店頭に並ぶスイカを見て夏の訪れを実感すると同時に、あのみずみずしくて、シャリっとした食感を思い浮かべるだけで幸せな気持ちになりますよね。
7月27日は「スイカの日」。ブランド名で語られることも多いいちごやブドウに比べて、ひとくくりにされがちなスイカですが、じつは品種だけでも100以上あることを知っていましたか?
今回はスイカで日本を面白くする”スイカマニア” でありスイカ通販専門店「あまいスイカ」代表の佐藤タケルさんに、スイカの魅力をまるっと詳しく聞きました。おいしいスイカの選び方から、上手な食べきり方、うれしい美容効果までわかって、きっと今すぐスイカが食べたくなりますよ。
CONTENTS
国内で栽培されているスイカの品種は100種類以上!

まず、スイカにはどんな種類があるのでしょうか。
「サイズで言えば、大玉、中玉、小玉。果肉の色で見ると、赤、黄色、オレンジ、白と4種類あります。果皮もおなじみの緑と黒のシマ模様から、真っ黒のもの、シマ模様がほとんどないような真緑のもの、真っ黄色のスイカもあります。
品種については、例えば大玉ひとつとっても『紅大(こうだい)』『縞王(しまおう)』『祭ばやし777(スリーセブン)』『羅皇(らおう)ザ・スウィート』などたくさんの品種があり、同じように中玉にも、小玉や黒い皮のスイカにもそれぞれたくさんの品種があり、僕が知ってるだけでも100種類以上あります。
品種改良も種苗会社が開発に励んでいて、安定的に作りやすく、甘くておいしいスイカが毎年どんどん出てきています。また農家さんは農家さんで自分の畑の土壌、土質、環境に合ったスイカの品種はどれだろうかと、それぞれ研究されています。
さらに同じ品種でも産地の気候や育て方によってけっこう味が変わるのがスイカのおもしろいところです。山形の『尾花沢スイカ』、千葉の『富里スイカ』、北海道の『でんすけスイカ』といった具合に、全国各地でブランド化が進んでいるような状態ですね。
こんなにさまざまな品種やブランドがあって、それぞれの特長があるのに、スーパーなどではスイカは”スイカ”としてひとくくりにされてしまうことがほとんどです。そこに対するやるせなさは、どうしても感じてしまいます」(「あまいスイカ」代表 佐藤タケルさん。以下同)
おいしいスイカを選ぶための3つのポイント

では、いざお店でスイカを選ぼうと思ったら、どんなところに注目すればよいのでしょうか。
1、ツルの付け根が盛り上がっている
もしツル付きの玉を見つけたらツルが緑色のものを選びましょう。ツルが緑色なのは鮮度がいい証拠だからです。また、ツルの周囲が盛り上がっていると、しっかり熟したスイカと言えます。
2、縞模様がはっきりしていて、凸凹がある
緑と黒の縞模様のあるスイカの場合は、黒色が濃く、緑色との境がはっきりしているものを選びます。またスイカをさわったときに、黒い部分がへこんでいて、緑の部分がふくらんでいるという具合にボコボコしているものは、おいしいスイカです。
その理由はスイカの成長過程にあります。スイカは果肉が細胞分裂しながら成長し、大きくなるにつれて甘くなっていきます。表面をさわってボコボコしているのは、細胞分裂の勢いが外側の果肉までしっかり届いた結果と考えられ、おいしいスイカを選ぶ際のひとつのポイントとなるのです。
3、おしりの部分が凹んでいて、自立する
スイカの底がベコッと凹んでいるスイカは、収穫直前までスイカの樹が元気だった証拠。平らなところに置いたとき、人間の手で支えなくても自立するかどうかで判断するのがわかりやすい方法です。
なお底の部分の真ん中、「へその穴」と呼ばれる部分が小さいというのも選ぶ際のポイントになります。「へその穴」は雌花がついていた部分です。ここが大きいと中のほうに筋が入りやすくなるため、小さいもののほうが食感のいいスイカになります。
スイカは追熟しない作物
バナナや桃など、買ってからしばらく置くことで甘くなっていく(追熟する)果物と違い、スイカは収穫後に日を追って甘くなることはありません。だからこそ収穫のタイミングがとても大事で、ここで、そのスイカの熟度が決まってしまいます。
「スイカは成長していくにつれ、中の熟度が増していき、糖度が乗ってきます。そのピークで収穫するのですが、ピークを過ぎて過熟になってくると種の周りに少しずつ空洞ができてきて、やがてまん中にひびが入り、徐々にそのひびが大きくなっていきます。スイカを切ったとき、中心部に大きめの空洞があるものは、収穫のタイミングがやや遅かったのかなということです。ただし甘みは強い傾向があるので、僕はちょっと真ん中にひびが入っているぐらいが一番好きです」と佐藤さん。
ちなみに農家さんはスイカを叩いたときの音の響きで中の空洞具合を知り、成熟度を判断して収穫するかどうかを決めるのだそうです。とはいえ、これはプロの技ですから、私たちが購入する際にスイカを叩いて選ぶのはやめましょう。
「ひと玉買い」と「生食」がやっぱりおすすめ。食べきるコツ

カットフルーツも多く売られている昨今ですが、「圧倒的に玉買いがおすすめです」と佐藤さんは言います。ただ、「ひと玉買ってしまうと食べきるのが大変なのでは?」という印象も。食べきるコツはあるのでしょうか。
「スイカは追熟しないため、買ってすぐに食べたほうがおいしいのはもちろんなのですが、意外とおいしく食べられる期間が長い果物でもあります。玉の状態だと常温で2週間から10日くらいもちますし、カットしてからも冷蔵保存で3日くらいはおいしく食べられますから、そこまで大慌てで食べなくても大丈夫です。
単身世帯や2人暮らしの方には小玉スイカがおすすめです。小玉スイカなら、少人数でもだいたい食べきれる量ですし、僕だったらお昼ご飯でひと玉なくなるくらいなので(笑)」
佐藤さんによると、小玉スイカは大玉スイカに比べて糖度が乗りやすく、平均糖度も約1度高いとか。さらに最近では皮がとても薄い小玉スイカが出てきており、そういった品種は食べられる部分も多く、皮のほうまで甘いものも多いそうです。
「余った場合はスイカジュースにするのがおすすめです。果肉をくりぬいて種ごとミキサーにかけ、目の粗いザルでこしたらでき上がりです。種とえぐみが抜け、シンプルでとても飲みやすいスイカジュースになります」
「皮も食べますか?」の質問には、「僕はめんどくさがりなのであまりやりませんが…」と前置きしつつも、「外側の固い皮をむいて、白い部分をきゅうりのようにポテトサラダに入れたらおいしかった」と佐藤さん。全国の農家さんやスイカ好きの方からスイカの皮の炒め物やお漬物をいただくこともあるそうです。
冷やしすぎには要注意! スイカの甘味を楽しむ適温は15℃前後

「スイカに含まれる糖分をおいしく味わえる温度帯と、人間の舌が最も甘さを感じられる温度帯を加味すると、スイカをいちばんおいしく食べられるのは15℃前後と考えています。常温保存してあったスイカを食べるときは、カットしてから1時間ぐらい冷蔵庫に入れておいて食べるとちょうどいいでしょう。
逆に、たとえば半分に切って冷蔵保存しておいたスイカを食べる場合、冷蔵庫から出してしばらく置いてから適当なサイズにカットして食べるといいと思います。
スイカは中心に一番甘い部分がありますから、切り分けるときは放射線状に包丁を入れると、すべてのカットに甘い部分がいきわたりますよ」

スイカに塩、は昔の話?
「スイカに塩」の食べ方を、佐藤さんはじつはあんまりおすすめしていないそう。
「昔のスイカは甘さ的にもの足りなかったものも多く、塩で甘みを引き立たせていたのかもしれません。でも、これはフルーツ全般に言えることなのですが、昔に比べて糖度が上がってきており、スイカについても、そもそも糖度が高くてしっかり甘さを感じられるものが多いから、僕はそのまま食べるのが一番おいしいかな。逆に、塩をかけて食べている人を見ると、あんまり甘いスイカに出合ったことがないのかなって思ってしまうことも…(笑)」
スイカの旬は4月から?! 知る人ぞ知る「スイカ前線」

スイカは夏の風物詩。そのイメージから、スイカの旬は7~8月だと思っている人も少なくなさそうです。
「『最近注目しているスイカのブランドは何ですか?』とよく聞かれるのですが、じつはなかなか難しい質問で。というのも、時期によっておすすめが変わってくるからなんです。僕たちスイカ界隈では『スイカ前線』って呼んでいますが、それこそ桜前線のようにスイカの旬は季節を追ってだんだん北上していきます。
4月は沖縄のスイカがおいしいし、5月は熊本のスイカが最高です。 そこから千葉、鳥取と北上していき、7月に長野、山形ときて、東北より北の産地で最終となります。だいたい8月のお盆ぐらいまでがピークです。それ以降はちょっとスイカの質も下がってくるかなというような印象です。
ちなみに、一般的にはあまり知られていませんが、秋冬もスイカは栽培されています。高知の立体栽培と沖縄が有名です。沖縄では12月からスイカの出荷が始まるので、日本でいちばん早い時期に出荷をするのは沖縄ということになりますね」
スイカの味を左右するのは、産地よりも品種よりも生産者
「スイカって手をかければかけるほど応えてくれる作物なんです。つまり、栽培技術がスイカの味を大きく左右するといえます。
たとえばスイカは中心のほうが甘くなりやすくて、そこから種回り、皮際にかけて、糖度が下がっていく傾向があります。とはいっても、中心と皮際の糖度差が3~4度あるスイカもあれば、1度しか変わらないスイカもある。こうした落ち幅の違いは栽培技術によるところが大きいんです。だからスイカは、旬を迎える地域を念頭に置きつつ、農家さん単位で選ぶのが一番間違いないと僕は思っています。
スイカの基本的な糖度は9~11度ですからスーパーなどで買う場合は、糖度が11度あれば甘いスイカと判断してよいのですが、スイカのおいしさは糖度だけでは測れません。食べたときに果肉の細胞の大小が織りなすシャリシャリ感だったり、スイカの食味の濃さ、香りの強さ、果肉色など、甘さだけでないさまざまな味わいがあります。自分の好みに合うスイカを作る農家さんをぜひ見つけてほしいな、と感じています」
リコピンの量はトマトより多い!? 見逃せないスイカの栄養素

スイカがじつは秋冬にも栽培されているというのは前述の通りですが、スイカにはむくみの改善など美容効果も高いことから、年中欠かさずスイカを食べているスイカ好きさんもいるそうです。
「まずは夏バテ防止というところでは、カリウムやβカロテンが豊富で、ひかえめながらビタミンCも含まれているのでまさに夏にとるのにぴったりな果物です。むくみの改善という点では、スイカの栄養価としても特徴的なシトルリンの働きが大きいと言えます。
シトルリンはウリ科の植物に含まれるアミノ酸の一種です。メロンやきゅうりにも含まれますが、スイカにはダントツに多く含まれています。血管を広げ、一酸化窒素を生成して血流をよくする作用が期待されているため、むくみの防止や老廃物の排出を促すといった働きがあると言われています。
そして抗酸化作用があることでも知られるリコピン。リコピンは100g当たりの含有量が普通サイズのトマトと同等かそれ以上とも言われています」
「推しのスイカを多くの人に食べてほしい」--スイカマニア佐藤さんの思い

日本スイカ協会を立ち上げ、ブランドスイカの通販サイト「あまいスイカ」の運営も営む”スイカマニア”佐藤さん。スイカのおいしさに衝撃を受けたのは高校生のときだそうです。
「僕が高校2年生の時に衝撃を受けたスイカがありました。母が知り合いからいただいたスイカを両親と妹の家族4人でテーブルを囲んで食べたのですが、”今まで食べたスイカとはぜんぜん違う” ”スイカってこんなに甘くておいしいんだ!”と感動したんです。それ以来、上京して働き始めてから、全国各地のスイカを取り寄せては食べ比べるのが趣味になったんですね」
ところがあるとき、人生初の衝撃を与えてくれたスイカを作っていた農家さんが「スイカ作りをやめた」ことを知ります。それだけでなく、「去年食べたスイカがおいしかったからといって取り寄せようとしても、廃業したために叶わない」ことが複数件同時に起きたそうです。
「あの感動的においしいスイカが二度と食べられないのだと思うと、ショックのあまり、実質3日間くらい落ち込みましたね。結果的に、スイカに関する何かをやりたいと考えるきっかけとなった出来事でした。
スイカ作りをやめていった農家さんの話を聞いていく中で、根本的な問題は大きく2つあると僕は思ったんです。ひとつは後継者不足。もうひとつは『スイカの生産は、こだわればこだわるほど儲からない』という現状です。高い栽培技術をもち、手間と時間をかけて品質の高いスイカを作っても、市場のシステム上、スイカの品質が評価や金額に反映されにくいから、いいスイカを作る農家さんほどバカをみてしまう。
熱意をもってスイカ作りに取り組んでいる農家さんが、スイカだけで生計を立てられるようになってほしい。そして次の世代に夢を見せられる存在になってほしい。もちろん根本に『おいしいスイカを食べたときの感動を多くの人と分かち合いたい』という思いがあって、ブランドスイカの通販サイト『あまいスイカ』を創設しました。
『あまいスイカ』に出品するには、通過率10%以下という厳しい審査をパスしなければなりません。1次審査を通った農家さんのところには僕が直接足を運び、安定的においしいスイカを作ることができる状況かどうか、生産者さんのお人柄、お客様とのかかわりを大切にしている方かどうかなどを確かめます。
すでに出品していただいている農家さんのところへも、その年の栽培状況などを自分の目で確認しにいきます。本当に納得したものを出品することでお客さんを感動させたいので、このこだわりは譲れないですね」
スイカのイメージにぴったりな佐藤さんの笑顔から、おいしいスイカに傾ける並々ならぬ情熱を感じ取ることができました。
まずはスーパーに行ってスイカを選び、スイカの栄養とみずみずしさを堪能するもよし、こだわりのスイカを味わって衝撃を受けるのもよし。暑い季節に思い切りスイカを楽しんでみてはいかがでしょうか。
Profile

「あまいスイカ」代表/佐藤タケル
熊本県出身。スイカマニアとして、スイカで日本を面白くする男。2020年、とことんスイカにこだわった、スイカ好きの、スイカ好きによる、スイカ好きのためのブランドスイカの通販サイト「あまいスイカ」を立ち上げる。ブランドスイカを食べ比べながら、食べる人と作る人がつながることのできる年に一度のイベント「スイカパーティ」は2020年より毎年開催。『マツコの知らない世界』などメディアへも多数出演。
Instagram https://www.instagram.com/suikaya_kenshin/
あまいスイカHP https://amaisuika.com/
取材・文=森下真理