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サイバー空間に広がる、新しいコミュニケーションの形。私たちの暮らしを変える
「メタバース」の基礎知識

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妥協なき“リアリティ”への追求
キャドセンターのメタバース空間づくり

今回取材を行ったキャドセンターは、メタバース空間のデータ制作を行っている会社です。20年以上も前から3D都市データを作成してきたノウハウを生かし、クライアントが求める高度な空間をつくり上げてきたと言います。

フォト・リアリスティック3次元都市データ 「REAL 3DMAP」

「現実の街や観光地などを舞台としたメタバース空間をつくる際、当然ながらその場所の3D都市データが必要となってきます。例えば、秋葉原を舞台にしたメタバース空間をつくりたいとなれば、本来秋葉原の街を計測するところから始まるのですが、当社は長年作成してきた3D都市データを持っているので、そのデータをベースとして制作することができるのです。

蓄積してきた3D都市データは、空撮写真や測量を経てつくられた正確なもの。さらに、不動産のCGパースなどを多く手掛けてきたこともあり、『地図の正確さ』と『表現のクオリティ』両方の意味での“リアリティ”を実現できるところが弊社の強みです。この都市データはメタバース空間制作だけでなく、3Dハザードマップとして防災分野で活用されたり、映画などの背景などにも利用されたりしています」

大日本印刷株式会社 バーチャル秋葉原
アプリ版 ※DMM「Connect Chat」上にて利用可能。/ ブラウザ版

「バーチャル秋葉原」も、キャドセンターの技術とノウハウが生かされたコンテンツのひとつ。同社が所有する「REAL 3DMAP TOKYO」という3D都市データをベースに、人気クリエイターKEIGO INOUE氏のデザインビジュアルを融合させた、まるでSFの世界のようなメタバース空間です。

「バーチャル秋葉原では、アバターが集まってチャットで交流することはもちろん、同時に映像を見ることができるウォッチパーティーや、画家やイラストレーターによる展示会など、さまざまなイベントに参加することができます。また、一部のバーチャルショップでは、ECサイトと連動して実際に商品を購入することも可能です」

メタバースの可能性を広げる「街バース」

同社は、メタバース空間のベースデータとして活用できる3D都市データ「街バース」をリリース。第一弾として発表したのは、開業から100年を迎えた東京駅周辺(丸の内エリア)。順次、地域は拡大していく予定だといいます。

街バース

「街バースは、現実の都市空間を忠実に再現しているだけでなく、実際にアバターが歩くメタバースのデータとして必要不可欠な、人の目線からみた景色を再現しているのが特徴です。さらに、実際の街を歩いているかのような“フォトリアル”なデータを追求しました」

街バースは、「アイレベル」(人の目線の高さ)で見た景色のリアリティが魅力。

「ただ映像が綺麗なだけでもなく、ただ地図として正確なだけでもない。その二つの要素を組み合わせることで、メタバースの仮想体験自体がよりリアルになっていくと考えています。街バースをはじめとするコンテンツ制作を通して、メタバースの可能性がますますひろがっていくとうれしいです」

「メタバースが普及したからといって“リアル”がなくなるわけではありません。実際、私たちの元には『オンラインで体験してもらって、実際の来場につなげたい』といったご相談も多いです。みなさんも、インスタグラムで見た投稿をきっかけに実際のお店を訪れる、なんてことも多いですよね。それと同じように、気軽に利用できるオンライン空間があるからこそ、リアルにもつなげることができるようなハイブリッドなサービスは、今後ますます求められてくると考えています。

今、メタバースはまさに過渡期。それでもこの流れは止まることなく、買い物や仕事、教育現場など、今後もさまざまな分野に広がっていくと思います。そしていつか、『メタバースがリアルを超える』なんて未来がやってくるかもしれませんよ」

Profile

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株式会社キャドセンター / 古川 修

同社プロデュースグループのプランナーとして、クライアントへの提案やコンペ等のコンセプト決定と提案書作成など、受託案件の実現へ向けた総合プロデュースを担当。学芸員の資格を持っており、文化財の3Dデジタルスキャンやテクスチャ撮影のコーディネートを担当することも。 https://www.cadcenter.co.jp/

取材・文=室井美優(Playce)