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家でワインを楽しむための蘊蓄講座ワインの世界を旅する 第4回
―オーストラリアと5つの産地―

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2. 南オーストラリア州クナワラ 〜オーストラリアのカベルネ・ソーヴィニヨンを象徴〜

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カベルネ・ソーヴィニヨンは、赤ワインの代名詞的なブドウ品種で、現在世界中で栽培されています。色調が濃く、カシスやベリーといった果実の味わい豊かで、渋みのあるフルボディ・スタイルのワインを産みますが、本当の意味で適した産地というのは、実はそれほど多くはありません。

アデレードの南400km、ヴィクトリア州との境に位置するペノーラ村の北に広がるクナワラは、ワインに興味のない人にとっては、足を踏み入れる可能性の低い辺境の土地なのかもしれませんが、この土地を特別なものにしているのは、ほかならぬカベルネ・ソーヴィニヨンでしょう。「テラ・ロッサ」と呼ばれる赤土の表土の下には石灰岩、その下には良質な地下水を湛える土壌で、晩熟で水はけのよい土地を好むカベルネ・ソーヴィニヨンにとって、世界でも数少ない好適地として、素晴らしいワインを産み出しています。

元は主にシラーズが植えられており、20世紀前半には「ヴァイン・プル・スキーム」(政府主導のブドウの抜根政策)の対象にもなりかけましたが、1960年代以降、カベルネ・ソーヴィニヨンにスポットライトが当たり、一躍銘醸地となりました。

現在では、9割以上赤ワインが造られ、栽培品種の6割以上はカベルネ・ソーヴィニヨンが植えられています。ブドウ畑は、リドック・ハイウェイ(1890年頃初めてブドウを植えたスコットランド人、ジョン・リドックの名前を残しています)沿いの20kmほどに、約90のブドウ栽培農家、ワイナリーやセラードアは20数軒と、それほど大きな産地ではありません。また、温暖なイメージがありますが、生育期の平均気温ではボルドーよりも1℃ほど冷涼でもあります。

クナワラというと、ワインに親しんでいないとなかなか耳にする機会は少ないかもしれませんが、ことカベルネ・ソーヴィニヨンという品種のワインが好きであれば、ぜひ一度手に取って味わっていただきたい産地です。


Bowen Estate(ボーエン・エステート)
「Coonawarra Cabernet Sauvignon2018(クナワラ・カベルネ・ソーヴィニヨン2018)」
4000円
輸入元=ヴィレッジ・セラーズ

 

次のページで取り上げる3つめの産地は、南オーストラリア州クレア・ヴァレーです。