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着色しない自然な美しさを飾る。「ナチュラルドライフラワー」を
ハンギング法で作る方法

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インテリアにシックな彩りをもたらす「ドライフラワー」。フラワーショップや雑貨店などでも比較的簡単に手に入れられる一方で、飾っていた切り花を自分の手でドライフラワーに仕上げてみたいと思う人も多いのでは? でも実は、“飾った後の生花から、きれいなドライフラワーを作ることはできない” のだとか。

では、ドライフラワーを失敗せずに美しく作るには、どのような点に注意すべきなのでしょうか? 今回は、さまざまあるドライフラワーの作り方から「ハンギング法」をピックアップ。完成までの手順やコツ、ドライフラワーにおすすめの花など、ナチュラルドライフラワー作家の吉本博美さんに教えていただきました。

「ナチュラルドライフラワー」とは?

ドライフラワーには、見栄えが良くなるよう人工的に着色や退色されたものと、自然のままに乾燥させたものがあります。後者の「ナチュラルドライフラワー」は、自然でありながら鮮やかな色彩といきいきとした表情が魅力です。

「市販のドライフラワーの多くに、着色や漂白などが施されています。一見鮮やかですが、自然界には存在しない色になってしまったり、茎も不自然にまっすぐに伸びてしまったりして、本来の魅力を失ってしまっていることが多く、残念ですね。ドライ=枯れている、という印象があるせいか、ナチュラルドライフラワーは色彩が乏しいと思われがちですが、実はまったくの逆。ナチュラルドライフラワーだからこそ、深みを帯びた美しい色彩を出すことができるんです」(ナチュラルドライフラワー作家 吉本博美さん、以下同)

ナチュラルドライフラワー作家の吉本博美さん。

その美しさは飾った後の鮮度が悪くなった花では出せない、と吉本さん。きれいなドライフラワー作りには、花の鮮度も欠かせません。また、湿度以外に直射日光も、花を傷める原因になるため、適切な手順と場所を選ぶ必要があります。正しい方法で乾燥させてこそ、色鮮やかで美しいドライフラワーを楽しむことができるのです。

ドライフラワーの作り方はさまざま

ドライフラワーには、ほかにもグリセリン法、シリカゲル法、ドライインウォーター法などがあります。たとえば、花の形を絵のように固定させて乾燥させたいときなどにはシリカゲル法、花瓶に飾ったまま徐々に乾燥させていきたい場合はドライインウォーター法などを選ぶことも可能ですが、花の自然な形を残すためにはハンギング法が最も適しています。さらに、ナチュラルドライフラワーには、人工着色料などを一切使用していないので環境への負担も少ない、というメリットもあります。

【ドライフラワーの製作方法 4種】

ハンギング法
束ねた花を逆さにし、吊るしてドライにする方法。手軽に作れて、乾燥中もインテリアとして楽しむことができます。

ドライインウォーター法
花を少量の水に挿し、少しずつ蒸発させながら花をドライする方法。花瓶に飾りながら作ることができます。

■ シリカゲル法
ドライフラワー用の「シリカゲル」を使用して花をドライにする方法。シリカゲルをたっぷりと容器に敷きつめ、その上に花が重ならない様に置いたら、花の上からもシリカゲルをそっと被せて埋め、てドライフラワーになるまで置いておきます。色や形が鮮やかに残りますが、茎は切らないといけないためアクセサリーやハーバリウムなどに使うドライフラワーにおすすめ。

■ グリセリン法
グリセリン溶液を使用して花をドライにする方法。花を溶液のなかに「漬ける方法」と挿して「吸わせる方法」があり、特に繊細な花や葉を落ちにくくしたい場合に選ぶ方法です。

高温多湿と直射日光を避けて吊るす

ドライフラワーと切り花との大きな違いは、保存期間です。切り花は1~2週間しか楽しめませんが、正しい手順で作ったドライフラワーなら半年ほど楽しむことができます。今回はナチュラルドライフラワーの作り方の手順とコツを教えていただきましょう。

まず、ドライフラワーは湿度を避けることが必須。制作に適した時期は、夏を除く1月~5月・10月~12月です。自宅に湿度計があるなら、50%以下を目安にすると良いでしょう。梅雨時や夏に作りたいなら、エアコンや除湿機を活用し、高温多湿を避けることが重要です。

「湿気がこもりやすいバスルームなどに吊るすと、花が蒸れて傷んでしまいます。通気性を重視して窓際を選ぶ人もいると思いますが、直射日光に当たるときれいな色に仕上がらなくなってしまうため、窓際から少し離れた場所を選ぶようにしてください」

例えば、ドアの上部分や、上枠にハンガーで引っかける、もしくは窓際でもカーテンで遮光するのが良いでしょう。

「エアコンや除湿機、サーキュレーター(扇風機)を活用するのも効果的ですが、エアコンや扇風機の送風が強すぎると、生花の花弁が散ってしまったり、形が崩れてしまったりすることも。送風を花に直接当てるのではなく、吹き出し口などから少し離れたところに吊るすことをおすすめします。避けて欲しいのは、浴室乾燥機。花を乾燥している間中、ずっと浴室を使わないのであれば有効かもしれませんが、基本に浴室は常に湿気がある場所ですので花が傷んで、これも失敗の原因になってしまいます」

【ナチュラルドライフラワー作りのポイント】

・高温多湿を避ける(湿度50%以下が目安)
・直射日光の当たらないところに吊るす
・エアコンや扇風機の送風を直接当てない ・浴室乾燥機で花を乾燥することは避ける

ハンギング法の手順

道具から確認していきましょう。

【準備するもの】

・生花(好きな花。今回は、バラ、ユーカリグニー、レモンリーフ、ホワイトレースフラワー、エリンジウムを使用)
・花切バサミ
・ハンガー
・小型ピンチハンガー(1本ずつ吊るすとき)
・輪ゴム
・S字フック

【作り方】

1.生花の前処理を行い不要な葉やトゲを取り除く。

茎についているとげや葉を取り除いていきます。葉はハサミでも手でも、やりやすい方法でかまいません。

ユーカリなどの葉ものも、下の方の葉を取り除きます。厳密なルールはないので、好みのバランスで調整してください。

必要な長さに切っていきます。短めに切れば乾燥も早くなります。スワッグを作るなら飾るときをイメージして切っておきましょう。

2.同じ種類の花をまとめる

同じ種類の花を束ねていきます。このとき、まとめてたくさん束ねるのではなく、数本ずつ束ねていくことがポイントです。花同士が当たってしまうと、傷んでしまったりカビてしまったりする原因になるので、束ねる高さを調節してみてください。

3.輪ゴムで束ねる

茎を交差させたまま1本の茎に輪ゴムをかけて支点にし、外側から巻いていきます。

しっかりと、茎が抜けないように輪ゴムを巻きつけたら、最後に輪ゴムをかけていない方の茎に、輪ゴムの端を引っかけて固定します。巻き方が緩いと乾燥でしぼんだ茎が滑り落ちてしまうので、まずはしっかりと輪ゴムで束ねておくことが大切です。

4.ハンガーに掛けて吊るす

ハンガーの間に片方の花を入れて、そっと吊るします。

5.湿度と直射日光を避けられる場所に吊るす

湿気が少なく、直射日光が当たらない場所を選んで吊るします。複数の花を吊るす場合には、それぞれの花が当たらないよう間隔を開けてハンガーにセットしてください。壁に当たると茶色く変色したり、壁面に染みがついてしまったりすることも。そのため、壁面近くに吊るす場合には、なるべく壁に花が直接当たらないよう気をつけましょう。

一本ずつ吊るす場合は、小型ピンチハンガーに挟みます。このときも、花同士が当たらないよう、間隔を開けるようにしてください。また、麻ヒモを引っ張ってピンなどで張って、そこにS字フックを引っかける方法もあります。室内に引っかける場所が無い場合は、突っ張り棒を使って吊るす場所を作りましょう。

6.完成

完成したナチュラルドライフラワー。左から、エリンジウム、バラ、ホワイトレースフラワー(上)、レモンリーフ、ユーカリグニー(下)

約1週間~2週間かけて乾燥させると、ナチュラルドライフラワーが完成します。

「完成を見極めるときには、花首(茎の先の花を支えてる部分)を指で触ってみてください。まだぐらぐらしているようだったら乾き切っていないサインです。花の種類によって乾燥させる期間は異なりますが、一般的には約1~2週間。例えば、バラは1か月近くかかるものもあります。よく早く乾かしたいからとドライヤーを使用する人もいるようですが、花の形が崩れてしまう恐れがあるのでおすすめしません。焦らずじっくりと乾燥させてあげてください」

美しいドライフラワーを長く楽しむための
メンテナンスのコツ

せっかく作ったナチュラルドライフラワーだからこそ、できるだけ長く楽しみたいものです。完成したあとのメンテナンスや替え時についても教えていただきました。

【メンテナンスのコツ】

1.害虫対策
梅雨や夏には、ドライフラワーにも害虫が出やすくなります。あらかじめ花の中心部にノズル式の殺虫剤を塗布しておくと、繁殖を防ぐことができます。

2.ホコリの除去
ドライフラワーに積もったホコリは、ドライヤーの弱風で払ってあげましょう。その際、直接風を当てないように気を付けてください。

3.ナチュラルドライフラワーの寿命
鮮やかな色彩を保てるのは約3~6か月です。高温多湿となる梅雨や夏は、さらに脱色する時期が早まり、約1~3か月。色褪せた状態が好みであれば無理に処分する必要はありませんが、これらのタイミングを替え時の目安にするとよいでしょう。

南アフリカやオーストラリア原産の
タフでエキゾチックな花がトレンド

基本的にはどんな花でもドライフラワーにならないことはありません。とはいえ、なかにはドライフラワーにするのに適した花とそうではないものがあるそう。

「花に含まれる水分量が少なく、変色しにくい種類がドライフラワー作りには向いています。例えば、バラや千日紅、アネモネなど。逆に、チューリップやカーネーションなど、茎の水分が多い種類や花弁が少なく繊細で取れやすい種類は、きれいにドライフラワーにしづらいものもあります」

とくに、水分が多い花は乾燥に時間がかかるために、きれいな色味が出ないことも。そうしたなか、ドライフラワーの花材として昨今人気を集めているのが、南アフリカやオーストラリア原産の花なのだとか。

「南アフリカ原産のリューカデンドロンやプロテア、オーストラリア原産のバンクシアやカンガルーポーなど、エキゾチックな花が人気です。水分量が少なくて丈夫な花なので、ナチュラルドライフラワーにするのにも適しているんです。最近では、 “アンティーク調” のインテリアが人気なので、これらの花を使うと落ち着いた色合いに仕上がることも人気の理由のひとつだと思います」

上から、南アフリカ原産のプロテア・ナナ、プロテア・カーニバル、リューカデンドロン・ネブロッサム、リューカデンドロン・ジェイドパール。
同じく南アフリカ原産のセルリア。オーストラリア原産のカンガルーポー、バンクシア。

「今回お教えしたハンギング法には、特別な道具や技術がいらないので、ポイントさえ押さえれば初心者でも自宅できれいにドライフラワーを作れます」と吉本さん。自然乾燥のものは機械などで作られたものに比べて長く持つ、というのもメリットのひとつだといいます。

日々の暮らしの中で気持ちを落ち着けたいときなどには、ぜひ自然に移ろいゆく花の様子を眺めながらナチュラルドライフラワー作りを楽しんでみてはいかがでしょうか。

Profile

ナチュラルドライフラワー作家 / 吉本博美

大手アパレルメーカーでデザイナー、プレスを務めた後、雑貨ブームや高感度なライフスタイルを牽引するDepot39に入社。2005年、東京・奥沢にて「libellule」ドライフラワーショップと教室を開始し、2015年に府中に転移して「Rint-輪と-」をオープン。現在、広島、長崎でも定期講習会を開催するほか、各地で展示会を開催。テレビや雑誌などさまざまなメディアで作品を発表する。著書に、『はじめてのナチュラルドライフラワー』(家の光協会)がある。
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はじめてのナチュラルドライフラワー』(家の光協会)

取材・文=会田香菜子(@Living編集部) 撮影=真名子