリジナリティを与えられるでしょう。
![↑100mm相当 ISO200 F4 1/1600秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_010.jpg)
![↑600mm相当 ISO200 F6.7 1/640秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_011.jpg)
桜を撮影できる期間は限られているので、必ずしも狙った条件になるとは限りません。ですが、思いもよらないベストショットが撮れるチャンスともいえます。状況にあわせてベストな方法を選択することが重要です。
5.「レンズ」
自分が思い描くイメージどおりの桜写真を撮るためには、使用するレンズの焦点距離に応じた、写りの特性を知っておくことが大切。漠然とズームで寄ったり引いたりするのではなく、広角と望遠を意識して使い分けるようにしたいものです。
最初の写真は、焦点距離50mmの「標準レンズ」で撮影したもの。標準レンズは人間の視覚に近く、誇張のない自然な雰囲気の桜写真にしやすいのが特徴です。
![↑標準で撮影。50mm相当 ISO100 F2.8 1/1000秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_012.jpg)
標準よりも焦点距離が短い「広角レンズ」は、広い範囲が写ることと、見た目以上に遠近感が強調されることが特徴。広角では桜の木の広がりや奥行き、スケール感などを表現しやすくなります。
下の写真は、焦点距離16mm相当の広角で撮影したもの。レンズの近くにある花は大きく、離れた位置にある花は小さく写っています。標準レンズで撮ったものに比べると写り方はまったく異なり、強弱が明確になっていることがわかるでしょう。
![↑広角で撮影。16mm相当 ISO200 F16 1/80秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_013.jpg)
注意点は、広角レンズで離れた位置から撮ると、多くのものが写りすぎて間延びした構図になりがちなことです。広角レンズでは、できるだけ桜に接近して撮るのがおすすめ。近寄るほど遠近感が強調されてメリハリが生まれ、迫力を感じる桜写真になります。
一方、高い位置ある桜の花を大きく引き寄せて捉えるには「望遠レンズ」が役に立ちます。望遠レンズは、遠景を引き付けられるほか、桜の前後にボケを作り出したり、遠近を圧縮して画面の密度を高めたりする効果があります。
![↑望遠で撮影。100mm相当 ISO200 F7.1 1/60秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_014.jpg)
さらに、小さな桜の花びらを大きくクローズアップで撮りたい場合には「マクロレンズ」があると便利。
![↑マクロレンズで撮影。120mm相当 ISO200 F3.5 1/320秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_015.jpg)
6.「花びら」
桜をクローズアップで捉える際の注意点として、撮る前に花のひとつひとつを観察し、写真映えのする美しい個体を探すことが欠かせません。離れた距離から全体を眺めるときれいに見えていても、接近すると花びらの欠損や小さなキズ、汚れなどが目立つ場合があるからです。きれいな花が見つかったら、その花を生かすような構図を選択しましょう。
![↑50mm相当 ISO400 F8 1/200秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_016.jpg)
また、咲いている桜だけでなく、落ちた花びらも写真の被写体として好適。地面にも目を向けて、絵になるシーンを探すといいでしょう。
![↑100mm相当 ISO200 F6.3 1/125秒 WBオート](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_017.jpg)
7.「人の姿」
きれいな桜をきれいに撮っても、それだけでは他人との差別化は難しいもの。人とは違ったオリジナリティーのある桜写真を目指すなら、桜に加えて、人の姿を積極的に写し込んでみましょう。
シーズンになると桜のまわりには多くの人が集まってきますが、そうした人々の姿をスナップするのです。あるいは、家族や友人に協力してもらうのもいいでしょう。カメラ目線の記念写真ではなく、桜を眺めている様子をさりげなく撮ってみましょう。桜のある風景に人の姿が加わると、それだけでドラマやストーリー性を感じさせる桜写真になります。
![↑216mm相当 ISO100 F9 1/200秒 WB太陽光](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_018.jpg)
![↑24mm相当 ISO125 F4 1/800秒 WBオート](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_019.jpg)
![↑24mm相当 ISO1600 F1.8 1/8秒 WB電球](https://at-living.press/wp-content/uploads/2019/03/20190328_sakura_020.jpg)
以上を参考にして、さまざまな角度から桜写真を楽しんでみてくださいね。
Profile
プロカメラマン / 永山昌克
写真スタジオを経て、フリーランスのフォトグラファーに。得意分野は、 ポートレートと商品撮影。カメラ誌やWEB媒体での執筆も多数。http://www.181cm.com
「モノ・コト・暮らし」の深掘りレビュー&ニュース「GetNavi web」
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