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寒くて寝付けない、熟睡できない…。睡眠の専門家が解説する、
真冬の寝室を暖かく整える方法

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12月も下旬に入り、地域によっては降雪も始まるなど冷え込みが厳しくなっています。とくに夜から明け方にかけては気温が大幅に下がるため、部屋や布団の中が寒くて寝付けない、眠りが浅くなってしまう……そんな人は多いのではないでしょうか? その悩ましい状況を解消するカギは、寝室や寝具の整え方にあります。

快眠セラピスト・睡眠環境プランナーの三橋美穂さんに、寒さ対策と快眠の両面から実践したい寝室の整え方や、快眠につながる寝具やアイテムについて教えていただきました。

冬の快眠には、
寝室の温度・湿度管理が重要

まず、冬場の寝室として理想的な環境は、何を目安に整えればいいのでしょうか?

「冬場の寝室の環境を整えるためにまず気にしたいのは、温度と湿度です。寝室の温度は18~23℃程度になるようにするといいでしょう。湿度は40~60%に保つと温かさを感じやすくなります。そして、就寝時の布団内部の温度は33℃程度になると快眠できるとされています」(三橋美穂さん、以下同)

・温度…………約18~23℃
・湿度…………約40~60%
・寝床内温度…約33℃

心地よい眠りにつながる
寝室の整え方

冬季の寝室において理想的な環境を整えるうえで、どのような対策ができるのでしょうか? 賃貸住宅でもできる対策について、さらに詳しくうかがいました。

・暖房と加湿器は夜もつけっぱなしで適切な温度・湿度を保つ

電気代節約のために、夜は暖房などの家電類のスイッチを切って就寝することがあるかもしれません。ところが、快眠のためにはけっして推奨できないそう。

「布団の中が暖かくても、室内が寒い状態になってしまうと、起床時にヒートショック(気温の変化によって血圧が急激に上下し、心臓や血管の疾患が起こること)を引き起こす心配があります。また、室温が18℃を下回ると、循環器病や呼吸器疾患が起きやすいという研究結果も出ています。
適切な温度と湿度を保つためにも、就寝時も暖房と加湿器はつけたままにしておくといいでしょう。とはいえ、暖房にエアコンを使用するなら、風が体に直接あたると喉を痛める原因になります。ベッドの位置を変える、エアコンのルーバーの向きを変えるなどして、工夫する必要はあるでしょう」

・寒さは窓から! 厚手で長いカーテンで冷気を遮断する

「持ち家であれば、窓を二重して断熱効果と保温性を高めるという方法もありますが、賃貸では難しいですよね。賃貸で窓際の寒さ対策をする場合、断熱シートを窓に貼る厚手のカーテンを取り付けるといった方法をおすすめします。
カーテンにはいろいろと種類がありますが、寒さに備えるなら断熱のカーテンを選びたいですね。断熱カーテンで好みのデザインがないなら、生地が厚手のカーテンでも代用できます。カーテン選びで重要なのは長さです。窓際からの冷気は床から伝わるため、床に少し接するくらい長いカーテンを選ぶと、断熱効果が上がりますよ」

布団を何枚も重ねればいいわけではない?
寝具の整え方

寝室環境の次に知っておきたいのが、適切な寝具類。掛け布団内を適温の33℃程度に保つために、寝具で工夫できることを解説いただきました。

・軽い掛け布団なら上に毛布を重ねる

「冬用の掛け布団として選びたいのは、中綿や羽毛の量が多いものです。羽毛布団であれば、羽毛の大きさを表すダウンパワー値が大きくなるほど、軽くて暖かい布団になります。冬の布団として購入するなら、高価にはなりますが400ダウンパワー以上のものを選ぶといいですね。毛布であれば、ウールやキャメルといった動物素材のものだと、肌触りが良いだけでなく、暖かさもありますよ。
布団と毛布の重ねる順番については、掛け布団の性質によって変えてみるといいと思います。例えば、軽い掛け布団だと体から少し浮いて熱が逃げやすいので、掛け布団の上に毛布をかけて体に密着させる、というように整えてみてください」

また、寒いからといって、何枚も布団や毛布を重ねるのは快眠には逆効果だそう。布団の重みで圧迫感を感じるだけでなく、血行が悪くなる原因にも……。身体の上に掛ける布団や毛布は2枚程度におさえ、あとは室内の温度を調整すると、快眠につながります。

・掛け布団の中は湯たんぽなどで温めておく

暖かい掛け布団も、その中が温まるまではなかなか時間が掛かるもの。そこで、就寝前に掛け布団の中を温めておくことも快眠のコツです。

「寝る前までに掛け布団の中を人肌の温度にしておくことで、入眠しやすくなります。湯たんぽを活用したり、布団乾燥機や電気毛布で温めたりしておくと、快適な環境を作りやすくなります」

・厚みのある敷パッドで背中から保温性アップ

「室内の温度や布団・毛布で寒さ対策をしても、身体の冷えが気になる……という場合には、マットレスや敷布団の上に長い毛足で厚みのある敷パッドを敷く方法もあります。
敷パッドでおすすめなのは、ウールやキャメルなど動物の毛を用いたものや、厚みのあるマイクロファイバー素材のもの。冷たい空気は床側に流れるので、敷パッドで背中をカバーし、保温性を高めるとさらに快適になりますよ」

冷えを感じやすい部位
「手首・足首・首」をカバーする

冷え性などで寒がりならば、室内環境や寝具の工夫に加えて、冷えを感じる部分をナイトウェアでカバーしてみましょう。

「手首、足首、首元は、とくに冷えを感じやすい場所。レッグウォーマーやネックウォーマー、裾の長いナイトウェアを身に付けるだけでも冷え対策になります。ナイトウェアの素材として選びたいのはシルクやコットンのような触感がさらっとしたもの。寝返りを打っても、衣服と布団(または毛布)の間で摩擦が起きにくいので、布団がずれて空気が入り込み布団の中が冷えてしまう……ということを防げます」

三橋美穂さんプロデュースによるパジャマ。立てられる襟と、12分丈の袖・裾により、首・手首・足首に忍び込む冷気を遮断できる。快眠ラボ「手足すっぽり12分丈 プロのこだわりが詰まった快眠パジャマ」18,480円(税込)

「また、おなかの冷えにも注意したいところ。おなかが冷えると、膀胱が固くなってしまい頻尿の原因になります。寝るときに腹巻などでおなかを温めてあげることで、夜のトイレの回数を減らしすっきりと眠ることができます」

寒さ対策に加えておきたい
快眠のコツ

これまで寝室や寝具の寒さ対策を見てきましたが、そもそも快眠のために忘れてはならない2つの要素を押さえておきましょう。

・就寝前はオレンジ色の照明→就寝時は真っ暗に

快眠のためには照明にも気を使いたいところ。就寝時間に近づくにつれ、照明の明るさや色合いを調整したほうがよいと三橋さんは言います。

「睡眠ホルモンのメラトニンは、暗ければ暗いほど分泌されます。そのため、朝~昼間は青白い光で過ごしていても、夜になったらオレンジ色の照明に切り替えて、就寝時間に近づくにつれて明るさを落としていくといいですね。
寝るときに豆電球を付けたままにしている方もいると思います。就寝時は少しの光でも刺激になって睡眠が浅くなり、睡眠不足になるだけでなってしまいます。それだけでなく、食欲を増進するホルモンが分泌され、食べすぎから肥満の原因になることも…。そのため、就寝時には全ての照明を消し、真っ暗にしておくのがベストです」

日中活動している時間は青白い照明で過ごし、夜になるにつれてオレンジ色の照明に調整すると、光のメリハリがつき、睡眠ホルモンの分泌を促しやすい。

・“ちょうどよい高さ”の枕を選ぶ

冬用の布団や敷パッドを整えても、自分の骨格に合わない枕を使っていては、快眠の妨げになってしまいます。そこで三橋さんから枕選びのコツもあわせて伺いました。

「使っている枕の高さが高いと、就寝時に俯いた状態になります。これでは気道が狭くなった状態になるので、いびきをかきやすくなります。逆に枕が低く、頭が心臓の位置より下がってしまうと、睡眠が浅くなるだけでなく、首に負担が掛かったり、顔のむくみの原因になったりします。
自分の骨格に適した枕を探す際には、仰向けの時に“立ち姿勢に近い状態”が保てるものを選びましょう。肩や首に負担を掛けず、呼吸もしやすくなるので、楽な姿勢で眠ることができますよ」

三橋さんがおすすめしてくれた枕は、枕の中心が低く、サイドが高くなっているもの。この形状のものだと、仰向け時にも横向け時にも楽な姿勢で睡眠できるという。

Profile

快眠セラピスト・睡眠環境プランナー / 三橋美穂

寝具メーカーの商品開発、研究開発部長職を経て、2003年に独立。睡眠のスペシャリストとして、全国での講演活動、執筆、メディア取材を通し、睡眠の重要性や快眠のための工夫、寝具選びなどを発信している。加えて、快眠グッズのプロデュース、睡眠関係企業のコンサルティングも多数手がける。著書多数。

取材・文=棚橋千秋(Playce) 撮影=鈴木謙介