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メリット・デメリットを理解して、自分に合うものを選べばいい産婦人科医・宋美玄先生が解説する、
「生理用品」の選択肢

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毎月、痛みや不快な思いを我慢している人が多い「生理」。前回は基本的なその仕組みと、「生理痛」が起きる原因、病気の可能性などについて解説していただきました。今回は「生理用品」をクローズアップ。現在手に入る生理用品には、どのような種類があるのか、詳しく教えていただきます。

仕事やスポーツに影響が出たり、下着や衣服を汚してしまう不安を感じながら外出したり。そういった不安を払拭できる生理用品とは? それぞれのメリット・デメリットを理解して、自分の体やライフスタイルに合ったアイテムを選びましょう。

【関連記事】産婦人科医・宋美玄先生が解説する「生理」と「生理痛」について知っておくべきこと

 

生理用品は“使い捨て”から“サステナブル”なモノへ

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ここ数年で、生理用品はバリエーションが豊富になりました。女性の健康や体の仕組みを理解し、それに寄り添ったアイテムやサービスを意味する「Femcare(フェムケア)」、なかでもテクノロジーの力で実現したアイテムを指す「Femtech(フェムテック)」という言葉も急速に浸透してきています。

そういったフェムケア商品の中でも、多くの女性に関係するのが生理用品。相変わらず使用率が高いのはナプキンで、約7割(※)が使い捨てのナプキンを使用していますが、ナプキンのほかにも選択肢が増え、それぞれの好みで選べるようになったのは大きな変化といえるでしょう。

「従来のものと違い、“捨てない生理用品”のラインナップが増えてきています。代表的なものは『布ナプキン』でしたが、ほかにも『経血吸収ショーツ』や『月経カップ』は、徐々にメジャーになりはじめていますよね。環境にやさしい、という長所もあると思いますが、それよりも“生理”自体に向き合うようになってきた証なのではないでしょうか? 少し前までは“自然分娩が良し”とされる傾向が強く、無痛分娩にあまりいいイメージがなかったのですが、最近では“痛みを無理に我慢しなくていい”ことが認知されてきています。生理においても、不快感や痛みを我慢せず、自分に合ったものを選択するという方向に、世論も動いているのでしょう」(丸の内レディースクリニック院長・宋 美玄先生)

※参考資料 ナプキンの使用率68.0%、おりものシートは4割以上

 

不快感を軽減するためにできること

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生理用品の悩みでもっとも多いと先生が感じているのは、かぶれです。経血に浸ったナプキンが常に皮膚に触れていることで、かぶれやすくなり、濡れているような不快感を我慢しなくてはなりません。

「吸収性の高いものがたくさん発売されていますが、やはり経血が触れている時間はありますよね。かぶれに悩んでいる方は、産婦人科で薬をもらうのも手ですが、2つの方法を試してみてください。ひとつは陰部を洗ったりデリケートゾーン用のシートでこまめに拭いたりして、清潔を保つこと。いつもきれいにしておくことで、かぶれの原因が取り除けます。もうひとつはアンダーヘアの処理をすること。経血がアンダーヘアについたままということはよくあるので、短くカットしたり不要な部分は処理したりして、経血が付着しづらい環境を作っておきます」(宋 美玄先生)

 

さまざまな生理用品の種類と使い分け

何を使えばいいかは人それぞれですが、ここでは宋先生に生理用品のバリエーションと、それぞれのメリット・デメリットを解説していただきます。ひとつに絞らず、その日の体調や予定によって併用したり変えたりしながら、自身がもっとも快適に過ごせる方法を選びましょう。

 

【紙ナプキン】どこでも購入できる手軽さがメリット

学校の授業で生理について学ぶ際にも使い方を教わるのが、紙ナプキンです。初潮を迎えたときに紙ナプキンだったから、という理由で使い続けている人も多いのではないでしょうか。

「紙ナプキンのいいところは、コンビニでもスーパーでも、とにかくどこででも手に入れられることです。急に生理が来てしまったときにも助かりますよね。さまざまなメーカーから薄いタイプや幅広で長さもある大きいタイプ、無香料や香料つきのものなど、たくさんの種類が出ているので、選択肢が多いのもいい点。前回ご紹介した『ソフィ シンクロフィット』のようなタイプもあります。これはペタンとつけるだけで快適で、もっと広く知られてもいいなと思っている生理用品のひとつです。

一方で、わたしが不快だなと思うのは、汚物入れに入れて捨てなくてはならないこと。人が捨てた汚物が入っているし、そこに自分のものを入れるというのも苦手で、そこがデメリットかなと思います。ファッションに響く可能性があるのも、デメリットのひとつになりますよね。ちなみに、オーガニックコットンの紙ナプキンを使うと生理痛が軽減するとか経血が減るという噂がありますが、これはまったくの嘘。肌に当てるものが変わることで子宮内部の状態が変わるというのはあり得ません。使い心地で選ぶのがいいでしょう」(宋 美玄先生)

[メリット]
・どこでも簡単に入手できる
・種類豊富で好みのものを選べる

[デメリット]
・使い捨てなくてはならない
・かぶれや蒸れによる不快感を我慢しなければならないことも

 

【タンポン】使うのが怖いという声も根強い

水泳や運動をするときに便利なタンポンは、膣内に挿入する不安があって使えない、という声もよく耳にします。使い方にコツがいるのに、どう挿入するのかを教えてもらう経験がないことも、タンポンを難しくさせているのかもしれません。

「挿入してしまえば、すっかり生理のことを忘れられるくらい快適なので、とてもいいアイテムだと思います。温泉やプールなどで使えるのもいいですよね。肌に経血が当たることが少ないのでかぶれることもありません。ただ、日本で売られているタンポンはすべてアプリケーターがついています。紙製のアプリケーターもありますが、プラスチックのものもあるので、プラスチックゴミが出るのがデメリットといえるでしょう。

生理のときに温泉やプールに入ることについては、施設側で禁止としているところもありますので、マナーとしてはその場に合わせた方がいいと思いますが、衛生面だけで考えれば入って問題ありません。膣内に水が入ることはありませんし、そのような場所では水質検査もきちんとしているはずです。膣には雑菌に打ち勝てるよう常在菌もいるので、そう神経質にならなくて大丈夫ですよ」(宋 美玄先生)

[メリット]
・蒸れたりかぶれたりする心配が少ない
・正しく装着すれば違和感がない
・プールや運動のときにも気にならない

[デメリット]
・プラスチックゴミが出る
・正しい使い方がわからない人も多い

 

【布ナプキン】使い捨てなくていいが手間がかかる

コットンで紙ナプキンのような形に作られた布ナプキンは、洗って繰り返し使用します。紙ナプキンのように一体型になっているタイプのほか、中の吸収パッドを変えられるタイプや、おりもの用の小さなものもあります。

「使い捨てではないので、コストパフォーマンスはいいですよね。また、下着や洋服のように肌馴染みがいいコットン素材なので、かぶれから開放されたという方もいるでしょう。ただ、かぶれについては個人差があり、乾きの遅いコットンが逆にかぶれる原因になってしまうこともあります。また、外出先で取り替えたものを持ち帰らなくてはならないことや、洗って干すなどの手間がかかるので、面倒に感じる方もいますよね。

布ナプキンを使う方の中には、膣の筋肉をトレーニングして締めつけることで経血を漏らさないようにする、ということも言われています。昔の人はそうしていた、という噂も根強くありますよね。でも、膣は筒状の形をしていて、ジップつきの保存袋のようにピチッと閉まるものではないんです。尿もれ防止やセックスでの快感につなげたいなど別の視点からであれば、膣のトレーニングはいい点もあると思いますが、経血を出さないようにはできません」(宋 美玄先生)

[メリット]
・使い捨てなくていいのでコスパがいい
・かぶれない人もいる

[デメリット]
・乾きにくい
・外出時に取り替えたとき、持ち帰らなくてはならない
・洗濯する手間がかかる

 

【月経カップ】経血量がわかるいま注目の生理用品

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最近になって広く認知されるようになってきた月経カップは、膣内に挿入して経血をカップで受け止めるもの。溜まった経血はトイレに流し、カップは洗ってまた装着します。

「月経カップで不便なのは、生理が終わったら煮沸消毒しておくという点です。電子レンジでもできるので、こちらの方が手間がないでしょう。それを除けば、生理であることを忘れられるくらい快適です。使いはじめは上手に装着できなかったりスムーズに取り外せなかったりということがあるかもしれませんが、2〜3回使えばすぐ慣れます。これも個人差がありますが、だいたい半日に一度くらい経血を捨ててつけ直せばよいので、面倒が少ないのもいいところです。

もし自分の経血量について知りたいと思ったら、一度カップを使って測ってみるのもいいと思いますよ。だいたい一週間程度続く生理で出る経血は20〜140ccと言われています。大きな紙ナプキンを日に何度も替えなくてはならない方や、オムツタイプの紙ナプキンでないと経血が漏れてしまう、という方は、一度産婦人科を受診してみてください。あまりに経血量が多いときは、子宮筋腫などの病気も疑われますし、黄体ホルモン療法などで治ることもあります」(宋 美玄先生)

[メリット]
・装着してしまえば不快感がない
・自分の経血量がわかる

[デメリット]
・使い勝手に慣れるまでに時間がかかる人もいる
・消毒が面倒に感じることもある

 

【経血吸収ショーツ】話題のショーツタイプは、実は10年前から存在

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フェムテックという言葉がメジャーになってきて注目されつつあるのが、経血吸収ショーツ。でも、実は10年も前から商品化されていたそう。

「ショーツ全体が経血を吸収できるように設計されているので、履くだけでいいのが利点です。ゴミも出ず、吸収量もナプキン数枚分あるので、外出先で替える必要がありません。デメリットとしては、1枚ではもちろん足りないので何枚か揃えることになり、初期投資にお金がかかることでしょうか。興味がある方は、まずは1枚買って使ってみることをおすすめします。また、月経カップやタンポンだけでは心配な方は、紙ナプキンを使わず経血吸収ショーツと併用するのもいいかもしれませんね。

いちいちナプキンを替えている時間がないときは、気にしなくていいので便利ですし、ファッションにも響きにくいので、経血量が落ち着いてきたときに使うのもいいでしょう。また、生理用品の入手が難しくトイレに行くのが困難になることが考えられる災害時のために、防災グッズとして揃えておくのもおすすめです」

[メリット]
・吸収量が多く、いちいち付け替える必要がない
・ファッションに響きにくい

[デメリット]
・初期投資にお金がかかる
・蒸れたりかぶれたりしてしまう人もいる

 

生理は、一度初潮を迎えたら閉経まで、数十年にわたって付き合っていかなくてはならないもの。我慢しなければならないものと諦めず、快適に過ごせるよう生理用品を替えてみたり、産婦人科に相談をするのも手でしょう。

宋美玄先生は、「生理に煩わしい思いをしない人生を過ごしてほしい」と話します。妊娠を考えていない時期なら、ピルやミレーナ(子宮内薬剤徐放システム)などを使い、生理があることそのものと向き合ってみることも考えながら、自分にとってより良い選択ができるといいですね。

Profile

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「丸の内の森レディースクリニック」院長 / 宋 美玄(ソン・ミヒョン)

産婦人科医、医学博士、FMF認定超音波医。大阪大学医学部医学科卒業後、大阪大学医学部付属病院、りんくう総合医療センターなどを経て川崎医科大学講師に就任。2009年、ロンドンのThe Fetal Medicine Foundationへ留学。胎児超音波の研鑽を積み、2015年川崎医科大学医学研究科博士課程を卒業。2017年、東京・丸の内に「丸の内の森レディースクリニック」を開業。テレビ出演や雑誌・書籍での情報発信にも力を注ぎ、著書多数あり。
丸の内の森レディースクリニック https://www.moricli.jp/

 

取材・文=吉川愛歩 編集協力=Neem Tree