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安土桃山時代から続く最古の香舗が東京進出心地いい空間を作り出す
和の香りの取り入れ方

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アロマやフレグランスがライフスタイルに定着し、暮らしのいろいろなシーンを“香り”で演出している人が増えています。日本の香りの文化は、今に始まったことではありません。「香道」という芸道があるように、古くから香りを楽しむ習慣が育まれてきました。

そんな日本古来の伝統を守りながら、現代の暮らしに溶け込む新しい香りを提案しているのが、京都の香老舗で、2018年春、東京・丸の内の商業施設「KITTE」に香りのセレクトショップをオープンした、薫玉堂です。ここで、和の香りにはどういったものがあるのか、どういった取り入れ方があるのかを聞きました。

[目次]
1.安土桃山時代の薬種商までさかのぼる薫玉堂の歴史
2.暮らしに合わせて和の香りを使い分けるために
3.薫玉堂で扱う代表的な天然香料
4.暮らしに香りを取り入れる方法
5.香袋のワークショップ

 

歴史は安土桃山時代の薬種商までさかのぼる

薫玉堂は、日本最古のお香調進所で、その歴史は、秀吉が天下をとった安土桃山時代の文禄三年(1594年)までさかのぼります。本店のある京都・西本願寺前に薬種商「薫玉堂」を開いた創業者・負野理右衛門は、薫香の研究にも取り組み薫玉堂の基礎を築きました。創業以来420余年に渡り、天然香料を主とした調香技の伝統を継承しながら、寄り添う時代に合った香りを作り続けています。

薫玉堂に代々伝わる、香りのレシピを克明に記した調香帳。同社の連綿と続く歴史を感じさせます
薫玉堂に代々伝わる、香りのレシピを克明に記した調香帳。同社の連綿と続く歴史を感じさせます。
香炉をかたどった薫玉堂のロゴマーク。現在は、16代目当主がのれんを守っています
香炉をかたどった薫玉堂のロゴマーク。現在は、16代目当主がのれんを守っています。

 

暮らしに合わせて和の香りを使い分ける

長年、主にお寺向けのお線香をつくってきましたが、京都で培った香老舗の香りを、より多くの人の知ってもらいたいという思いから、香りの総合ブランドを目指して2014年にリブランディングを決断。中心となって進めたのが、薫玉堂のブランドマネージャーである負野(おうの)千早さんです。

負野さんは、薫玉堂に代々伝わる香りのレシピが書かれた調香帳をもとに、新しい商品の開発をはじめました。2016年に、京都の情景を香りで表現した線香など“現代の暮らしに合う和の香り”をもってリブランディングを果たします。続いて2017年にお香の材料を使ったハンドクリームを、2018年には石鹸を生み出しました。

「私どもにしかできないオンリーワンを目指し、京都の四季折々の材料とお香の天然原料を組み合わせることにこだわりました。この2つを結ぶことでカタチになったのが、現代の暮らしに合わせたオリジナル商品なんです」(負野さん)

 

ではまず、和の香りを生み出す天然香料にはどんなものがあるのか、確認してみましょう。

薫玉堂で扱う代表的な天然香料

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・唐木香 からもっこう : キク科の多年草の根を乾燥させた生薬(健胃・整腸剤)。芳香と苦みがある。中国・インド北部原産。
・大茴香 だいういきょう : モクレン科の常緑喬木の実。香辛料「八角」としても知られる。中国南部・インドシナ北部原産。
・丁子 ちょうじ : フトモモ科の花蕾。辛く刺激の強い香り。古来、代表的な香辛料。インドネシア・ザンジバル原産。
・零陵香 れいりょうこう : サクラソウ科モロコシソウの地上部の全草。スパイスとして、種子を薬用にも。中国原産。
・甘松 かんしょう : オミナエシ科の草木。根および根茎を乾燥させたもの。茎は生薬として鎮静、健胃に使用。中国原産。
・かっ香 かっこう : パチョリとも呼ぶシソ科の多年草。全草または葉を乾燥させたもので健胃薬としても使用。中国原産。
・山奈 さんな : ショウガ科バンウコンの根茎を乾燥させたもの。漢方としては消化促進等に。中国・インド北部原産。
・桂皮 へいひ : クスノキ科の常緑樹高木の樹皮を乾燥させたもの。シナモンの名で親しまれる。中国・ベトナム原産。
・龍脳 りゅうのう : フタバガキ科の常緑高木より採取される塩状の結晶。防虫効果、墨の香りとしても有名。スマトラ・ボルネオ原産。
・安息香 あんそくこう : エゴノキ科の安息香樹の樹脂。バニラに似た濃厚な香りで保留効果がある。スマトラ原産。
・没薬 もつやく : カンラン科の芳香ゴム樹脂が凝固したもの。古くはミイラの防腐剤。東アフリカ・南アフリカ原産。
・拝草香 はいそうこう : 拝草の根を乾燥させたもの。漢方では芳香性健胃薬として用いられる。中国原産。
・乳香 にゅうこう : カンラン科の樹木のゴム樹脂が凝固したもの。鎮痛やリラクゼーションに使われる。南アラビア・東アフリカ・インド原産。
・ウコン : ショウガ科の多年草。根茎を乾燥させたもので、ターメリックと呼ばれる。中国原産。
・龍涎香 りゅうえんこう : マッコウクジラの腸内に発生する結石状のもの。アンバーグリスとも呼ぶ。インド・アフリカ原産。
・貝香 かいこう : 巻貝のふたの部分にあたり、香りの保留効果がある。南アフリカ原産。
・麝香 じゃこう : 山岳地帯に生息する雄の麝香鹿の香のうより採取。ムスクとも呼ぶ。チベット・ネパール原産。
・伽羅 きゃら : ベトナムの限られた地域でしか産出されない、沈水香木の中でもっとも品位の高い香木。ベトナム原産。
・沈香 じんこう : ジンチョウゲ科の樹木の樹脂がさまざまな要因で凝結し、熟成されたもの。ベトナム・インドネシア原産。
・白檀 びゃくだん : ビャクダン科の芯材部分。インドマイソール原産の「老山白檀」が最高品質。インド・インドネシア原産。

 

薫玉堂が、これらを調香し提案する和の香りは、リラックスしたい、リフレッシュしたい、仕事に集中したいといった気分による使い分けや、利用シーンによってセレクトできる工夫も凝らされています。

負野さんは企画を組み立て、各部署のスタッフとともに試行錯誤を繰り返しながら“現代の生活に寄り添った香り”をカタチにしてきました。続いて現在、薫玉堂で販売されている代表的な商品を、香りの取り入れ方とともに紹介していきましょう。