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アレルゲンに触れずに捨てられる点が再評価。吸引力が続く、
進化する紙パック式掃除機

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サイクロン式掃除機が登場して以降、やや影が薄い印象があった紙パック式掃除機。しかし、コロナ禍を経て清潔志向が一層高まり、「ゴミに触れずに捨てられる」という紙パック式掃除機のメリットがあらためて注目されています。とくに、ごみを捨てる際に花粉やハウスダストなどが飛散しないため、アレルギー体質の人にメリットが大きいという点も。

従来のウィークポイントも克服し、再評価される紙パック式掃除機について、選び方のポイントとおすすめの最新モデルを、現役家電販売員で家電ライターとしても活躍しているたろっささんに教えていただきました。

扱いやすいスティック型も登場。
紙パック式掃除機の最新トレンド

掃除機の最新モデルと聞いてイメージするのは、コードレスのスティッククリーナーではないでしょうか。こうした掃除機のほとんどが、吸い込んだほこりを直接ダストカップに集める方式。とくに高機能な高価格帯の掃除機は、遠心力でゴミを圧縮し目詰まりによる吸引力の低下を防ぐ、“サイクロン式”が多いのが現状。さらにこの数年で、コードレス掃除機の充電器に掃除機のダストカップに溜まったごみを回収する機能を備えた“ホームベース式”といった集塵方式も存在感を高めています。

一方で、“紙パック式掃除機”といえば、車輪がついた本体部分とヘッド部分がじゃばらのホースでつながった“キャニスター型”の印象が、いまだ強いのではないでしょうか。

「たしかに、紙パック式掃除機はキャニスター型が主流ではありますが、2~3年前からスティック型でコードレスタイプの紙パック式掃除機も台頭しています。昔の紙パック式掃除機は、紙パック内にごみが溜まると吸引力が落ちていくデメリットがあったのですが、最新の製品はごみの圧縮能力が向上し、吸引力が長続きするようになっています」(家電ライター・たろっささん、以下同)

かつては紙パック式掃除機といえば、ヘッドと本体をホースで接続したキャニスター式が定番だった。

「加えて、スティック式の紙パック式掃除機は軽量であることが多く、全体的に見ても大体1kg前後と扱いやすいことも特徴です。サイクロン式掃除機にも軽量のものはありますが、その分吸引力に課題が出てしまう傾向があります。そのため、扱いやすさと吸引力を両立した紙パック式掃除機をお求めになるお客様も、最近は増えている印象です」

アレルギー体質の人にこそおすすめ!
紙パック式掃除機の機能的メリット

現代的に進化を遂げている紙パック式掃除機。吸引力の向上や軽量化以外にも、多くのメリットがあります。

・ごみの飛散を防ぎ、直接触れずに処理できる

「サイクロン式掃除機で気になるのが、ダストカップに溜まったほこりやごみの処理ではないでしょうか。ほこりやごみには、ダニの死骸や花粉、ハウスダストといったアレルゲン物質を多く含むため、鼻炎を引き起こしたり、肌がかゆくなったりする可能性があります。
一方、紙パック式掃除機の場合は、紙パックを取り出して捨てるだけで処理ができるので、ごみに直接触れなくてよいのがとくに大きなメリットです。アレルゲン物質を含んだほこりなどもすべて紙パックの中に納まるから、ほこりが飛散しにくいのもポイントです」

また最近では、紙パックの構造に工夫し封じ込めを徹底したモデルも。

「紙パックの入り口にシャッターやシールがついていて、紙パック内のごみが出てこないようにする商品も登場しており、ほこりの飛散リスクはますます低くなっています。そのため、清潔な状態で掃除機を扱いたい方はもちろん、アレルギー体質でお悩みの方にもおすすめしています」

社会問題化しつつある“黄砂アレルギー”対策にも期待できます。

日立のスティック型紙パック式掃除機で用いられている紙パック。紙パックの入り口をシールで密閉できるため、ほこりやごみが飛散しにくくなっている。写真は「かるパックスティック」PKV-BK3L。写真提供=日立グローバルライフソリューションズ

・排気が清潔

「上記にも関連しますが、紙パック式掃除機は空気中のほこりやハウスダストなども紙パック内に吸引します。そのため、吸引したほこりなどが排気で漏れることがあまりなく、排気も清潔であるというところもメリットです」

・手入れが簡単

「サイクロン式掃除機だと、ヘッドやダストカップ、フィルターなど、定期的な清掃が必要なパーツが多い傾向にあります。一方、紙パック式掃除機であれば、ごみが直接触れる場所が少ないため、お手入れはヘッドの掃除と紙パックの交換くらいです。紙パックの交換自体も簡単に済む製品も登場しており、ますますお手入れが楽になっています」

不経済!? 紙パック式のコストパフォーマンス

多くのメリットがある一方、紙パック式掃除機で気になるのは「紙パックの定期的な交換」でしょう。定期的に購入しなければならない消耗品が増えることをネックと感じる人も多そうですが、決定的なデメリットになりうるのでしょうか?

「最近のスティック型紙パック式掃除機の集塵容積は0.3L~0.6Lのものが多い傾向です。掃除の頻度にもよりますが、紙パック1つにつき、大体1〜2ヶ月でごみがいっぱいになる容量です。10パック程度をまとめて購入しておけば、少なくとも1年以上は買い足さなくても大丈夫。意外にコストパフォーマンスは悪くないんですよ。
また、夏場の湿気が気になる方でも、1ヶ月に1回交換すれば、カビなどのリスクを大きく心配する必要はありません」

手入れやヘッドの形状に注目。
紙パック式掃除機を選ぶときのポイント

もし、紙パック式掃除機に買い替えるときには、何に注目すべきでしょうか? たろっささんに、製品を選ぶポイントをうかがいました。

・ヘッドの形状に注目

「紙パック式掃除機に限らず、掃除機を購入する場合にはヘッドの形状に注目してほしい」とたろっささん。

「おすすめなのは、『パワーブラシ』と呼ばれるヘッドの形状です。吸い込み口についているブラシがモーターの力で回っており、床の細かいごみをしっかり掻き出してから吸引してくれます。フローリングでもカーペットでも、床の材質を気にせずにごみを吸引できるところが特長です」

写真は「かるパックスティック」PKV-BK3L。写真提供=日立グローバルライフソリューションズ

「さらに、近年では『自走式パワーブラシ』というものも登場しています。パワーブラシの特長に加えて、床にヘッドを当てるだけで自走するような仕組みになっているので、吸引力を維持しつつも、力を入れずに掃除をすることができますよ」

上記以外にも、ごみを吸引するときの空気の力でブラシが回転する「タービンブラシ」、ブラシはなく、単純にごみの吸引だけを行う「床ブラシ」という種類のヘッドもあります。この2種類のヘッドを採用した掃除機は、安価で手に入る一方で、吸引力は少し心もとない印象だそう。ハウスダストまでしっかり吸引したい場合は、「パワーブラシ」か「自走式パワーブラシ」を選ぶのがよさそうです。

・紙パックの集塵容積を確認

「スティック型の紙パック式掃除機の集塵容積は、大体0.3L~0.6Lくらいのものが多いです。0.3Lであれば1ヶ月に1回、0.6Lであれば2ヶ月に1回と、紙パックの交換頻度にも違いが出てきます。ご自身の掃除の頻度も踏まえて検討してほしいポイントです」

・コードレスタイプの場合は運転時間も要チェック

「集塵方式によらず、コードレスタイプの掃除機の場合は、連続使用できる運転時間も気にしたいポイントです。畳のある和室など、ハイパワーで掃除する部屋がある場合、運転時間が長いほうが良いと思います。とはいえ、基本的には30分程度連続使用ができれば、普段使いとしては十分ですね」

ちなみに、吸引力の目安として「吸い込み仕事率」「ダストピックアップ率」という指標もあります。とはいえ、実際の吸引力は掃除する部屋の環境や使用状況により変動があるため、参考程度に確認しておく程度で問題ないそう。上記のポイントを踏まえ、自分の生活環境に合わせて掃除機を選んだほうが、よい製品と巡り合えそうです。

ニーズごとに解説
おすすめの最新紙パック式掃除機 4選

「紙パック式掃除機の機能は日進月歩の世界です」とたろっささん。メーカー独自で開発された機能などもあるため、全体的なメリットを踏まえつつ、それぞれの製品の特長もしっかり押さえる必要がありそうです。そこで、生活環境ごとのニーズをいくつかピックアップし、たろっささんにおすすめの掃除機を選んでいただきました。

・紙パックの処理や交換を簡単に済ませたいなら

シャープ「コードレススティック 紙パック式掃除機『RACTIVE Air』EC-KR1」
オープン価格(公式オンラインストア価格:7万7000 円(税込))

「ダストカップのボタンを押せば紙パックの入ったダストカップごと取り外すことができる『パックinカップ構造』なので、ごみだけでなく紙パックにもいっさい触れずに処理できるところが魅力です。加えて、ごみがいっぱいになっても、空気が流れる道(流路)を確保しているため、吸引力の低下を抑えられます」。紙パックの交換も約1.5ヶ月に1回で済み、お手入れの頻度を減らせる点もポイントです。

紙パックにごみが溜まった状態でも、紙パックの上下左右で空気の流路を確保し、吸引力の低下を抑制できる仕組み。

着脱可能なダストカップに紙パックを装着する構造なので、ワンタッチでごみ捨てが可能に。

【Spec】
・標準質量  =約1.3kg(本体質量約0.9kg)
・最長連続運転時間  =標準モード約35分/強モード約9分
・付属品=スグトルブラシ、すき間  ノズル、ハンディノズル、スタンド台、充電器、バテリー、ツールホルダー、抗菌3層紙パック(1枚)

・ワンルームや1Kなど、狭い部屋で使うなら

日立「コードレス スティッククリーナー『かるパックスティック』PKV-BK3L」
オープン価格(公式オンラインストア価格:5万8300円(税込))

「本体・延長パイプ・ヘッド・電池までを含めた重量が約1.1kg。片手でも楽に使えるほど軽いのが最大の特徴です。掃除機のサイズ自体もコンパクトということもあり、狭いお部屋でもサッと使えて、扱いやすいと思います」

製品のヘッド部分は長い髪の毛などを吸っても絡まりづらい形状のブラシが備わっている。

ヘッドは水洗いが可能。お手入れを簡単に済ませたいときにもおすすめ。

【Spec】
・標準質量 =約1.1kg(本体質量約0.8kg)
・最長稼働時間=標準モード約30分/強モード約8分
・付属品=ハンディブラシ、2WAYすき間ブラシ、延長パイプ、スティックスタンド、ACアダプター、パックフィルター (1枚)

・新生活シーズンで新たに掃除機を購入するなら

ツインバード「コードレススティック型クリーナー TC-E264B」
2万8800円(税込)

「自走式パワーブラシのヘッドで、重量が約1.4kgと軽いのに加えて、集塵容積が約0.25Lと、一人暮らしのお部屋には十分といえる特長が備わっています。こうした機能があることを踏まえつつ、上記で 紹介した掃除機と比べると、比較的手に入りやすい価格帯の掃除機と言えます。新生活が始まり、お手頃で扱いやすい紙パック式掃除機を手に入れたい方におすすめです。もちろん、新生活だけでなく、2階以上あるご自宅や、部屋数が多いご自宅用にもう一台追加で購入する、というのもよさそうです」

独自のジョイント構造とボールキャスターにより、小回りが利くなめらかなかけ心地が魅力。快適に掃除ができそう。

【Spec】
・標準質量=約1.4kg
・最長稼働時間=自動モード約30分/強モード約7分
・付属品=延長管、パワーブラシ、すき間ノズル、収納フック、ACアダプター、ネジ(3本)、使い捨てダストパック(13枚、1枚本体に装着済み)

・運転音が気になるなら

日立「紙パック式クリーナー『かるパック』CV-KP900L」
オープン価格(公式オンラインストア価格:4万2790円(税込))

賃貸物件に住んでいると、掃除機の音などへの配慮も必要です。掃除機の平均的な音の大きさは約60~76デシベルとされており、それに対応した紙パック式の静音モデルがこちら。「紙パック式掃除機は、ある程度音が大きい製品が多い状況ではあります。一方、こちらのキャニスター型の紙パック掃除機は、通常運転音は約51~57デシベルと、比較的静かなのが特長です」

コード給電式である分、吸引力は強力。また、高性能の小型ファンモーターを搭載しているため、空気の流路を確保でき、強い吸引力を長く維持できる。

【Spec】
・標準質量=約3.6kg
・付属品=パッとブラシ、ほうきブラシ、すき間用吸口、サッとハンドル、パックフィルター(1枚)

Profile

家電ライター / たろっさ

家電量販店、家電情報ブログ『家電損をしない買い方をプロの販売員が教えます』を運営するプロの現役家電販売員。学生時代から家電に対する並々ならぬ興味を持ち、アルバイトを経てそのまま家電量販店の道へと進んで15年弱。個人で年間2億円を売り上げ、数々の法人内コンテスト等で表彰された経験も。 家電アドバイザーの資格を有し、家電と名の付く物すべてに精通している。
ブログ

取材・文=棚橋千秋(Playce) 写真提供=日立グローバルライフソリューションズ、シャープ、ツインバード