コロナ禍以降、換気の大切さがクローズアップされるようになっています。とはいえ、エアコンや暖房などを運転しているときはとくに、換気を怠りがちではないでしょうか。窓を開放しなくても、室内の空気を入れ替えてくれるのが「24時間換気システム」。ところが、一度も掃除をしたことがない人は6割にものぼるとか。換気効率を下げないためにどう手入れすべきか、掃除のスペシャリスト資格であるクリンネスト講師の、布田恭子さんに教えていただきました。
「24時間換気システム」って何?
最近の住宅には、24時間換気システムが装備されています。分譲物件や戸建てに限らず、賃貸物件にも設備がありますから、お部屋探しのときに確認したいポイントのひとつでもあります。
「24時間換気システムは、2003年の建築基準法の改正によって義務化された装備です。シックハウス症候群の予防目的で法律の改正があり、部屋に空気がこもらないようなシステムになっています。基本的にはスイッチを切らず稼働させ続けることで、絶えず空気を循環させられるようにしておくものです。ただ、入居時に詳しく説明があるわけではないので、役割をよく知らないままの方もいらっしゃるかもしれません」(クリンネスト講師・布田恭子さん、以下同)
三菱電機の調査(※)によると、自宅に24時間換気システムが設置されていることを知っている人はおよそ6割にとどまり、「電気代がかかる」「窓を開けて換気をしているから使わない」などの理由で、システムを使用していない人が半数に上る結果になりました。
「電気代は月にわずか数十円〜数百円ですし、使用方法を間違えてしまうのはもったいないですよね。このシステムで換気することで、結露やカビを防ぐことにもつながりますから、きちんと理解しておきたいものです」
※三菱電機「24時間換気システムに関する調査」(2022年4月22日〜24日実施)
部屋のどこにある?
では、24時間換気システムが部屋のどこにあるのか、調べてみましょう。
「我が家ではリビングの一角に吸気口があり、ベランダにつながっています。ここから外気を自然吸気して換気するタイプで、排気は機械が行います。これを第三種換気と呼び、他にも、吸気と排気のどちらも機械で行う第一種換気、排気だけを自然に行う第二種換気などがあります」
24時間換気システムの種類
・第一種換気……吸気口(給気口)と排気口のどちらも機械式で強制的に換気する。
・第二種換気……吸気口だけに換気扇を設置し、排気は自然換気。
・第三種換気……排気口だけに換気扇を設置し、吸気は自然換気。戸建てやマンションなど住宅に多く採用されている。
吸気口は目の高さより下についていることが多いので、知らずに家具で塞いでしまっている場合もあるそうです。家具の配置を考える際には、吸気口の周辺をしっかり開けておくようにしましょう。一方、排気口は浴室と脱衣所、洗面所、トイレなどに備えつけられています。
「排気口は水回りにあることが多いので、すぐに見つけられると思います。吸気も排気もフィルターが詰まってしまうと、機能の低下につながりますので、定期的に掃除しましょう」
「吸気口や排気口の掃除をするときはスイッチを切って行いますが、基本的には24時間消しません。ただ、常に外気が入ってきている状態なので季節によっては寒かったり、花粉や外気の汚れが気になったりします。我が家では、吸気口のある場所にソファを置いていたのですが、空気の流れが直撃するので家具の配置を変えました。また、花粉などが気になる場合は、フィルターの種類を変えるなどの工夫をするといいでしょう」
24時間空気が流れる場所。
とにかく掃除が大事!
三菱電機の調査では、24時間換気システムを一度も掃除したことのない人が6割にものぼりますが、フィルターを掃除せず1〜2年放置しただけで、換気効率は半減するといいます。
24時間ずっと空気が流れているということは、そのぶん埃や汚れもたまりやすいもの。吸気口はフィルターを通してきれいな空気だけを部屋に入れてくれるので、花粉や排気ガスなど、外の空気の汚れがフィルターに付着します。
「マンションの場合、吸気口の外側は共用部にあたるので、外側を拭く程度の掃除ができればいいでしょう。室内の方は、簡単に外れてフィルターを洗うことができるので、2〜3か月に一度はお掃除してください」
排気口の方は、湿度の高い場所などにあることが多いので、汚れが付着したまま放置しておくと、カビが発生したりこびりつきがひどくなったりして、掃除が大変になるそうです。
「トイレや洗面所にある排気口は、服の脱ぎ着をするたびに埃が舞うので、特に汚れやすい場所です。こちらもこまめに掃除をすれば5分程度で終わりますが、汚れがひどくなってしまってから行うと時間がかかってしまいます。汚くなってから掃除するのではなく、汚くならないために掃除する、というふうに考えて、定期的に掃除しましょう」
24時間換気システムを掃除する際に準備するもの
実際に掃除の仕方を説明していただきましょう。準備するのは、写真の4点と掃除機です。
・濡れたタオル
・水拭き用の速乾性クロス
・床を汚さないための布
・ブラシ
・掃除機
「吸気口」を掃除する手順
吸気口のパネルを取ると、メッシュフィルターが見えます。「乾いている状態の埃を、いきなり水拭きタオルでこすってしまうと、黒くなったり、消しゴムのカスのように埃がボロボロになったりして取りづらくなってしまいます。まずは乾いたままの状態を掃除機で吸い取りましょう。ブラシのアタッチメントをつけると便利です」
「こちらのフィルターも掃除機で吸い取りましょう。埃がある程度取れたら、水拭きクロスでしっかり拭いておきます」
「次に現れるフィルターは、洗って繰り返し使えるタイプのものです。2〜3か月に一度は洗って干し、乾いてから取り付けます。ただし写真のように灰色に汚れてしまっている場合は、新しいフィルターと交換しましょう。1年に一度は交換したいものです」
「ちなみにこれが新しいフィルターです。色が全然違いますよね」
「フィルターを取ったあとも埃が付着しているので、ブラシで落としていきます」
「どのお宅でもけっこう汚れているのが、吸気口のまわりの壁です。フィルターの掃除がしっかりできていないと、特にまわりが汚れやすいので、壁紙が黒ずんでいる方はフィルターも確認してみてください。壁の埃はゴシゴシと強くこすると壁紙が黒く変色してしまうので、濡らして固く絞ったタオルを一方向に動かして拭きます。これで吸気口の掃除は終わりです」
「排気口」の掃除をする手順
・浴室の排気口
排気口も、フィルターを取るところからはじまります。「浴室の排気口は高い位置についているので、足元に気をつけて作業しましょう。また、必ず24時間換気システムのスイッチを切ってから行ってください」
「フィルターの埃を掃除機で吸い取ります。汚れが軽ければ、これだけで十分なので、埃が取れたら戻せばいいのですが、カビが生えていたり、黒ずんでいたりしたら、カビ取りスプレーをかけたり、水洗いしたりします。汚れが軽ければ水洗いで、汚れがしっかりついていたら中性洗剤、カビなどがついていたら塩素系漂白剤などと、汚れの状態に合わせて洗ってください。洗ったら、干してしっかり乾かしてから戻さないと、またカビが生えてしまう原因になるので、気をつけましょう」
「中性洗剤で洗ってもいいでしょう。ただし、ブラシを使って洗うとフィルターが破けてしまうので、洗剤をつけて5分ぐらい時間を置き、やさしくなで洗いします」
「最後に排気口の周囲を水拭きすれば完了です」
・洗面所やトイレの排気口
こちらは洗面所にある排気口です。「同じくフィルターを外して掃除機で吸い取るか、埃が取り切れなければ水拭き、または水洗いして、しっかり乾かしてから戻しましょう」
「湿気がある場所に設置されたフィルターは、長い期間放置すると汚れがべとつきがちです。こまめに掃除をすれば、洗わず掃除機で吸うだけで済むので、月1回程度、浴室やトイレ掃除などと合わせて行う習慣にしておくといいでしょう」
埃の掃除はカラッと晴れた天気のいい日よりも雨の日など、埃が舞いにくい湿度の高い日がおすすめだそう。さっそく次に雨が降った日には、24時間換気システムの掃除をしてみましょう。
Profile
クリンネスト講師 / 布田恭子
お掃除スペシャリスト クリンネスト2級認定講師・家事代行サービス(個人宅のお掃除)・整理収納アドバイザー1級・2030SDGsカードゲーム認定ファシリテーター。掃除のプロとして、個人宅のお掃除や整理収納サポートを1800回以上実施。掃除の考え方を学ぶ「クリンネスト2級」の資格認定講師として、月1-2回、オンラインやリアルで資格認定講座を実施。学生の頃より、地球環境問題や社会貢献について関心があり、2030SDGsカードゲーム認定ファシリテーターとしても活動。参加者が自分ごととして行動できるよう、暮らしをテーマに伝える「2030SDGsカードゲームワークショップ」を開催。前職は自然派化粧品会社で店舗のスタッフ、店長、エリアマネージャーを経験後、営業企画部などで全店売上管理やスタッフ育成を行い、17年間勤務。働き方を変えるため退職し、現職掃除のプロとしては6年目。
取材・文=吉川愛歩 撮影=安藤佐也加 取材協力=一般社団法人ハウスキーピング協会クリンネスト事務局 編集協力=Neem Tree