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目指すのは『風の谷のナウシカ』に登場する秘密の地下室47㎡で植物100鉢と暮らす。自分にとって心地いい暮らしのカタチ~Room Stylistひでまるさん~

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アットリビングでは、「こうあるべき」という価値観にとらわれず、自分らしい生き方を体現し、心地よく暮らしている人をインタビューする連載企画“新しい暮らしのカタチ”を不定期でお届けしています。今回の主人公は、Room Stylistのひでまるさん。

ひでまるさんが、パートナーのぶたじるさんと暮らす47㎡の自宅には、なんと100鉢もの植物がいきいきと育っています。緑に囲まれた心地よい空間は、ふたりが自分たちらしい暮らしを育んできた証。インテリアに植物を取り入れたきっかけや日々のお手入れのルーティン、植物選びのポイントなど、たくさんの植物とじょうずに暮らす秘訣をうかがいました。

Tシャツ700枚、鍋20個。かつてはモノに溢れた部屋だった

玄関から廊下を通り、リビングへ向かうと、大小さまざまな観葉植物が迎えてくれます。もともと植物が好きだったのでしょうか。

「最初に『植物を飾りたい』と言ったのはぶたじるさんでした。私ははじめ、部屋に植物を置くことにピンとこなかったんです」とひでまるさんは話します。

片付けや部屋づくりのサポートをするRoom Stylistの仕事を始める前、ひでまるさんは雑貨店や美術館のミュージアムショップを運営する会社でVMD (ヴィジュアルマーチャンダイザー)として、商品開発やディスプレイを作る仕事をしていました。ところが、新型コロナの影響で、雑貨店やミュージアムショップが休業。VMDの仕事がストップし、在宅勤務となり、在庫管理やオンライン販売を担当するようになったのです。

「VMDの仕事をしていた頃は、全国を飛び回るような忙しい日々を送っていました。コロナ禍で在宅ワークになり、時間に余裕ができたことで、自分の生活や仕事を改めて振り返り、『自分が本当にやりたいことは、なんだろう?』と考え始めたのです。

その頃は、部屋にモノが溢れ、『いつかは着るかも』と思っていたTシャツが700枚、『いつかは使うかも』と持ち続けていた鍋が20個近くありました。コロナ禍で、自宅で過ごす時間が増え、もっと心地よい空間で暮らしたいと思うようになり、片付け始めましたが、いざ始めてみると、なかなか片付けられなくて……。片付かない原因がわかりませんでした」

片付けの先に見つけた植物との暮らし

そんな折り、近所で整理収納アドバイザーの講座が開催されることを知り、2級を受講。そこで、「雷に打たれるような衝撃を受けた」そうです。

「講座の始めに、『使いたいものを選んでいますか?』と聞かれ、ハッとしました。Tシャツも鍋も『流行っているから』『まだ使えるから』、そう思って持ち続け、本当に自分が使いたいものを選んでいたわけではなかったんですよね。それに気づいて衝撃を受け、帰宅後、すぐに片付けを始めました。それから2か月間、ひたすらモノと向き合い、一つひとつのモノを手に取り、自分の感覚と照らし合わせながら取捨選択するうちに、部屋の景色が変わっていきました。モノを減らしたい一心ではじめた片付けでしたが、溢れていたモノがなくなりスッキリとした部屋を見ると、なんだか『寂しいなぁ……』と思ったのです。

そんなとき、ぶたじるさんから『植物を飾りたいんだよね』と言われました。『風の谷のナウシカ』に登場する秘密の地下室のような、植物がたくさんある空間にしたいと言われ、一緒に植物ショップに行き、ビカクシダを購入したんです。田舎生まれの私は、外に出れば海もあり山もあり、身近に自然があったので、植物を家の中に入れる感覚がありませんでした。でも、最初に迎えたビカクシダを毎日眺めているうちに、次第に植物の魅力にひかれ、ひとつ、ふたつと植物が増え、3年ほど前から植物を主役としたインテリアをつくるようになりました」

ぶたじるさんの頭上にあるのがシンボルグリーンのビカクシダ。

100鉢の植物の中でも、ひでまるさんがいちばんのお気に入りというのが、リビングの中心に位置するビカクシダです。

「このビカクシダは、私がRoom Stylistの仕事を始めたときに、ぶたじるさんがお祝いに、とサプライズで贈ってくれたものです。ふたりで植物ショップに行ったときに、私が欲しいと思って何度も眺めていたのを、ぶたじるさんが覚えてくれていて、プレゼントしてくれました。このビカクシダを見るたびに、ぶたじるさんへの感謝の気持ちと、独立して仕事をすることを決意した気持ちを思い出して『がんばろう!』と思えます」

心温まるバックグラウンドストーリーを持つビカクシダは、住まいの“シンボルグリーン”となり、これに合う植物が少しずつ増え、今の住まいのかたちになったそうです。

“水・光・空気の循環”が植物を元気に育てる三大原則

家事分担のひとつとして、植物の世話を担当しているのはパートナーのぶたじるさんです。

「ふたりで植物に水やりをすると、どの子に水をあげたかわからなくなったりして、水をあげすぎて枯らしてしまったこともありました。なので、今はぶたじるさんが、植物の世話と料理を担当。私が掃除と洗濯を担当し、家事をシェアしながら植物を育てています。我が家の水やりの頻度は、2週間に一度。大きな鉢の植物はお風呂場に持っていき、シャワーで水をあげ、中ぐらいの鉢のものは台所のシンクで水をあげて、鉢の底から水が流れなくなってから元の場所に戻しています」

植物を健やかに育てるためには、水やりのほかに、適度な光と空気の循環が必要になります。

水、光、空気は、植物を育てるための三大原則です。私たちは、植物を室内で育てているので、カーテン越しの光でも育つ、耐陰性の高い植物を選んでいます。シンボルグリーンのビカクシダには “植物育成ライト”も利用して、健康に育てるケアをしています。空気の循環については、窓と玄関の扉を定期的に開けて部屋に風を通し、換気扇を24時間回しています。空気が滞りやすい窓際にはファンを設置し、空気の循環を促しています」

ビカクシダには植物育成ライトを当ててケア
窓からの光でも育ちやすい植物を選で並べた窓辺のスペース。左上には空気を循環させるファンも設置。

コンパクトハウスで植物を美しく見せるコツ

ひでまるさんとぶたじるさんが暮らす住まいは、床面積47㎡のコンパクトハウス。限られたスペースに100鉢の植物が美しく配置されています。そこには、ひでまるさん流のインテリアの工夫がありました。その工夫のひとつが、「植物と照明を組み合わせる」ことです。

植物は照明とセットで飾ると、葉の色や質感がより鮮やかに美しく見え、立体感が増します。また、照明の光が植物に当たると壁に陰影ができ、空間に奥行きが生まれるため、部屋が広く見えますね。照明はひとつではなく、複数設置して照らす“多灯分散”にすると、植物や壁、天井への光の当たり方に変化がつき、空間をおしゃれに演出できます」

日中の自然光のもとではグリーンが清々しい雰囲気を演出。
ライトを多方面から当てるとグリーンに陰影が生まれ、表情が変わる。
 

インテリアで植物を魅力的に見せるには、複数をまとめて「植物群」として配置するのもポイントです。

植物は、一か所にまとめて群生させると、印象的なディスプレイになります。『植物が好きで部屋に飾っているけど、まとまりがなくて……』という相談を、時々受けることがありますが、複数の植物を、ひとつは窓際、ひとつは腰壁の棚の上と分散させると、視線が散って統一感が出にくくなってしまいます。植物の魅力を引き出すには、複数をまとめて配置するのが効果的ですね。また、飾るところと飾らないところを、意識的に分けて空間にメリハリをつけることも、すっきり見せるコツです。うちでは、リビングの壁と窓際に植物を集め、ダイニングテーブルにはできるだけモノを置かないようにしています」

また、「3つの植物やモノを三角形になるように」並べて高低差や立体感をつくると、こなれた印象に。

「たとえば、奥に背の高い植物をひとつ置き、手前に背の低い植物や小物をふたつ並べて三角形をつくります。こうすると、横一列に並べたときよりも、植物が立体的に見えます。集合した植物やモノを見たときに、大きな三角形や小さな三角形がいくつかあり、全体で大きな三角形になるように配置すると、洗練されたインテリアになります」

さらに、「3つのモノを2:1のバランスで並べる」と、より軽やかになります。

「とくに目線の位置にくるものは、2:1の比率で並べると、圧迫感がなく軽やかに見えます。我が家では、キッチンに吊るしている植物を、繊細な葉の鉢を2つ、丸みのある葉の鉢を1つのバランスにしています。これは植物に限らず、小物類にもいえることで、同じくキッチンに吊るしている木製のアイテムも、カッティングボード2枚、デザインのある鍋敷1枚のバランスにして空間に遊びや抜け感を出すようにしています」

「吊るして飾る」見せ方は、スペースの有効活用にもなります。

「天井から吊るして飾ると、床を広く使うことができるため、我が家のようなコンパクトハウスでは、とくにおすすめです。吊るす場所は、動線を妨げないように通路上を避け、頭に当たらない高さに設置することが大切ですね。天井や壁に穴を開けたくない場合は、細いピンで固定する“Jフック”などを利用すると、穴が目立ちにくくなります」

天井から吊り下げられたグリーンや木製のカッティングボード、ガスレンジのサイドの壁にもせいろや五徳が3つずつバランスよく並べられています。

そうして全体を見渡したときに、植物や小物類が「修学旅行写真方式」に配置すると整った印象になります。

「修学旅行などで記念写真を撮るとき、全員の顔がちゃんと見えるように並びますよね。その要領で、リビングにある植物や小物の顔がきちんと見えるよう配置すると、モノが多くても整った印象を与えることができます

最近では、フェイクグリーンも取り入れ、リアルな植物との組み合わせを楽しんでいるそうです。

「最近のフェイクグリーンはクオリティが高いので、玄関やトイレなど、日が当たらない場所に植物を置きたいときや、植物を育てるのが苦手な人にも取り入れやすいと思います。うちでは落下を考慮し、安全のためにも寝室にはフェイクグリーンのみを飾っています。ただ、フェイクグリーンには表と裏があるので、表が見えるように壁に寄せたり、目線から外れる高い位置や足元に置くと、自然に見えますね。フェイクグリーンは、ネットショップの『いなざうるす屋』で購入することが多いです」

自分の部屋やライフスタイルに合う植物を取り入れることが大切

これからインテリアに植物を取り入れたい場合は、「まずは、気になっている植物をネットなどで検索し、その植物の特徴を知ることが大切です」とアドバイス。

「たとえば、サボテンは水を頻繁にあげる必要がなく、育てやすいと思われていますが、サボテンのような多肉植物は日光を好むため、ベランダなど屋外で育てるのが理想で、室内で育てると日光不足でひょろひよろと伸びてしまうんです。室内で育てる場合は、日当たりが少なくても育ちやすい耐陰性の高い植物が適していますね。ネットで欲しい植物の情報収集をしたり、植物ショップの店員さんに相談し、自分の部屋やライフスタイルに合った植物を選ぶと育てやすいですね」

そのうえで、初心者には、どんな植物がおすすめでしょう?

「インテリアに取り入れるには、サンスベリア、ゴムの木、ビカクシダの3種類がおすすめです。サンスベリアはうちにも何鉢かあり、日照が少なくても育ちますし、水やりの頻度も少なく、大きな鉢だと1か月に1回の水やりで十分です。ゴムの木も、丈夫で育てやすい植物ですが、室内で犬や猫などのペットを飼っている場合は注意が必要。ペットが葉をかじると樹液の刺激で体調不良を招くことがあるので、購入前に専門家に確認してください。それから、我が家のシンボルグリーンのビカクシダも、日照が少なくても育ちやすい種類ですね。

初めて植物を購入するときは、鉢が小さなものを選びたくなりますが、植物は大きければ大きいほど丈夫です。小さな鉢のものは、根がまだ安定していなく枯れやすい傾向があるので、初心者は7号(直径約21cm)以上の大きめの鉢を選ぶと育てやすいと思います。最初から大きな植物を購入するのは不安かもしれませんが、初めに部屋のシンボルになる植物を選び、それに合う植物を選んでいくとまとまりやすくなりますよ。

私たちは、東京・練馬区のオザキフラワーパークや南青山のSOLSO PARK、オンラインショップではAND PLANTSで植物を選んでいます。ほかにも、イケアやホームセンターなどでも、おしゃれでリーズナブルな植物を購入することができます。植物を購入するときは、鉢カバーも一緒に購入すると、あとから鉢カバーを探してサイズが合わない、という心配がなく安心です。鉢カバーは、石の粉と樹脂を混ぜてつくられたアートストーン素材のものを選ぶと軽く、落としても割れにくいので扱いやすいですね。色はグレーや黒、ベージュなどのベーシックカラーを選ぶと、インテリアになじみやすいと思います」

理想の部屋に向けて、今はまだ発展途上

『風の谷のナウシカ』に登場する“植物が生い茂る秘密の地下室のようなイメージ”からはじまった植物との共生。今はまだ「発展途上」と、ひでまるさんは話します。

「今後も、好きな植物を少しずつ増やしていきたいと思っています。植物は、雑貨やインテリア小物と違って、“育つインテリア”です。『新芽が出た!』『葉がいい色になってきたね』『ちょっと元気がないから栄養剤をあげよう』と成長を喜んだり、心配するうちに愛着がわいてきます。それに、毎日きれいな空気の中で生活できるのも、この子たちが光合成をしてくれているおかげ。癒しやエネルギーをくれる植物を主役に、私とぶたじるさんの“好き”が詰まった理想の家を、これからもつくっていきたいです」

Profile

Room Stylist/ひでまる

2021年、インテリア&整理収納のサポートをするRoom Stylistとしてデビュー。ディズニーストアや美術館、水族館のミュージアムショップにて8年間、VMDを学んだ経験を活かしたルームスタイリングは、数か月先まで予約がうまるほどの盛況ぶり。また、部屋づくりの情報を詰め込んだルームツアー付きセミナーを自宅で開催し、人気を博している。地域公共施設でのセミナー、企業による整理収納セミナー、コラム執筆など、多方面で活躍中。
Instagram:@hidemaroom
YouTube:@hidemaroom

撮影=田辺エリ 取材・文=野口美奈子