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酒税法の改正で、女性ウケ抜群の爽やかな個性派がいろいろ2018年夏に飲みたい新作ビール!

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これまでビール飲料は、原料の違いによって「ビール」「発泡酒」「第三のビール」などと分けられてきました。ビールとは「麦芽比率が67%以上で副材料は米、麦、トウモロコシのみに限定されるアルコール飲料」のことです。そこに果実や香味料が含まれるものは、発泡酒。また、麦芽以外の原料でつくられたビール風味の飲料は、第三のビールと呼ばれ、新ジャンルを確立してきました。

ところが、2018年4月の酒税法改正によってビールの定義が変わり、多くの副原料が認められるようになったことで、市場は新たな盛り上がりを見せています。

ビールがよりおいしく感じるシーズンに、その動向は気になるもの。そこで、今回の改正が消費者にどんな影響を及ぼすのか、どのようなビールが新登場したのか、フードアナリストの中山秀明さんに聞きました。

 

酒税法改正でビール飲料の価格差がなくなっていく

酒税法とは、そもそもお酒の税率について定められた法律。お酒は、原材料の比率やアルコール度数などによって、税率が変化します。

「これまでビールは約77円、発泡酒は約47円、第三のビールは約28円が酒税でした(すべて350mlの場合)。今後は2020年から段階的に、ビールの減税が計画されています。反対に他2種類は増税し、最終的に2026年には、すべてのビール類の税率が55円に一本化される予定なんです。この改正によって、商品の価格差がなくなっていくので、『ビールより安いから発泡酒を飲もう』という発想は変わるでしょうね。また、これまでのビールの価格も2020年以降安くなっていくと思うので、ビール党の人にはうれしい改正となります」(中山さん、以下同じ)

 

認められるようになった副原料は10種類

今回の新税制にともない、ビール類飲料に認められる原材料も見直されました。たとえば、これまで果実やハーブなどを副原料に使うと、ビールとして認められず発泡酒扱いになっていたのですが、今後は副原料を添加しても、その重量が麦芽の5%以下であればビールと認められるようになったのです。

「今回認められたのは、下記の10種類です。今までは、レモンを使用したものに“レモンビール”という商品名をつけることはできませんでしたが、これからはビールという名称が使えるようになります。これを受けて、副原料を使ったビールがより多く発売されており、消費者としてはバリエーション増によって選ぶ楽しみが増えるでしょう」

【ビールへの添加が認められるようになった副原料】
果実/コリアンダー・コリアンダーシード/胡椒や山椒などの香辛料/ハーブ/野菜/ソバやゴマ/はちみつや黒糖といった含糖質物・食塩・みそ/花/茶・コーヒー・ココア(これらの調製品を含む)/牡蠣・昆布・わかめ・かつお節

 

各社の新ビールは香りや味が豊か!

酒税法改正を受け、どのようなビールが発売されているのでしょうか? 早速、各社の商品を見ていきましょう。

 

・飲みやすいのに高アルコールの「アサヒ グランマイルド」

4月に発売されたアサヒビールの新しいビール「アサヒ グランマイルド」は、「ゆっくり時間をかけて楽しむお酒」をテーマに作られており、飲みごたえのあるアルコール分7%であることが最大の特徴。

「7%とアルコールはやや高めなのでパンチは強めですが、アルコール臭が控えめなので、とても飲みやすい印象があります。ビール独特のアルコール臭を軽減させ、飲みやすさを考えて副原料にスターチやレモングラスを使用しているのだとか。レモングラスの風味は意識しないと感じないレベルで、定義拡大ビールというよりは、正統派ビールに近い印象です」

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アサヒビール「アサヒ グランマイルド 350ml」
225円(編集部調べ)
アサヒビールお客様相談室 Tel:0120-011-121
https://www.asahibeer.co.jp/products/beer/granmild/

 

・ほうじ茶を使った香ばしい味わいの「HOJICHA Brown Ale

キリンビールのクラフトビールブランドであるSVB(スプリングバレーブルワリー)のファンクラブ「CLUB SVB」の会員と、直接コミュニケーションを取りながら共創したビールです。旨味に着目して昆布や炒り玄米などの副材料を使って開発を進め、焙煎した麦芽とほうじ茶の香ばしさを感じられるように作られました。

「キリンは自社のクラフトビアブランドを持ち、個性的なビールの開発を積極的にしながらバリエーションを増やしています。また、お茶という意外な副原料を使っていながらも、ビールを飲んだという感覚をしっかり感じられます。飲んだ後に喉の奥から鼻に抜けるほうじ茶の香ばしさと、柔らかく漂う麦芽の風味が特徴的で、特にお寿司や和菓子などに合いそうです」

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SVB「HOJICHA Brown Ale(330ml×6本)」
2332円
キリンビールお客様相談室 Tel:0120-111-560
www.kirin.co.jp

 

・塩と胡椒が麦の旨味を引き出す「Innovative Brewer グルメビア」

マイルドな塩味でお馴染みの岩塩・アルペンザルツと、皮を削ってシャープな辛味になった黒胡椒で麦のおいしさを引き出したビールです。ライムピールを加え、爽やかな味わいが楽しめます。

「Innovative Brewerブランドは、昨年10月の立ち上げ以降、既存のビール概念に縛られない自由な発想でビールを発売しています。塩胡椒という挑戦的な味わいも、この会社ならではでしょう。一見、塩と胡椒でトガった味というイメージを持つかもしれませんが、塩胡椒は縁の下の力持ち的な立ち位置で、一口目から複雑さを持ったどっしりとした旨味を感じられます。また、ライムの酸味による後キレのよさがあり、余韻が爽快です」


ジャパンプレミアムブリュー「Innovative Brewer グルメビア 350ml」
288円(編集部調べ)
サッポロビールお客様センター Tel:0120-207800
http://www.japanpremiumbrew.jp/innovativebrewer/gourmetbeer/

 

・カリブ海を思わせる爽やかさ「海の向こうのビアレシピ〈柑橘の香りの爽やかビール〉」

6月から数量期間ともに限定で、コンビニエンスストアのみで発売されているこちらのビールには、数種類のホップとフレッシュな香りが楽しめます。

「サントリーは、新ブランドを立ち上げ、チャネルや数量を限定して多彩なスタイルを市場投入しています。こちらのビールも数量限定で、コンビニエンスストアのみの販売に絞っています。味は軽やかでスカッと爽快。シトラスがほんのり香るフレーバービールという印象です。フルーティさよりも、フレッシュさを強調するために柑橘が使われているように感じました。メキシコのピルスナービールの飲み方でおなじみの、ライムを入れて飲むビールを彷彿とさせる爽やかさです」

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サントリー「海の向こうのビアレシピ〈柑橘の香りの爽やかビール〉350ml」
220円(編集部調べ)
サントリーお客様センター Tel:0120-139-310
https://www.suntory.co.jp/beer/beer-recipe/

※限定商品ですので店頭にない場合もございます。

 

このほかにも、各社からさまざまなビールが登場しています。たとえば、高知の生姜や静岡のわさび、緑茶、和歌山の山椒、沖縄の黒糖など、地元の名産を使ったビールなども新発売に。この夏は、たくさんのビールを飲み比べる楽しみがありそうですね。

 

Profile

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フードアナリスト / 中山秀明

フードアナリスト・ライター。なかでもビールに関する執筆が多く、大手メーカー、マイクロブリュワリー、ブリューパブ、クラフトビアレストランなど、小売り、外食問わず全国各地へ取材に赴いている。

 

取材・文=吉川愛歩 撮影=矢部ひとみ 構成=Neem Tree