CULTURE 人・本・カルチャー

シェア

クリスマスシーズンの家を飾るフローリストが教える、
ドライフラワーリースの制作手順

TAG

吊るすだけで部屋を華やかにしてくれる“リース”。クリスマスに飾られる印象が強いですが、季節の花材を取り入れれば、インテリアアイテムとして一年中楽しむことができます。なかでもドライフラワーを使ったリースは、インテリアに取り入れやすいだけでなく、長い期間楽しめるのが大きな魅力。

ドライフラワー教室を運営するフローリスト・新井聡子さんに、ドライフラワーの魅力やリースのこと、クリスマスにぴったりのドライフラワーを使ったハーフリースの作り方などを教えていただきました。

日常にも取り入れたい、
「リース」に込められた意味

クリスマスシーズンになると、あちこちで目にするリース。この時期だけ家に飾るという人も多いかもしれませんが、新井さんは「日常的に、もっと気軽に飾ってほしい」と語ります。まずは、リースを飾る意味や込められた願いについて教えていただきました。

「リースには、『魔除け』や『無事に戻ってこられますように』という願いが込められています。その意味を知ると、普段使いはもちろん、新築祝いなどのギフトにもぴったりだと感じていただけるのではないでしょうか。

また、つなぎ目がない輪の形をしていることから『永遠』という意味が込められています。ウエディングでも『永遠の愛』という意味を込めて、リースブーケを取り入れる方が増えてきました。そして、造形心理という視点から見ると『円形』は、心が穏やかになるとも言われています。ですので、雰囲気が堅苦しいと感じる部屋やオフィスにリースを飾ると、そうしたセラピー効果を感じられるかもしれません」(フローリスト・新井聡子さん。以下同)

インテリアアイテムとしてもぴったり
ドライフラワーリースの魅力

フレッシュな生花のリースも魅力的ですが、今回おすすめしたいのが「ドライフラワー」を使ったリースです。その魅力はどんなところにあるのでしょうか?

「ドライフラワーの最大の魅力は、お手入れ不要で長く楽しめるということです。生花を楽しめる期間は1週間ほどとあっという間。一方でドライフラワーは、保存環境によっては1年以上楽しめるものも多くあります。また、お部屋のインテリアになじみやすいというのも魅力のひとつです。ドライフラワーは味気ないと感じる人も多いかもしれませんが、最近は発色のいいものも増えています。ナチュラル系のインテリアはもちろんのこと、自分のお部屋の雰囲気に合ったものを見つけることもできるはずです」

「もし賃貸にお住まいでリースを壁に掛けられないという方は『テーブルリース』として楽しんでみてはいかがでしょうか。真ん中にキャンドルや小型のアロマディフューザーを置くのもいいですね。華やかな雰囲気を演出できると思います」

長く楽しむなら?
直射日光・風・湿度を避け
応急処置は“ヘアスプレー”で

設置環境によっては、より長く楽しめるというドライフラワーリース。長持ちさせるコツをうかがいました。

「注意すべきは『直射日光が当たる場所』、『風が当たる場所』、『湿度が高い場所』を避けるということです。ドライフラワーはもともと乾いているものですので、光が当たると退色し、より乾燥が進んでパラパラと落ちてきてしまいます。風も同様に、乾燥をもたらす大きな原因のひとつです。また、湿度の高い場所もカビが生える危険性がありますので、洗面所などの水回りは避けたほうがいいかもしれません」

「触ってパラパラと花材が落ちてくるようになったら、捨てるタイミング。ですが、『もう少し長く楽しみたい!』と思うときもありますよね。そんな時は、応急処置として無香料のヘアスプレーや糊スプレーをさっとかけると花材が落ちづらくなり、長く楽しむことができますよ」

リースにぴったりの、季節のドライフラワー

「ドライフラワーからも季節を感じてほしい」という思いから、アレンジメントにも旬の花材を取り入れている新井さん。今回は、ドライフラワーリースにもぴったりな季節の花材をいくつか教えていただきました。

■ 3月……ミモザ

「3月に見ごろを迎えるのが、春を告げる花として親しまれている『ミモザ』です。イタリアでは、3月8日を『ミモザの日』と呼んでおり、男性が感謝を込めて女性にお花を贈る風習があるそうです」

■ 6月……スモークツリー

「もこもこの素材感が可愛いスモークツリー。乾燥しやすいので、ドライフラワーにぴったりな花材です。色もグリーンだけでなく、赤や白っぽい色など様々ですので、多彩なアレンジが楽しめるのも魅力です」

■ 9月~10月……パンパスグラス

「最近は花嫁が手に持つウエディングリースなど、ブライダルの現場でもよく見かけるようになったパンパスグラス。ふんだんに使うとふわふわとして、華やかな印象になります。保存環境によっては、3-4年ほど長持ちするものもあるので、アレンジにおすすめの花材です」

初心者でも簡単!
クリスマスハーフリースの作り方

最後に、クリスマスにぴったりの花材を使って、初心者でもチャレンジしやすい「ハーフリース」の作り方を教えていただきました。ハーフリースは、その名の通りリースの半分に花材を配置するリースのこと。リース土台の素材感や色を見せることができるのも特徴です。

「本来はリースワイヤーを使って花材を巻き付けていくのですが、今回はグルーガンを使用します。初心者の方でも比較的簡単に作ることができますよ」

【準備するもの】

道具
・グルーガン
・園芸用ハサミ

材料
・リース土台
・麻ひも
・ドライフラワー数種 ※今回使用する花材は以下の通り
(写真上段左から)ブルニア、ラムズイヤー、サンキライ(赤い実)、ブルーバード
(写真中段左から)コットンフラワー、ハス(ゴールド)、ドライオレンジ、松ぼっくり、トウガラシ
(写真下段)ブルーアイス

「クリスマスリースに取り入れる赤色の素材は、イエスキリストの血を意味します。サンキライの実が赤くなるのはこの時期だけですので、季節を感じることもできますね。また、ブルーバードなどの常緑樹は一年中緑色をしているのですが、そこから連想して『永遠の命』や『健康』といった意味があるそうです。
松ぼっくりやオレンジは、冬の寒さに負けず、来年もたくさんの食物に恵まれますようにという『豊作』の願いを込められています。また、『繁栄』や『豊かさ』を象徴する、金や銀のアイテムを取り入れてみるのもおすすめです」

【作り方】

1.メインになる花材を決める

まずは、最初に取り付ける「リースの主役」を決めましょう。「今回は、2つの茶色いコットンを主役にしたいと思いますので、そこから取り付けていきます。コットンは白だけでなく、色の付いているものも販売しているんですよ」

2.花材は斜めにカットし、グルーを付けて差し込むように取り付ける

「花材をカットする際は、必ず斜めにカットしてください。斜めにカットすることで、グルーが付く面が広くなるので落ちにくくなります」

「グルーは、そこまでたくさん付けなくても大丈夫。ツルの間に差し込みながら取り付けてくださいね」

3.主役の花材を中心として、そこから伸びるようにほかの花材を付ける

コットンの隙間を埋めるように、松ぼっくりも配置。この部分を主役に他の花材を取り付けていきます。「この中心部分を球根に見立てて、そこから花が伸びていくようなイメージで他の花材を取り付けていきましょう。今回はハーフリースですので、中心から上と下の方向に伸ばしていきます。リースは、流れが大事。それさえ意識していれば綺麗に仕上がると思いますよ!」

A.ブルーバード

まずはブルーバード。ブルーバードのようにボリュームのある花材は、房をいくつかに分けるのがポイント。同じように斜めに枝をカットしてグルーを付け、中心部分に枝を差仕込むように取り付けます。

上方向と下方向に、およそ同じ量のブルーバードを取り付けました。「リーフ作りの初心者さんは、上下同じ量の花材を取り付けるのがおすすめ。バランスを見ながら取り付けていきましょう」

B.ブルーアイス

ブルーアイスも、長さを見ながらカットして上下の流れに沿って取り付けていきます。「ブルーアイスは針葉樹でさわやかな香りを感じる花材です。差し込む枝の部分に葉があるとくっつきにくいので、ある程度枝の先端を綺麗にしてから使うといいですよ」

【POINT】上下左右からの見え方を都度確認

リース作りの過程で重要なのは、確認作業。座って作る場合は、途中でリースを持ち上げ、正面からの見え方だけでなく、上下左右全方向からの見え方を都度確認しましょう。

「どこから見ても、花材が綺麗に見えるように配置していくのがポイント。例えば、横から見たときのボリューム感や高さに差がないかなど……色々な角度から見て、調整しながら作っていくと綺麗に仕上がると思います」

C.ハス

アクセントとなるゴールドのハスを、コットンの隙間を埋めるように配置します。

D.ブルニア

キノコみたいな見た目がかわいらしくて人気のブルニア。実が付いている部分とそうでない部分で、いくつかの房に分けてから使います。

まずは、実がついていない素材を中心の花材から生えるように取り付けていきます。「同じ色の花材を取り入れる際は、テクスチャーが違うものをチョイスするのがおすすめ。同じグリーンでも、形と質感に特徴があるブルニアを取り入れるとそれだけでボタニカルな印象になります」

丸い実の部分は、ハス同様に中心部分の隙間を埋めるような形で配置しました。「同じ花材を取り付けるときは、高低差を意識しながら配置すると平坦な印象にならず綺麗に仕上がりますよ」

E.ラムズイヤー

白い毛で覆われたふわふわの質感がかわいらいしいラムズイヤー。つぼみの部分と葉の部分で切り分けて配置していきます。形が特徴的なつぼみの部分は中心付近に、葉は後ろ側などにも入れると、ボリュームと奥行きが生まれます。

F.ドライオレンジ

ドライオレンジは、接着する部分にだけグルーをつけて差し込むように取り付けていきます。

「接着する部分にだけグルーを仕込み、ハスに隣接するようにドライオレンジを配置してみました。全体のバランスを見て、お好みの場所に取り付けてみてくださいね」

G.トウガラシ

トウガラシも房を分けて、上下に配置。少し手前に立たせるように取り付けると立体感が生まれます。「濃い色は、真っ先に目が行く部分ですので最後に配置するのがベスト。今回のリースは赤がポイント色ですので、トウガラシやサンキライは最後に全体的なバランスを見ながら取り付けましょう。白いラムズイヤーの近くに配置すると、赤色が映えるのでおすすめです」

H.サンキライ

サンキライも同様に、房を分けて上下に取り付けます。「サンキライは、この時期に赤くなる旬の素材です。好みではありますが、長めにカットして、枝が見えるように取り付けていくとダイナミックな印象に仕上がりますよ」

5.出来上がったら、軽くリースを振る

リースが完成したら、きちんと花材がリースに付いているか確認するため、軽くリースを振ります。付いていない部分があればグルーで補強しましょう。

6.麻ひもを通して、完成!

あらかじめ輪を作っておいた麻ひもを、リースに括り付ければ完成です。スタイリッシュな印象にしたいのであれば、ワイヤーを通してもOK。仕上がったら壁に掛けて、見え方の確認も忘れずに!

グルーガンを使えば、簡単に作れるドライフラワーリース。花材のチョイスによって、雰囲気の違いを楽しめるのも魅力のひとつです。みなさんもぜひ、クリスマスだけでなく、季節の花材を取り入れたリース作りにチャレンジしてみてください。

Profile

フローリスト / 新井聡子

東京・品川区でフラワーサロンRANUN(ラナン)を運営するフローリスト。生花アレンジメントの経験を活かし、現在はドライフラワーを使ったアレンジメントを中心に、初心者にもわかりやすいレッスンを開講。アレンジメントやブーケ、スワッグなどのオーダーも受け付けている。フラワーライフセラピストや花育士など、花に関する数多くの資格を保有。造形心理学、色彩心理の知識を生かしたアレンジメントも得意。
HP
Instagram
Store「BASE」

取材・文=室井美優(Playce) 撮影=真名子