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日本を代表するクラフトビール「COEDOビール」の
新しいブルワリーを訪ねる

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「とりあえずビール!」という言葉に代表されるように、人が集まれば欲しくなるのがビール。でも「どれも同じでしょ?」と思うのは間違いです。ここ数年、ビールの世界には新たな潮流が生まれているのです。それはズバリ、「クラフトビール」の存在。一般的にクラフトビールとは、小規模なビール醸造所(ブルワリー)でビール職人が丹精込めてつくるビールを指します。つまり、クラフト=工芸品の意味にたとえて称されているほど、高品質でおいしく、個性を感じられるビールというわけです。

そんなクラフトビールの日本における代表的存在が、埼玉県にあるコエドブルワリーによる「COEDO」です。

ラインナップは「紅赤-Beniaka-」「瑠璃-Ruri-」「伽羅-Kyara-」「白-Shiro-」「漆黒-Shikkoku-」「毬花-Marihana-」。美しく煌びやかなラベルをまとい、情感漂う和名のネーミングを冠した、その姿に魅了されるビールラヴァーが続出。もちろん見た目だけではなく、注いだときの色合い、泡、香り、味わいともにすばらしく、海外の名だたる品評会での受賞経験も豊富なのです。

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瑠璃-Ruri- 333ml/288円

スロベニア産のホップ「シチリアンゴールディングボベック」を使用した、COEDOのなかでもっとも爽やかな味わいのピルスナースタイルです。ほのかに漂うハーブ感とも相まって、瑠璃という名前にふさわしい透明感あふれるのどごし。香味と苦味のバランスがとてもよく、飲み飽きしないテイストです。

 

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伽羅-Kyara- 333ml/288円

きめ細やかな泡立ちに、赤みがかった深い黄褐色を持つオリジナルスタイル。白ブドウのような香りを持つニュージーランド産のホップ「ネルソンソーヴィン」を使用し、ややスパイシーな柑橘系の香りも魅力的です。冷やしすぎないで、ゆっくりと飲み、麦芽の風味を味わいたいビールです。

 

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紅赤-Beniaka- 333ml/411円

川越産のサツマイモと上質な麦芽を使用したエールビール。赤みがかった琥珀色、香ばしい甘み、無濾過・生ならではの芳醇さが特徴です。心地よい口当たりと華やかな風味で、さまざまな料理との相性も抜群。アルコール度数が7%とビールにしてはやや高めですが、香りよくサラリと飲めます。

 

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白-Shiro- 333ml/380円

大麦ではなく小麦を使用したヴァイツェンスタイルのビール。白濁した見た目と豊かでクリーミーな味わいが大きな特徴です。苦味は少なく、ふわっとまろやかな小麦の風味、バナナのようなフルーティなアロマを満喫できます。スパイシーさやコクある料理との相性がよさそうです。

 

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漆黒-Shikkoku- 333ml/339円

COEDOのラインナップ中、もっとも濃厚なシュバルツタイプのビールです。黒色の基になるロースト麦芽と味わいをつくるその他麦芽を配合。ローストした麦芽の風味を存分に堪能しつつも、スムーズな飲みやすさを実現しています。炭火焼きやしっかりと煮込んだ料理のおいしさを引き立ててくれそうです。

 

地ビールブームからクラフトビールへの転換

コエドブルワリーの誕生は1996年のこと。きっかけは、有機農産物の専門商社である経営母体(株式会社協同商事)が、商品として流通に乗らない、緑肥として栽培された大麦や、規格外のサツマイモの有効活用を考え始めたことでした。

ここで思い当たった人もいるのでは? かつての「地ビールブーム」の折、地元・川越産のサツマイモで造られたビールがあったことを。これが当初の「小江戸ビール」で、ブームも相まって、その認知度を高めたのでした。このビールこそ、現在の「紅赤-Beniaka-」のいわば元祖。サツマイモから酒をつくるといえば焼酎ですが、それをビールに応用し、きわめて日本的なビールが誕生したのでした。その「地ビールブーム」もやがて終焉、多くの地ビールが姿を消していく中、2006年に「小江戸ビール」は「COEDO」に刷新され、ボトル、ラベル、そしてビールそのものも大きくリニューアル。これまでの概念を覆すようなまったく新しいクラフトビールが産声を上げたのでした。

 

埼玉県東松山で踏み出す新たな一歩

誕生の地は“小江戸”と呼ばれた埼玉県川越。これまでブルワリーは、三芳という場所に構えていましたが、この9月に新たな地・東松山へと移転を果たしています。すでに引越しも終盤、11月の正式稼動を待つばかりというタイミングでお邪魔してきました。

まず、ビール造りに欠かせない素材をチェックしておきましょう。

・麦芽

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あらかじめ焙燥させて焦がした麦芽は、ビールの色合いに濃淡をつけたり、ロースト風味をプラスしたりするのに効果的。これはドイツ・バンベルグ産の麦芽。ビールの種類によって複数の麦芽を使い分け、またその配分もさまざまだそう。

 

・ホップ

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ホップとはアサ科の植物で、日本の学名は「カラハナソウ」。受粉前の雌株が持つ毬花の中にある黄金色の粉(ルプリン)がビールの香りや苦さ、泡立ちをもたらすのです。毬花をペースト状に成形したものがホップペレット。ホップの種類にはさまざまあり、また世界中で栽培されていますが、醸造特性によって、大きくアロマタイプ、ビタータイプの2種類に分類されています。

 

では早速、ブルワリーの中へ!

1.麦芽の粉砕

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ビールづくりの第一歩は麦芽の粉砕から。麦芽とは浸水させた麦を発芽させたものを指します。ドイツやカナダ産の麦芽をドイツ製のローラー式粉砕機によって粉砕。

 

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以前の工場では、粉砕機に麦芽を入れるのは完全手動でしたが、1袋25kgを人力で運ぶのはかなりの負担だったため、新工場では機械化を実現しました。

 

2.麦芽の糖化

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ビールの素ともいうべき麦汁をつくるため、麦芽を糖化させます。仕込みタンクに麦芽と水、お湯を投入し、酵素(アミラーゼ)の働きによってデンプンを糖分に変えるのです。この機械もドイツ製。かつてはダイヤル式のアナログスイッチでしたが、現在はタッチパネルで操作します。

 

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ここで麦芽粕は脱水され、飼料となります。

 

3.ワールプールで粕を除去

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濾過された麦汁にホップを添加して煮沸を行ったら、ワールプールという円錐形の樽で、ホップの粕など凝集物(不要な固形物)を除去します。

 

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タンク内にまとまった凝集物は職人の手で丁寧にかき出され、環境のために排水へ流れ込まないよう処置したのち、排出されるのです。

 

醗酵タンクで冷却

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ワールプールで液体だけになった麦汁は約100℃程度と高温です。そこにビール酵母を添加するのですが、高温では酵母が死んでしまうため、一気に冷却。醗酵させたのちは貯酒タンクに移し、熟成させます。

 

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その後、濾過・無濾過の有無はありますが、瓶や缶、樽に詰められて出荷となります。

 

武蔵野の豊かな自然がおいしいビールを育む

約6万7400平方メートルという広大な敷地面積は、都心からわずか90分程度といった距離ながらも、自然の息吹がすぐ近くに聞こえるほど。滑川町にある国営武蔵丘陵森林公園からほど近いという立地を活かし、醸造用水のための井戸も新設されました。意外なことに、この地は某カメラメーカーの研修施設だったそうです。

「昭和50年代に建設された美しい建築を我々は引き継ぎました。工業団地に立地するのではなく、有機農産物を扱う商社としては、自然の中でビールをつくりたかった。ここは森が広がる丘の上にあり、武蔵野の地下水を醸造用水として確保でき、また醸造で排出される排水もブルワリーで浄化して自然に返すことができるのです」(コエドブルワリー代表取締役社長・朝霧重治さん)

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さらには、醸造工程中に排出される麦芽の粕の有効活用方法も、新たに生まれつつあります。

「牛に食べてもらうんです。ご近所の国分牧場さんや八王子の礒沼さん、秩父の吉田さんの牛です。これを飼料とした牛肉は“クラフトビーフ”と呼ぼう、と牛の生産者さんは言っていましたけど(笑)」(朝霧さん)

地域循環の仕組みの活性化も、朝霧さんの願いであり、コエドブルワリーの使命でもあるとのこと。1年先、2年先といった短期間ではなく、100年かそれ以上といったロングスパンで受け継いでいく。それが今、スタートしたのです。

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今回案内してくださったのは、コエドブルワリー代表取締役社長の朝霧重治さん。「地ビールブーム」に頼らず、地元に根ざしたいいビールを、との確固たる信念で「COEDO」を日本を代表するクラフトビールに育て上げた、変革の人です!

 

取材・文=山﨑真由子 撮影=田口陽介