5.たんぱく質をきちんと摂取し、糖質は控えめに
「“高タンパク低糖質”はダイエットに関してよく聞かれますが、メンタルにおいても重要です。例えば疲れたとき、チョコレートなどの甘いものを食べると幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが一時的に増えます。ところが、血糖値が急激に上がると、インスリンが分泌され、血糖値を思い切り下げようとする働きが起こります。低血糖になると体は危険を感じて血糖値を上げようとするため、今度は、アドレナリンやコルチゾールといった交感神経を強く刺激する物質を分泌。脈拍が早くなり、身体は戦闘態勢に、心は不安定な状態に入ります。
チョコレートなど甘いものでは幸福感は長く続かず、そのあとに訪れる低血糖とそれに伴う感情の揺さぶりが、心のコンディションを悪くしてしまうのです。血糖による揺さぶりを起こさずにエネルギーを補充するには、タンパク質の摂取が一番です。小腹がすいたときにも、卵やナッツ、小魚などを食べ、糖質は控えめにしましょう。
さらに、タンパク質はホルモンの生成にも欠かせません。幸福感ややる気をもたらすセロトニンやドーパミン、リラックス効果をもたらしストレスを軽減するギャバなど、どのホルモンもタンパク質を原料としているため、タンパク質が十分に補われていないと作られません。さらに、タンパク質を構成するアミノ酸がホルモンを合成する過程で必要なのが、鉄などのミネラルやビタミンB群などの補酵素です。鉄は豚レバーやアサリなどに、ビタミンB群は豚肉やレバーなどの肉類、ウナギやマグロなどの魚類、卵や乳製品などの動物性食品に多く含まれています」
6.毎日10~15分の仮眠で“脳の掃除”を
「昼食後や移動中など、昼間に10~15分ほどの睡眠を習慣にすることもおすすめです。10~15分というのは、入眠してすぐのレム睡眠の状態で目覚めるためです。レム睡眠は、いわゆる『質の高い睡眠』と呼ばれているもので、このとき頭の中では夢を見つつ、脳の掃除をしている状態だといわれています。そのため、レム睡眠の状態で目覚めると頭の中がスッキリするのです。物事の考え方や捉え方も前向きに変わってきます」
新しい環境で大変な時こそ、一度立ち止まって自分自身を整えること、そしてたんぱく質を中心にバランスのよい食事をしっかりとることが大切です。それでも自分で気持ちをコントロールできなくなってしまったら、ひとりで悩まず、職場の産業医やメンタルクリニックの先生に相談しましょう。
Profile
精神科医 / 森 秀人
ひめのともみクリニック医師。精神保健指定医、日本医師会認定産業医、日本美容外科学会(JSAS)、認定専門医。精神科臨床を続ける中で、栄養学の重要性を痛感し、栄養療法を自らも実践しつつ知見を深め、臨床に活かしている。
ひめのともみクリニック HP
取材・文=仲保芳恵(Playce)