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代謝を促すスパイスとミネラル豊富なフルーツを組み合わせ。夏バテを撃退する
「スパイス×フルーツ」レシピ

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スパイスカレー人気に象徴される、近年のスパイスブーム。とくに辛いものが欲しくなる夏は、スパイスをきかせたグルメがいっそうおいしく感じられるはず。とはいえ、スパイスで大汗をかいたら、脱水症状を招いてしまうのでは……? そこで組み合わせたいのがフルーツです。体のほてりを落ち着かせたり発汗を促し体温を下げたりする働きをもつスパイスに、ビタミンとミネラルがたっぷりのフルーツのタッグは最強の夏バテ回復食に! 「スパイス×フルーツ」のレシピで、厳しい暑さが残るこの時期を乗り越えましょう。

スパイス料理の監修や、スパイスの使い方を学べるサロンを運営する大平美弥さんに、おすすめの「スパイス×フルーツ」レシピを教えていただきました。

パクチーブームから火がついた? スパイスブームのきっかけ

ここ10年ほどの間に、何度かスパイスを盛り上げるブームがありました。

「パクチーや、かけるラー油などの流行がその一つです。2016年頃、パクチー味のスナックが発売されたりパクチー料理専門店がオープンするなど、パクチーが空前のブームとなりました。これにより、スパイスは“手軽に味や風味を変えられる食材”という意識が徐々に浸透したと思います。
さらにブームを加速させたのが、コロナ禍。自炊が増え、レジャーとしてキャンプが注目されました。自宅やアウトドアシーンで自炊が増えたことで、“いつもの食卓に変化を持たせたい”“キャンプ先でも手軽においしい食事を楽しみたい”、さらにSNSの登場によって“手軽に写真映えする食事を作りたい”というニーズが増えました。その思いにマッチしたのがスパイスというわけです。

例えば、桃にディルを加えて、オリーブオイルをひと回ししただけの『桃ディル』。切ってかけるだけの簡単な料理なのに、あっという間におしゃれでおいしい、ワインに合うおつまみに早変わりです。そんなお手軽な魅力がさまざまな人に受け入れられ、スパイス人気は徐々に広がっていきました」(スパイスライフアドバイザー 大平美弥さん、以下同)

夏にふさわしい「スパイス」と「フルーツ」の効果とは?

10年以上前は、スパイスは専門店や高級食材を扱うお店でしか購入できませんでした。でも今では近所のスーパーやドラッグストア、100円ショップでも手に入り、身近な食材となっています。このスパイスを夏に摂ることには、たくさんの効果があるといいます。

「夏は汗をかくことでミネラルが失われ、食欲不振や体のだるさを招きます。また、冷たい飲み物の飲みすぎや冷房で体が冷えることによって、胃腸が弱り、自律神経が乱れ、体調を崩しやすい季節でもあります。
スパイスには、そんな体の不調を整えてくれる働きをもっています。体を温めたり、水分代謝を促したり、胃腸の働きを整えたりするなど、さまざまな効果があります。
また、フルーツは、ビタミン、ミネラルが豊富で栄養価に優れ、水分補給にも最適です。ジューシーでさっぱりとした味わいは、食欲がないときでも食べやすいという良さがあります。
そんな甘味のあるフルーツと、辛みや苦みを持つ刺激的なスパイスは相性抜群。素材の味を引き立て、それぞれの良さが組み合わさって、新しいおいしさが生まれます」

それでは、フルーツをたっぷりと使った、スパイスレシピを紹介していきましょう。

体のほてりを落ち着かせるセージを効かせた
「いちじくと桃のフルーツゼリー」

「セージを水に漬け込んだ“セージ水”をゼリーにしました。セージには、スーっとした清涼感と苦みによって、体にこもったほてりを落ち着かせる働きがあります。また、甘みにスッキリさを与え、爽やかな後味に。セージ水を沸かして飲むだけで暑さが和らぐので、私は好んで飲んでいます。甘酸っぱいフルーツと、つるんとした喉ごしの良さは、暑さの残るこの時期にぴったりですよ」

【材料(2人分)】

・白桃……1/2個
・いちじく……1/2個 
・粉ゼラチン……5g
・セージ水……200ml
・酒……大さじ1
・砂糖……大さじ2

【作り方】

1.1時間前に、セージを水に漬け込んでおく。

「漬ける時間によってセージ水の濃さが変わります。まずは約1時間前から漬け込んだものから、さらにしっかり味わいたいかたは、前日の晩から漬け込んでおくと良いでしょう。今回のレシピは乾燥ハーブを利用していますが、フレッシュハーブを利用しても良いですね。乾燥ハーブは、乾燥することで芳香をぎゅっと凝縮しています。一方、フレッシュハーブは葉の緑が見た目にも鮮やか。どちらにも良さがあります。フレッシュハーブを利用するときは、乾燥ハーブの約2倍の分量を使用しましょう」

2.桃といちじくは、皮をむき1.5cm角に切る。

「スプーンですくいやすい大きさにカットします。いちじくは、へたを包丁と手で挟んで下にひっぱるようにむきましょう。むききれなかった皮は、同じく上から下へそぐようにむきます」

3.いちじくと桃をグラスに均等に入れる。

「分量のフルーツと水で、コップ約2杯分のゼリーができます。透明なグラスを用意すると、果物の鮮やかな色が映え、見ためも涼やかに」

4.耐熱ボールに、セージ水、酒、砂糖を入れ、ゼラチンを振り入れる。600Wの電子レンジで1分半加熱する。

「通常ゼラチンは、水でふやかしてから加熱しますが、電子レンジで加熱する場合は、ふやかす工程を省いてもダマになりにくいです。加熱後は、ダマにならないようすぐに混ぜましょう。ゼラチンにお酒を混ぜることで、ゼリーに風味や香りが加わり、おいしさに奥行きができます」

5.混ぜてグラスにそそぎ入れ、冷蔵庫で冷やし固める。

「セージをそのままゼリーに入れて固めるかはお好みで。入れることで、爽やかな見た目になります。セージはそのまま食べることができますが、食感がモソモソしているので、苦手な方は取り除いても良いでしょう」

胃腸を整えるナツメグで食欲不振を撃退!
「真夏のフルーツフランベ」

 

「ナツメグは、加熱することで風味が増します。ナツメグに含まれるオイゲノールは、甘いバニラのような香りをもっています。たっぷりのバターと砂糖でキャラメリゼされたバナナに、酸味のあるベリーのソースが爽やかにマッチ。香り立つナツメグが合わさって、贅沢なスイーツに。ナツメグには胃腸を整え食欲を増進し、発汗を促し体温を下げる効果があります」

【材料(2人分)】

・バナナ……2本
・ミックスベリー(冷凍)……70g
・砂糖……30g
・バター……大さじ1~1.5
・レモン汁……適量
・ナツメグパウダー……適量
・ラム酒 ……30cc

【作り方】

1.フライパンにバターを熱し、砂糖とレモン汁を加え混ぜる。

「バターが焦げないよう、弱火でゆっくり溶かしていきます。バターがフツフツとしてきたら、砂糖を入れ、砂糖が溶けたら、レモン汁を加え混ぜます」

2.砂糖があめ色になってきたら、バナナを入れて炒めます。

「半分に割った種の部分を下にして、フライパンに入れます。何度も動かすとバナナがドロッとなってしまうので、フライパンをやさしく動かし絡めながら、上下を一度ひっくりかえしましょう。バナナは、生で食べられるので火をしっかり通さなくてもOK。全体に絡まれば大丈夫です。」

3.バナナに飴色の砂糖が絡まったら、ミックスベリーを入れ、ソースを絡めながら炒める。

「ミックスベリーは、あらかじめ室温に出して柔らかくしておきましょう。ミックスベリーのかわりに、旬のフルーツを使用しても良いですね」

 4.ナツメグパウダーを入れたら、仕上げにラム酒を加えさっとフランベし、アルコールを飛ばす。

「バナナ全体にナツメグがかかるよう、指で振り入れましょう。ラム酒がフランベされると、バター、ナツメグの香ばしく甘い香りがふわっと部屋全体に広がり、食欲もわいてきます」

弱った胃腸の消化を助けるクミンシードがたっぷり
「メロンときゅうりのサラダ」

「メロンの青さをスイーツではなく、食事として楽しんでもらいたくて考えたレシピです。クミンには、シードと粉状のものがありますが、是非シードを使用してもらいたいです。歯で噛んだときに、独特の苦みと爽やかさが広がり、シードのプチプチとした食感も楽しめます。メロンはものによって、フルーツとして甘味がたりないことも。そんなときは、このようにサラダに変化させることで、いつもと違ったメロンのおいしさに出会えます。クミンには、消化促進、免疫力アップ、リラックスなどの効果があります。またスパイスの刺激が減塩効果にもつながります」

【材料(2人分)】

・メロン……1/4個
・トマト……1個
・きゅうり……1本
・塩……適量
・ブラックペッパー……適量
・マヨネーズ……大さじ2
・レモン汁……小さじ1
・クミンシード……小さじ1

【作り方】

1.マヨネーズにクミンシードを入れて混ぜる。

「前もって混ぜておくことで、マヨネーズの油分にクミンシードの香りが溶けて味がなじみます」

2.きゅうりは小口切りに、トマトは食べやすい大きさに切りましょう。

「きゅうりの切り方はお好みで。トマトは、1/8のくし形に切り、さらに2~3個程度に切り分けると良いでしょう」

3.メロンを食べやすく切り、レモン汁をかけておく。

「メロンにレモン汁をかけることで爽やかな甘味に。サラダとしての下味をつけます。夏はメロンが安く手に入る時期ですが、1玉では量が多い場合、カットメロンを利用しても良いでしょう。これからの季節は、梨や柿を代用してもいいですね」

4.ボウルに1と2、3を入れ和え、冷蔵庫で冷やしておく。

「食べる直前まで冷蔵庫で冷やしておくことで、味がなじみます」

 5.食べる直前に味見をし、塩、ブラックペッパーで味をととのえる。

「ブラックペッパーもスパイスのひとつです。かける量はお好みで。食べる直前に、砕いたブラックペッパーをかけると、ピリリとした辛さが広がり、サラダのアクセントになります」

インドや中国では、古くからスパイスを健康や美を保つための生薬として取り入れてきました。日本のわさびやしょうがなども同様で、味わいへのアクセントだけでなく、食欲増進や殺菌効果も期待して食してきたのです。刺身にわさびを合わせるように、おいしいから付け加えたくなる。そんな楽しい気持ちでスパイスを取り入れ、健康維持に役立ててみてはいかがでしょうか。

Profile

スパイスライフアドバイザー / 大平美弥

体に影響がでるほどの偏食を、スパイスとハーブで乗り越えたことで“食”への興味があふれだす。インド、インドネシア、中国、韓国など各国の料理教室に参加し、見識を深める。スパイスコーディネーターマスターを取得。スパイスクッキングアドバイザー受験資格を取得できる講座や料理教室を行う。Miya Spice Salonを主宰し、スパイスビューティー協会の代表も務める。スパイスの楽しさを広めようと講演、テレビ、ラジオ出演、レシピ作成、スパイス&ハーブティーの監修、レストランシェフとのコラボ企画や飲食店のメニュー開発及びコンサルティングなども行う。
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取材・文=加賀美明子(Neem Tree) 撮影=真名子